僕の召喚獣がおかしい ~呼び出したのは超上級召喚獣? 異端の召喚師ルークの困惑

つちねこ

文字の大きさ
42 / 61

40話 レッドドラゴン襲来4

しおりを挟む
「ルーク、もっと満遍なく焼かないと、焼きムラができて味が偏るね! もっと、しっかり回すよ」

 僕とサバチャイさん、それからポリスマンは、レイモンド様が用意した屋根のない馬車の上で、ロックリザードの肉を焼いている。ピカピカ鎧の僕はサバチャイさんの調理補助兼、生け贄担当としてお手伝いをしているのだ。

「そんなこといったって、重すぎて……」

 ロックリザードの肉がデカすぎて回すのがとても大変なのだ。一応、手回し式の大型調理器具が用意されているのだけど、既にミシミシと悲鳴をあげていて、いつ壊れてもおかしくない。急きょ用意したものだから、しょうがないとはいえ、せめて僕たち以外の調理補助の人がもう何人かは欲しかった。

「レベルアップしたサバチャイさんが、回してもらえませんか? 僕には、ロックリザードは重すぎますよ」

「サバチャイ、このあとドラゴンやっつけなきゃならないから、こんなところで体力使っている場合じゃないね。ポリスマンは普通にやってるよ。ルークも頑張るね」

 召喚主の言うことを聞かない、召喚獣への指導方法とか、学園が始まったら勉強したいと思う。英霊とかって騒いでいたジアス先生も、興味があるはずだから、きっと協力してくれるに違いない。

「ポリスマンは大丈夫なんですか?」

「うん? これぐらいは問題ねぇよ。一応、職業柄鍛えているからな。ルークさんも、もうちょっと鍛えた方がいいと思うぜ」

 公爵軍は馬車を後方に配置して、レッドドラゴンを誘き寄せようと匂いをピンポイントに風魔法で上空に飛ばしながら、徐々に街から離れて行っている。

「レッドドラゴンがこちらを気にしている! 誘導に成功しそうだぞ」

 街の上空を旋回していたレッドドラゴンだが、もう物見が終わったのか、それともロックリザードの丸焼きに心動かされたのか、チラチラとこちらを見ながら、近づく素振りを見せはじめている。

 まるで僕を見ているようで正直、気が気でない。こうなったのもチャップルン改め、ルンルンのせいだ。感謝の気持ちが、いつの間にか余計なことをしやがって、となってしまうのも致し方あるまい。

「ルーク、手が止まってるね。今が頑張り時よ。焦がしたら全てが台無しになるね! やっと茸に熱が伝わって、香ばしい薫り出てきてるよ」

 確かに美味しそうな香りが辺りに漂いはじめている。馬車周辺の風属性召喚師が上空へとその匂いを立ち上らせている。空にいるレッドドラゴンも、完全にこちらの匂いが気になりはじめている様子。明らかに街を離れて、こちらに近寄りはじめていてめっちゃ怖い。

「あ、あの、僕のことはちゃんと守ってくれるのでしょうか?」

 なぜかとても不安に思った僕は、馬車の回りにいる風属性召喚師に話を振ってみた。

「私たちの役割は、匂いをレッドドラゴンに飛ばすまでです。レッドドラゴンが来たらひたすら逃げるしかありませんよ。はははっ」

 はははっ、じゃないよ。馬車を囲うようにしていたので、てっきり守ってくれているのかと勘違いしちゃったじゃないか。

 レイモンド様とシャーロット様は当たり前のように馬車から一番離れた先頭で馬を走らせている。あそこが安全地帯か……。いや、レッドドラゴンが襲ってくるわけで、この囮部隊に安全な場所なんてないんだけどさ。

「サバチャイさん、この場所はレッドドラゴンが一番に襲ってくるとこだと思うんだ。何か作戦を考えておかなくて大丈夫かな」

「ルークとポリスマンが、拳銃をぶっ離せば終了ね。あのデカイ翼を狙うといいよ。飛べなくなって弱ったところを、サバチャイの鮪包丁で一刀両断するね」

 ざっくりしすぎて、不安すぎる。

「両断するなら牙をとってあげてよね。シャーロット様に怒られるよ」

「牙なんて後でとればいいね。そんなことより、ルーク手が止まってるよー! そんなんじゃ美味しいお肉にならないよ。ドラゴン来てくれないね!」

 サバチャイさんは、ドラゴン討伐にノリノリだ。結構年齢がいっているだけに、本当に若返りたいのかもしれない。無理だと思うけど……。


「く、来るぞぉぉ!!!」

 馬車周辺の風属性召喚師さん達が一斉に逃げ始めている。正直、とてもうらやましい。周りで控えている、公爵軍の方々には全力で僕を守ってもらいたい。そう、若い芽は摘んではいけないのだ。ほ、本当に助けてくれるんだよね!?

「ルークさん、あれだけデカい獲物でも、やはり動いているのを狙うのは相当難しい。ロックリザードの肉に食らいついた瞬間を狙って頭を撃ちましょう」

「は、はい。わかりました」

 何でレッドドラゴンが襲い掛かって来ているのに、こんなにも落ち着いているのか。ポリスマンがとても頼りになる。

「ここが勝負です。三発連続で仕留めましょう」

 サバチャイさんは鮪包丁を準備して、いつでも斬りかかれるように身を隠している。僕たちも、少し馬車から離れた方がいい。

「ポリスマン、少し離れましょう」

「あー、了解だ。ルークさん、集中していきましょう!」

 鎧を来ている僕に代わってタマを抱えているポリスマン。こんな時でもグッスリ眠っているっぽいタマがとても羨ましい。とりあえず、僕とポリスマンには心を開いてくれているようで助かった。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

【12月末日公開終了】これは裏切りですか?

たぬきち25番
恋愛
転生してすぐに婚約破棄をされたアリシアは、嫁ぎ先を失い、実家に戻ることになった。 だが、実家戻ると『婚約破棄をされた娘』と噂され、家族の迷惑になっているので出て行く必要がある。 そんな時、母から住み込みの仕事を紹介されたアリシアは……?

婚約破棄? 私、この国の守護神ですが。

國樹田 樹
恋愛
王宮の舞踏会場にて婚約破棄を宣言された公爵令嬢・メリザンド=デラクロワ。 声高に断罪を叫ぶ王太子を前に、彼女は余裕の笑みを湛えていた。 愚かな男―――否、愚かな人間に、女神は鉄槌を下す。 古の盟約に縛られた一人の『女性』を巡る、悲恋と未来のお話。 よくある感じのざまぁ物語です。 ふんわり設定。ゆるーくお読みください。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。

悪役令嬢、休職致します

碧井 汐桜香
ファンタジー
そのキツい目つきと高飛車な言動から悪役令嬢として中傷されるサーシャ・ツンドール公爵令嬢。王太子殿下の婚約者候補として、他の婚約者候補の妨害をするように父に言われて、実行しているのも一因だろう。 しかし、ある日突然身体が動かなくなり、母のいる領地で療養することに。 作中、主人公が精神を病む描写があります。ご注意ください。 作品内に登場する医療行為や病気、治療などは創作です。作者は医療従事者ではありません。実際の症状や治療に関する判断は、必ず医師など専門家にご相談ください。

処理中です...