口は禍の元・・・後悔する王様は王妃様を口説く

ひとみん

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口を塞ぐフィオナも真っ赤だが、何故か塞がれたアルヴィンはフィオナの比でないほど真っ赤になり、いたたまれない雰囲気が漂い始めた。

「わ、わかりましたから、もう結構です・・・」
そう言って手を離し、跳ねる鼓動を押さえるかのように胸に手を当てた。

彼の言葉が、こんなにも嬉しいなんて・・・・
この間、告白された時はただ驚きしかなかったけど、どうしてかしら・・・とてもドキドキするわ・・・

フィオナは今まで恋をした事がない。
幼い頃、淡い憧れを抱いたことはあったが、陰で彼らがフィオナの事を貶める様な事を話しているのを聞いてからは、常に一線を引いていた。
誰よりも美しいフィオナは、どこにいても注目の的だった。だが、どんな男にも靡かない事でも有名だった。
それが面白くない顔に自信のある男どもは、今以上にフィオナを悪く言うのだ。
「美人でも可愛げがなければ、全てが台無しだ」と。
常にそんな男どもに群がられていた所為で、アルヴィンの様に嫌悪感丸出しというより、サクッと無視し冷静な切り返しで撃退してきた。
その所為でフィオナは敬遠され、巷では行き遅れ令嬢と言われるようになったのだ。
そんな彼女は、男を信用していない。ましてやアルヴィンのあの発言。恋するなど到底無理。
貴族の結婚に恋愛感情など必要ないし、ましてや王族の結婚など国の為の結婚が当たり前なのだ。
それでも、仲が悪いよりも良い方がいい。
お互い嫌っているよりは、好意を持った方が幸せだ。

なら今、私は彼をどう思っているのかしら・・・・

まごう事なき政略結婚の自分達。
始まりは本当に最悪だった。でも、今はどうだろうか。
まっすぐに見つめてくるその瞳に、今のままでいいという自分を認めてくれるその言葉に、外見だけではなく中身を見てくれている事に、否応なしに胸が高鳴る。
倒れた時も同じような事を言われたが、今の方が胸に響くのは何故なのか。

私はこんな風に、ありのままを受け入れてくれる人を待っていたのよね・・・

と考えた瞬間、感じた事のない甘い痛みと苦しいほどの高揚感が、全身を包み込む。
そして、アルヴィンが急に光り輝くように鮮やかに見えて、思わず目をこすってしまった。
「どうした?具合でも悪くなってしまったか?」
険しい顔つきから、心配そうに眉を下げ見上げてくるアルヴィンが、愛らしく感じて仕方がない。
前から、お腹の子供に対しては、可愛らしい反応をするなとは思っていた。よく話すようになってからは、顔も綺麗だと気付きもした。
だが、今はあの時以上に美しくもかっこよく見えるのだから不思議だ。

・・・・あぁ・・なんだか、愛おしいわ・・・

唐突に浮かぶその感情に、自然と名前が付き心の中で呟いた瞬間、全身が粟立った。
それはアルヴィンに向けている想いに、名前が付いた瞬間だった。

呆然としたように目を見開き、自分を凝視するフィオナに鼻先が触れそうなくらい顔を近づけ、その瞳を覗き込んだ。
「フィオナ?」
低くて心地良い声色が、名を呼ぶ。

一瞬で真っ赤になったフィオナに、アルヴィンは信じられないものでも見るかの様に目を見張る。
そして今にも泣きそうな表情で、恐る恐る口を開いた。
「フィオナ・・・俺は今、自惚れてもいいのだろうか?」
額がコツリと触れた。
「あなたが今俺を、少しでも好ましいと思ってくれていると・・・そう思ってもいいのだろうか?」

好ましい・・・そんな言葉では収まりきらない感情が、重い重い蓋を抉じ開けて溢れ出していく。まさにそんな感覚で、アルヴィンへと気持ちが向かっていくのだ。
「これが・・・今感じている陛下に対する気持ちが、好意だとするなら・・・・・・・」
初めての感情。初めての想い。マリアや両親、子供へと向ける気持ちとは全然違う。少しドロドロとした暗いものが入り混じった、心地よい感情。
「私は恋をした事がありません。ですが・・・陛下が可愛らしくて愛おしくて、私以外の女を見てほしくないという独占欲が入り混じったこの気持ちを、愛と呼ばずして何というのか・・・」
と、そこまで言った瞬間に、柔らかで熱い唇に言葉を飲み込まれた。
ギュッと抱きしめられ、堪え切れない想いを伝えるかのような口づけ。
夫婦であるのに、お互い初めての口づけである。

息が上がるような口づけから解放されても、アルヴィンはフィオナを抱きしめ譫言の様に「好きだ、愛している」と繰り返し顔中いたるところに唇を寄せる。
そんな夫が可愛らしくて、甘い感情に溺れてしまいそうで。・・・・でも、今だけはいいかな・・・と、自らギュッと彼に抱きつきアルヴィンの理性を崩壊させたことは言うまでもない。
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