神殺しの怪物と六人の約束

ヤマノ トオル/習慣化の小説家

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始まりの歌声編

第20話 伏兵

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ツグル「今だ!!」

ダイス「分かってる、よっと!!!」

ダイスの放った矢は一直線に大男の右膝に命中。
大男はバランスを崩し、その場に右膝をついた。

ツグル「はぁぁぁぁぁー!!!!」

ツグルは漆黒の短剣を片手に、大男の右手首を削ぐ。

すると大男は斧を地面に落とし、右手首を左手で抑えた。
だが次の瞬間、左手でツグルの首を掴み、力を入れた。

やばい!!このままじゃ。。。

そう思ったとき

モモ「やぁぁぁー!!!!」

モモの大振りのメイスが大男の後頭部にクリーンヒット。

大男はそのまま前のめりに倒れ、ツグルも解放された。

ツグル「セリア!今だ」

セリア「うん!」



セリアは大男の手を掴み、指輪に触れた。

すると指輪から黒い光柱が天高く上がり、そのまま何事もなかったかのように静まる。

ツグルとモモは武器を構えたまま、すぐ近くでそれを見守った。

少しでも動いたら、斬る。

セリアには指一本触れさせない!!



セリアがリバイバルボイスを発動する。





セリアの歌声は、戦いで傷ついた周辺の大地や草花をみるみるうちに生き返らせた。
今まで戦っていた三人の傷も即座に癒えて行く。

ツグルの首に残っていた違和感も解消された。


ダイス「す、スゲェよ。。。」

気付けばダイスも茂みからこちらへ来ていた。

モモ「本当にセリアがやってるの?」

ツグル「ああ」



初めて見るセリアの能力に二人は驚いた。
空気が澄み渡りキラキラして、周辺のあらゆる生き物がイキイキと蘇るこの神秘的な空間に、ここにいる誰もが見惚れていた。



パリィン!!!!!


指輪は耳障りな音を立てて割れた。

大男は目を覚まし、むくっと立ち上がる。
モモとツグルは武器を構えたが、男の慈愛に満ちた眼差しを受けてすぐに武装を解除した。



トゥール「突然のことだったから何事かと思ったよ、まさか君達が来るとはな」

フルネス「やるじゃないか」

タクティス「本当に、、、、本当にありがとう。君が、セレスティア女王の娘さんかい?」

セリア「は、はい!!!」

タクティス「ありがとう、、申し訳ない。。本当に、ありがとう」


大男は顔に似合わず涙を目に浮かべて、セリアの小さな手をその大きな手で包んだ。


セリア「え、いや、大丈夫ですよ!!顔を上げてください!」

タクティス「トゥールよ、、俺は決めた。また戦うと」

トゥール「そうか」

タクティス「こんな若い者達が命を懸けて挑んでくれたんだ、逃げるわけにはいかない」

トゥール「そうか、サンキュな。それで悪いんだけど、すぐに戦ってもらうことになるんだ」

タクティス「王か?」

トゥール「ああ、もうすぐ来るよ」


遠くに見えるグレイス城を見た。

この平原からだと高い建物が一切なく、グレイスの城下町全体を囲う高い防御壁も、その中に堂々とそびえ立つグレイス城もハッキリと見ることが出来る。

グレイス城の頂上、玉座の間は黒く光り、その後黒い光線が放たれた。

光線は真っ直ぐにこちらへ向かって来ている。

トゥール「そう、あれと戦わなきゃなんねぇんだ。連戦で辛いけど、セリアのおかげで今はイケる気しかしねぇな」

タクティス「負けるわけにはいかない」

フルネス「来るぞ」

トゥール「あ、そうだ。来てくれてサンキュな。あと、お前達はこのコウモリについて行ってくれ、その先で口の悪い魔術師が助けてくれるはずだ」

トゥールがそう言うと、小さなコウモリがトゥールの胸元から飛び立ち、パタパタと羽を羽ばたかせながら森の方へ向かった。

ツグル「分かった」

トゥール「悪いな、移動ばかりで」



次の瞬間、黒い光に乗って、王が一直線にセリアめがけて飛んで来た。

フルネスは魔法を唱え、空間丸ごとを見えない壁で覆った。
王は空中でその壁に阻まれ、動きを止めている。
しかし、壁にはヒビが入り、今にも割れそうである。

タクティスの斧は神々しく輝いている。
天高く斧を掲げ勢いよく地面に叩きつけると、なんと地面が隆起し、巨大な山が出来た。
その山はトゥール達とツグル達の間にそびえ立ち、空間を分けた。



ダイス「半端ねぇ!!!なんじゃこりゃ!!!」

モモ「え、ええ!?!?本当にあの人、人間なの?」

セリア「山が出来ちゃった。。。」

ツグル「この世界は化け物だらけなのかもな」

四人が突然出来た山を眺めていると、森の方からキーキー!!と鳴き声がした。

コウモリが森の入り口で羽をパタパタさせて怒っていた。

ダイス「せっかちなコウモリだな」

モモ「ごめんごめん!今いくよ」

セリア「待っててくれたんですね、ありがとうございます」

ツグル「行くぞ」




ツグル達はほんの少しだけ成長出来た気がした。
トゥールに褒められたのが、誇らしかった。


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