ゆめも

toyjoy11

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ヒロインよ。脳筋女騎士に3Dチェスを渡してはいけません

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剣と魔法のファンタジーの世界。
この世界のどこかにあると言う異世界へと通じる門から行けると言う世界。

これはそんな世界にとある少女が転生したのが始まりとなる。
少女はこの世界とよく似た世界を知っていた。画面越しではあるものの。
少女はこの世界のこの国の人間たちを知っていた。乙女ゲームとして。
少女はそのゲームの攻略キャラが全員大好きだった。

だから、少女は望んだ。逆ハーレムエンドを。

しかしながら、少女は自分の初期設定が我慢できなかった。
貧乏暮らし、義母による虐待の日々。

耐えきれなかった。

だから、彼女はゲーム開始前にゲームの初期設定を覆してしまった。
そう、彼女は現代チートをしてしまった。

この世界は、少女の前世で言うところの中世ヨーロッパの文化体系であった。

井戸は綱を手繰り寄せて、バケツで注ぐ。
馬車はガタガタ揺れる。軸にほぼ直接車体を置いているから、しょっちゅう、馬車の軸が折れる。
味付けは塩のみ。胡椒無し。
遊び道具は蹴鞠のようなものではあるののの、毬として使われていたのは、ただの木のボールだったり、酷いときは生きた動物だった。
下水設備は無く、道にはそこら中に糞尿が転がっている。

少女の前世の常識では色んな意味で無理だった。

少女は、井戸にポンプを付けた。
少女は馬車に板バネと釣鐘式の馬車を設計した。
少女は遊び道具にチェスとオセロとトランプを用意し、売り出した。
そして、貴族向けには魔法で動く3Dチェスを用意し、売り出した。

下水施設は無理だったけど、せめて、糞尿回収場所と人を専門に行う会社をつくって、多少改善してしまった。
あぁ、だから、こうなる。

ゲーム開始、その時に、少女は伯爵令嬢となっていた。

全く、血のつながりのないアドバル伯爵が、彼女のアイディアと力を利用するために、自分の庶子と言うことにしたのだ。その際に、虐待していた彼女の義母はいないことになった。彼女を守っていた父親も居ないことになった。

これがこの物語の始まり。
これが、少女のミス。

結果的に実の父を殺してしまい、複数の男性を我がものにしたいと野望を持つ少女の運命は確実に変わっていっていた。
それでも、神様は彼女がさらなる愚行を起こさないのなら許そうと思って、様子見をすることにしました。

***

剣聖。それは、剣に優れた男性に与えられる称号。
剣姫。それは、剣に優れた女性に与えられる称号。

その国の剣聖は、この国を守った当時子爵家の次男坊であった男性がなった。現在はアルト侯爵家当主レオン・アルト侯爵その人である。
そして、剣姫として選ばれたのは、コイドント伯爵家の3女エレイン・コイドント。
12歳で、レオン・アルトを剣圧のみで吹き飛ばした異才の持ち主である。

彼女は、剣に関しては、天才だった。
剣を持てば、自分よりも3倍以上でかい人間さえも簡単にのせる程の能力の持ち主であった。

だが、彼女は戦いに関すること以外では壊滅的に頭が悪かった。
彼女はいろんな意味で純粋だった。

その為、理屈を一杯捏ねているような学問は彼女の脳みそには届かなかった。
楽しくないと認識した勉強は二度と手に付けなかった。

彼女はいつも信じていた言葉がある。
「筋肉は裏切らない。」
それこそ、彼女の信念。

でも、きっと、このままであれば、彼女の運命は左程変わりはしなかった。
元々彼女は、騎士訓練学校に行き、後の英雄の片腕となる女性だった。
彼女は、その騎士訓練学校で事故に遭い、右腕を失うのだが、それをきっかけに人を支える指揮官としての才に目覚め、後の英雄の片腕となる運命だったのだ。

だが、彼女は知ってしまった。
訓練学校に行く前に、3Dチェスなるものに。

地形を生かし、戦う利点とその利用法を分かりやすくゲームで出来るこのゲームを知ってしまった。
人の流れとその利用法を知ってしまった。

だから・・・。


***

「第3回、チェスタ王国3Dチェス大会、決勝戦を執り行います!」

「「「「おおおおお!!!!!」」」」

「東方軍担当、カルバン・チェスタ陛下!!!」

「「「「おおおおお!!!!!」」」」

「西方軍担当、エレイン・コインドント伯爵令嬢!!」

「「「「きゃー!!エレインおねー様ーーー!!!」」」」

「では、試合、開始です!!」

「「「「おおおおお!!!!!」」」」

浮き上がる魔法陣。
次の瞬間、地魔法で創られた山と川の地形。
東方軍300万。
西方軍300万。

それぞれのピンが青と白で構成され、立ち上がる。
そして、そのピンはリアルタイムで動き始める。

まるで、戦闘シミュレーションゲームの様にまるで、生きたコマのように動く青と白のピン。
初めこそ白のピン側であるエレインが勝っていたが、徐々に青が白のピンを囲んで、勝負は陛下の方に軍配が上がった。

残ったピンは東方軍280万。西方軍200万。
エレインの敗北である。

「エレイン嬢、実に、実に楽しい試合であった。」
「ありがとうございます!陛下!自駒が裏切って、青駒になった時は、サッと血の気が引きました。」
「根回しと言うものが、大切なのだよ!まだまだ甘いな!エレイン嬢!」
「はっ!精進いたします!」
「あぁ、そう言えば、エレイン嬢はそろそろ13歳か。学園入学になるな!何か欲しいものは無いか?」
「はっ!特にありません!」
「おぉ、いつもながら、即断即決。本当に考えておるのか?」
「はっ、考えておりません。」
「考えよ!わっはっは!!」
「はっ!努力いたします!」

ヒロインの少女が知っていた乙女ゲーム『ドキドキ★星雲の神子と5人の天使』で、登場予定のない少女エレインは、陛下の後ろ盾を得て、レオン侯爵自ら家庭教師となり、魔法騎士学園の入学をトップで入学することとなった。

脳筋じゃなかったのかって?
いや、彼女は脳筋のまま。

歴史も数学も国語も筋肉で例えて、勉強をレオン侯爵にしてもらい、入学試験を突破した猛者である。

「大胸筋から鎖骨に伸びるように、バイン帝国の国境が・・・。」
とか言いながら、トップ入学した訳の分からない猛者である。

***

「いっけなーい。遅刻しちゃう。」
少女、マリア・アドバル伯爵令嬢は入学式なのに、遅れて校門を馬車で通った。
門番は呆れながら、講堂に急ぐようにと忠告をした。
その際、この国の第二王子とぶつかった。
「キャン!」
「あぁ、大丈夫かい?」

倒れた少女に手を差し伸べる第二王子ランベル。
そっと、遠慮がちにその手に捕まるマリア。

絡まる視線。

そして、無常になる入学式の開始ベル。

「あぁ!!急がなくっちゃ!すみません!ありがとうございます!」
「あ!君のなま・・・あぁ、行っちゃった。」

走り去る少女マリア、目線だけ追いかける第二王子ランベル。
それが、二人の出会いであった。

***

学園中庭にて、緑髪の少年と少女マリアが談笑する。
ゲームでは、この緑髪の少年の婚約者の子爵令嬢が割り込んで来て、マリアとの談笑を邪魔をするのだが、婚約者の子爵令嬢は常識人だった。
自分より身分が上のマリアに文句を言うことはできなかった。
だから、虐めイベントは発生しないで、そのまま和やかに中庭デートは終わることとなった。

***

学園の図書室にて、青髪の少年と少女マリアが一緒に勉強をしている。
たまに声が図書室中に響くが、マリアよりも爵位が低い少年少女の方が多い図書室の生徒たちは甘んじて我慢することとなった。
青髪の少年の婚約者の侯爵令嬢が一度、忠告しには来たけど、強くは言わず、一応、義務だからと言う感じで言ってくれたが、少年と少女はその言葉を虐めととらえて、大声で怒鳴り散らしたので、令嬢は呆れて、去っていった。

数週間後、青髪の少年は婚約解消となったのだが、少年は嬉々として、浮かれまくり、色んな意味ですっかり忘れ、そのことをマリアに伝えることはしなかった。

***

赤髪の青年のように見えるマリアの幼馴染の少年はいつも武道場で訓練している。
今日も銀髪の少女と訓練している。
正直近づくと怪我をする。
しかも、その様子をこの国の王様と騎士団長が談笑しながら見学している。
マリアは赤髪の少年の攻略はあっと言う間に諦めた。

***

魔法研究棟にて、一人の教師がワンツーマンで少女マリアに個人授業をしていた。
ただし、周りに複数の魔法研究員がいたが。

たまに指を絡ませたりしながら、勉強をしている二人を見た研究員は苦虫をかみつぶしたような顔をしていたのだが、二人は気付かずに、楽しく勉強をしていた。

***

学園のすぐ隣の街エーダン。
そこに手をつないで歩く金髪の少年とピンク髪の少女マリア。
二人は、時に屋台を見て歩き、購入して立ち食いをし、見世物があると言う中央広場に行って、芸人たちを見に行って、沢山拍手をしたり、日が暮れた街外れの外門でキスをしたりした。

まぁ、実は遠くで金髪の少年の護衛達が複数でその様子をしっかり記録していたのだが、少年少女はそのことに気付くことは無かった。

***

少女マリアは、イベントが動かないことに多少不安を感じていた。
第二王子ランベルとイベントを進めるためには悪役令嬢たるランベルの婚約者トルデリーテが元平民(・・)のマリアを虐めたり、殺されかける必要がある。しかし、トルデリーテはマリアどころかランベルにさえ近づこうとはしなかった。
忠告さえもしてこない。

そう、一切ノータッチ。

不安に感じた少女マリアはトルデリーテに関する噂を流した。
結果、トルデリーテ公爵令嬢は、隣国の学園に留学した。断罪どころか、イベントのほとんどを行う前に。

困った結果、架空のトルデリーテの信者を自作自演で演じ、階段落ちを披露した。
いやーとても大変な模様だった。

マリアが足をくじいて、涙を浮かべる中、第二王子は固く婚約者トルデリーテを断罪せんがために行動を始めた。

***
そして、訪れる少女マリアの卒業式。
それは行われた。

第二王子は、銀髪の少女エレインを指さし、こう言った。
「エレイン・コイドント伯爵令嬢、君は隣国のトルデリーテの命で、このマリアをイジメたな!」
「よくも!」
「そうだそうだ!」
それに追従するマリアに落とされた少年たち。

「へ?」
言われた意味が分からずポッカーン顔のエレイン。

「はぁ?」
「舐めてんの?ぼ~や達?お姉さまを侮辱する気?」
それを聞いて、殺気立つエレイン親衛隊達。
現在、自他国でエレインの存在はアイドル以上の人気者なのだが、少年たちも少女マリアもそれを知らないらしい。

ビビる少年たち。歯向かう少女マリア。
「私が元平民だから虐めたんでしょ!」
と叫ぶマリアに

かなりの数の人間が
「「え??」」
と困惑の声を挙げた。

エレインも
「え?貴女は元々伯爵家の令嬢でしょう?何を言っているの?本当のお母さまだって、元々あなたのお家に一緒に住んでいるって聞いたんだけど?え?え?元平民だったの?」
困惑して、知っていることをつい、暴露してしまった。

そう、少女マリアを養子にしたアドバル伯爵は徹底して情報を管理し、操作した。
結果、誰もマリアが元平民と知るものはかなり少ない。

マリアはそんなことも知らなかったのだ。

「え?」
マリアはその時初めて、自分が伯爵令嬢だったことを自覚した。

あぁ。それは、実に遅い気付きであった。

少女はもちろん、少年と彼女の後ろに立っていた信者となった先生も浮かれてそんなことに気付いていなかった。

「私が王妃になるのよ!」
といきなり、混乱した少女マリアが叫ぶ。
「そうさ、君が私の妻であり、次期王妃だ!」
と追随するように叫ぶランベル殿下。

「えぇっと?陛下ぁ!!!!レオン先生!!!助けて!頭が混乱です!意味不明です!」
更に混乱したエレインのバカでかい声。
会場が揺れる鼓膜が破けるかと思うほどの大声。

駆け込む衛兵。
苦笑いの陛下とレオン・アルト侯爵も軽く息を切らせて現れた。
そして、状況把握。
一度、卒業式は中止となり、3日後に改めて行うこととなった。

騒ぎの発起人。少女マリア。先導またはほう助した4人の男たち。
目がぐるぐるの混乱しているエレイン。

卒業生が一度会場から出て、その場で、陛下がエレインのこめかみをチョップした。
正気に戻るエレイン。

エレインは、流れるような動きで、陛下に土下座する。
「お騒がせしましました!申し訳ございません!」
その様子にビビる少女マリア、引く4人の男たち。

陛下はエレインの頭をポンポンと軽く叩いて、
「あーわかってる、お前のせいじゃないし、土下座はせんでいい。」
と苦笑い。

「まぁ、なんだ?取り合えず、ランベル、お前は廃嫡の上、ライン伯爵として、卒業後もう一度勉強してこい。」
ライン伯爵になると言うのは、俗に言う王家専用の島流し場所に行けということである。
呆然とするランベル殿下。

「えーーと、マリアと君の父上と思ってたんだけど、アドバル伯爵。書類偽造とマリアの両親お呼びマリアの友人多数を証拠隠滅の為大量に殺害していたみたいだね。しかも、アドバル夫人殺害、子息も先ほど白骨死体が発見されたよ。」

「へ?」

崩れ落ちるマリア。
取り押さえられるアドバル伯爵。

「マリア、君は修道院行きにしよう。流石に禍根を残すと言ってもアドバル伯爵と一緒にギロチンは可哀そうだしね。」
「へ?」

「神に尽くしなさい。」
「は?へ?え?は?」
両腋に手を入れられ、無理矢理立たせられたマリア。混乱の中、馬車に詰め込まれてどこかに行ってしまった。
抵抗し続けていた3人の男たちは衛兵たちに滅多打ちされ、現在気絶中である。

にっこり笑ったレオン侯爵はエレインの頭を撫でながら
「うん。こんなくだらないことより、特訓が大事だね。さぁ、今日は肺と横隔膜さえも強化する訓練もしよう!大声はどうやら、凶器としても使えそうだしね!」
「はい!レオン先生!!」

苦笑いの陛下は二人に軽く手を振る。
ダッシュで駆け抜けて、訓練場に向かう二人。

陛下は現在の状況に軽くめまいを覚えそうになっている。
その隣に立つ第一王子のライオネル殿下。
「さ、8人も側妃を作ったつけです。頑張ってくださいね?父上。」
「あー、はいはい。わかってますよ。もー、ランベルもバカだな。あいつ、王になんかなれるわけねーのにね。ライオネルがいるんだし。」
「あー、まー、ランベル、ちょっと抜けてますしね。」
「ちょっとか?」
「はいはい、それよりさっさと処理していきましょう。」
「あーもう、分かったよ。」

二人は部下に指示出しし、この場を処理していく。

「あー、もう、予言真面目にきいときゃ良かったかなぁ?」
陛下の小さい呟きは会場のごたごたに紛れてあっと言う間に掻き消えるのであった。

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