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始まりの歌声編

第15話 ミナトゥ村

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目覚めるとそこは小さな小屋の中だった。

また夢を見ていた。

トゥール「懐かしいな」

フルネス「起きたか、おはよう」

トゥール「おはよう」

フルネス「夢でも見たか」

トゥール「ああ、フルネスと出会った頃の夢だ」

フルネス「十年前か」

トゥール「あの時はフルネス、小さかったなぁ」

フルネス「お前は何も変わらないな」

トゥール「そーだな、あとどれくらいでミナトゥ村につくかな」

フルネス「今日中にはつくだろう。タクティスが無事だと良いな」

トゥール「よし、行くか」


グレイス王国の闇落ちから、グレイス兵が外を徘徊するようになった。
おそらくセリアを探しているのだろう。

フルネス曰く、彼らは主力部隊ではないらしい。

主力部隊は城で待機しているとのことだ。



トゥールとフルネスは急いでミナトゥ村に向かった。












ミナトゥ村にたどり着いた頃にはもう夜だった。

道中でグレイス兵との戦闘は避けられなかったがフルネスと二人ならば造作もなかった。

だが、兵達は城周辺の村々を襲っているようで、それはミナトゥ村にも及んでいた。

ミナトゥ村の入り口には、タクティスが大斧を構えて立っていた。


トゥール「タクティス!!無事か!?」

タクティス「ああ、トゥール。。。俺は、、、」

トゥール「どうした」

タクティス「妻を、、殺しかけた」

トゥール「なんだって」


タクティスはあれから一人の女性と結婚し、今は五歳になる娘もいる。
家族と共にミナトゥ村で平和に暮らしていた。

タクティスは指輪の闇の力が突然強まったことを感じ、家を離れようとしたが時すでに遅し、正気を取り戻したときには部屋は嵐が通り過ぎたような状態で、その手は妻の首を締めていたという。


タクティス「だから俺はこうして、迫り来る軍勢を退け続けている。
村の中にはもう入りたくない。。。」

トゥール「そう、だったのか。。タクティスも奥さんも無事で良かった」

タクティス「俺はもう、ダメなのかもしれない。遂に恐れていたことが起こってしまった」

トゥール「大丈夫だタクティス、指輪を外す方法が見つかったんだ」

タクティス「それは本当か!?」


トゥールはタクティスに事情を説明した。

今すぐにでも自我失してしまうという不安を抱くタクティスはすぐに支度を始めた。
タクティスは妻に出掛けることを伝え、村の自警団に敵の戦力、武装、あらゆる情報を提供した。

フルネス「もし必要ならば、俺が代わりにここをお守り致しましょうか?」

タクティス「いや、大丈夫だ。村の自警団はなかなかの手練れだ。それにあの程度の敵ならば問題ないだろう。心遣いに感謝する」

フルネス「いえ、それならば安心ですね」

トゥール「さて、行こうか」



三人は村を出た。



道中、グレイス兵がいたが造作もなかった。
だが、タクティスは息を切らしている。

トゥール「大丈夫か?闇の力がまだ」

タクティス「いや、それもあるかもしれないが。何よりもこの斧を手に取るのが十年ぶりだからな、身体が鈍って仕方ない」

そうは言うも、豪腕のタクティスは健在。
愛斧レオニダスは人の三倍はある巨大な斧だがタクティスが振るうとオモチャのように見える。

敵は一振りで粉々になり、地面に叩きつけると地震が起きた。


タクティス「もうこの斧は手に取らないと思っていたんだがな」

トゥール「悪いな、置いてこいって言いたかったけど、王との戦いは免れないだろうから。タクティスの力が必要なんだ」

タクティス「大丈夫だ、心無い者には容赦しない」

フルネス「三人でいけるか?」

トゥール「正直微妙なところだ、力も魔力も尋常じゃなかった」

フルネス「やるしかないか」

タクティス「もう夜だな、今日はこのあたりで野宿しよう」

トゥール「だな」


辺りはもう真っ暗だが、敵の気配はない。
腹は減ったが食料を持ってきていないので、森で動物を狩ろうとした。
しかし、タクティスが動物が可哀想だと言うのでやめた。

代わりと言ってはなんだが、と。
タクティスが愛妻おにぎりをいくつか持ってきていたので頂くことにした。

恋なんて音沙汰もねぇな、なんて思いながら。
トゥールは眠りについた。


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