4 / 21
4
しおりを挟む
お披露目式をフィオナが中座してから、一時間位後にアルヴィンも会場を後にする。
彼もまた憂鬱だった。
式の最中、皆の視線がフィオナに集まっていた。
自分には見せる事の無いにこやかな表情で、国民、そして招待客に接する彼女に、顔には出さないが苦々しくも苛立ちを隠せなかった。
あの笑顔は一体何なんだ!何故にあれほどまでに美しくも可愛らしいのか!くっそー!俺の妻をそんな厭らしい目で見るんじゃない!!
と、笑顔のアルヴィンは心の中で延々と文句を垂れ流していた。
そして、これから初夜の為に寝室に向かうが、昨日のフィオナの言葉が甦る。
「必要最低限の接触で」と。
実はアルヴィンは正真正銘の童貞である。
年頃になると閨の授業もあるのだが、教師役の娼婦からいきなりアソコを見せられ失神してしまい、それ以降は書物での勉強になったのだ。
書物にも書いていた。女性の身体を愛撫し喜ばせ、受け入れる所を潤さなければならないと。
必要最低限の接触とは、何処までを言うのだろうか・・・
アルヴィンは兎に角、名誉挽回したかった。
弟との会話を聞かれ、フィオナは心を閉ざしている。
そして彼女の中では、子供を産んだら即離婚が決定してしまっているのだ。
庭で話した内容は、本当に酷いものだと自分でも思う。相手の事など考えず、自分本位の事ばかりだった。
フィオナが怒るのは当然の事。
だが、アルヴィンは彼女に恋をしてしまったのだ。初恋だ。
だからどうしても、側に居て欲しい。幸せな夫婦生活を送りたいと思っている。
「はぁぁぁぁ・・・・」
大きな溜息を吐き、この後に行なう初夜がどうなるのか不安で仕方がない。
これまで彼女に婚約者が出来なかったのは、先日の様に率直に自分の意見を言い、それがまた歯に衣を着せぬ物言いのため敬遠されていたからだと知っていた。
どれだけ口煩く自己中心的な奴が来るのかと思っていたが、そうではなかった。単に、思っている事を言葉にしただけ。それが巷の貴族令嬢らしからぬだけなのだ。
そして、二つ名通り美しい彼女を見て一目惚れしてしまった。
男女間は、惚れた方が負けなのだ・・・と、前に誰かが言っていた事を思い出す。
俺は彼女に負けたのだ・・・いや、初めから負けていた。
これはいわば、負け戦なんだろうなぁ・・・・
身を清め、とぼとぼと妃となった人が待つ部屋へと向かった。
そして、美しい妻となった人は、ソファーで酒を煽っていた。
「あら、陛下。もういらしたのですか?」
「あ・・あぁ。待たせてしまったか?」
もう来てしまったのか・・・と言われ、待たせたかと返すアルヴィンは、かなりテンパっていた。
そして、先程までの豪奢なドレス姿よりも、寝間着ひとつのシンプルな彼女の方が綺麗だと思えるのは、やはり惚れた弱みなのか。
しばし見惚れたように立ち尽くしてしまった。
彼もまた憂鬱だった。
式の最中、皆の視線がフィオナに集まっていた。
自分には見せる事の無いにこやかな表情で、国民、そして招待客に接する彼女に、顔には出さないが苦々しくも苛立ちを隠せなかった。
あの笑顔は一体何なんだ!何故にあれほどまでに美しくも可愛らしいのか!くっそー!俺の妻をそんな厭らしい目で見るんじゃない!!
と、笑顔のアルヴィンは心の中で延々と文句を垂れ流していた。
そして、これから初夜の為に寝室に向かうが、昨日のフィオナの言葉が甦る。
「必要最低限の接触で」と。
実はアルヴィンは正真正銘の童貞である。
年頃になると閨の授業もあるのだが、教師役の娼婦からいきなりアソコを見せられ失神してしまい、それ以降は書物での勉強になったのだ。
書物にも書いていた。女性の身体を愛撫し喜ばせ、受け入れる所を潤さなければならないと。
必要最低限の接触とは、何処までを言うのだろうか・・・
アルヴィンは兎に角、名誉挽回したかった。
弟との会話を聞かれ、フィオナは心を閉ざしている。
そして彼女の中では、子供を産んだら即離婚が決定してしまっているのだ。
庭で話した内容は、本当に酷いものだと自分でも思う。相手の事など考えず、自分本位の事ばかりだった。
フィオナが怒るのは当然の事。
だが、アルヴィンは彼女に恋をしてしまったのだ。初恋だ。
だからどうしても、側に居て欲しい。幸せな夫婦生活を送りたいと思っている。
「はぁぁぁぁ・・・・」
大きな溜息を吐き、この後に行なう初夜がどうなるのか不安で仕方がない。
これまで彼女に婚約者が出来なかったのは、先日の様に率直に自分の意見を言い、それがまた歯に衣を着せぬ物言いのため敬遠されていたからだと知っていた。
どれだけ口煩く自己中心的な奴が来るのかと思っていたが、そうではなかった。単に、思っている事を言葉にしただけ。それが巷の貴族令嬢らしからぬだけなのだ。
そして、二つ名通り美しい彼女を見て一目惚れしてしまった。
男女間は、惚れた方が負けなのだ・・・と、前に誰かが言っていた事を思い出す。
俺は彼女に負けたのだ・・・いや、初めから負けていた。
これはいわば、負け戦なんだろうなぁ・・・・
身を清め、とぼとぼと妃となった人が待つ部屋へと向かった。
そして、美しい妻となった人は、ソファーで酒を煽っていた。
「あら、陛下。もういらしたのですか?」
「あ・・あぁ。待たせてしまったか?」
もう来てしまったのか・・・と言われ、待たせたかと返すアルヴィンは、かなりテンパっていた。
そして、先程までの豪奢なドレス姿よりも、寝間着ひとつのシンプルな彼女の方が綺麗だと思えるのは、やはり惚れた弱みなのか。
しばし見惚れたように立ち尽くしてしまった。
780
あなたにおすすめの小説
【完結】生贄になった婚約者と間に合わなかった王子
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
フィーは第二王子レイフの婚約者である。
しかし、仲が良かったのも今は昔。
レイフはフィーとのお茶会をすっぽかすようになり、夜会にエスコートしてくれたのはデビューの時だけだった。
いつしか、レイフはフィーに嫌われていると噂がながれるようになった。
それでも、フィーは信じていた。
レイフは魔法の研究に熱心なだけだと。
しかし、ある夜会で研究室の同僚をエスコートしている姿を見てこころが折れてしまう。
そして、フィーは国守樹の乙女になることを決意する。
国守樹の乙女、それは樹に喰らわれる生贄だった。
私達、政略結婚ですから。
潮海璃月
恋愛
オルヒデーエは、来月ザイデルバスト王子との結婚を控えていた。しかし2年前に王宮に来て以来、王子とはろくに会わず話もしない。一方で1年前現れたレディ・トゥルペは、王子に指輪を贈られ、二人きりで会ってもいる。王子に自分達の関係性を問いただすも「政略結婚だが」と知らん顔、レディ・トゥルペも、オルヒデーエに向かって「政略結婚ですから」としたり顔。半年前からは、レディ・トゥルペに数々の嫌がらせをしたという噂まで流れていた。
それが罪状として読み上げられる中、オルヒデーエは王子との数少ない思い出を振り返り、その処断を待つ。
初恋にケリをつけたい
志熊みゅう
恋愛
「初恋にケリをつけたかっただけなんだ」
そう言って、夫・クライブは、初恋だという未亡人と不倫した。そして彼女はクライブの子を身ごもったという。私グレースとクライブの結婚は確かに政略結婚だった。そこに燃えるような恋や愛はなくとも、20年の信頼と情はあると信じていた。だがそれは一瞬で崩れ去った。
「分かりました。私たち離婚しましょう、クライブ」
初恋とケリをつけたい男女の話。
☆小説家になろうの日間異世界(恋愛)ランキング (すべて)で1位獲得しました。(2025/9/18)
☆小説家になろうの日間総合ランキング (すべて)で1位獲得しました。(2025/9/18)
☆小説家になろうの週間総合ランキング (すべて)で1位獲得しました。(2025/9/22)
【完結】結婚式前~婚約者の王太子に「最愛の女が別にいるので、お前を愛することはない」と言われました~
黒塔真実
恋愛
挙式が迫るなか婚約者の王太子に「結婚しても俺の最愛の女は別にいる。お前を愛することはない」とはっきり言い切られた公爵令嬢アデル。しかしどんなに婚約者としてないがしろにされても女性としての誇りを傷つけられても彼女は平気だった。なぜなら大切な「心の拠り所」があるから……。しかし、王立学園の卒業ダンスパーティーの夜、アデルはかつてない、世にも酷い仕打ちを受けるのだった―― ※神視点。■なろうにも別タイトルで重複投稿←【ジャンル日間4位】。
最後に一つだけ。あなたの未来を壊す方法を教えてあげる
椿谷あずる
恋愛
婚約者カインの口から、一方的に別れを告げられたルーミア。
その隣では、彼が庇う女、アメリが怯える素振りを見せながら、こっそりと勝者の微笑みを浮かべていた。
──ああ、なるほど。私は、最初から負ける役だったのね。
全てを悟ったルーミアは、静かに微笑み、淡々と婚約破棄を受け入れる。
だが、その背中を向ける間際、彼女はふと立ち止まり、振り返った。
「……ねえ、最後に一つだけ。教えてあげるわ」
その一言が、すべての運命を覆すとも知らずに。
裏切られた彼女は、微笑みながらすべてを奪い返す──これは、華麗なる逆転劇の始まり。
麗しのラシェール
真弓りの
恋愛
「僕の麗しのラシェール、君は今日も綺麗だ」
わたくしの旦那様は今日も愛の言葉を投げかける。でも、その言葉は美しい姉に捧げられるものだと知っているの。
ねえ、わたくし、貴方の子供を授かったの。……喜んで、くれる?
これは、誤解が元ですれ違った夫婦のお話です。
…………………………………………………………………………………………
短いお話ですが、珍しく冒頭鬱展開ですので、読む方はお気をつけて。
お飾り王妃の愛と献身
石河 翠
恋愛
エスターは、お飾りの王妃だ。初夜どころか結婚式もない、王国存続の生贄のような結婚は、父親である宰相によって調えられた。国王は身分の低い平民に溺れ、公務を放棄している。
けれどエスターは白い結婚を隠しもせずに、王の代わりに執務を続けている。彼女にとって大切なものは国であり、夫の愛情など必要としていなかったのだ。
ところがある日、暗愚だが無害だった国王の独断により、隣国への侵攻が始まる。それをきっかけに国内では革命が起き……。
国のために恋を捨て、人生を捧げてきたヒロインと、王妃を密かに愛し、彼女を手に入れるために国を変えることを決意した一途なヒーローの恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は他サイトにも投稿しております。
表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID:24963620)をお借りしております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる