25 / 61
24話 ギルドマスター
しおりを挟む
「ふぅー、とてもスッキリしたね。サバチャイもうお金に困らないから、昨日はハッスルしちゃったよ」
どうやら、昨晩は翌日が店休日だったこともあり、豪華なディナーをたらふく頂いていたらしい。おかげで、朝からボリュームのある物が出たようだが……。
「すまないな、プリシラ。召喚獣の確認は俺が引き継ごう」
訓練場に残された汚物については、なんとか気を持ち直した受付のお姉さんプリシラさんが処理してくれることになった。
「だ、大丈夫で……お、おぅぇぇ。へ、平気です……おぅぇぇ」
本当に申し訳ない。今度、差し入れでも持ってこようと思います。
「それで信じられないが、そこにいる男性が召喚獣だというんだな……」
危うく不審者として、連行されそうになったサバチャイさんだが、僕たちの説明で何とかギルドマスターを説得することができた。シャーロット様がいたことが信用を高めたのだろう。
「サバチャイ様は超上級召喚獣とも言われております」
「どっからどうみても、普通のおっさんだけど、確かにその小僧とパスが繋がっているな。それで、種族はなんだ?」
「よくわからないんですけど、バングラディッシュ出身のサバチャイさんです」
「そこの筋肉のおっさんは名前何て言うね? 人の名前は、聞く前に名乗るのがバングラディッシュの常識よ」
「おー、すまねぇな。俺はここの冒険者ギルドのマスターでランドルフだ。よろしく頼む」
「その体で名前がランドセルとか、ギャップあってうらやましいね」
「ランドセルじゃねぇ、ランドルフだ」
「それで、種族を聞かれても人間としか言いようがないんですけど、どうしましょう?」
「登録上で必要なんだよな。学園の先生は何か言っていたか?」
「そういえば、サバチャイさんは英霊だとかいってました。異世界から召喚されてくるようなんです」
「英霊か……。とりあえず、それで仮登録とさせてくれ。本部に問い合わせして回答を待とう。それまでは、英霊として登録しておく」
「かしこまりました。変更が必要になりましたら教えてください」
「あぁ、ギルドに来たタイミングで情報が更新してれば、その場で伝えるようにしよう。それで、次はどちらが召喚するんだ?」
「では、わたくしが呼びます。ウンディーネ召喚」
「上級召喚獣だろうとは予想していたが、精霊様かよ……。今年はすごい年だなおい」
「登録に問題はございますか?」
「精霊様は、過去に登録した記録が残っている。問題なく登録できる」
「それはよかったですわ。次はフィオレロね」
「はい。一角ウサギ召喚」
「それは、一角ウサギか? 普通の一角ウサギでいいんだよな?」
「はい、普通の一角ウサギで間違いありません」
「そ、そうか、そうだよな。上級が二回も続くと、さすがに警戒しちまうよ。とりあえず、確認させてもらった。ギルドカードは発行に半日かかるがどうする?」
「もう一人、友人を待ってからクエストを経験してみたいと思ってましたの」
「討伐か?」
「ええ、そのつもりです。何か新人向けのクエストはございますか?」
「新人っていっても上級召喚獣か……。まぁ、それでも無難にゴブリン狩りがいいだろう。強さと本番の戦闘は別物だ。ゆっくり馴れていった方がいい」
「そうですね。無理をするつもりはありません。経験を積み重ねてから進んでいくつもりですわ」
「ところでなんだが、仲間の到着を待っているとか言ったな。ただ待っているのも暇だろう。俺の雷獣と対戦してみねぇか?」
雷獣、雷属性の中級召喚獣だ。ギルドマスターの雷獣は有名なので、その強さも知れ渡っている。定期的に行われるモンスター狩りでも、先頭に立って活躍していると聞く。
おそらく、上級に近い中級召喚獣なのだろう。レベルは四から五に近いところまできているはず。
「ここで召喚獣が負傷してしまったら、クエストを受けられなくなってしまいますわ」
「今のお前さん達にとっては、つまらんゴブリン退治よりも、俺との実践の方がよっぽど力になると思うぜ」
随分と強気な人だ。上級と聞いて戦わずにはいられなかったのだろう。この戦闘狂ギルドマスターめ。
「確かに一理ありますわね。でも私たちは初心者なので、三人チームで戦わせてもらってもよろしいですか?」
「わかった。それから召喚主への攻撃はしないでおこう。雷獣、召喚!」
「サバチャイさんはポリスマンを召喚してください。防御は、また私がしますわ」
「あの、キツネみたいな奴が相手か? 弱そうね。とても弱そうね。あんなの、サバチャイキックで圧勝よ」
きっと、雷獣の背の高さを見て神の左ではなくキックを選択したのだろう。タマの三倍ぐらいのサイズといえば、だいたいその大きさがわかるだろうか。
そういえば、今回のサバチャイさんは包丁を持っていない。トイレにいたのだから当たり前だけど武器らしい武器は何もない。
「サバチャイさん、雷獣に直接触れるのはよくありません。雷を身に纏っているので痺れて動けなくなっちゃいますよ」
「まったく卑怯なキツネね! でもサバチャイ諦めないよ。とりあえず、ポリスマンは召喚するからルークは拳銃の使い方習うといいよ」
「了解です。サバチャイさんも無理だけはしないでください」
「サバチャイ、レベルアップしたから無敵よ。チチンポイポイ、ポリスマン」
うにゃあー!?
小さい魔方陣が光輝くと、驚いて毛並みを逆立てた三毛猫のタマが、僕の目の前で召喚されていた。
どうやら、昨晩は翌日が店休日だったこともあり、豪華なディナーをたらふく頂いていたらしい。おかげで、朝からボリュームのある物が出たようだが……。
「すまないな、プリシラ。召喚獣の確認は俺が引き継ごう」
訓練場に残された汚物については、なんとか気を持ち直した受付のお姉さんプリシラさんが処理してくれることになった。
「だ、大丈夫で……お、おぅぇぇ。へ、平気です……おぅぇぇ」
本当に申し訳ない。今度、差し入れでも持ってこようと思います。
「それで信じられないが、そこにいる男性が召喚獣だというんだな……」
危うく不審者として、連行されそうになったサバチャイさんだが、僕たちの説明で何とかギルドマスターを説得することができた。シャーロット様がいたことが信用を高めたのだろう。
「サバチャイ様は超上級召喚獣とも言われております」
「どっからどうみても、普通のおっさんだけど、確かにその小僧とパスが繋がっているな。それで、種族はなんだ?」
「よくわからないんですけど、バングラディッシュ出身のサバチャイさんです」
「そこの筋肉のおっさんは名前何て言うね? 人の名前は、聞く前に名乗るのがバングラディッシュの常識よ」
「おー、すまねぇな。俺はここの冒険者ギルドのマスターでランドルフだ。よろしく頼む」
「その体で名前がランドセルとか、ギャップあってうらやましいね」
「ランドセルじゃねぇ、ランドルフだ」
「それで、種族を聞かれても人間としか言いようがないんですけど、どうしましょう?」
「登録上で必要なんだよな。学園の先生は何か言っていたか?」
「そういえば、サバチャイさんは英霊だとかいってました。異世界から召喚されてくるようなんです」
「英霊か……。とりあえず、それで仮登録とさせてくれ。本部に問い合わせして回答を待とう。それまでは、英霊として登録しておく」
「かしこまりました。変更が必要になりましたら教えてください」
「あぁ、ギルドに来たタイミングで情報が更新してれば、その場で伝えるようにしよう。それで、次はどちらが召喚するんだ?」
「では、わたくしが呼びます。ウンディーネ召喚」
「上級召喚獣だろうとは予想していたが、精霊様かよ……。今年はすごい年だなおい」
「登録に問題はございますか?」
「精霊様は、過去に登録した記録が残っている。問題なく登録できる」
「それはよかったですわ。次はフィオレロね」
「はい。一角ウサギ召喚」
「それは、一角ウサギか? 普通の一角ウサギでいいんだよな?」
「はい、普通の一角ウサギで間違いありません」
「そ、そうか、そうだよな。上級が二回も続くと、さすがに警戒しちまうよ。とりあえず、確認させてもらった。ギルドカードは発行に半日かかるがどうする?」
「もう一人、友人を待ってからクエストを経験してみたいと思ってましたの」
「討伐か?」
「ええ、そのつもりです。何か新人向けのクエストはございますか?」
「新人っていっても上級召喚獣か……。まぁ、それでも無難にゴブリン狩りがいいだろう。強さと本番の戦闘は別物だ。ゆっくり馴れていった方がいい」
「そうですね。無理をするつもりはありません。経験を積み重ねてから進んでいくつもりですわ」
「ところでなんだが、仲間の到着を待っているとか言ったな。ただ待っているのも暇だろう。俺の雷獣と対戦してみねぇか?」
雷獣、雷属性の中級召喚獣だ。ギルドマスターの雷獣は有名なので、その強さも知れ渡っている。定期的に行われるモンスター狩りでも、先頭に立って活躍していると聞く。
おそらく、上級に近い中級召喚獣なのだろう。レベルは四から五に近いところまできているはず。
「ここで召喚獣が負傷してしまったら、クエストを受けられなくなってしまいますわ」
「今のお前さん達にとっては、つまらんゴブリン退治よりも、俺との実践の方がよっぽど力になると思うぜ」
随分と強気な人だ。上級と聞いて戦わずにはいられなかったのだろう。この戦闘狂ギルドマスターめ。
「確かに一理ありますわね。でも私たちは初心者なので、三人チームで戦わせてもらってもよろしいですか?」
「わかった。それから召喚主への攻撃はしないでおこう。雷獣、召喚!」
「サバチャイさんはポリスマンを召喚してください。防御は、また私がしますわ」
「あの、キツネみたいな奴が相手か? 弱そうね。とても弱そうね。あんなの、サバチャイキックで圧勝よ」
きっと、雷獣の背の高さを見て神の左ではなくキックを選択したのだろう。タマの三倍ぐらいのサイズといえば、だいたいその大きさがわかるだろうか。
そういえば、今回のサバチャイさんは包丁を持っていない。トイレにいたのだから当たり前だけど武器らしい武器は何もない。
「サバチャイさん、雷獣に直接触れるのはよくありません。雷を身に纏っているので痺れて動けなくなっちゃいますよ」
「まったく卑怯なキツネね! でもサバチャイ諦めないよ。とりあえず、ポリスマンは召喚するからルークは拳銃の使い方習うといいよ」
「了解です。サバチャイさんも無理だけはしないでください」
「サバチャイ、レベルアップしたから無敵よ。チチンポイポイ、ポリスマン」
うにゃあー!?
小さい魔方陣が光輝くと、驚いて毛並みを逆立てた三毛猫のタマが、僕の目の前で召喚されていた。
0
あなたにおすすめの小説
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
【12月末日公開終了】これは裏切りですか?
たぬきち25番
恋愛
転生してすぐに婚約破棄をされたアリシアは、嫁ぎ先を失い、実家に戻ることになった。
だが、実家戻ると『婚約破棄をされた娘』と噂され、家族の迷惑になっているので出て行く必要がある。
そんな時、母から住み込みの仕事を紹介されたアリシアは……?
婚約破棄? 私、この国の守護神ですが。
國樹田 樹
恋愛
王宮の舞踏会場にて婚約破棄を宣言された公爵令嬢・メリザンド=デラクロワ。
声高に断罪を叫ぶ王太子を前に、彼女は余裕の笑みを湛えていた。
愚かな男―――否、愚かな人間に、女神は鉄槌を下す。
古の盟約に縛られた一人の『女性』を巡る、悲恋と未来のお話。
よくある感じのざまぁ物語です。
ふんわり設定。ゆるーくお読みください。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
悪役令嬢、休職致します
碧井 汐桜香
ファンタジー
そのキツい目つきと高飛車な言動から悪役令嬢として中傷されるサーシャ・ツンドール公爵令嬢。王太子殿下の婚約者候補として、他の婚約者候補の妨害をするように父に言われて、実行しているのも一因だろう。
しかし、ある日突然身体が動かなくなり、母のいる領地で療養することに。
作中、主人公が精神を病む描写があります。ご注意ください。
作品内に登場する医療行為や病気、治療などは創作です。作者は医療従事者ではありません。実際の症状や治療に関する判断は、必ず医師など専門家にご相談ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる