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決戦のグレイス城編
第173話 グレイス城前〜モンスターの巣窟〜
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ツグルとカナメルは寂れた街を出た。
道中にいるモンスターとの戦闘は避けられなかった。
モンスターの強さはトルコネのときとは比べ物にならないくらい強い。
グレイス城の周りにはそんな化け物達が地上にも空中にもウヨウヨと蠢いている。
月が照らす岩場の影に隠れながら二人は作戦会議を行なっていた。
ツグル「ここに来るのは二度目になるけど、何か策はあるのか?」
カナメル「ちなみに前回はどうやって切り抜けたんだ?」
ツグル「リキッドが氷の道を作って素早く移動しながら氷の壁でモンスターの視界を遮りながら、襲い来る個体には氷の牙で応戦しながら」
カナメル「炎は実体のないものだからね、それは不可能。空から行こうと思っていたけど飛ぶ敵がこんなにいるなら地上からの方がまだ安全か」
ツグル「安全って言ってもなぁ」
カナメル「門の中に入ってしまえば奴等は追ってこないんでしょ?」
ツグル「ああ、リキッドの時はそうだった」
カナメル「だとすれば魔力の消耗は相当激しいが転送魔術で門の前まで飛ぶしかないかな」
ツグル「ちなみに二人分だとどのくらいの魔力を使うんだ?」
カナメル「この距離だと少なくとも三分の一は持っていかれるだろうね」
ツグル「この先、戦闘を避けられないことを考えると三分の一の代償は大きい」
カナメル「そうだな」
カナメルは思考を巡らせているようだ。
ツグルも突破口がないか考えてはみたが何も浮かばない。
それに戦略立ては自分よりもカナメルの方が得意だということは分かっている。
カナメル「ザッと三つくらいプランは思い付いたけど、どれもリスクが大きいね」
その時、遠くで大きな何かが動く音が聞こえた。
その音は徐々に近付いてくる。
ガタガタガタガタ!!!!!
ツグル「何の音だ?」
カナメル「さぁね、グレイスで機械音なんて不自然極まりないけどね」
ツグル「敵か?」
草原を踏み散らしてやってきたのは二両の巨大な戦車だった。
ツグル「戦車!?」
カナメル「見覚えのある奴だと良いんだけどね」
カナメルは炎を空へと打ち上げた。
それを確認したのか戦車はこちらへと向かってくる。
ツグル「敵じゃないんだろうな!?」
カナメル「敵じゃない確率の方が高い」
ツグル「確率論で行動を決めんなよ!!」
カナメル「魔力を浪費して強敵と戦うリスクよりも、ここで巨大戦車二両を味方につけるメリットの方が大きいと考えた。それに今のグレイスにわざわざやってきた点と巨大な機械兵器を扱っているという点は敵じゃないことを証明する根拠になり得る」
ツグル「どういうことだ?」
カナメル「敵は転移石という石で都市間を移動する。だからこそ門の前に強力なモンスターをこんなにもウジャウジャと徘徊させることが可能なのだろう。このモンスターの巣窟を抜けて拠点に帰るなんて輩はいないだろうからね。二点目の機械兵器を扱っているという点については敵に機械整備スキルを持った輩がいないってこと。それらはフォールドーンの技術だからね。ゼウスは持ってるだろうけど、究極の身体を手に入れたあいつはもう機械を軽視してるだろうから」
咄嗟にここまでの分析をして、即座に行動に移すカナメルの姿を見て、ツグルは思わずこう言った。
ツグル「カナメル、お前がヘイスレイブの王になれば良いじゃん。お前の国は誰も落とせそうにないよ」
カナメルはツグルの言葉を鼻で笑った。
カナメル「言っただろう?俺は王の器じゃない。本当は国に属することすら窮屈なんだから」
ツグル「そうか?良い王様になると思うけどなぁ」
カナメル「絶対にないね。ほら、戦車が来たよ。果たして敵か味方か」
巨大な戦車は二両並んで止まった。
ガチャ。
片方の戦車の扉が開いた。
姿を現したのは車椅子に座ったズミだった。
ツグル「ズミさん!!!!」
ズミ「よお、フォールドーン以来か。元気そうだな」
続いて慌ただしく出てきたのはタチキとキャノンだ。
キャノン「ツグル!!久しぶり」
タチキ「こらこら、会えて嬉しいのは分かるけど一応ここは敵地なんですから!!まぁそう言いながら出てきてしまう自分も」
ズミ「カナメルも元気そうだな」
話を遮られたタチキはズミに飛び蹴りをしようと距離をとる。
それを見てキャノンは慌てて間に入った。
カナメル「まぁ、相変わらず」
ツグル「どうしてここに?」
ズミ「トゥールが助けてくれって言うもんだから、とりあえず来たって感じだな」
カナメル「それにしては準備が良いな」
ズミ「まぁ、たまたまだよ」
タチキ「いやいや!!たまたまなんかじゃねぇよ!ズミ君言ってたよね?そのうちトゥールが頼ってくるだろうからその時にすぐに動けるように戦闘準備を整えるって。だから俺達はろくに眠らずに夜な夜な機械いじりをさせられて、、、、」
ズミはとぼけたように欠伸をしている。
ズミ「そうだったか?そんな昔のこと忘れちまったよ」
タチキ「昔って、ほんの数週間前の話だろ!!」
キャノン「まぁ良いじゃねぇか。こうして巨大戦車クレイジー7が出来上がったんだから」
ズミ「そうだな」
ツグル「ところでそっちの戦車は?」
ガチャ。
扉から出てきたのは将校の軍服を着た大男だ。
ヴォルギス「おっと、初めましてだよな?フォールドーン帝国戦車部隊隊長、、、いや、今となってはただの戦車オタクか。ズミ氏が祭りに参加するってんでな、俺も遊びに来たのさ」
カナメル「ふーん、随分な大物を仲間に引き抜いたもんだね」
ヴォルギス「その風貌。ヘイスレイブの炎のマントだな?こうして共闘出来ることを嬉しく思う」
カナメル「こちらこそ」
ズミ「んで、あのモンスターどものせいで城下町にすら入れないって感じかい?」
ツグル「そうなんだ。俺とカナメルもその戦車に乗せてくれよ」
ズミ「別に乗せてやっても良いが殲滅した方が良いんじゃないか?こう見えてこの戦車はフォールドーンの技術を詰め込んだ高機動巨大戦車だ。一番乗りだろうなとは思ってたから」
ツグル「他にも誰か来るのか!?」
ズミ「さぁな、それはトゥールの交渉次第じゃねぇか?でもまぁ、誰かしらは来るだろう。トゥールの人望は特殊能力みてぇなもんだ」
カナメル「簡単に殲滅と言うけど、可能なのか?」
ズミ「可能だよな?ヴォルギス」
ヴォルギス「早速あれを使う気だな?良いだろう」
ヴォルギスはワクワクしている様子で言葉を続ける。
ヴォルギス「中にいるお嬢さんを起こさないように最善を尽くすよ」
ズミ「起こせよ、そいつも戦闘員なんだろ?タイミングは~」
ヴォルギス「ズミ氏に合わせよう」
ズミ「了解。キャノン、あれを使う」
キャノン「よっしゃ!!腕がなるぜ!!」
タチキ「てことは俺の出番は無さそうだね~。まぁ、、、あー良かった良かった。ゆっくり休める」
タチキはそう言いながらも残念だと顔に書いてあるように見える。
ヴォルギスと三人は各々戦車の中へと入った。
ズミ「はいじゃー、撃ちまーす」
タチキ「おい、超必殺技を撃つのに緩いな!!」
車内の音が拡声器を通して外へと漏れている。
ズミ「3.2..発射」
キャノン「1言えよ!!!」
ヴォルギス「オラララララララララぁ!!!!」
二両の巨大戦車の砲台から超高圧のビームが放たれる。
自在に砲台の向きを変えるビームが縦横無尽に動き回り、モンスターを滅していく。
カナメル「、、、、笑えない威力だな」
ビームに触れたモンスターは一瞬で跡形もなく消し飛んでいた。
ツグル「すげぇ、、、すげぇよ!!!」
夜の草原にあっという間にモンスターはいなくなり、静けさが漂う。
巨大戦車はガタガタと音をたてながら煙を上げている。
カナメル「あれだけの放出をすれば、そりゃこうなるでしょうね」
カナメルはマントを翻して歩き出した。
ツグル「この先はどうするんだ?」
ズミ「んー、一旦修理をしてから追いかけるよ」
ツグル「そっか、分かった!!助かったよ」
ツグルはカナメルを追いかけた。
タチキ「だーかーら言ったんだよ。これは最後の最後までとっておこうって」
キャノン「いやー、、、快感だわ。この威力」
ヴォルギス「おっと、起こしちゃったかな?お嬢さん。悪いけどお嬢さんにも修理を手伝ってもらうよ」
「ヴォルギス、おはよう。って、、えー!!!嫌だよ!!私は炎のマントを追いかける!!」
ヴォルギス「ダメだ、あっちは整備士が三人いるのにこっちは俺とお嬢さんしかいない。大丈夫、一時間もかからないさ」
道中にいるモンスターとの戦闘は避けられなかった。
モンスターの強さはトルコネのときとは比べ物にならないくらい強い。
グレイス城の周りにはそんな化け物達が地上にも空中にもウヨウヨと蠢いている。
月が照らす岩場の影に隠れながら二人は作戦会議を行なっていた。
ツグル「ここに来るのは二度目になるけど、何か策はあるのか?」
カナメル「ちなみに前回はどうやって切り抜けたんだ?」
ツグル「リキッドが氷の道を作って素早く移動しながら氷の壁でモンスターの視界を遮りながら、襲い来る個体には氷の牙で応戦しながら」
カナメル「炎は実体のないものだからね、それは不可能。空から行こうと思っていたけど飛ぶ敵がこんなにいるなら地上からの方がまだ安全か」
ツグル「安全って言ってもなぁ」
カナメル「門の中に入ってしまえば奴等は追ってこないんでしょ?」
ツグル「ああ、リキッドの時はそうだった」
カナメル「だとすれば魔力の消耗は相当激しいが転送魔術で門の前まで飛ぶしかないかな」
ツグル「ちなみに二人分だとどのくらいの魔力を使うんだ?」
カナメル「この距離だと少なくとも三分の一は持っていかれるだろうね」
ツグル「この先、戦闘を避けられないことを考えると三分の一の代償は大きい」
カナメル「そうだな」
カナメルは思考を巡らせているようだ。
ツグルも突破口がないか考えてはみたが何も浮かばない。
それに戦略立ては自分よりもカナメルの方が得意だということは分かっている。
カナメル「ザッと三つくらいプランは思い付いたけど、どれもリスクが大きいね」
その時、遠くで大きな何かが動く音が聞こえた。
その音は徐々に近付いてくる。
ガタガタガタガタ!!!!!
ツグル「何の音だ?」
カナメル「さぁね、グレイスで機械音なんて不自然極まりないけどね」
ツグル「敵か?」
草原を踏み散らしてやってきたのは二両の巨大な戦車だった。
ツグル「戦車!?」
カナメル「見覚えのある奴だと良いんだけどね」
カナメルは炎を空へと打ち上げた。
それを確認したのか戦車はこちらへと向かってくる。
ツグル「敵じゃないんだろうな!?」
カナメル「敵じゃない確率の方が高い」
ツグル「確率論で行動を決めんなよ!!」
カナメル「魔力を浪費して強敵と戦うリスクよりも、ここで巨大戦車二両を味方につけるメリットの方が大きいと考えた。それに今のグレイスにわざわざやってきた点と巨大な機械兵器を扱っているという点は敵じゃないことを証明する根拠になり得る」
ツグル「どういうことだ?」
カナメル「敵は転移石という石で都市間を移動する。だからこそ門の前に強力なモンスターをこんなにもウジャウジャと徘徊させることが可能なのだろう。このモンスターの巣窟を抜けて拠点に帰るなんて輩はいないだろうからね。二点目の機械兵器を扱っているという点については敵に機械整備スキルを持った輩がいないってこと。それらはフォールドーンの技術だからね。ゼウスは持ってるだろうけど、究極の身体を手に入れたあいつはもう機械を軽視してるだろうから」
咄嗟にここまでの分析をして、即座に行動に移すカナメルの姿を見て、ツグルは思わずこう言った。
ツグル「カナメル、お前がヘイスレイブの王になれば良いじゃん。お前の国は誰も落とせそうにないよ」
カナメルはツグルの言葉を鼻で笑った。
カナメル「言っただろう?俺は王の器じゃない。本当は国に属することすら窮屈なんだから」
ツグル「そうか?良い王様になると思うけどなぁ」
カナメル「絶対にないね。ほら、戦車が来たよ。果たして敵か味方か」
巨大な戦車は二両並んで止まった。
ガチャ。
片方の戦車の扉が開いた。
姿を現したのは車椅子に座ったズミだった。
ツグル「ズミさん!!!!」
ズミ「よお、フォールドーン以来か。元気そうだな」
続いて慌ただしく出てきたのはタチキとキャノンだ。
キャノン「ツグル!!久しぶり」
タチキ「こらこら、会えて嬉しいのは分かるけど一応ここは敵地なんですから!!まぁそう言いながら出てきてしまう自分も」
ズミ「カナメルも元気そうだな」
話を遮られたタチキはズミに飛び蹴りをしようと距離をとる。
それを見てキャノンは慌てて間に入った。
カナメル「まぁ、相変わらず」
ツグル「どうしてここに?」
ズミ「トゥールが助けてくれって言うもんだから、とりあえず来たって感じだな」
カナメル「それにしては準備が良いな」
ズミ「まぁ、たまたまだよ」
タチキ「いやいや!!たまたまなんかじゃねぇよ!ズミ君言ってたよね?そのうちトゥールが頼ってくるだろうからその時にすぐに動けるように戦闘準備を整えるって。だから俺達はろくに眠らずに夜な夜な機械いじりをさせられて、、、、」
ズミはとぼけたように欠伸をしている。
ズミ「そうだったか?そんな昔のこと忘れちまったよ」
タチキ「昔って、ほんの数週間前の話だろ!!」
キャノン「まぁ良いじゃねぇか。こうして巨大戦車クレイジー7が出来上がったんだから」
ズミ「そうだな」
ツグル「ところでそっちの戦車は?」
ガチャ。
扉から出てきたのは将校の軍服を着た大男だ。
ヴォルギス「おっと、初めましてだよな?フォールドーン帝国戦車部隊隊長、、、いや、今となってはただの戦車オタクか。ズミ氏が祭りに参加するってんでな、俺も遊びに来たのさ」
カナメル「ふーん、随分な大物を仲間に引き抜いたもんだね」
ヴォルギス「その風貌。ヘイスレイブの炎のマントだな?こうして共闘出来ることを嬉しく思う」
カナメル「こちらこそ」
ズミ「んで、あのモンスターどものせいで城下町にすら入れないって感じかい?」
ツグル「そうなんだ。俺とカナメルもその戦車に乗せてくれよ」
ズミ「別に乗せてやっても良いが殲滅した方が良いんじゃないか?こう見えてこの戦車はフォールドーンの技術を詰め込んだ高機動巨大戦車だ。一番乗りだろうなとは思ってたから」
ツグル「他にも誰か来るのか!?」
ズミ「さぁな、それはトゥールの交渉次第じゃねぇか?でもまぁ、誰かしらは来るだろう。トゥールの人望は特殊能力みてぇなもんだ」
カナメル「簡単に殲滅と言うけど、可能なのか?」
ズミ「可能だよな?ヴォルギス」
ヴォルギス「早速あれを使う気だな?良いだろう」
ヴォルギスはワクワクしている様子で言葉を続ける。
ヴォルギス「中にいるお嬢さんを起こさないように最善を尽くすよ」
ズミ「起こせよ、そいつも戦闘員なんだろ?タイミングは~」
ヴォルギス「ズミ氏に合わせよう」
ズミ「了解。キャノン、あれを使う」
キャノン「よっしゃ!!腕がなるぜ!!」
タチキ「てことは俺の出番は無さそうだね~。まぁ、、、あー良かった良かった。ゆっくり休める」
タチキはそう言いながらも残念だと顔に書いてあるように見える。
ヴォルギスと三人は各々戦車の中へと入った。
ズミ「はいじゃー、撃ちまーす」
タチキ「おい、超必殺技を撃つのに緩いな!!」
車内の音が拡声器を通して外へと漏れている。
ズミ「3.2..発射」
キャノン「1言えよ!!!」
ヴォルギス「オラララララララララぁ!!!!」
二両の巨大戦車の砲台から超高圧のビームが放たれる。
自在に砲台の向きを変えるビームが縦横無尽に動き回り、モンスターを滅していく。
カナメル「、、、、笑えない威力だな」
ビームに触れたモンスターは一瞬で跡形もなく消し飛んでいた。
ツグル「すげぇ、、、すげぇよ!!!」
夜の草原にあっという間にモンスターはいなくなり、静けさが漂う。
巨大戦車はガタガタと音をたてながら煙を上げている。
カナメル「あれだけの放出をすれば、そりゃこうなるでしょうね」
カナメルはマントを翻して歩き出した。
ツグル「この先はどうするんだ?」
ズミ「んー、一旦修理をしてから追いかけるよ」
ツグル「そっか、分かった!!助かったよ」
ツグルはカナメルを追いかけた。
タチキ「だーかーら言ったんだよ。これは最後の最後までとっておこうって」
キャノン「いやー、、、快感だわ。この威力」
ヴォルギス「おっと、起こしちゃったかな?お嬢さん。悪いけどお嬢さんにも修理を手伝ってもらうよ」
「ヴォルギス、おはよう。って、、えー!!!嫌だよ!!私は炎のマントを追いかける!!」
ヴォルギス「ダメだ、あっちは整備士が三人いるのにこっちは俺とお嬢さんしかいない。大丈夫、一時間もかからないさ」
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