最後に望むのは君の心だけ

こみあ

文字の大きさ
23 / 34
第四章 昇進 - Promotion -

22 迫る騎士☆

しおりを挟む
 二人でベッドに入るとカラムは必ず私をただ静かに抱きしめて、しばらくそのままでいてくれる。それまでの「騎士」の自分から、カラムと向かう女性としての自分に戻る時間を与えてくれる。

「ラス、お前今日どっか打ったりしなかったか?」
「あー、今日組稽古やったときに避け損なって少し腿の横を打ったかもな。受け身は取ってたから大したことない」

 一緒に横になってるにも関わらず、私が少し変な体勢で抱きしめられてるのに気づいたのか、カラムが心配そうに聞いてきた。
 普段から組稽古での打ち身や擦り傷は日常茶飯事だ。一々騒ぐほどのことでもない。なのにカラムがジッと私の顔を覗き込み、「ちょっと見てもいいか」と尋ねてくる。

「またか。この前も言ったがそんな一々怪我を診なくてもいいだろ」

 どうも付き合いだしてから、カラムはやたら私の身体を気遣い始めた。
 カラムは決して私が嫌がるような触り方はしない。特に怪我を診る時はただ本当に診るだけだ。最初は変に緊張してたが、もういい加減慣れて最近はカラムがしたいようにさせていた。
 おかげで私が本気で嫌ならやめろと言うし、そうでなければ止めないことを学んだカラムは、私の文句を聞き流して勝手に私のズボンに手をかける。そのまま膝近くまで引きずり下ろして外腿の辺りをチェックしてる。

「ああ、赤くなってるな。これだと明日少し腫れるぞ」
「そうか? それほど痛まなかったから気にしてなかった」
「ちょっと待ってろ」

 短く言いおいてカラムがベッドから起き上がり、すぐ横の戸棚に置かれた箱から小さな瓶を手に取って戻ってきた。
 これも付き合い出して始まったのだが、カラムは私の身体を気遣って、マメに傷薬やら軟膏やらをここに持ち込んでる。私の部屋にちょこちょこカラムの私物が増えてきてるのがなんかこそばゆい。

「ちょっとスースーするぞ」

 私を見上げてそう言うと、カラムが下ろしたズボンとシャツの間の素肌に薬を塗りこんでいく。片腕で身体を抱えられ、そうやって薬を塗りこまれてると、まるで自分が赤子にでもなったようななんとも情けない気分になってくる。だが同時に、カラムの大きな手は大きく温かで、ただそうやって薬を塗りこめるだけでもなにか安心を与えてくれた。

「……お前、本当に素直になったよな。俺がこんなに触ってるのにもう全然嫌がらない」
「ああ、それはカラム、お前のお陰だな。そうやっていつもいたわってくれるから、安心して任せられる」

 私は感謝の意味でそう言ったのだが、なぜかカラムが複雑そうな顔をする。

「俺はお前の兄や父親になりたいんじゃないぞ。そんな安心してるとそのうち思いっきり裏切られるかもな」
「裏切るのか?」
「んー、正直結構辛い。こんな綺麗な脚をなんの躊躇もなく俺に触られて抱きついてくるお前を前にして、いつまで行儀よく待てるか自信ない」
「……分かってる。なるべく早くお前ともっと先に進めるよう、努力はしてるんだが」
「ああ、頑張ってくれ。でないとそのうち切れてズルしちまいそうだ」

 こんな会話は別に初めてじゃない。カラムは口で言うほど私に無理強いをすることもなく、毎回私が受け入れられる範囲で一緒にいてくれている。
 だからいつもの他愛ない冗談のつもりで私もつい、少し言い過ぎてしまった。

「ズル出来るもんなら試してみたらどうだ? どうせそんな簡単に抱けるズルなんて都合よくある訳ないだ──」
「……お前ちょっと油断しすぎ」

 私の言葉が終わらないうちに、カラムの片膝が私の素足の腿の間に割りいってた。そのままもう一方の足が私の膝下を抑えつける。言葉とともにカラムが上半身で私の上半身を抱え込み、突然鼻がくっつく距離で私を睨んだ。

「確かに最後までは出来ないけどな。このままお前が準備出来てなくても、こうやって身体を暴くくらいはいつだって出来るんだよ」

 そう言って、カラムの手が私の足の間を彷徨う。触れるか触れないかの距離で私の下着と太腿の内側をカラムの指が優しく辿っていく。ほんの少しの恐怖と警戒、そして恥辱が私の下半身を熱くする。

「このまま……触って身体に俺を刻んでも、お前は許してくれるか?」

 そう尋ねるカラムの目は真っすぐ私を射抜き、どこにも逃がしてくれない。心臓がバクバクと音を立てるが、同時に下半身がこわばってカラムの膝を腿で万力のように締め付けずにはいられない。

「触るって……」
「正直、ズルして今このままお前の身体に快感を刻んて無理やり開かせることも出来ないわけじゃない。たとえラスが怖がっても、こうやって膝を入れちまえば俺はなし崩しにお前を抱ける。でもな、俺はラスがちゃんと準備出来て、心から俺を受け入れてくれるのを待ちたいんだ」

 カラムの指先が私の下着の中心にピタリと当たり、主張とは裏腹にそこを静かに撫で始める。途端、ガクガクと自分の膝が鳴るような、それまで感じたことのない感覚が下半身を襲った。間違いなく気持ちいいのだが、同時に怖い。自分が突然ひどく無力に落とされたようで、心の底に小さな怒りさえ湧いてくる。あまりに複雑な気持ちをどう説明していいのか分からず、私は思いっきりカラムの腕を掴みあげた。

「お前の身体、準備出来てきてる。分かるか、ここが湿ってるの。ちゃんと少しずつ俺を受け入れてくれてるんだ」

 そんな私の反応さえお構いなしに、カラムの指は執拗にそこを撫で続ける。グッと歯を食いしばり、それに耐えてると、カラムが苦しそうに大きなため息をついて足を緩め、私を思いっきり強く抱きしめた。

「ゴメン、少し調子に乗り過ぎた。無防備が過ぎると俺だって自制が効かなくなる」
「そんなつもりは私にはない」
「知ってる。けどお前ほんと……何でもない」

 言いよどんだ末に言葉が見つけられなかったのか、カラムはそう言って私を離してくれた。

「今日はここまでな。これ以上一緒にいたらまた調子に乗って今度こそやめらんなくなりそうだ」

 そう言って困ったように微笑んだカラムは、私の額にキスを落とし、脱ぎかけの服を元にもどして扉に向かった。

「また明日な」

 後ろ手に手を振って部屋を後にするカラムをそのままベッドから見送った私は内心戸惑いが隠せなかった。
 カラムに身体を離された途端、なぜか全身が寒く感じて物足りなさに下半身が疼いた。
 私は今、どうされたかったんだ?
 カラムにもっと抱きしめられたかったのか?
 それとも……

 そう言えば今日はキスもしなかったな。

 カラムの去った自分の部屋はいつも以上に寂しく感じられて、物がなしさと物足りなさを胸に抱きながら私は明日に備えてそのまま眠りについた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

贖罪の花嫁はいつわりの婚姻に溺れる

マチバリ
恋愛
 貴族令嬢エステルは姉の婚約者を誘惑したという冤罪で修道院に行くことになっていたが、突然ある男の花嫁になり子供を産めと命令されてしまう。夫となる男は稀有な魔力と尊い血統を持ちながらも辺境の屋敷で孤独に暮らす魔法使いアンデリック。  数奇な運命で結婚する事になった二人が呪いをとくように幸せになる物語。 書籍化作業にあたり本編を非公開にしました。

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

エリート課長の脳内は想像の斜め上をいっていた

ピロ子
恋愛
飲み会に参加した後、酔い潰れていた私を押し倒していたのは社内の女子社員が憧れるエリート課長でした。 普段は冷静沈着な課長の脳内は、私には斜め上過ぎて理解不能です。 ※課長の脳内は変態です。 なとみさん主催、「#足フェチ祭り」参加作品です。完結しました。

メイウッド家の双子の姉妹

柴咲もも
恋愛
シャノンは双子の姉ヴァイオレットと共にこの春社交界にデビューした。美しい姉と違って地味で目立たないシャノンは結婚するつもりなどなかった。それなのに、ある夜、訪れた夜会で見知らぬ男にキスされてしまって…? ※19世紀英国風の世界が舞台のヒストリカル風ロマンス小説(のつもり)です。

12年目の恋物語

真矢すみれ
恋愛
生まれつき心臓の悪い少女陽菜(はるな)と、12年間同じクラス、隣の家に住む幼なじみの男の子叶太(かなた)は学校公認カップルと呼ばれるほどに仲が良く、同じ時間を過ごしていた。 だけど、陽菜はある日、叶太が自分の身体に責任を感じて、ずっと一緒にいてくれるのだと知り、叶太から離れることを決意をする。 すれ違う想い。陽菜を好きな先輩の出現。二人を見守り、何とか想いが通じるようにと奔走する友人たち。 2人が結ばれるまでの物語。 第一部「12年目の恋物語」完結 第二部「13年目のやさしい願い」完結 第三部「14年目の永遠の誓い」←順次公開中 ※ベリーズカフェと小説家になろうにも公開しています。

お見合いから本気の恋をしてもいいですか

濘-NEI-
恋愛
元カレと破局して半年が経った頃、母から勧められたお見合いを受けることにした涼葉を待っていたのは、あの日出逢った彼でした。 高橋涼葉、28歳。 元カレとは彼の転勤を機に破局。 恋が苦手な涼葉は人恋しさから出逢いを求めてバーに来たものの、人生で初めてのナンパはやっぱり怖くて逃げ出したくなる。そんな危機から救ってくれたのはうっとりするようなイケメンだった。 優しい彼と意気投合して飲み直すことになったけれど、名前も知らない彼に惹かれてしまう気がするのにブレーキはかけられない。

可愛すぎてつらい

羽鳥むぅ
恋愛
無表情で無口な「氷伯爵」と呼ばれているフレッドに嫁いできたチェルシーは彼との関係を諦めている。 初めは仲良くできるよう努めていたが、素っ気ない態度に諦めたのだ。それからは特に不満も楽しみもない淡々とした日々を過ごす。 初恋も知らないチェルシーはいつか誰かと恋愛したい。それは相手はフレッドでなくても構わない。どうせ彼もチェルシーのことなんてなんとも思っていないのだから。 しかしある日、拾ったメモを見て彼の新しい一面を知りたくなってしまう。 *** なんちゃって西洋風です。実際の西洋の時代背景や生活様式とは異なることがあります。ご容赦ください。 ムーンさんでも同じものを投稿しています。

冷酷な王の過剰な純愛

魚谷
恋愛
ハイメイン王国の若き王、ジクムントを想いつつも、 離れた場所で生活をしている貴族の令嬢・マリア。 マリアはかつてジクムントの王子時代に仕えていたのだった。 そこへ王都から使者がやってくる。 使者はマリアに、再びジクムントの傍に仕えて欲しいと告げる。 王であるジクムントの心を癒やすことができるのはマリアしかいないのだと。 マリアは周囲からの薦めもあって、王都へ旅立つ。 ・エブリスタでも掲載中です ・18禁シーンについては「※」をつけます ・作家になろう、エブリスタで連載しております

処理中です...