ゆめも

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おばちゃんと乙女ゲーム?

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目を覚ますとおばちゃんだった。
汚れた水溜まりに映る自分の顔は40台くらいのくたびれたおばちゃんだった。

頭が痛くって、手を伸ばすと後頭部から出血の後、どうやら、この体は一度死んでしまったらしい。
そして、私がサクッとこの体に入った模様。
前世の記憶云々とか、今世のこの体の記憶とか両方ほとんどない。

実に困った。
体つきを見ると痩せぎすで骨と皮だけである。

辺りを見回す。
自分と同じような痩せぎすの人間が老若男女関わらず倒れている。
怪我している者もいるけど、大抵の場合はお腹が減りすぎて倒れているようだ。

鼻をつまみたくなるような腐敗臭もそこら中からする。
ちなみに自分からもする。

てってってっと足取り軽く、暗い今の場所から明るい方へ行く。
辺りは賑やかな市街に見える場所。
しかし歩く人は私を見て、凄く嫌な顔をした。

なんとなく理解。

さっさと退散。
一旦元の場所に戻る。
夜になるのを待って、生きている者のうち担げる者…子供3人だけだけど担いで、街を出た。
衛兵が嫌な顔をしたけど、出る分には何も言われなかった。

小さく、「野犬にでも食われるさ」と聞こえたような気がしたけどね。

何でか運んだ子供は全然動かない。死んだ目のまま。
息はしてるし、目は開いてるんだけど、何でだろう?

気にせず、音を頼りに水源を探す。

見つけた川。
飛び込む私。

冷たいけど、今は初夏のような温度。
気持ちいい。

さっさと頭まで浸かって、小石とか砂利とかに体を擦り付け、イボみたいになってる垢を落とす。
そこら辺のイネ科っぽい草を毟りまくって、体をごしごし磨く。

やっと現れる地肌。
ちょっとしわが多くて、日に焼けている。

あんなにがさつに洗ったのに傷一つない。
丈夫な体だ。

生きているのに死んでるみたいな子供たち。
この子たちは一人ずつ水に浸して、イネ科っぽい草でゆっくり洗う。

全然反応しないのが不安で仕方ない。
一応、もう一度心臓と息を確かめた。
生きているんだけど、やっぱり反応はない。

うーん。
困った。

一応、起きて近くにいる人に話しかけてはみたんだけど、この子達と同じで全く反応しないのだ。
まるで生きているけど人形な感じ。

漫画風に言うなら人体実験を行われた後、魂が抜け抜け殻になった被検体たちって感じだろうか?
もしくは、レ〇プされた後の人みたいな?

まぁ、子供たちは全員男の子だし、流石に〇イプにあってはいないと思うような年齢だ。
3~5歳位だし。

見た感じ、自分の髪の色や目の色から考えるに自分の子供じゃないと思う。多分。

顔も私は平たい顔だけど、この子たちはイタリアンな感じの外国人顔。

うーん。
現状把握ができない。

取り合えず、服も洗って、その濡れた服を絞ってからそれでみんなの体を拭いて、近くにあった洞窟に侵入。
熊が居たから鍋にした。

石でも木でも凶器になるもんだ。
後は度胸と根性と勇気だね。

自分の度胸に感心する。
すげぇ。

ここに来るまでに落ちてたボロボロの鍋で、クマ肉を手でちぎって、鍋に投入。

握力が半端ないな。この体。
皮も適当に剥いだ。そして、川に漬けている。

血の匂いが酷い。

明日は別の場所に移ろう。

取り合えず、飯だ飯!

美味しくは無いけど、食えなくは無い。
細かくちぎったやつを子供の口に入れてみる。

全然食べない。
動かない。

うーん。
困った。

取り合えず、食べれそうな木の皮を探す。
あちこち探して、柔らかく苦みがあるけど、食えなくはないものを発見。
虫も動物も食べた跡がある。

バリバリ捲りまくって、回収。

クマ鍋に投入。

ぐつぐつ。

かなり柔らかくなったので、その汁をゆっくり飲ましてあげる。
何とか嚥下した。

気付いたら、日が昇っていた。

ありゃ、徹夜した。
おばちゃんに徹夜はキツイ。

寝るか?
でも、洞窟で寝るのは怖いな。

森を散策。
丈夫なつたを見つけ、それで子供たちと自分を括り付け、近くの大樹に登る。

木々でカモフラージュして、蔦を使って、木と自分たちを固定。

おやすみなさーい。

****

きしゃーーーー!!!
ガシッと。

目を覚ますと蛇が居たので、掴んだ。
縊り殺して、口で頭を噛みちぎる。
そのまま血抜き。

子供たちの様子を見る。
やっぱり目に光がともっていない。

昨日の洞窟に行く。

日は既にてっぺんまでのぼっている。
眩しい。

残ったクマ鍋は既に空っぽ。
何かいろんな動物が来て食べられて模様。

角が生えたウサギ達が襲ってきた。
どうやら、このウサギはクマ鍋を食べたものの仲間らしい。
持っていた蛇を鞭みたいに使って、気絶させた。

3羽ゲット。1羽逃がした。
クマを倒した石で頭を潰して、血抜きしながら川へ行く。
鍋自体は無事だから、ウサギ鍋。
木の皮はまだストックがある。

蛇は川に漬けている。

クマの皮は、盗まれていなかった。
回収して、天日干し。

ウサギの皮は上手く剥げなかった。
残念だ。

細かくちぎったウサギ肉を子供たちの口に入れてみる。
相変わらず、反応なし。

困った。
取り合えず、今日も汁だけ飲ませてあげる。

ウサギ肉2羽分が胃袋に入った自分が信じられない。
良く食うな。私。

残ったウサギ鍋。

どうしよう・・・。勿体ない。
汁は全て飲んだから、木の皮とウサギ肉だけだけども。

取り合えず、焼いた後、洞窟に置いてみた。

気付いたら、もう日暮れ。

軽く体を洗う。子供たちは軽く川で濡らした後、近くに落ちていた幌馬車の残骸の布を使って、拭いてあげた。

そして、今日も昨日の木に登る。

おやすみなさーい。

****

きしゃーーーー!!!
ガシッ。

今日も蛇が起こしに来た。
縊り殺して、頭を噛みちぎって、血抜き血抜き♪

神様に今日も恵みをくださってありがとうとお祈り♪
いただきましょう♪

洞窟には案の定、角ウサギが5頭。
お仲間の肉をついばんでいる。

うえへぇー。

今日は2匹ゲット。3匹に逃げられてしまった。
きっと足りない。

森を彷徨う。
鹿発見。
追いかける。

ケーーン!!!
と後ろから鳴き声。
振り向く。
派手派手しい鳥発見。
近くの石を投擲。
ヒット!

更に近くの木の棒を掴み、突き刺す。

鶏肉ゲット。

雉も鳴かずば撃たれまいに・・・。

これは雉じゃないっぽいけどね。

首を毟って、血抜き血抜き♪

ところで、本当、背中に担いだまんまなんのこの少年たち。
全然、反応しない。
こんなに走ったり、跳んだりしてるのに。

取り合えず、兎鳥鍋だ。
木の皮とウサギ肉と鶏肉を使って、鍋にする。

あー、塩味が恋しい。

子供たちの様子を見る。
今日は心なしか光がともっている気がする目。
まずは汁を飲ませてあげる。
昨日と違って、ごくごくと勢いよく飲む子供たち。
細かくちぎった肉をあげる。
ウサギ肉は食べなかったけど、鶏肉は食べた。

「おおおおお!!!!!良かった!!!神様仏様。ありがとう!」

思わず叫んでしまった。
ちなみに私の中の神様はふくよかで、袈裟みたいなのを付けたほぼ裸の人で、髭っぽいのが生えてて、頭がパンチパーマみたいになってる。
あんまり覚えていないけど、ふわっとそんなイメージ。

さておき、今日はまだ昼なので、散策する。
木の実とか発見して、回収。
蔦を使って、肩掛けバックを作成する。

そのあたりで日が暮れ始めた。
木に登って就寝。

おやすみなさーい。

****

そんなこんなで、日々暮らしていた。
その最中に傷だらけの冒険者を発見。
介抱したら、男が一目惚れしたとか言ってきた。

取り合えず、子供たちと自分たちの現状を聞いて、大泣きする冒険者。
彼の名前はロイド・カーテンと言うらしい。

名字があるってことは貴族なのか?と思って聞いたら、子爵家の次男坊だけど、ほぼ平民扱いなんだそう。
8人兄弟で食うに困っているらしいので、冒険者をやっているんだそうだ。
ちなみに領地は両親がなんか不正しているんだそうで、メンドクサイことを言っている。

聞かなかったことにしたいなぁー。

8人兄弟は、長男を残して、家出したけど、基本的に貴族だから手に職が無いらしい。
「え?頭悪いの?貴族なのに?」
と言ったら、苦笑いされた。

よくわからんけど、この世界の貴族子息はバカらしい。

話してみれば、二桁の四則演算がギリギリのレベル。
ありえん。

あんまり覚えてはいないけど、前世はそこらへんはちゃんとできていた模様。だからだろうか、私もできる。
よかったよかった。

兎に角、彼の家に居候できる模様。
子供たちと一緒に行った。

6人の青年と少年がご飯を求めて、わらわらと集う。
そこで気付く、ロイドが傷だらけなこと。足に当て木をされて、グルグル巻きにされていること。
私が彼を背負ってること。

はい。
そうです。
ロイドさんは骨折してます。

私は子供3人。
青年1人を背負ってます。

重いです。

沢山食べるようになり、更に異形の様に力持ちな私。
あら、怖い。

無言の6対の瞳。
ロイドさんを下ろし、説明を願う。

****
今日は屋根があるところで寝れます。

この家は日本で言うところの3階建ての別荘な感じ。
貴族で言うところのボロ小屋らしいけど、結構贅沢です。有難い。
持ってきた熊皮をひいて、3人を寝かし、私もお休みなさーい。

****
昼間っから寝たせいで、起きたのは深夜。
未だにロイドさんたちは話し合いの模様。

台所を探す。
食材はあるけど、料理してる感じは無い。
子供たちはここに置いておいて、夜の森に行く。
熊を発見。
苦戦したけど、何とか勝った。前回は寝込みを襲ったけど、今回は正々堂々の勝負。辛酸ではあったような気がするけど、無傷で勝利!
川に運んでから、血抜き。皮を剥いで、川に晒す。
肉をちぎって、蔦カバンに入れて、血抜き。

近くの木で眠る。
朝起きて、肉が無事だったが、熊皮が半分流されていた。
勿体ない。

それでも半分は無事。
適当に絞って、子供たちを置いてきた家に戻る。

そしたら、必死の形相の7人の男たち。
どうやら、私を探していた模様。
「だいじょうぶか?!」
「無事か?!」
と私を心配してくれている。

ありがたいなぁー。

軽く説教された。
「夜の森は危険。」
要約するとそうなんだけどね、私、熊狩ってきたばかり。

取り合えず、聞いているふりして、家に戻ってクマ鍋。
「これ、なんの肉?」
と聞かれるけど、
「獣肉。」
と答えるだけにした。

まぁ、背中に背負ってるクマの皮で分かる気がするんだけどね。

子供たちは最近動くようになってきた。
最低限だけどね。

基本的にボーっとしている。
食べるときに動ける程度。
ただ、一人で食べるのはまだ難しい。

久しぶりに塩味のある鍋。
美味しかった。
それにまともな野菜も食べれた。
木の皮は栄養はありそうだけど、何せ樹皮。苦い。

取り合えず、腹が減っては何とやら。
皆で鍋をつついて、熊丸ごと一頭全員腹の中に入っていった。むしろ足りない。

足りないから、ウサギ肉の干物を発見。それと木の皮の鍋。子供たちにそれを飲ませて食べさせた。7人の男たちは、一口食べて、断念した。美味しくなかったらしい。栄養はあるんだけどね。仕方ない。

話し合いの結果、私たちはこの家に住むことが出来ることとなった。
同時に、この世界のことこの国のことを教わった。

まず、第一にこの国の文字を教わった。
平民はほとんど書けないし、読めないらしい。

私は、前世とは違うと言うことはわかった。普通に読めない。
教わった。
朝の2時間だけ。子供たちと一緒に。

それが終わったら、狩り。
女の私が狩りに行くのに男たちが狩りにいかないのはおかしいのではと7人とも言いだした。
一人は骨折してるからベッドに括りつけた。

と言うか、今頃か?
今まで、次男坊一人に仮をさせてたこの男どもは本当に坊ちゃんだなぁ。

ちなみに、ロイドさんの兄弟は、こんな感じ。

長男 ライド(26歳)
彼はここにいないから、どんな感じかは知らない。
次男 ロイド(24歳)細マッチョの狩人。
三男 ダナン(23歳)メガネニート。
4男 エイド(23歳)短髪ニート。
5男 リード(22歳)長髪ニート。
6男 バルン(20歳)短髪ニート。
7男 カルド(18歳)短髪ニート。
8男 キルト(15歳)長髪ニート。

ちなみにこの世界の成人は15歳である。

全員成人してるじゃないか?!で、ニートしてたの?!長男とロイドさん以外。ありえねぇ。

体つきはみんな立派。
太ってはいないけど、痩せても居ない。
普通の体型。
ロイドさんは筋肉質だが、他の子は体力は無さそう。
確かに狩りに向きはしない。

取り合えず、ニートはまだ足手まとい。
今日は大人しくしてもらう。
サクッと熊とライオンみたいなのをゲット。
皮剥ぎ、川晒し。最中に鍋ぐつぐつ。
煮立って来たら、荷物回収して、帰宅。
その後の行動を見学。

3男ダナンは努力はしても体力無し、料理はできても、解体は無理。荷物はきっと持てない。勉強係だな。
国のことを教えてくれた時、分かりやすかったし、文字を教えるのも上手だった。まだ覚えきってはいないけど。

4男エイドはロイドさんの看病が上手。料理も出来る。解体はグロ耐性が無いらしいので、無理。熊内臓で吐きそうになってた。
看護師さんだな。

5男リードはグロ耐性あり。料理はそこそこできそうだけど、男料理って感じの鍋料理向き。今はそれでよさそう。解体も大丈夫。彼は鍛えて狩人になってもらおう。看病は彼にだけは任せては駄目だ。ロイドさんが悪化しかけた。

6男バルンは、グロ耐性あり。トラップ関係が作れそう。狩人は狩人でも待ちの狩人だね。解体も上手。料理は普通。
7男カルドは、グロ耐性はあるけど、苦手らしい。治療は比較的出来る。薬草を見分けられるらしい。これは完ぺき薬草係決定だね。本当、普通に仕事できるんじゃないか?彼は。何でここにいるのさ。
8男キルトは、グロ耐性無し。血が無理。よって治療も無理。薬草を見分けられるけど、森に出るには貧弱過ぎて無理。でも、裁縫が得意。料理も血抜き後ならできる。こりゃ、お母さん向きだね。

それぞれ役割分担について、再度話し合い。
初めは渋ったけど、やってるうちに様になってきた。

そして、時間は過ぎていく。


****
1か月後。
血だらけ長男やってきた。

手には人の首が二つ。
私とロイドさん以外がひぃい!!ってなってた。

ロイドさんと私が玄関対応。
聞けば、兄弟の父と筆頭執事の首らしい。彼らの母親たちは半分逃げて、半分死んだんだそうだ。
あぁ、腹違いだったのね。
玄関に生首は置いておいて、一旦、全身洗ってもらってからのティータイム。

聞けば、不正をしていた父はこの筆頭執事に唆されていたらしい。
領民と協力し、首は取った。
責任を取って、平民落ちをしようと思うのだけど、許されなかったら、処刑されるだろうから、最後のあいさつに来たらしい。

うえへぇーヘビーだね。

色々聞いてたら、不正の様子に協力者の影を感じる。
屋敷に出向きたいと申し出てみる。そしたら、ダナンが追従。
時間との勝負だったので、急いで、屋敷の書類を全部確認。
関係者の貴族がゾロゾロ出てくる。
しかも、侯爵家の名前も出てきやがった。確かにこのままだとライドさんは口封じに殺されるだろう。きっと、先導者の領民たちに交じって、スパイもいると言ったらみんな驚いた顔。何当たり前のことでしょうに?気を抜き過ぎだぞ?男ども。

数字も確認。
証拠を一杯集め、書類整理。徹夜した。眠い。
その後、スパイと思われる領民1名を含んだ計3名を連れて、王都に行くらしい。
ロイドさんが一緒に行くと言ったら、ライドさんが7人の兄弟は既に随分前に家出したことになっているので、一緒に行ったらみんなが危ないと言って断られた。
なので、私がメイドに扮していくことにした。

まともなメイド服だー。初めて着るなぁー。ちょっとにっこり。
ライドさんが、何度もいいのか?と確認してくる。

気にしなくていいのにねー。
王都へ行くのに7日はかかるらしい。
5日目でスパイの人がライドさんを殺しにかかったので、抵抗してたら相手の手首を切り落とした。
初めて、刃物を使って人を切ったので、ビビった。
刃物ってよく切れるんだね。手が震えた。

震えていた私に気付いたライドさん。
ごめんと言って、慰めてくれた。

縄で傷口を縛って、止血。
既に失神しているスパイさん。
これ、2日もつかな?

人が多い街へ着くのにもあと2日かかる。
近くの村でも後1日は必要。

うーん。でも行くしかない。

道中、私の立場は臨時で雇ったメイドと言うことになった。領民の人も私の顔に見覚えは無いので、普通に通った。何でか炊事洗濯は出来たし、メイドの仕事は上手にできた。服の着せ替えも普通にできる。多分、今世の私はメイドだったんだろう。多分。

道中、私の記憶喪失について聞いてみた。
皆、分からないと言った。

まぁ、そりゃそうだ。

村に着いた。
医者はいなかった。
スパイさんは衰弱している。

どうにもできない。
仲間だったはずの領民の人2名。トビイさんとペシンさん。二人の意見は共通。
「さっさと殺さない?裏切り者だよ?」
でも、証拠の人だからと説得。

一応、納得してくれた。
次の日早朝から出発しようということに。
何やら村全体が嫌な雰囲気だったから。

そしたら、村長が私たちを襲ってきた。
今度は力加減が上手にできた。
村長の両肩を脱臼させるだけで済んだ。

村人に聞いた。
村長は侯爵家の血筋なんだそうだ。

何で村長してたんだろう?
村人は何やら嬉しそう。

取り合えず、村長も連れてって良いらしいので、一緒に連れてった。

縛ったんだけど滅茶苦茶暴れたので、両足首の骨も脱臼させておいた。
痛みで動けないらしい。喚き散らすので、猿轡して、出発進行。

そうして、次の日の早朝王都に到着した。

****

ライドさん、堂々と正面から王城に打診した。王様との謁見願い。
うえへぇー一直線すぎて、ビビる。

そしたら、意外にもすぐに謁見できるとのこと。
どうやら、王太子とライドさんは親友らしい。

まぁ、色々検査されたりしたけど、私は無事です、はい。
真っ裸にされたり、体中検査と言うことで女の人にあちこち見られた。恥ずかしかった。うん。

何でか新しいメイド服を貰ったので、着た。
着心地が良かった。

話し合いは半日に及んだ。
私はその間、何でか王太子と第一王女第二王女の接待をしていた。
なんでだろう?

お茶を入れたり、髪を梳かしたり。
服の着替えを手伝ったり。

ほーんと、なんでだろう???

第二王女は私を滅茶苦茶気に入った。
特に髪梳かし。

誰でもできるだろうに?なんで???

夕方、ライドさんが迎えに来た。
取り合えず、今日は王都に滞在するのだけど、本来なら王都にある別邸に行くべきなんだろうけど、口封じのため殺される危険があるらしい。現に、ペシンさんが殺されたんだそうだ。
ありゃ、いつの間に。

トビイさんも重傷とのこと。
あぁ、私ここに居たから無事だったのね。
おぉ怖い。

と言うことで、王城に泊まることになった。で、第二王女が私を同じ部屋に止めたいと駄々をこねる。ちなみに第二王女は現在5歳。
金髪のクリクリドリルの髪の毛。
目は青色。
うん、可愛いね。

返答に困ったので、ライドさんに救いを求める。
目をそらされた。
王太子に目を・・・既にそらされている。
第一王女、現在22歳。
「お願い。一日だけ。」
お願いされてしまった。仕方ないので了承する。

第二王女なのに何でかメイドが0。なんで??
一緒に風呂に入りたいとか綺麗な服を他のも着たいとか色々言われた。
普通に風呂には一緒に入ったし、服も色々着せ替えた。
寝る前に絵本呼んでと言われたけど、絵本は支給されていない。部屋にも絵本は無い。
仕方が無いので、即興のニホン昔話。
その名も瘤取り爺さん。
何でそのチョイス?と思った?
私もそう思う。

でも、第二王女は大喜び。
他の物語もお願いしてきた。
なんで、無い頭をひねって捻って、思い出したのは、お結びころりん。
だから、何でそのチョイス?
まぁ、仕方ない。思い出せた絵物語はこんなんだったんだ。

諦めてくれ。

うとうとしながら、最後の話をおねだり。
流石に思い出せない。
そしたら、ピンと何でか戦隊ものの映像が頭によみがえる。
5人のヒーローが悪者を退治する話。でも、悪者は痛い目にあうけど、死にはしない感じのお話。
そして、巨大ロボは正義のゴーレムとして、登場。
興奮したお姫様。
ありゃ、寝れない。

最後の話にならなかった。
うーんうーんと一生懸命に思い出す。
最後の最後で思い出したお話。
それは、カチカチ山。

本当、どういうチョイス?私の脳みそ。

結末を言い終える前にお姫様は夢の中。
おやすみなさい。

次の日、ライドさんが話し合いの結果について話してくれた。
結論から言うとライドさんは平民にもならず、死刑にもなることは無くなった。
一味がデロン侯爵一派だったらしいんだけど、詳しい話は右から左。

馬耳東風。

だって、第二王女様がちょっかい出すんだもの。
ほっぺた引っ張ったり、お膝抱っこを要請したり、高い高いを要請したりで忙しい。
律儀に全部お願いを聞きながら、お話を聞いていたんだもの。しょうがない。

両手握ってグルングルンと王女を回転させながら、ライドさんは今日の夕方に戻るらしい。
「私も3人の子供が心配なので帰りたい。」
と言ったら、第二王女が大泣きした。

「いやだー!!!行かないでぇ!!!!」
胸をトントンと一生懸命叩く第二王女。
困る私。ライドさんはアワアワ。

集まる衛兵。
急いできた陛下と王妃。

いきなりビック!何で来るの陛下と王妃様!
ヒシッと抱きしめられて、くっ付き虫になった第二王女様。
そんな中で、事情を説明。

王妃様困惑。
陛下は頭を抱えた。

うーん。
困った。

どうやら、第二王女様は第三の側妃の子供らしい。別に王妃様が虐待したとかそう言うのは無い。ただ、側妃様は、既に出産で亡くなられたらしく、彼女の髪も真っ黒だったらしい。
あぁ、そう言えば、私の髪は黒だね。うん。

前世の記憶は微妙に最近思い出したけど、それは、自分自身のことではなく、本当に役に立たない記憶ばかり。
多分、こっちのことを覚えている現世の私の記憶の方が今は役に立っているような気がしないでもない。
貴族様のお着換えとか普通出来ない気がするし。お茶の入れ方とか多分、現世の私がやっていたことだと思う。多分。

まぁ、昔話は前世の記憶だよりだけど、まぁ、うん。仕方ない。

色々話し合いが行われた。
そして、いつの間にかライドさんが逃げた。
そう、領地に戻ってた。
酷い。置きざりーぬ。

まぁ、しゃーない。やることが一杯あるだろう。
今から大掃除の主導者の手伝いをするらしいし、こっちの状況に構ってられないのはわかる。命の為にもね。

で、私の記憶喪失が問題となった。
王家お抱えの宮廷医師に診断を受ける。
既に傷口は治っているが、頭部に長さ15㎝、厚さ1㎝の陥没があるんだって。

うえへぇー怖ーい。私よく生きてたね。
医師も同じ意見らしい。
記憶が完全に戻るのは絶望的だし、後遺症も普通は起きているらしい。私のバカ力も恐らく、その後遺症の一部なんだそうだ。
なるほど。

そんで、拾った子供3人と出来れば旦那さんを連れてきたら、万事解決なんだそう。
え?え?え?
意味わからん。

何がどうしてそうなったの??

貴族云々の説明があったが、要約すると子供がいるなら旦那が居なきゃいけない。既婚者のメイドなら第二王女のメイドにできる。と言うことらしい。

いや、そもそも、第二王女のメイドになる気は無いのだけど?

色々説得を試みたが、全て無為に終わったとさ。チャンチャン。

で、なんやかんやで、平民として、ロイドさんやってきました。3人の子供連れて。
ぼ~然とする私たち。
せっせと結婚式の書類が整えられ、サインをして、司祭様達に祝福を貰った。
そして、陛下の元に連れてかれて、何かサインをしたロイドさん。

何があったのと聞いたら、男爵になったとのこと。領地なしの男爵。なにがどうしてそうなった?

で、私もサインさせられた。
私は男爵夫人となった。

あぁ、そうそう、全然話に関係ないけど、ロイドさんは24歳童貞です。
私は非処女らしいよ?検診の時判明したけど。
そして、恐らく、私の年齢は36歳位らしい。

おっふ。ロイドさんと10歳以上も離れているよ。
これではロイドさんは熟女好きーと言われるに違いない・・・。

まぁ、間違ってないか。
だって、自分で初めて自分の顔見た時40過ぎのおばさんと思ったもの。
今は清潔にしたら若返ったけどもさ。
ロイドさんはそんなおばさんに一目ぼれしたって告白した人間だもんね。
うん。

交際さえスタートしてなかったけど、ロイドさんは滅茶苦茶嬉しそうだし、まぁいっか。

そうそう。
子供たちも検診してくれた。
そしたら、重大なことが判明。
子供たち、全員呪いがかけられてました。

簡単に言うとあそこに倒れていた人たちは私を除いて、誰かに実験で使用された被検体だった模様。
マジで?
冗談で思ってたのに、本当か?!

で、宮廷魔術師って言う人が居て、その人がサクッて呪いを解除。
あっと言う間に子供たちは回復しましたが、私と出会うまでの記憶は無い。
まぁ、3~5歳だし、子供たちは恐らく孤児と言われてたので、問題なし。そのまま私の子供になりました。

子供たちも私が甲斐甲斐しく世話したことは覚えていたし、エイド、カルド、キルトの世話してくれてた人のことも覚えていた。たどたどしいけど一応喋れるようにもなった。良かった良かった。

そして、気付いた。3人の子供に名前が無いと言うことに。
手紙を出して、兄弟たちに名前について聞いてみた。

一番大きい赤茶髪5歳の子は、アラン。3歳位に見える子二人のうち、青い髪の方をブルース。金髪の方をエミリオって呼んでたらしいことが判明。
どうしてそうなったのだろうか?
よくわからん。

まぁ、名前決めるの苦手だから有難い。
そうそう、私の名前も決まった。エリーザ・ナートだってさ。

黒髪で平たい顔族なのにエリーザって雰囲気合うのかね?
今まで、皆におばちゃん呼びされてたから、違和感があるよ。本当。

でも、まぁ、なんだろ、ロイドさんがすんごく嬉しそうにエリーザさんって呼ぶもんだから、なんか照れるね。

王城から近いところに以前男爵が建てた屋敷があって、既にその男爵は居なくなってるらしいんだけど、そこをそのままくれるんだそう。

そこから毎朝出仕して、第二王女のメイドとして通うことになりました。
ロイドさんは、第二王女の護衛騎士に抜擢。色んな意味で恐ろしいことするね、陛下。

聞けば、第二王女にはまだ護衛騎士が居なかったらしい。
あり得ないと思うのは私だけだろうか???

まぁ、王子は既に3人いるし、王女も一人上にいるから、継承権は無きに等しいから命の危険は無いのかもしれないけども。

そして、かなりのビップ待遇。何故なら、騎士団長自らロイドさんに稽古つけてくれるんだそうだ。
何でいきなりそんなことに?!
さっぱりわからん。
ちなみに騎士団長とライドさんは級友だそうです。

ロイドさんたち兄弟は、親元を小さい時に離れたので、学園に行っていないらしい。だから、ライドさんを除いて学園のことを知らない。つまり、騎士団長とは面識が無いのですが、何でか仲良くなるのに一日も掛かりませんでした。
不思議だなぁー。

騎士団長の名前はジュリアス・エヴァンと言うらしい。
どっかの光の騎士様みたいな名前だと思ったのは、私だけだろうか?

そして、第二王女の名前、トリデリーテだって。
金髪碧眼で髪の毛がドリルなトリデリーテ第二王女って、まるでどっかの悪役令嬢みたいな名前だなぁー。

ん?悪役令嬢ってなんだ?
まいっか。

****

それから、色々忙しかった。
王女の起床前に出仕。
メイド一人でお世話。
夕方5時帰宅。
子供たちの世話について、メイドに聞く。
最中に子供たちに襲撃。
背中ポンポン。引っ張りまわされ、お絵描きにかくれんぼ、追いかけっこ。
夜の8時まで大騒ぎ。
ロイドさんが帰って来て、イチャイチャ要求される。
取り合えず、バックドロップして気絶させておいた。
なんやかんやでロイドさん、私より弱いのだ。

でも、なんか嬉しそうなんだよね。ドMなのかしら?

そんな暮らしが2年続きました。

変わったのは、ロイドさんが近衛騎士として正式に認められ始めてからのこと。
嫉妬からの嫌がらせが私たち側にも来はじめ、子供たちにも被害が及び始めた頃のこと。
第三王子のラートディッヒ殿下に命令を受けて、ロイドさんが無理矢理城の外にお使いに出され、その間にトリデリーテ殿下が襲われました。
私がちぎっては投げ、ちぎっては投げしたので、無事だったのですが、襲ったのが、子爵子息達だったのが不味かった。
襲撃者、良くて骨折。悪くて、欠損。生きているけど、トラウマ持ちにしてしまったのだ。

まぁ、陛下の意向により私に罪は無いことになったけども王城にいるのは拙いことになった。
トリデリーテ様も若干私を見て怯えるようになってしまったので、仕方が無い。
私は第二王女殿下のメイドを辞することになったのだ。

まぁ、うん。しゃーないね。
でも、陛下は私が全く悪くないのにこういう風にするのは惜しいとおっしゃられて、貴族学院の用務員に推薦された。

ということで、私、用務員になりました。

なんで、給食のおばちゃんじゃなかったんだろう??

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