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だが三周目突入の二年後、ルドルフが目覚めた。
そして、自分が死んだ後に起きていた事に愕然としたと同時に、本当にこれが逆行の原因なのかと、そのスケールの大きさに意識を飛ばしそうになったことは言うまでも無い。
「クロエが殺される?国が・・・世界が崩壊する?何それ・・・自分の事だけでも手一杯だっていうのに!世界相手に、私達二人でどうしろっていうのよ!!その前に、寿命的にルーの方が先に逆行すべきでしょ!!ルーが目覚めなければ、永遠と逆行?!私が死んだ後の事なんで、如何こう出来るわけないじゃない!!」
怒りに任せ一気にまくしたてハァハァ言っているルナティアに、ルドルフが何処か嬉しそうにその背を擦った。
「俺さ、姉上がまた殺されたって聞いて、本当に後悔したんだ。あの男が国を捨てようが何しようが、止めるべきだったって」
毒殺に関しては、どんなに警戒してもやはり避ける事は出来なかった。誰が仕込んだのか確かめたかったのだが、それすら叶わなかったのが悔しい。
せめて実行犯だけでも分かれば次に逆行した時、どうにか出来るかもしれないと思っていたのに・・・
「そうね・・・警戒してたけど、やっぱり殺されちゃったもの」
「しかも姉上だけじゃなく、可愛いクロエまで・・・・フルール国を潰そうかと思ってしまったよ」
何を隠そう、ルドルフは愛するルナティアに似ているクロエを、自分の息子以上に溺愛しているのだ。
「クロエが殺されたという事が、自分が殺された事よりショックだわ・・・・しかもシェルーラに戻されずフェルノア帝国に嫁がされてたなんて・・・我が息子ながらジョージ、許すまじ!」
元々、ルナティアがフルール国へ嫁ぐ条件が、黒髪青目の子が生まれたらシェルーラ国へ帰す事だった。なのにそれを当たり前の様に反故するとは、一国の王として信用を地に捨てた様なものだ。
「俺にとっては一周目になるんだけど、思ったんだ。、姉上一人じゃあ永遠と逆行を繰り返す羽目になるだろうなって。だからずっと神殿で祈ってたんだ。次は自分も逆行できますようにって」
ルドルフの言葉にルナティアは目を見開いた。そしてじわじわと沸き上がる、喜びと安堵感。
当然、巻き込んでしまった事への罪悪感もある。だが、それ以上に嬉しかった。
一周目は何が何だか分からず殺された。二周目は殺させるとわかっていて、殺された。
周りにはこの状況を分かってくれる人が誰もいない。それは思ってた以上に辛いものだった。
フィリップに話したところで、根本的に理解しているわけではないから、上っ面だけのものにしかならない。
だがこうして全てを分かってくれる人が居る。本当にそれだけで、救われるのだ。
実際の所、神様に祈ったからと言って逆行出来るわけではない。
でも、案外神様がルドルフの願いを聞き届けてくれたのかもしれないとも思う。このままだと、一向に先に進まないからと。
「ルー・・・あなたって子は・・・確かに毒殺を避けないと先に進まないものね。でも、よかったの?思ってるよりも辛いわよ?」
「かまわない。俺は姉上とクロエを助けたい。そして、そのついでにこの世界も救うよ」
「ついでって・・・そうね、ついでに救って今度こそは大往生しましょうね」
額を突き合わせクスクス笑う美しい姉弟。
だがその口調や言葉遣いは、五才と四才の子供とは思えないほどの老練さを感じさせる。
そのまま二人は、この世界をどう手玉に取るか策を練り、早々に実行に移したのだった。
まずはリージェ国がどのような国なのかを知る為に、間者を送り込んだ。
当時のリージェ国はミロの花を、魔薬ではなく媚薬として各国に売り込んでいた。だが、偶然の副産物として魔薬が生まれ、そちらに重きを置く様になり生産に力を入れる様になっていくのだ。
その所為か、魔薬と媚薬の区別が出来ない国がほとんどで、魔薬に対する危機感が全くなく、世界を巻き込んでの惨事となってしまった。
―――無知は正に罪。ならば、知識を与えようではないかと、どこか上から目線のルドルフが、無知な国々を教育すべく様々な事を画策し始める。
自分達の強みは未来が分かる事だ。まずは、リージェ国を良く思わない周辺の国々。リージェ国より遙かに軍事力が高い国々を取り込むべく、『宣託』を武器にその懐深くはいる事を計画した。
偶然必然を上手く使い、小出しに・・・あくまでも小出しに宣託を与え、絡めとっていく作戦。
それは思ってた以上に功を奏し、簡単に丸め込まれていく国々。その安易さにルドルフ達の方が、罠なのでは・・・と警戒する位だった。
そして、それ以上に最優先事項としたのが、情報伝達速度だ。
島国であるシェルーラ国は大陸からの情報が兎に角遅かった。その所為で、軍の準備も碌に取れずあっさり落ちてしまったのだから。
それに関してはルナティアに案があるという事で一任。空を支配したほうが早いのではと、昔読んだ歴史書で鳥達を調教し手紙のやり取りをしていた時代があった事を思い出したのだ。
そこそこ文明が発達し、国内では手紙を届ける職業もできた事から廃れてしまったのだが、今だ山間部では昔の様に鳥を使って連絡を取り合っている人達も居る事を付き止め、調教を教わる事にしたのだ。
大事な事には、はどんなに時間がかかろうとも手を抜く訳にいかない。それが将来、大きな武器になると分かっているのだから。
そして、何よりも一番に手玉に取っておかねばならないのが、フェルノア帝国。
帝国はこの大陸一の軍事力を誇っている。この帝国を守らなくては、同じ未来が繰り返されてしまう。
それを阻止するために、二人が立てる大まかな『フェルノア帝国篭絡計画』。
まずはルドルフが学園に入学すると同時に、帝国へ留学という形で赴く。
まだ皇太子であるエドリードに近づき、信用を得れば良い。親友ポジションに付くことが出来れば、なお良い。
そして将来、ルナティアがフルール国へ嫁いだ際、隣国であるフェルノア帝国と懇意にする。
何もしなければ、帝国はリージェ国に支配されてしまう。よって、宣託のネタは山のようにあるのだ。
ざっくりとした未来予想を描きながら、細かな修正はその都度する事で計画を実行に移していった。
そして時は流れ、姉弟の思惑通りに事は運んでいく。
警戒心を緩めることなく密に連絡を取り合う二人に、思いがけない朗報が舞い込んだ。
クロエが目覚めたのである。
そこで初めてフルール国、フェルノア帝国内部で、何が起きていたのかが分かった。
国王夫妻を毒殺した犯人も判明。ルナティア達に一条の光明が差した瞬間でもあった。
クロエにとっては一周目でルナティアが殺された後、ケイト一家と共に犯人捜しをしていた。
何と驚く事に毒を盛ったのは、フルール国に嫁いでからずっとルナティアに仕えてくれていた、信頼のおける侍女の一人だった。
実行犯は彼女だが、裏で糸を引いていたのはやはりと言うか予想していた通り、マルガリータ一派だった。
どうりで調べても分からなかったはずである。一番初めに疑わなくてはならない侍女を、愚かな事に信頼の一言で全く疑っていなかったのだから。
その侍女もルナティアが亡くなった後、マルガリータの侍女として仕えていたが、知らない間に行方を晦ましていた。
直ぐに始末しては疑われる為、ある程度の時間を置いてから、何らかの形で口封じされたのだろう。
彼女等の罪を暴こうとしていたクロエ達にとっては、腹立たしくも残念な結果でしかなかった。
だが、今世はルナティアの暗殺を阻止する事が出来そうで、それが何よりも喜ばしい。
どんなに計画を実行し周りを固めても、ルナティアが死んでしまえばこれまでの勢いが頓挫し、事実上計画は破綻する事が目に見えていたから。
ルナティアにより、既にフェルノア帝国は篭絡済み。
クロエの目覚めという嬉し誤算があったものの、大幅な計画変更はなく、相変わらずのざっくりとした計画でリージェ国に対する包囲網を着々と仕上げていくのだった。
そして、自分が死んだ後に起きていた事に愕然としたと同時に、本当にこれが逆行の原因なのかと、そのスケールの大きさに意識を飛ばしそうになったことは言うまでも無い。
「クロエが殺される?国が・・・世界が崩壊する?何それ・・・自分の事だけでも手一杯だっていうのに!世界相手に、私達二人でどうしろっていうのよ!!その前に、寿命的にルーの方が先に逆行すべきでしょ!!ルーが目覚めなければ、永遠と逆行?!私が死んだ後の事なんで、如何こう出来るわけないじゃない!!」
怒りに任せ一気にまくしたてハァハァ言っているルナティアに、ルドルフが何処か嬉しそうにその背を擦った。
「俺さ、姉上がまた殺されたって聞いて、本当に後悔したんだ。あの男が国を捨てようが何しようが、止めるべきだったって」
毒殺に関しては、どんなに警戒してもやはり避ける事は出来なかった。誰が仕込んだのか確かめたかったのだが、それすら叶わなかったのが悔しい。
せめて実行犯だけでも分かれば次に逆行した時、どうにか出来るかもしれないと思っていたのに・・・
「そうね・・・警戒してたけど、やっぱり殺されちゃったもの」
「しかも姉上だけじゃなく、可愛いクロエまで・・・・フルール国を潰そうかと思ってしまったよ」
何を隠そう、ルドルフは愛するルナティアに似ているクロエを、自分の息子以上に溺愛しているのだ。
「クロエが殺されたという事が、自分が殺された事よりショックだわ・・・・しかもシェルーラに戻されずフェルノア帝国に嫁がされてたなんて・・・我が息子ながらジョージ、許すまじ!」
元々、ルナティアがフルール国へ嫁ぐ条件が、黒髪青目の子が生まれたらシェルーラ国へ帰す事だった。なのにそれを当たり前の様に反故するとは、一国の王として信用を地に捨てた様なものだ。
「俺にとっては一周目になるんだけど、思ったんだ。、姉上一人じゃあ永遠と逆行を繰り返す羽目になるだろうなって。だからずっと神殿で祈ってたんだ。次は自分も逆行できますようにって」
ルドルフの言葉にルナティアは目を見開いた。そしてじわじわと沸き上がる、喜びと安堵感。
当然、巻き込んでしまった事への罪悪感もある。だが、それ以上に嬉しかった。
一周目は何が何だか分からず殺された。二周目は殺させるとわかっていて、殺された。
周りにはこの状況を分かってくれる人が誰もいない。それは思ってた以上に辛いものだった。
フィリップに話したところで、根本的に理解しているわけではないから、上っ面だけのものにしかならない。
だがこうして全てを分かってくれる人が居る。本当にそれだけで、救われるのだ。
実際の所、神様に祈ったからと言って逆行出来るわけではない。
でも、案外神様がルドルフの願いを聞き届けてくれたのかもしれないとも思う。このままだと、一向に先に進まないからと。
「ルー・・・あなたって子は・・・確かに毒殺を避けないと先に進まないものね。でも、よかったの?思ってるよりも辛いわよ?」
「かまわない。俺は姉上とクロエを助けたい。そして、そのついでにこの世界も救うよ」
「ついでって・・・そうね、ついでに救って今度こそは大往生しましょうね」
額を突き合わせクスクス笑う美しい姉弟。
だがその口調や言葉遣いは、五才と四才の子供とは思えないほどの老練さを感じさせる。
そのまま二人は、この世界をどう手玉に取るか策を練り、早々に実行に移したのだった。
まずはリージェ国がどのような国なのかを知る為に、間者を送り込んだ。
当時のリージェ国はミロの花を、魔薬ではなく媚薬として各国に売り込んでいた。だが、偶然の副産物として魔薬が生まれ、そちらに重きを置く様になり生産に力を入れる様になっていくのだ。
その所為か、魔薬と媚薬の区別が出来ない国がほとんどで、魔薬に対する危機感が全くなく、世界を巻き込んでの惨事となってしまった。
―――無知は正に罪。ならば、知識を与えようではないかと、どこか上から目線のルドルフが、無知な国々を教育すべく様々な事を画策し始める。
自分達の強みは未来が分かる事だ。まずは、リージェ国を良く思わない周辺の国々。リージェ国より遙かに軍事力が高い国々を取り込むべく、『宣託』を武器にその懐深くはいる事を計画した。
偶然必然を上手く使い、小出しに・・・あくまでも小出しに宣託を与え、絡めとっていく作戦。
それは思ってた以上に功を奏し、簡単に丸め込まれていく国々。その安易さにルドルフ達の方が、罠なのでは・・・と警戒する位だった。
そして、それ以上に最優先事項としたのが、情報伝達速度だ。
島国であるシェルーラ国は大陸からの情報が兎に角遅かった。その所為で、軍の準備も碌に取れずあっさり落ちてしまったのだから。
それに関してはルナティアに案があるという事で一任。空を支配したほうが早いのではと、昔読んだ歴史書で鳥達を調教し手紙のやり取りをしていた時代があった事を思い出したのだ。
そこそこ文明が発達し、国内では手紙を届ける職業もできた事から廃れてしまったのだが、今だ山間部では昔の様に鳥を使って連絡を取り合っている人達も居る事を付き止め、調教を教わる事にしたのだ。
大事な事には、はどんなに時間がかかろうとも手を抜く訳にいかない。それが将来、大きな武器になると分かっているのだから。
そして、何よりも一番に手玉に取っておかねばならないのが、フェルノア帝国。
帝国はこの大陸一の軍事力を誇っている。この帝国を守らなくては、同じ未来が繰り返されてしまう。
それを阻止するために、二人が立てる大まかな『フェルノア帝国篭絡計画』。
まずはルドルフが学園に入学すると同時に、帝国へ留学という形で赴く。
まだ皇太子であるエドリードに近づき、信用を得れば良い。親友ポジションに付くことが出来れば、なお良い。
そして将来、ルナティアがフルール国へ嫁いだ際、隣国であるフェルノア帝国と懇意にする。
何もしなければ、帝国はリージェ国に支配されてしまう。よって、宣託のネタは山のようにあるのだ。
ざっくりとした未来予想を描きながら、細かな修正はその都度する事で計画を実行に移していった。
そして時は流れ、姉弟の思惑通りに事は運んでいく。
警戒心を緩めることなく密に連絡を取り合う二人に、思いがけない朗報が舞い込んだ。
クロエが目覚めたのである。
そこで初めてフルール国、フェルノア帝国内部で、何が起きていたのかが分かった。
国王夫妻を毒殺した犯人も判明。ルナティア達に一条の光明が差した瞬間でもあった。
クロエにとっては一周目でルナティアが殺された後、ケイト一家と共に犯人捜しをしていた。
何と驚く事に毒を盛ったのは、フルール国に嫁いでからずっとルナティアに仕えてくれていた、信頼のおける侍女の一人だった。
実行犯は彼女だが、裏で糸を引いていたのはやはりと言うか予想していた通り、マルガリータ一派だった。
どうりで調べても分からなかったはずである。一番初めに疑わなくてはならない侍女を、愚かな事に信頼の一言で全く疑っていなかったのだから。
その侍女もルナティアが亡くなった後、マルガリータの侍女として仕えていたが、知らない間に行方を晦ましていた。
直ぐに始末しては疑われる為、ある程度の時間を置いてから、何らかの形で口封じされたのだろう。
彼女等の罪を暴こうとしていたクロエ達にとっては、腹立たしくも残念な結果でしかなかった。
だが、今世はルナティアの暗殺を阻止する事が出来そうで、それが何よりも喜ばしい。
どんなに計画を実行し周りを固めても、ルナティアが死んでしまえばこれまでの勢いが頓挫し、事実上計画は破綻する事が目に見えていたから。
ルナティアにより、既にフェルノア帝国は篭絡済み。
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