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決戦のグレイス城編
第208話 力よりも価値がある
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ムーは空間転送の外側に佇み、綻びを探していた。
ムー「これだけ大掛かりな魔術だ、必ずどこかにボロが出る」
そしてそれを発見して魔力を流し込むと、転送が起動しない穴が空いた。
そこに入り込んだ。
ムーは向かうべき場所を外側から決めていたのだ。魔力の流れ、魔力そのものを視覚で捉えることが出来るムーはグレイス城のどこに誰がいるのか、転送の境界線を透過して見ていた。
人ならざるものの魔力反応を見て、そこに行くべきだと判断したのだ。
あらゆる場所で戦いが続いているのを感じながらもムーは真っ直ぐに大書庫を目指す。
転送魔法の罠を解除して扉を開いた。
そこには槍を手にし、涙を流しながら戦う女性と巨大な竜の姿があった。
ドラ「グォォオオオァァアア!!!!」
竜の強力な攻撃を避けるので精一杯なのか、友達を傷つけることを恐れているのか、マツは防戦一方だった。
そこへユラユラと現れたムーはマツとドラの間へと割って入る。
マツ「ムー様!?」
ムー「この竜はドラゴンガールで間違いないな?」
マツは涙を拭いながら答えた。
マツ「そうです、ドラは私を助けるために何度も何度も竜になり、そのうちに人間の心を失ってしまいました。私のせいなんです」
ムー「そうか」
ムーはドラの正気を失っている大きな瞳を見て、静かに目を閉じた。
ムー「いや、てめぇのせいじゃねぇ。この責任は僕にある」
あの日の正気を失っているサイラスの姿が頭に浮かぶ。
ムー「力を与え、正気を失う。そういう結果になるのなら僕は罪でしかない、師として失格だ」
ムーは月魔法を使って、ドラの体内にある竜の力そのものにダメージを与えた。
ドラ「グ、、グォォオオオ、、あぁあ、、」
ムー「竜の力を完全に消し去ることは不可能だが、僕が鍛える前の状態に戻すことは可能だ。むしろこれは僕にしか出来ない。てめぇは優し過ぎる、竜の力を使うにはリスクが大き過ぎたか。魔力を視ることが出来ても内面の性質を見逃したってことだ、僕もまだまだだな」
ドラの身体が徐々に竜の姿から人間の姿へと変わっていく。
マツ「ドラ!!良かった、、、、本当に良かった」
ムー「この竜の娘は人間として生きた方が良い、こいつの優しさは力よりも価値がある。てめぇがそれを証明し続けてやれ、それはてめぇにしか出来ないことだ」
マツ「はい!、、ありがとうございます!!」
ムー「僕も、僕を証明してくれる奴が無茶をしないように監視しなきゃいけないから、もう行くとするよ」
マツはドラを抱きしめ、泣き崩れた。
ムー「これだけ大掛かりな魔術だ、必ずどこかにボロが出る」
そしてそれを発見して魔力を流し込むと、転送が起動しない穴が空いた。
そこに入り込んだ。
ムーは向かうべき場所を外側から決めていたのだ。魔力の流れ、魔力そのものを視覚で捉えることが出来るムーはグレイス城のどこに誰がいるのか、転送の境界線を透過して見ていた。
人ならざるものの魔力反応を見て、そこに行くべきだと判断したのだ。
あらゆる場所で戦いが続いているのを感じながらもムーは真っ直ぐに大書庫を目指す。
転送魔法の罠を解除して扉を開いた。
そこには槍を手にし、涙を流しながら戦う女性と巨大な竜の姿があった。
ドラ「グォォオオオァァアア!!!!」
竜の強力な攻撃を避けるので精一杯なのか、友達を傷つけることを恐れているのか、マツは防戦一方だった。
そこへユラユラと現れたムーはマツとドラの間へと割って入る。
マツ「ムー様!?」
ムー「この竜はドラゴンガールで間違いないな?」
マツは涙を拭いながら答えた。
マツ「そうです、ドラは私を助けるために何度も何度も竜になり、そのうちに人間の心を失ってしまいました。私のせいなんです」
ムー「そうか」
ムーはドラの正気を失っている大きな瞳を見て、静かに目を閉じた。
ムー「いや、てめぇのせいじゃねぇ。この責任は僕にある」
あの日の正気を失っているサイラスの姿が頭に浮かぶ。
ムー「力を与え、正気を失う。そういう結果になるのなら僕は罪でしかない、師として失格だ」
ムーは月魔法を使って、ドラの体内にある竜の力そのものにダメージを与えた。
ドラ「グ、、グォォオオオ、、あぁあ、、」
ムー「竜の力を完全に消し去ることは不可能だが、僕が鍛える前の状態に戻すことは可能だ。むしろこれは僕にしか出来ない。てめぇは優し過ぎる、竜の力を使うにはリスクが大き過ぎたか。魔力を視ることが出来ても内面の性質を見逃したってことだ、僕もまだまだだな」
ドラの身体が徐々に竜の姿から人間の姿へと変わっていく。
マツ「ドラ!!良かった、、、、本当に良かった」
ムー「この竜の娘は人間として生きた方が良い、こいつの優しさは力よりも価値がある。てめぇがそれを証明し続けてやれ、それはてめぇにしか出来ないことだ」
マツ「はい!、、ありがとうございます!!」
ムー「僕も、僕を証明してくれる奴が無茶をしないように監視しなきゃいけないから、もう行くとするよ」
マツはドラを抱きしめ、泣き崩れた。
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