初めから離婚ありきの結婚ですよ

ひとみん

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ようやく王都に戻り、父である国王に視察の報告と、アイザックと結婚したい旨を報告した。

「やっとか!このまま主従関係で終わるのかと思っていたぞ」
と、何処かホッとしたような、上機嫌のお父様。―――え?お父様も知ってたの?
「そうそう。アイザックがここに来て何年経ったかしら?可愛い我が娘も、もう二十才。そろそろ縁談も考えていたのよ」
顔は笑っているけど目が笑っていない、お母様。え?知らなかったの私だけ!?
「申し訳ありません。全ては私の驕りが招いた事。常に傍に居られるのは自分だけなのだと。はっきりと言葉にしなかった私にも非はありますが・・・まさかこれほどまでに王女殿下が鈍いとは思わず・・・」
「え!?待ってよ!アイクからのアプローチなんて、全然記憶にないわよ!」
「そうか?我々から見ても結構頑張っているなと見てたんだが」
と、お父様。
「そうね・・・それに対する反応が余りにも淡白だったから不思議に思っていたんだけれど・・・・」
と、お母様。
「え?何?本当に私が気付いていなかっただけなの?」
そう呟くと、三人からは可哀想な子でも見るような目で見られた。
「言葉にしてもらわないと、わからないわよ!恋愛小説とは違うんだから!」
「あら、あなた恋愛小説大好きで、片っ端から読んでたわよね?その割に役に立ってないみたいだけど」
「うぐっ・・・」
お母様の言葉が胸に刺さる。
「まぁまぁ、何はともあれ納まる所に納まったという事で。これでカノープス公爵家も一安心だろう」
カノープス将軍は私達の元に来る前に、お父様とお会いしていたらしい。
そこでアイザックの事を、散々愚痴っていたらしいのだ。
私と結婚すると大口叩いて国を出たはいいが、待てど暮らせど吉報が届かない。挙句に私が、他国へ嫁ぐと聞いてカノープス公爵家は大混乱だったらしい。
「皆様にはご心配おかけし申し訳ありませんでした。もっと早く、ベアトリス殿下に気持ちをお伝えしていたら、他国に嫁ぎ嫌な思いをする事も無かったのだと思うと、自分の愚かさを痛感するばかりです」
アイザックが本当に悔しそうに頭を下げると、意外にもお父様とお母様は彼を責めるわけでもなく、あっさりと頷く。
「まぁ、確かにそうかもしれないが、実はアルンゼン国から我が国に流れてくる難民がここ数年で増加していて頭を悩ませていたのだよ。そこにあの国からの縁談の話だろ?これは偶然なのかと、色々考えていたのだ」
「国民を蔑ろにしている国に可愛い娘を嫁がせるわけないでしょ。そんな時、今度は脅し。一思いに潰して国を解体してしまおうかとも考えたのよ」
ひぃぃぃ!お母様、笑顔が怖い!!
「だが、ベアトリスがアルンゼン国を内部から崩してくれたおかげで、すぐには成果は出ないだろうが、徐々に国内も改善されていくだろう。それにあちらには、かなり大きな貸も作れた」
ニヤリと、国王とは思えない厭らしい笑みを浮かべるお父様。
「アイザックにしてみれば好いた女が目の前で他の男と婚姻した事は面白くないだろうが、終わりよければ全て良しって事だ」
「そうね。元をただせばアイザックがちゃんと言葉で示さなかった事が原因ですもの」
褒めているのか貶しているのか・・・よく分からないが、この結婚はどうやら歓迎されているらしい。
反対はされないだろうとは思っていたけど、こうして了承を貰えると安堵からか身体から力が抜けていき、緊張していたんだなとホッと息を吐いた。
それは私だけではなくアイザックもそうだったみたいで、お互い顔を見合わせ自然と微笑み合った。


それから話は面白い様に進み、一週間もしないうちに婚約をすっ飛ばし結婚を発表され、結婚式は一年後に挙げる事になった。
嬉しい事間違いなしだけれど、あまりの急展開に未だに戸惑う事が多いのよ・・・
あの様な悔しい事が二度と起きないよう、兎に角、一日でも早く結婚したいというアイザックの要望なのだ。
目の前でアルンゼン国に嫁いだ事が、相当堪えていたらしい。
そして私達だけではなく、カル兄様もルルーと婚約したと報告を受けた。
カノープス将軍が帝国に帰られてから、それこそ一週間後に。
大好きな二人が結婚する。自分の事以上に嬉しくて、口元がだらしなく緩んでしまうのを止める事が出来ないでいると、アイザックが不機嫌そうに手元を覗き込んできた。
私の手にはカル兄様からの手紙が。もう、何度も読み返している所為か、ちょっと皺になっている。

「ねぇ、ビーはそんなに兄貴が好きなの?俺よりも?」

結婚してからと言うもの、アイザックは私に対する想いを、言葉に態度にと余すことなく伝えてくれる。
私がものすごく鈍感だったというのが身に染みたらしく、遠慮なしの愛情ダダ漏れ状態だ。
正直それは嬉しいんだけれど、慣れない私には恥ずかしくて如何返していいのか分からず、いつもされるがままになっている。
今も私はアイザックの膝の上だ。もはや、定位置と言っても過言ではない。
そんな私達を見ても、ミラはいつも通り動揺する事無く私に仕えてくれる。
他の使用人達も、初めの頃は恥ずかしそうに目を逸らされたり頬を染めたりしていたが、今では全く動じることなく、正に平常運転。
お父様とお母様も時折こんな感じでチャイチャしてたから、多少なりとも免疫があったのかもしれない。

いや・・・何の免疫よ・・・

思わず遠い目をしてしまう私に、アイザックは嫉妬心丸出しで、それでいて不安そうに「どうなの?」と聞いてくる。
五つも年上なのに、思わず可愛いと思ってしまうのは、本人には内緒だ。

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