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第1章
1-122 世界樹の森の戦い その4 ファティマ 対 ミスリルの巨人
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「きゃっ!!」
気鋭の若手魔道士、ファティマめがけてものすごい勢いで山のように大きな岩石が飛んでくる。宇宙から音速で降り注ぐ隕石のようであった。間一髪で【炎の縄】で飛石の威力を無力化させ目の前に落とす彼女。それでもその10mはあろうかという岩盤の落下による衝撃は彼女を横殴りに吹き飛ばした。
彼女は、今、未だかつて遭遇したことの無い巨大な敵、10mはあろうかというミスリルの大巨人と対峙していた。これまで初級魔道士のホープとして『ウェールズ』でも抜きんでた存在だった彼女が、初めて迎える大きな試練である。
(その身体のどこかに埋め込まれている青水晶が弱点だって言うけど、あれ鎧かしら、装甲が厚すぎてどこにあるのか全然分からないわ。。。)
『ウェールズ』軍対『レボルテ』軍の乱戦の中で彼女が自ら進んで選んだ相手は、カーンの背後に左右二体いた大巨人の片割れ、多くのミスリルの化け物の中でも一際目立つ、分厚い鎧の装甲を持っている巨体である。『緑の騎士団』ではとても歯が立たないし、ジルブレヒトとドルガンはカーンと激戦を繰り広げている。
伝令兼軍師として同盟軍に分散してしまった『霧の魔法師団』に残されたメンバーとしては、ミスリル兵器の象徴でもあるその一体を引き受けるのは当然であるし、期待されるべき役割でもあった。
いつもなら、先輩格の水魔道士スノーと、同僚の土魔道士ルースと3人1組で、どんな困難も切り抜けてきた彼女ではあったが、おおよそ初めて経験する大戦に、一番星の彼女も足がすくむ思いである。
(くっ、これが戦争というものなのね、これまで小悪党とか、先輩魔道士が召喚した訓練用の精霊くらいを相手にするのが関の山だったけど、ちょっとでも気を抜くとやられてしまうわ。。。)
動作は通常の無人魔装兵に比べれば幾分遅いものの、それでも一度攻撃を受けてしまえば、回復魔法の使えない彼女には致命傷となり得る膂力であった。その愚鈍な挙動は神話に出てくるゴーレムを彼女に想起させた。
ミスリル巨人の投石による攻撃を躱しながら、彼女は加えうる攻撃手段を、自身の魔法レパートリーと相手への効果を予想しながら隅から隅まで考える。異世界に存在する精密な情報端末のように。
(これならどうかしら?)
《ジァオホァンサラマンダーダーチュィン》(火蜥蜴大軍召喚)
ミスリルの巨人から弧を描くように逃げながら魔方陣を組み、サラマンダーの大軍を召喚する。初級の彼女の魔力では、仰々しい魔方陣を描かなくては召喚魔法は使えない。
その地表から10cmの高さに赤く描かれた教科書通りで正確無比な半径10mのルーン文字の円陣は、一度にボウッと燃え立ちあたりを深紅に染め、その後消え去ったかと思うと、彼女のあらん限りの魔力を注ぎ込まれたサラマンダーの集団が、100対はあろうかその中に姿を現す。大小様々で50cm~1m程であろうか、小さな翼を持った蜥蜴の様な外観をしている。ただ全てが炎で出来ていて、すばしっこく地面を這い回っていた。
《ウェイラオジュィーレンフォシャァゴンジー》(巨人を取り囲み炎の舌で攻撃しなさい)
ファティマがそう唱えると、彼女の一時の僕達は従順に命令に従い、彼らの数十倍は大きな金属製の巨人に向かって攻撃すべく進軍を始めた。元々精霊界の者達だ、石や土や金属に当たって粉みじんになった所で、一時物質界から消えるだけで痛くもかゆくもないのである。元々この世界における感情といったものに縁遠い炎の蜥蜴たちは、恐怖心も何も感じず、ルーンにおける契約を果たした年若い女魔道士の命により、ただひたすらミスリルの動く彫像に向けてチョロチョロと進むのであった。
そしてやがて無数のサラマンダーたちはミスリルの巨人に吸血コウモリのようにへばりついた。
《シーイーフアフオ!》(蜥蜴花火!)
ファティマのかけ声と共にサラマンダーは一斉に爆発する。あるものは自身を炎と化してミスリル銀の装甲を溶かし、あるものは爆発して巨人の腕に損傷を与えたり、そのファティマの小さな蜥蜴の勇者達はこの世界に巨大な熱量を残し炎の精霊界に帰って行くのであった。
なお、これが現段階でのファティマが持つ最大の召喚魔法である。
それでも、頑丈な装甲を持つミスリルの巨人は、一旦は爆発の衝撃でその場へ倒れたものの、その装甲を溶かし飛び散らせた程度のダメージに留まり、なおもゆらゆらと立ち上がりファティマを探している。大蜘蛛と同じように、ダメージは徐々に回復しているようであった。そして失われた装甲の下に何カ所かの青水晶が埋め込まれているのが見て取れる。一番大きいものは人間で言うところの胸腺の位置に握り拳大の大きさで配置されていた。
「思った通り、しめたわ!弱点の場所が分かったわ!!」
「きゃっ!!」
ファティマが喜んだのも束の間、鎧の面当ての装甲が外れ姿を現したミスリル巨人の開けっ放しの大きな口から、灰色のレーザー砲が発射される、その衝撃は辛うじて躱したファティマを吹き飛ばし、そして、それに晒された物質はたちどころに崩壊してゆくのであった。
(て、典型的な時空魔法?物体の寿命を尽きさせたのかしら、あ、あんなのどうやって対処すればいいのよ!?)
装甲が外れたミスリル巨人の繰り出す攻撃に、必死に次の手を頭に巡らせるファティマ、しかし最大の召喚魔法を使ってしまった彼女に残された手は、最早、細かな攻撃魔法くらいしかないのであった。
気鋭の若手魔道士、ファティマめがけてものすごい勢いで山のように大きな岩石が飛んでくる。宇宙から音速で降り注ぐ隕石のようであった。間一髪で【炎の縄】で飛石の威力を無力化させ目の前に落とす彼女。それでもその10mはあろうかという岩盤の落下による衝撃は彼女を横殴りに吹き飛ばした。
彼女は、今、未だかつて遭遇したことの無い巨大な敵、10mはあろうかというミスリルの大巨人と対峙していた。これまで初級魔道士のホープとして『ウェールズ』でも抜きんでた存在だった彼女が、初めて迎える大きな試練である。
(その身体のどこかに埋め込まれている青水晶が弱点だって言うけど、あれ鎧かしら、装甲が厚すぎてどこにあるのか全然分からないわ。。。)
『ウェールズ』軍対『レボルテ』軍の乱戦の中で彼女が自ら進んで選んだ相手は、カーンの背後に左右二体いた大巨人の片割れ、多くのミスリルの化け物の中でも一際目立つ、分厚い鎧の装甲を持っている巨体である。『緑の騎士団』ではとても歯が立たないし、ジルブレヒトとドルガンはカーンと激戦を繰り広げている。
伝令兼軍師として同盟軍に分散してしまった『霧の魔法師団』に残されたメンバーとしては、ミスリル兵器の象徴でもあるその一体を引き受けるのは当然であるし、期待されるべき役割でもあった。
いつもなら、先輩格の水魔道士スノーと、同僚の土魔道士ルースと3人1組で、どんな困難も切り抜けてきた彼女ではあったが、おおよそ初めて経験する大戦に、一番星の彼女も足がすくむ思いである。
(くっ、これが戦争というものなのね、これまで小悪党とか、先輩魔道士が召喚した訓練用の精霊くらいを相手にするのが関の山だったけど、ちょっとでも気を抜くとやられてしまうわ。。。)
動作は通常の無人魔装兵に比べれば幾分遅いものの、それでも一度攻撃を受けてしまえば、回復魔法の使えない彼女には致命傷となり得る膂力であった。その愚鈍な挙動は神話に出てくるゴーレムを彼女に想起させた。
ミスリル巨人の投石による攻撃を躱しながら、彼女は加えうる攻撃手段を、自身の魔法レパートリーと相手への効果を予想しながら隅から隅まで考える。異世界に存在する精密な情報端末のように。
(これならどうかしら?)
《ジァオホァンサラマンダーダーチュィン》(火蜥蜴大軍召喚)
ミスリルの巨人から弧を描くように逃げながら魔方陣を組み、サラマンダーの大軍を召喚する。初級の彼女の魔力では、仰々しい魔方陣を描かなくては召喚魔法は使えない。
その地表から10cmの高さに赤く描かれた教科書通りで正確無比な半径10mのルーン文字の円陣は、一度にボウッと燃え立ちあたりを深紅に染め、その後消え去ったかと思うと、彼女のあらん限りの魔力を注ぎ込まれたサラマンダーの集団が、100対はあろうかその中に姿を現す。大小様々で50cm~1m程であろうか、小さな翼を持った蜥蜴の様な外観をしている。ただ全てが炎で出来ていて、すばしっこく地面を這い回っていた。
《ウェイラオジュィーレンフォシャァゴンジー》(巨人を取り囲み炎の舌で攻撃しなさい)
ファティマがそう唱えると、彼女の一時の僕達は従順に命令に従い、彼らの数十倍は大きな金属製の巨人に向かって攻撃すべく進軍を始めた。元々精霊界の者達だ、石や土や金属に当たって粉みじんになった所で、一時物質界から消えるだけで痛くもかゆくもないのである。元々この世界における感情といったものに縁遠い炎の蜥蜴たちは、恐怖心も何も感じず、ルーンにおける契約を果たした年若い女魔道士の命により、ただひたすらミスリルの動く彫像に向けてチョロチョロと進むのであった。
そしてやがて無数のサラマンダーたちはミスリルの巨人に吸血コウモリのようにへばりついた。
《シーイーフアフオ!》(蜥蜴花火!)
ファティマのかけ声と共にサラマンダーは一斉に爆発する。あるものは自身を炎と化してミスリル銀の装甲を溶かし、あるものは爆発して巨人の腕に損傷を与えたり、そのファティマの小さな蜥蜴の勇者達はこの世界に巨大な熱量を残し炎の精霊界に帰って行くのであった。
なお、これが現段階でのファティマが持つ最大の召喚魔法である。
それでも、頑丈な装甲を持つミスリルの巨人は、一旦は爆発の衝撃でその場へ倒れたものの、その装甲を溶かし飛び散らせた程度のダメージに留まり、なおもゆらゆらと立ち上がりファティマを探している。大蜘蛛と同じように、ダメージは徐々に回復しているようであった。そして失われた装甲の下に何カ所かの青水晶が埋め込まれているのが見て取れる。一番大きいものは人間で言うところの胸腺の位置に握り拳大の大きさで配置されていた。
「思った通り、しめたわ!弱点の場所が分かったわ!!」
「きゃっ!!」
ファティマが喜んだのも束の間、鎧の面当ての装甲が外れ姿を現したミスリル巨人の開けっ放しの大きな口から、灰色のレーザー砲が発射される、その衝撃は辛うじて躱したファティマを吹き飛ばし、そして、それに晒された物質はたちどころに崩壊してゆくのであった。
(て、典型的な時空魔法?物体の寿命を尽きさせたのかしら、あ、あんなのどうやって対処すればいいのよ!?)
装甲が外れたミスリル巨人の繰り出す攻撃に、必死に次の手を頭に巡らせるファティマ、しかし最大の召喚魔法を使ってしまった彼女に残された手は、最早、細かな攻撃魔法くらいしかないのであった。
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