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分裂のトルコネ編
第127話 エターナル・スノードーム
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ヒーローはありとあらゆる技を繰り出し、リキッドを倒そうと試みる。
しかし、リキッドはそれを簡単に防ぎ、アイスファングでヒーローを傷つけた。
ヒーロー「属性相性は優ってるはずだぞ!!」
火力を高めても高めても、リキッドの氷が溶け切ることはなかった。
リキッド「最後にはシンプルかつ効果的な手法が最強だと教えたはずだ」
ヒーロー「強くなるために焦れば焦るほど、技に頼っちまうのが人間ってもんだ」
氷の牙がヒーローを襲った。
ヒーロー「ぐっ!!!!」
ヒーローの腹部に血が滲む。
ヒーロー「ぐはっ、、、、容赦ねぇな」
リキッド「俺はアーカヤ姫への暗殺未遂、誘拐を実行中のヴィランだ。今強くならなきゃ、お前は死ぬぞ?ヒーロー」
ヒーロー「どうして、、」
ヒーローは身体中に炎を纏い、腹部に刺さる氷塊を溶かした。
ヒーロー「お前の、、ブランドはどうしたんだよ。名誉騎士団長としてのお前のブランドは、どこに行ったんだよ!!!どうしてこんなことをしてるんだよ!!!」
ヒーローは叫んだ。
リキッド「、、、、、」
ヒーロー「俺は!!!!!!何を目的にこの先歩んで行けば良いんだよ!!!!」
リキッド「、、、、すまん」
その言葉を最後に、ヒーローは氷塊に頭を打たれて気絶した。
吹雪の中、リキッドは振り返らずに歩き出した。
アーヤカ「ごめんなさい、ヒーローは最後まであなたを信じていたのに、悪役を演じさせてしまったようね」
リキッド「演じたわけではありませんよ、これは俺の意志です。それに、あいつはここでくたばるような男じゃありませんから、これで良い」
二人はウェスト大氷山を登り出した。
ウェスト大氷山は魔物の巣窟となっていた。
一体一体の能力は高く、流石のリキッドでも苦戦を強いられていた。
アーヤカ「リキッド!!大丈夫!?」
リキッド「余裕だ、、、、」
山の中腹あたりまで登ってきた、その時。
地響きと共に雪崩が起き、地中から巨大な毛むくじゃらの獣が姿を現した。
雪崩を氷の壁で防ぎ、アイスロードに乗って山を駆け上がった。
巨大な獣はリキッドを追っかけて雪山を駆ける。
リキッド「アイスファング!!」
洗練されているリキッドの魔法だが、氷塊はその獣の皮膚を貫くことは無く、ポキリと折れてしまった。
「グォァォオオオオオオ!!!」
獣がその大きな手を振り上げ、リキッドを捕らえようとする。
リキッド「アイスウォール!!」
しかし氷の壁は最初から無かったかのように簡単に破られた。
リキッドは咄嗟にアイスロードを展開し、複雑な道を形成した。
獣はリキッドを見失って混乱し、手を振り回した。
その指先がリキッドの肩を掠めた。
すると、リキッドの身体は宙に浮き上がった。
リキッド「姫!!!」
リキッドはアーヤカ姫の手を掴み、二人はそのまま彼方へと飛ばされてしまった。
林の木々に傷つけられながら、リキッド達の身体は動きを止めた。
リキッド「すみません、魔法が間に合わず」
アーヤカ「いいのよ、これくらいスリルがある方が楽しい旅になるでしょう」
アーヤカは笑っている。
リキッド「スリルも良いですが、少々疲れました」
アーヤカ「そうね、一休みしよう」
リキッド「そうですね」
木々の間を雪がスルスルと駆けていく。
この寒さの中では、ほんの数時間で人間は凍え死んでしまうだろう。
魔物の鳴き声が響き渡っている。
凍え死ぬ前に、魔物の餌となる方が早いかもしれない。
リキッドは氷で壁を作り、冷たい風を遮った。
アーヤカ「暖かいね」
リキッド「そうですね」
アーヤカがリキッドの手を握った。
暖かいと言ったが、お互いの手はもはや氷のように冷たい。
アーヤカ「あの時、自殺しなくて正解だったわ」
リキッド「それなら良かったです」
アーヤカは微笑み、リキッドに抱きついた。
リキッド「!!、、姫」
アーヤカ「この時間がずっと続けば良いのに。。。私はね、リキッド。ずっっとこうしたかったのよ」
アーヤカの言葉がリキッドの胸に突き刺さる。
こうなる前にアーヤカ姫を励まし、王を説得することが出来たかもしれない。
婚儀を中止することが出来たかもしれない。
もっと違う方法でフレイムラン王国と平和条約を結ぶことが出来たかもしれない、その提案を出来たかもしれない。
ああ、この場にヒーローがいれば、魔物の討伐はもっと楽になっただろう。
この寒さを凌げただろう。
自分は守っていたんだ、ちっぽけなプライドを。
本当にちっぽけなプライドを。
未来から逆算して目的を達する。
そんな普段の自分とはかけ離れた思考がグルグルと巡る。
リキッド「アーヤカ姫」
アーヤカ「?」
リキッド「この時間を永遠に、、、続けさせてください。それが、、俺の唯一の救いです」
アーヤカは何かを悟ったようにリキッドにキスをした。
アーヤカ「そうして頂戴」
リキッドは全ての魔力を注ぎ込んだ。
リキッド「エターナル、、、スノードーム!!!」
詠唱と共に二人の身体は氷塊に包まれていく。
凍りつく寸前に、リキッドはアーヤカ姫を抱きしめた。
アーヤカ「ごめんね、ありがとうね、リキッド」
リキッドの涙が凍りついた。
二人は完全に氷塊に包まれ、静寂が訪れた。
数日後
そこに一人の老人が現れた。
無の神「儂の庭に侵入者ありと来てみれば、氷の芸術作品が一つ。儂の魔術により覚醒した魔物達を退けながら山の中腹まで来るとは、大したものよ」
それはウェスト大氷山の頂上を根城にしていた無の神だった。
無の神「婚儀を経て一つとなった二つの王国がどのように成長し、どのような強者が育つのか、吟味して人形選びをしたいと思っていたのじゃが、、、、やってくれたのぅ、、リキッド名誉騎士団長」
無の神は氷塊に包まれているリキッドを氷越しに触れた。
無の神「この罪は重いぞ?しかしまぁ、どのような強者が育とうが、お主を超える者は現れないのも事実。ならば決まりじゃ、氷の像になるのは、まだ早い」
無の神が魔力を流し込むと、氷塊は砕け散った。
雪の地面に倒れ込むリキッドとアーヤカ。
意識のない二人は、それでも手を繋いでいた。
無の神「色恋沙汰は見飽きたのじゃ」
無の神が指を鳴らすと、アーヤカの身体は膨れ上がり、爆発した。
そしてリキッドは、無の神と共に王国から姿を消した。
しかし、リキッドはそれを簡単に防ぎ、アイスファングでヒーローを傷つけた。
ヒーロー「属性相性は優ってるはずだぞ!!」
火力を高めても高めても、リキッドの氷が溶け切ることはなかった。
リキッド「最後にはシンプルかつ効果的な手法が最強だと教えたはずだ」
ヒーロー「強くなるために焦れば焦るほど、技に頼っちまうのが人間ってもんだ」
氷の牙がヒーローを襲った。
ヒーロー「ぐっ!!!!」
ヒーローの腹部に血が滲む。
ヒーロー「ぐはっ、、、、容赦ねぇな」
リキッド「俺はアーカヤ姫への暗殺未遂、誘拐を実行中のヴィランだ。今強くならなきゃ、お前は死ぬぞ?ヒーロー」
ヒーロー「どうして、、」
ヒーローは身体中に炎を纏い、腹部に刺さる氷塊を溶かした。
ヒーロー「お前の、、ブランドはどうしたんだよ。名誉騎士団長としてのお前のブランドは、どこに行ったんだよ!!!どうしてこんなことをしてるんだよ!!!」
ヒーローは叫んだ。
リキッド「、、、、、」
ヒーロー「俺は!!!!!!何を目的にこの先歩んで行けば良いんだよ!!!!」
リキッド「、、、、すまん」
その言葉を最後に、ヒーローは氷塊に頭を打たれて気絶した。
吹雪の中、リキッドは振り返らずに歩き出した。
アーヤカ「ごめんなさい、ヒーローは最後まであなたを信じていたのに、悪役を演じさせてしまったようね」
リキッド「演じたわけではありませんよ、これは俺の意志です。それに、あいつはここでくたばるような男じゃありませんから、これで良い」
二人はウェスト大氷山を登り出した。
ウェスト大氷山は魔物の巣窟となっていた。
一体一体の能力は高く、流石のリキッドでも苦戦を強いられていた。
アーヤカ「リキッド!!大丈夫!?」
リキッド「余裕だ、、、、」
山の中腹あたりまで登ってきた、その時。
地響きと共に雪崩が起き、地中から巨大な毛むくじゃらの獣が姿を現した。
雪崩を氷の壁で防ぎ、アイスロードに乗って山を駆け上がった。
巨大な獣はリキッドを追っかけて雪山を駆ける。
リキッド「アイスファング!!」
洗練されているリキッドの魔法だが、氷塊はその獣の皮膚を貫くことは無く、ポキリと折れてしまった。
「グォァォオオオオオオ!!!」
獣がその大きな手を振り上げ、リキッドを捕らえようとする。
リキッド「アイスウォール!!」
しかし氷の壁は最初から無かったかのように簡単に破られた。
リキッドは咄嗟にアイスロードを展開し、複雑な道を形成した。
獣はリキッドを見失って混乱し、手を振り回した。
その指先がリキッドの肩を掠めた。
すると、リキッドの身体は宙に浮き上がった。
リキッド「姫!!!」
リキッドはアーヤカ姫の手を掴み、二人はそのまま彼方へと飛ばされてしまった。
林の木々に傷つけられながら、リキッド達の身体は動きを止めた。
リキッド「すみません、魔法が間に合わず」
アーヤカ「いいのよ、これくらいスリルがある方が楽しい旅になるでしょう」
アーヤカは笑っている。
リキッド「スリルも良いですが、少々疲れました」
アーヤカ「そうね、一休みしよう」
リキッド「そうですね」
木々の間を雪がスルスルと駆けていく。
この寒さの中では、ほんの数時間で人間は凍え死んでしまうだろう。
魔物の鳴き声が響き渡っている。
凍え死ぬ前に、魔物の餌となる方が早いかもしれない。
リキッドは氷で壁を作り、冷たい風を遮った。
アーヤカ「暖かいね」
リキッド「そうですね」
アーヤカがリキッドの手を握った。
暖かいと言ったが、お互いの手はもはや氷のように冷たい。
アーヤカ「あの時、自殺しなくて正解だったわ」
リキッド「それなら良かったです」
アーヤカは微笑み、リキッドに抱きついた。
リキッド「!!、、姫」
アーヤカ「この時間がずっと続けば良いのに。。。私はね、リキッド。ずっっとこうしたかったのよ」
アーヤカの言葉がリキッドの胸に突き刺さる。
こうなる前にアーヤカ姫を励まし、王を説得することが出来たかもしれない。
婚儀を中止することが出来たかもしれない。
もっと違う方法でフレイムラン王国と平和条約を結ぶことが出来たかもしれない、その提案を出来たかもしれない。
ああ、この場にヒーローがいれば、魔物の討伐はもっと楽になっただろう。
この寒さを凌げただろう。
自分は守っていたんだ、ちっぽけなプライドを。
本当にちっぽけなプライドを。
未来から逆算して目的を達する。
そんな普段の自分とはかけ離れた思考がグルグルと巡る。
リキッド「アーヤカ姫」
アーヤカ「?」
リキッド「この時間を永遠に、、、続けさせてください。それが、、俺の唯一の救いです」
アーヤカは何かを悟ったようにリキッドにキスをした。
アーヤカ「そうして頂戴」
リキッドは全ての魔力を注ぎ込んだ。
リキッド「エターナル、、、スノードーム!!!」
詠唱と共に二人の身体は氷塊に包まれていく。
凍りつく寸前に、リキッドはアーヤカ姫を抱きしめた。
アーヤカ「ごめんね、ありがとうね、リキッド」
リキッドの涙が凍りついた。
二人は完全に氷塊に包まれ、静寂が訪れた。
数日後
そこに一人の老人が現れた。
無の神「儂の庭に侵入者ありと来てみれば、氷の芸術作品が一つ。儂の魔術により覚醒した魔物達を退けながら山の中腹まで来るとは、大したものよ」
それはウェスト大氷山の頂上を根城にしていた無の神だった。
無の神「婚儀を経て一つとなった二つの王国がどのように成長し、どのような強者が育つのか、吟味して人形選びをしたいと思っていたのじゃが、、、、やってくれたのぅ、、リキッド名誉騎士団長」
無の神は氷塊に包まれているリキッドを氷越しに触れた。
無の神「この罪は重いぞ?しかしまぁ、どのような強者が育とうが、お主を超える者は現れないのも事実。ならば決まりじゃ、氷の像になるのは、まだ早い」
無の神が魔力を流し込むと、氷塊は砕け散った。
雪の地面に倒れ込むリキッドとアーヤカ。
意識のない二人は、それでも手を繋いでいた。
無の神「色恋沙汰は見飽きたのじゃ」
無の神が指を鳴らすと、アーヤカの身体は膨れ上がり、爆発した。
そしてリキッドは、無の神と共に王国から姿を消した。
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