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ユスティアを保護して三日目。フライアン侯爵家は、表面上は一切動きを見せていない。
フライアン侯爵家に潜入させている使用人からも、彼らはこれまでと変わらない生活をしているという。
潜入させている使用人は、キャロル達の動向を探る為に潜入させている。
だが、ローラは王都に戻ってくると決まった時点で、自動的に公爵が雇用主になるよう、フレデリカが手配していたのだ。
何もかもが、フライアン侯爵の知らぬ間に、だ。
果たしてそれは可能な事なのか・・・・
恐らく他家では不可能だろう。しっかりと当主が自分の仕事をしていれば。
今現在のフライアン侯爵家で力を持っているのは、家令のバルド。彼は、前当主エイトの腹心でもある。
侯爵家を実際に回しているのは彼であり、人事の権限を持っているのも彼。
現当主のカーネルはある意味お飾り当主でもあった。
当然、バルドはライト公爵に協力的だ。侯爵家を守るために、エイト達と計画していた事でもあるのだから。
そして彼は、中立であることをエイトとフレデリカに求められていた。
キャロルやライラに、ユスティアに肩入れしている事を感づかれては、それこそキャロル達に何をされるかわからないからだ。
ましてや、使用人を一掃されてはかなわないので、見えない所で守るよう言われていた。
エイトとフレデリカ、ユスティアを愛するバルドを筆頭とする使用人達にとってはとても辛い事だったが、あくまでも忠実に職務をこなしていた。
なのに起きてしまった事件。ユスティアが暴力を振るわれ、家を飛び出した事に驚き、誰よりも憤慨した。
と同時に、バルドの中で何かが切れた。
あぁ・・・早く当主様には引退していただこう・・・・
バルドはユスティアがライト公爵家に保護されたその晩に、公爵家を秘かに訪れたのだった。
ライト公爵邸に保護されてからのユスティアは、領地に居た時の様に心穏やかに過ごす事が出来ていた。
額の傷も痕は残らないと言われ、ローラ達はホッと胸を撫でおろす。
ただ実際、傷と叩かれた頬の痣の完治は、少し時間がかかりそうだ。
打ち身でところどころ痛かった身体も、今ではあまり気にならない程度の痛みに。
もう、普通に生活できる位は回復している。
なのに、エドワルドはユスティアの傍を離れようとはしない。
ユスティアに対し常に熱い、蕩ける様な視線を向けてくるので、とても居心地が悪かった。
そして、エドワルドがユスティアの婚約者なのだと、彼女が認識した瞬間から、彼の猛アプローチが止まらない。
「やっと婚約者に会えたんだ。これまで会いたいのを我慢していた分、傍に居させてくれないか?」
「まだ僕たちの婚約は(仮)みたいだけれど、どうか僕と正式に婚約してくれないだろうか」
「あなたを初めて見た時から、僕の心の中にはあなたしか住んでいないんだ。ユスティア嬢、僕と結婚してください」
これまで会いたかった気持ちが、恋焦がれていた気持ちが、溢れてしょうがないとでもいうように。
だが、いくら祖母から絵姿や近況報告を受けていたとしても、会った時から好意的なエドワルが不思議でならない。
「私とエドワルド様は会ったばかりではないですか。それに、我が家の問題に巻き込まれた形での婚約でしょう?不満ではないのですか?」
「エイト様、フレデリカ様から話を聞いた時は、他家のお家騒動に何故巻き込まれなければならないのか・・・と、正直思った」
そうだろうな・・・と、ユスティアは頷く。
「だけど、お二方と言葉を交わしているうちに、この方たちが育てられたのならば、きっと魅力的な令嬢なのだろうと思って了承したんだ」
そして、領地へと旅立つあの日、こっそりと見送りに参加していた事を明かした。
「え?使用人達に紛れていたのですか?」
「その時、間近で見たユスティア嬢に一目惚れしたんだ」
まさか、公爵子息が使用人に紛れて見送りなど、一目惚れという単語がどこかへいってしまうほど信じられなくて、目をぱちくりさせた。
その仕草があまりのも可愛らしく、エドワルドは思わず胸を押さえ前屈みになり、はぁ・・・・と、息を吐いた。
「エ、エドワルド様!?具合が悪いのですか?」
焦るユスティアに「大丈夫」と顔を上げれば、目元がうっすらと赤く染まっており、心なしか目も潤んでいる。
暴力的なほどの色気に、ユスティアは一瞬で熱が上がり真っ赤になった。
そしてじわじわと思い出す、一目惚れという言葉。
え?エドワルド様って・・・私の事が好きなの??
一目惚れという事は、そうよね?え?え?
混乱するユスティアに、エドワルドは彼女の手を取り跪いた。
「ユスティア・フライアン侯爵令嬢。どうか私エドワルド・ライトと結婚してくださいませんか?」
先程から、いや、毎日の様に言われ続けていた求婚の言葉だったが、これは断ってはいけないような雰囲気を漂わせ攻めて来る。
しばし考えた後、正直な気持ちを言葉にした。
「巻き込んでしまった手前、本当であれば婚約の解消をしなくてはいけないと思っていたので、反対に求婚されるとは思いませんでした」
「あなたの姿をこの目に映した時から、僕はあなたの物なのだから、婚約の解消などあるはずもないでしょう」
「でも・・・エドワルド様はとても美しく魅力的で、女性には大変人気があるのでは?私の様な子供より、同年代の素敵なご令嬢がいらっしゃったのではないのですか?」
ユスティアにとって深い意味はなく、単に恋人や好きな人がこれまでいて、自分の所為で別れたりしてしまっていたのではないかという、申し訳なさからの言葉だったのだが、エドワルドからしてみれば、自分の気持ちを疑われたも同然。
ユスティアにとっては今日初めて会った婚約者だが、エドワルドにとっては何年も恋焦がれた婚約者だ。
何故、愛する人がいるのに、他の女に触れなくてはいけないのか。これまで、誰一人として触れた事がないのに。
彼女がエドワルドの事を心配しての言葉だとは、頭の中では理解しているが、腹立たしい。
何故、自分のこの気持ちを信じてくれないのかと、思いっきり拗ねた。
そして、十四歳に本気を見せる十九歳に、ローラはドン引きするのだった。
フライアン侯爵家に潜入させている使用人からも、彼らはこれまでと変わらない生活をしているという。
潜入させている使用人は、キャロル達の動向を探る為に潜入させている。
だが、ローラは王都に戻ってくると決まった時点で、自動的に公爵が雇用主になるよう、フレデリカが手配していたのだ。
何もかもが、フライアン侯爵の知らぬ間に、だ。
果たしてそれは可能な事なのか・・・・
恐らく他家では不可能だろう。しっかりと当主が自分の仕事をしていれば。
今現在のフライアン侯爵家で力を持っているのは、家令のバルド。彼は、前当主エイトの腹心でもある。
侯爵家を実際に回しているのは彼であり、人事の権限を持っているのも彼。
現当主のカーネルはある意味お飾り当主でもあった。
当然、バルドはライト公爵に協力的だ。侯爵家を守るために、エイト達と計画していた事でもあるのだから。
そして彼は、中立であることをエイトとフレデリカに求められていた。
キャロルやライラに、ユスティアに肩入れしている事を感づかれては、それこそキャロル達に何をされるかわからないからだ。
ましてや、使用人を一掃されてはかなわないので、見えない所で守るよう言われていた。
エイトとフレデリカ、ユスティアを愛するバルドを筆頭とする使用人達にとってはとても辛い事だったが、あくまでも忠実に職務をこなしていた。
なのに起きてしまった事件。ユスティアが暴力を振るわれ、家を飛び出した事に驚き、誰よりも憤慨した。
と同時に、バルドの中で何かが切れた。
あぁ・・・早く当主様には引退していただこう・・・・
バルドはユスティアがライト公爵家に保護されたその晩に、公爵家を秘かに訪れたのだった。
ライト公爵邸に保護されてからのユスティアは、領地に居た時の様に心穏やかに過ごす事が出来ていた。
額の傷も痕は残らないと言われ、ローラ達はホッと胸を撫でおろす。
ただ実際、傷と叩かれた頬の痣の完治は、少し時間がかかりそうだ。
打ち身でところどころ痛かった身体も、今ではあまり気にならない程度の痛みに。
もう、普通に生活できる位は回復している。
なのに、エドワルドはユスティアの傍を離れようとはしない。
ユスティアに対し常に熱い、蕩ける様な視線を向けてくるので、とても居心地が悪かった。
そして、エドワルドがユスティアの婚約者なのだと、彼女が認識した瞬間から、彼の猛アプローチが止まらない。
「やっと婚約者に会えたんだ。これまで会いたいのを我慢していた分、傍に居させてくれないか?」
「まだ僕たちの婚約は(仮)みたいだけれど、どうか僕と正式に婚約してくれないだろうか」
「あなたを初めて見た時から、僕の心の中にはあなたしか住んでいないんだ。ユスティア嬢、僕と結婚してください」
これまで会いたかった気持ちが、恋焦がれていた気持ちが、溢れてしょうがないとでもいうように。
だが、いくら祖母から絵姿や近況報告を受けていたとしても、会った時から好意的なエドワルが不思議でならない。
「私とエドワルド様は会ったばかりではないですか。それに、我が家の問題に巻き込まれた形での婚約でしょう?不満ではないのですか?」
「エイト様、フレデリカ様から話を聞いた時は、他家のお家騒動に何故巻き込まれなければならないのか・・・と、正直思った」
そうだろうな・・・と、ユスティアは頷く。
「だけど、お二方と言葉を交わしているうちに、この方たちが育てられたのならば、きっと魅力的な令嬢なのだろうと思って了承したんだ」
そして、領地へと旅立つあの日、こっそりと見送りに参加していた事を明かした。
「え?使用人達に紛れていたのですか?」
「その時、間近で見たユスティア嬢に一目惚れしたんだ」
まさか、公爵子息が使用人に紛れて見送りなど、一目惚れという単語がどこかへいってしまうほど信じられなくて、目をぱちくりさせた。
その仕草があまりのも可愛らしく、エドワルドは思わず胸を押さえ前屈みになり、はぁ・・・・と、息を吐いた。
「エ、エドワルド様!?具合が悪いのですか?」
焦るユスティアに「大丈夫」と顔を上げれば、目元がうっすらと赤く染まっており、心なしか目も潤んでいる。
暴力的なほどの色気に、ユスティアは一瞬で熱が上がり真っ赤になった。
そしてじわじわと思い出す、一目惚れという言葉。
え?エドワルド様って・・・私の事が好きなの??
一目惚れという事は、そうよね?え?え?
混乱するユスティアに、エドワルドは彼女の手を取り跪いた。
「ユスティア・フライアン侯爵令嬢。どうか私エドワルド・ライトと結婚してくださいませんか?」
先程から、いや、毎日の様に言われ続けていた求婚の言葉だったが、これは断ってはいけないような雰囲気を漂わせ攻めて来る。
しばし考えた後、正直な気持ちを言葉にした。
「巻き込んでしまった手前、本当であれば婚約の解消をしなくてはいけないと思っていたので、反対に求婚されるとは思いませんでした」
「あなたの姿をこの目に映した時から、僕はあなたの物なのだから、婚約の解消などあるはずもないでしょう」
「でも・・・エドワルド様はとても美しく魅力的で、女性には大変人気があるのでは?私の様な子供より、同年代の素敵なご令嬢がいらっしゃったのではないのですか?」
ユスティアにとって深い意味はなく、単に恋人や好きな人がこれまでいて、自分の所為で別れたりしてしまっていたのではないかという、申し訳なさからの言葉だったのだが、エドワルドからしてみれば、自分の気持ちを疑われたも同然。
ユスティアにとっては今日初めて会った婚約者だが、エドワルドにとっては何年も恋焦がれた婚約者だ。
何故、愛する人がいるのに、他の女に触れなくてはいけないのか。これまで、誰一人として触れた事がないのに。
彼女がエドワルドの事を心配しての言葉だとは、頭の中では理解しているが、腹立たしい。
何故、自分のこの気持ちを信じてくれないのかと、思いっきり拗ねた。
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