口は禍の元・・・後悔する王様は王妃様を口説く

ひとみん

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お披露目式をフィオナが中座してから、一時間位後にアルヴィンも会場を後にする。
彼もまた憂鬱だった。
式の最中、皆の視線がフィオナに集まっていた。
自分には見せる事の無いにこやかな表情で、国民、そして招待客に接する彼女に、顔には出さないが苦々しくも苛立ちを隠せなかった。

あの笑顔は一体何なんだ!何故にあれほどまでに美しくも可愛らしいのか!くっそー!俺の妻をそんな厭らしい目で見るんじゃない!!

と、笑顔のアルヴィンは心の中で延々と文句を垂れ流していた。
そして、これから初夜の為に寝室に向かうが、昨日のフィオナの言葉が甦る。
「必要最低限の接触で」と。
実はアルヴィンは正真正銘の童貞である。
年頃になると閨の授業もあるのだが、教師役の娼婦からいきなりアソコを見せられ失神してしまい、それ以降は書物での勉強になったのだ。
書物にも書いていた。女性の身体を愛撫し喜ばせ、受け入れる所を潤さなければならないと。

必要最低限の接触とは、何処までを言うのだろうか・・・

アルヴィンは兎に角、名誉挽回したかった。
弟との会話を聞かれ、フィオナは心を閉ざしている。
そして彼女の中では、子供を産んだら即離婚が決定してしまっているのだ。
庭で話した内容は、本当に酷いものだと自分でも思う。相手の事など考えず、自分本位の事ばかりだった。
フィオナが怒るのは当然の事。
だが、アルヴィンは彼女に恋をしてしまったのだ。初恋だ。
だからどうしても、側に居て欲しい。幸せな夫婦生活を送りたいと思っている。

「はぁぁぁぁ・・・・」

大きな溜息を吐き、この後に行なう初夜がどうなるのか不安で仕方がない。

これまで彼女に婚約者が出来なかったのは、先日の様に率直に自分の意見を言い、それがまた歯に衣を着せぬ物言いのため敬遠されていたからだと知っていた。
どれだけ口煩く自己中心的な奴が来るのかと思っていたが、そうではなかった。単に、思っている事を言葉にしただけ。それが巷の貴族令嬢らしからぬだけなのだ。
そして、二つ名通り美しい彼女を見て一目惚れしてしまった。

男女間は、惚れた方が負けなのだ・・・と、前に誰かが言っていた事を思い出す。

俺は彼女に負けたのだ・・・いや、初めから負けていた。
これはいわば、負け戦なんだろうなぁ・・・・


身を清め、とぼとぼと妃となった人が待つ部屋へと向かった。
そして、美しい妻となった人は、ソファーで酒を煽っていた。

「あら、陛下。もういらしたのですか?」
「あ・・あぁ。待たせてしまったか?」
もう来てしまったのか・・・と言われ、待たせたかと返すアルヴィンは、かなりテンパっていた。
そして、先程までの豪奢なドレス姿よりも、寝間着ひとつのシンプルな彼女の方が綺麗だと思えるのは、やはり惚れた弱みなのか。
しばし見惚れたように立ち尽くしてしまった。
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