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決戦のグレイス城編

第203話 一天王

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カナメル「黄色のオーラだと、、、、」

完全体となったゼウスの身体からキラキラと黄色いオーラが放たれている。

ゼウス「お前達のおかげで多少は生きたいと思えた、俺の好奇心はまだ死んでいない」

凄まじい電撃が大庭園を焼け焦がす。

オダルジョーは魔法でゼウスの雷に対抗するもその魔力には敵わない。

ホーリーは素早い動きでゼウスへと接近し、大鎌を振り上げた。

ゼウスは一瞬にしてホーリーの後ろへと回り込み、ホーリーの頭を掴んだ。

カナメル「ホーリー!!」

その手から雷撃が放たれる。

しかしそこにホーリーはいない、オダルジョーの闇魔法によって瞬間転移していた。

ホーリー「ありがとう、オダルジョー」

オダルジョー「私達も全力を出さなきゃダメかもね」

ホーリー「怖いけど、あれを使うしかないということね」

ホーリーの目が赤く染まっていく。

オダルジョーは闇魔法を使って蜘蛛の糸を強化した。

オダルジョー「闇魔法、硬度限界突破」

蜘蛛の糸は再度ゼウスに絡まって動きを封じた。

ゼウスは雷を発してそれを焼き切ろう足掻くも闇魔法で強化されている糸は切れない。

ゼウス「相当無理をしているな、俺の魔力とパワーを抑えつけるためだけに全てを失うつもりか?」

オダルジョー「あいにく実験によって闇魔法を使っても肉体に負荷がかからないようになってるんでね、大したリスクはないんだよ」

ゼウス「記憶と精神を保てるか、見ものだな」

ゼウスは拘束を解くためにもがいている。

オダルジョーは激しい頭痛に耐えながら闇魔法を使い続ける。

ホーリーは赤く染まった眼を開き切ったまま、人間離れした動きでゼウスの身体を切り裂く。

その皮膚を傷つけるのは至難の業だが、ホーリーは難なく引き裂いていく。

ゼウスはホーリーを仕留めようと雷を放つが蜘蛛の糸によって照準がズレ、仕留めることは出来ない。
雷撃がホーリーの身体を掠め、傷つきながらもホーリーは猛攻を続けている。

ゼウス「ぐ、、、グォォオオオ!!!」

ゼウスも蜘蛛の糸を焼き切ろうと激しく暴れた。

カナメルはそれをただ眺めることしか出来なかった。

加勢するための魔力が残っていない。

何のための赤のオーラだ!!
今発動しなきゃこんなものは意味がない。

カナメルは拳を握りしめた。

このままこの戦況が続けば、ゼウスの首を落とすことが出来るかもしれない。

しかし戦況は長くは続かなかった。

ホーリーは突然カナメルへとターゲットを変えた。

カナメルは炎剣カーマインで大鎌の斬撃を防ぐ。

カナメル「何をしている!、、、」

ホーリーは笑っている、しかし目が必死に助けを求めているように見えた。

ホーリー「オダルジョーが限界を超えている!!助けてほしい!!どうか、、、」

ホーリーの凄まじい連撃を剣で受け流しながらカナメルは答えた。

カナメル「まずはお前を止めなきゃ何も出来ないぞ、、」

ホーリー「ごめんカナメル。身体が言うことを効かない、、、オダルジョー!!闇魔法束縛が切れている!!早く私に束縛をかけて!!!」

必死に叫ぶホーリーの声が聞こえていないのか、オダルジョーはその場に立ち尽くしている。

気がつくと蜘蛛の糸は解け、傷だらけのゼウスがその場に跪いていた。

ホーリー「オダルジョー、、、、ああ、、、助けて!!、、、私はもう、、、アアアアアァァァァ!!」

ホーリーは赤い目から涙を流している、しかし身体は止まることなく攻撃を続ける。

オダルジョー「ここは、、、私は、、、」

訳のわからないことを呟くオダルジョーにホーリーの矛先が向いた。

それは一瞬の出来事だった。

ホーリーの胸を鉄の槍が貫き、オダルジョーの胸を大鎌が抉っていた。

二人はそのまま抱き合うように地面に倒れ込んだ。

ホーリー「アアア、、ァァァ、ご、めん、よ、、、オ、ダル、ジョー」

オダルジョー「君は、、どうしてそんなに悲しそうな顔をしているの?あれ、悲しいって何だっけ。あれ、私死ぬのかな、、、お父さん、お母さん、、、」

二人の周りに血溜まりが出来ていた。

辺りは突然静寂に包まれ、ゼウスがゆっくりと立ち上がった。

ゼウス「強大な力の前では肉体をリスクに晒さない闇魔法も無力ということが証明されたな。人間の獣化、または狂人化もコントロールをするために必要なコストが高すぎる、よって失敗だ」

膨大なダメージを負ったためか、ゼウスの身体からオーラは消え、大鎌による裂傷の跡が痛々しく刻まれていた。

ゼウス「さて、続きをやろうか。いや、もう詰みだったか?炎のマント」

カナメルはただ一点を見つめていた。

ゼウス「戦意喪失か。一瞬で楽にしてやる」

カナメル「、、、今更」

カナメルの身体からメラメラと赤いオーラが発現している。

ゼウス「ほう、それが秘策とやらか?」

カナメル「運任せの戦略なんて当てにならない、こんなものは秘策なんかじゃない」

ゼウス「だが、それで存分に戦えるのだろう?ようやくお前の本気が見れるというわけだ」

カナメルはまだひとつも表情を変えず、曇った瞳でゼウスに問いかけた。

カナメル「別に俺は何も背負っちゃいない。でも流石に知人が死に過ぎだとは思わないか?バーミアルの皆もリナも、大将サチヨも旧友である有力領主もマキニウム王も、、、四天王も俺以外は全員死んだ」

ゼウス「何が言いたい?」

カナメル「別に、ただの愚痴だよ」

カナメルはオダルジョーとホーリーを見た。

何の高揚も殺意も湧かず、それでも赤いオーラはハッキリと視界をチラついている。

カナメル「悲しいって何だっけな」

カナメルはそっと呟いた。









  
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