ゆめも

toyjoy11

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悪役令嬢は根回しを覚えた

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目を覚ますと婚約前の4歳に戻っていた。

何を言いたいのかって?

初めから説明しよう。

私は、メルリアン・コリメット公爵令嬢18歳だった。
婚約者は同い年の第一王子クリスレッド・キングダム殿下。
殿下は側室との子供で、その側室は伯爵家の若い女性だった。
第二王子と第四王子は正妃との間に生まれたお子さん。
第3王子は先日事故で無くなってしまった侯爵家から来た側室様のお子さん。

何が言いたいかと言うと、王子は沢山いると言うこと。

そんな中で、婚約者の第一王子クリス殿下は、一番後ろ盾がない伯爵家のお母さまから生まれた方で、私のコリメット公爵家が後ろ盾として選ばれて、婚約者にさせられたのだ。
その間に私どころか殿下でさえ、入り込む余地は無かった。

そして、私はと言えば、王子様に夢中だった。

そう、王子様に夢中。

陛下の方針で、どの王子も同じように育つように同じような環境を整えて、息子さんたちは育てたらしく、普通ではありえない程王子様達の性格は似通っている。
加えて、容姿に至っては、父王の女性の趣味が同じ顔の様なので、生まれてくる子供もかなりよく似ていた。

皆、綺麗な顔をしている。

そう、私はどの王子様にも夢中だったのだ。
父である公爵に言われて、第一王子のクリス様にだけ執着してもよいと許可をもらったので、私は存分にクリス殿下と交流しつつ、王太子妃教育を受けたのだ。

この王国には貴族が行く学園があって、そこでの出来事はあんまりなことが一杯あった。
今までみたいにクリス様に執着することが出来なかった。

・忙しい。公爵令嬢たるもの周りにも気をつけなきゃいけないし、周りを先導しなくてはいけないから。
・学園内では皆貴族階級に対して、ある程度フランクに接してよいと陛下からの許可がある為、度々起こる諍いの仲裁をしなくてはいけない。加えて、私自身も自粛しなくてはいけないから。

と言う訳で、学園生活はある意味王子様不足が深刻化していた。
そんな中、当の本人であるクリス様は、とある男爵令嬢に夢中。

私はもちろん諫めなくてはいけない。忠言しないといけない立場。
両者ともに忠言と説教。

そして、件の男爵令嬢には忠告を兼ねて色んな嫌がらせをした。
と言っても子供の悪戯レベル。
この程度なら何の罪にも問われないレベルのもの。

でも、件の男爵令嬢は、クリス王子とその取り巻き達を次々に陥落させ、非常識な行動を続けた。
その為、池落とし、階段落としなどを実行したのは、ちょっと大人げなかったかもしれない。
しかし、それさえもこの貴族社会においては、軽いいじめのレベル。
むしろ、現在の件の男爵令嬢の行動から言えば、妥当な忠告の種類に当たる。

だと言うのに、卒業式の壇上で、わざわざ私を皆の前で断罪し、横に件の男爵令嬢を横抱きしたクリス王子が私に婚約破棄を命じ、真の婚約者はこの男爵令嬢と皆の前で宣言。加えてその場で無理矢理拘束。国外の危険な森にすぐに連れて行かれたのだ。

結果、私は森の魔獣に食われて死亡した。

と思ったら、4歳に戻っていた。

そう、時を逆行したのだ。

誰がどうして、どうやってこの時間に戻らせてくれたのかは、知らない。
でも、このチャンスを生かしたいと思った。


前回の私はとても優しかった。
常識外れの男爵令嬢に忠告してあげるなんて。

元々、公爵以下ならまだしも王族で、直系に当たる王子は自分の意志に関係なく、結婚をしなくてはいけない。そして、その範囲は自分より3つ下の爵位までである。
王子の場合なら、公爵、侯爵、伯爵までになる。
それ以下は側室でさえ不可能である。

もしも、それでも側室に望む場合は、その爵位内の家に養子に入って貰わなくてはいけない。
しかし、養子は2つ上までしか上がれないし、庶子であれば、1つ上がることしかできない。
また、養子に入ってもそれは、その家の庶子扱いと同等になる。
加えて、養子は、一度その家に入ったら、3年は養子縁組は出来ないと言う法が陛下によって定められている。

件の男爵令嬢は男爵家の庶子だった。
学園入学が16歳の時で、例え、その時に子爵家への養子が行われたとしても、それでも子爵。卒業時ギリギリで伯爵家に養子になれる程度。
実際は、18歳時にまともな恋仲になったクリス王子の場合なら、私断罪後に件の男爵令嬢を養子に入れて貰える子爵家を後ろ盾のないクリス王子自身で探し、3年後には伯爵家にその件の元男爵令嬢を養子に入れるところを探して、そこでやっと婚約者候補になれるのだ。
無理矢理嫁がせたいと思うなら、それは正妻としては不可能。側室どまりになる。

皆の前で宣言した以上、件の男爵令嬢を正式な妻にするというのは、契約になる。
王子はあの男爵令嬢を正妃に据え無くてはいけない。

なら、更に3年待って、侯爵家に養子に入って貰わなくては庶子を正妻に加えるのは困難と言うことだ。

その時点で、どんなに早くても王子も件の男爵令嬢も24歳。
この王国では晩婚に当たる。
それからの子作りになる為、次代の王子が生まれるかどうかも期待する価値もかなり少ない。
陛下なら折を見て、「第一王子は第一王子のまま。」「第二王子に王太子になってもらう」選択肢を取るだろう。

もし、陛下がお怒りなら、後ろ盾のない第一王子なんて、廃嫡と言う手も一つだろうしね。
それに追い込んだ件の男爵令嬢とその家は勿論お取り潰しになるだろう。

そう、だから、私は親切に忠告してあげる必要は無かったのだ。
嫉妬する価値さえ無かったのだ。

でも、やっぱり、私を殺したあいつらに多少は嫌な思い位はして欲しいと思うのは、拙いことだろうか?
大丈夫。
犯罪になんて、手を出さない。

でも、陛下が恩情をかける余地を無くすくらいは、やってもいいよね?

***

件の男爵令嬢に恋愛的な意味合いで執着したのは6人。
クリス王子、侯爵家の宰相子息。伯爵家の騎士団長子息。公爵家の…私の弟。伯爵家の魔法団長子息。元子爵家次男の担任の先生。

全員婚約者がいる。担任の先生に至っては、既婚者であり、伯爵家に入り婿。

さて、あんな断罪ごっこをしたら、全員の首を物理的か精神的かは知らないけど、とばしてしまえるように根回しをしよう。
ムカついたら、前回と同様に優しく忠告してあげればいい。それは当然の権利なのだから。

***
5歳になった。クリス王子の婚約者になった。
王太子妃教育が始まった。
そう、王太子妃教育なのだ、私が受けているのは。

私は王太子妃になるのは絶対の運命だったのだ。

うちの家はでかい。金もある。権力もある家。
私を妻に迎えることが王太子になる第一条件になると言っても過言ではない。

その授業の終わりに教育係が最後にいつもこう聞く。
「何か質問は?」
と。

教育は王妃が直接行うことは少ない。王太子妃教育は王妃様付き侍女が行う。しかし、この教育は陛下にも王妃様にも筒抜け。
侍女はその内容を包み隠さず報告するし、質問の回答は王妃様の発言と共にしていることが多い。

だから、5歳の私はこう質問した。
「身分が違い過ぎる女性を正妻に迎えたいと第三者がいる場で発言した貴族はどうなるか?」
と。

回答は
「3位下内の嫡子なら、可能。」
「それ以下なら、不可能。発言した貴族は貴族籍はく奪ですね。」
「私なら第三者を殺して、無かったことにする。」
とのことだった。

別の日に「もしも、前回のようなことを王族がやった場合について」を質問。
「3位下内でも不可。直ぐに発言者を拘束の上で再教育。又は、王族籍はく奪。が妥当ですね。」
とのこと。

思ったより、酷かった。

さて、言質を取りたい。
別の日に王妃様とのお茶会。
教育で聞いたことを覚えたことを自慢するように確認するように言い、王妃様の意見も聞く。
「自分の子はそんなことはしないと信じていますが、」
と前置きはして
「その発言者は勿論、その場にいた第三者も含めて当事者をその場で事故に見せかけて全員殺して、無かったことにしますわね、私なら。」
「だって、王族にそんな常識知らず居たら、国の体面を保てませんもの。」
との回答。

・・・思った以上に更に酷かった。

「その場でそれができなかった場合について」
も聞いてみた。
「王族じゃなかったことにしますわね、まず。その上で、母親事処刑ですわね。」

・・・なるほど、勉強になる。

ちゃんと記述しておこう。

普通、勉強したことはわざわざ記述しない。記述するのは侍女の役目。私たちは粛々とその場で暗記しなきゃいけない。
でも、敢えて、侍女と私で記述し、確認しあい、教育係の王妃様の侍女にも確認を取って正式な文章化として置いた。1冊埋まるごとに王家の書架に入ることとなっている。

***

お父様に聞いてみよう!
「弟がもし、適齢期に婚約者以外の女性を連れてきた場合について」を。

現在4歳の弟。まだ婚約者はいない。
婚約者は選定中ではあるが、宰相のところの長女を貰う予定とのこと。
「宰相は侯爵家だし、基本はそんなことは起こりえない。」
と前置きをして
「王族なら、婚約破棄。賠償金を私が支払って、婚約者をすげ替えることになるだろう。」
とそれ以上のことは言ってくれない。

再度、下位の女性を連れてきた場合を聞く。
「下位?あり得んな。」
と取り合ってくれない。
「宰相が怒るだろうそんなことしたら。御家断絶が洒落にならん。」
となかなか回答をしてくれない。

「…その場合、常識の無い子は居なかったことになるな。娘ならまだしも息子が常識を知らんのは、家の恥。そんな息子は存在しなかったことになるだろうな。」
と回答。
再度
「あり得んがな。」
とお父様が言った。

うん。ちゃんと記述して、侍女と確認しあう。そして、それを母上に確認。
母上も
「あり得ないけどね。」
と言ったうえで、正しいと言ってくれた。
うちの書庫にこっちの本は保存。

***
なんやかんやで学園に入学前に社交界デビューがあるので、それぞれの婚約者の方々には会える。
ただでさえ、高位貴族子息をあの女は陥落したので、その婚約者も高位貴族である。
同じ高位貴族なので、会う場は意外に多い。
派閥が違っていても、場所だけはあるのだ。

だから、その婚約者の方々にも質問をしてみた。

「もし、自分の婚約者が下位のご令嬢を婚姻前に付き合っていると分かる行動をした場合の対処について」
5歳の子供同士の会話なのに
「両方ぶっ殺す。」
と物騒な発言をした令嬢多数。

冷静な令嬢に確認。
一番年上…あれ?この令嬢は、担任の先生の奥さんになる人だ。
「婚姻前なら、婚約解消の上で、賠償責任を家に問うことになるでしょうね。」
とのことだった。
「でも、言い逃れしたら?妾とかにすると公言して来たら?」
と聞いたら、
「…確かにあり得ますわね。」
と一度思案したのち、
「契約書を作成して、その場合のことについてちゃんと明記しておくべきでしたわ。まぁ、まだ結婚しておりませんし、今からなら間に合うかしら?」
と独り言を言った後、
「3位下内なら妾として許可。でも、私が個人的に言うなら、婚約を解消できないなら、結婚前に毒殺しますわね。」
と冗談めかして笑った。

・・・周りのご令嬢もかなりの数が頷いた。

***
最後に自分の身を守るために王家から学園在学中は護衛をつけてもらうことにして貰った。
そして、この護衛は王子からの命令に対して、私を守ると言う義務を達成できないと判断した場合は拒否できる立場にして貰って、3人つけてもらった。

結果は…。

***

断罪イベントが発生しました。

前回と同じく王子の私兵が私を押さえつけようとしました。子息たちの私兵もです。
私の護衛がすべて対処し、私に危害を加えられませんでした。
そして、クリス王子を含む子息たちと先生と件の男爵令嬢を捕縛。

クリス王子は王族では無かったことになったし、お母さまである側妃様も浮気したと言うことになって、縛り首に。
子息たちは居なかったことになった。
だから、今、私に1つ下の弟は元々居ない。3つ下の弟がいるだけだ。

他の家は知らないけど、宰相とお父様は痛み分けと言って、3つ下の弟が宰相様の長女と結婚することになった。

担任の先生は、あのイベントの後、下水が流れるドブの中に昨日浮かんでいたそうだ。
病気を苦にして自殺とお父様が言っていた。

病気?常識が無いことが病気扱いとなるらしい。

件の男爵令嬢は鉱山奴隷の支援をするための奴隷として、連れて行かれた。
その家族は年配の物は家々に貸し出される奴隷として毎月、被害者の家内でローテーション使用。但し壊さない様に注意する物として、扱われることとなった。
勿論無賃金。
若い奥さんは娼館に売られて、直ぐに現金化された。
姉妹は、学園内の奴隷として学園が購入。
弟は見目が大変良かったので、娼館に売られて現金化。
それらのお金が被害者の家に支払われることになった。

勿論、件の男爵家の私財は既に現金化されて分配されている。
王族を含めて、高位貴族を殺した大罪人として、貴族内でこっそり周知され、教訓とされました。私たちが没後それは演劇になったんだそうだ。

ちなみに、私はと言うと第二王子のライオネル様と結婚し、幸せに暮らしています。
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