ゆめも

toyjoy11

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失格父が溺愛父になるまで

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さて、生き残り頑張るぞー。

文字も線も書けるようになった。
絵は・・・うーん。微妙。

最近気づいたんだけど、ずっとドアの前で絵を描いてるメイドさんがいる。
俺たちの絵を必死に描いている。
カメラがあればいいんだろうけどなぁ。

そう言えば、この世界は魔法があるらしい。
メイドさんたちが使っているのを見たことは無いし、聞けば、貴族が主に使えるらしい。下級貴族もあまり使えるものは少ないらしい。
その為、魔法専門学校も無い。
魔法を使いたくば、親に頼るか、高位貴族の子息に家庭教師に来てもらうくらいしか方法が無いらしい。
ちなみに、兄もまだ使えない。

転生小説とかで妖精さんたちが来て、教えてくれるとかやろうと頑張ったらできるとかあるじゃん?
やっぱ、そんな都合よく無いのかな?

試しに
「ファイアー」
と唱えてみた。


・・・。

何も起きなかった。

日本語で言ったら行けると聞いたことがある。よし!
「炎よ!」

・・・

何も起きなかった。

よく考えたら、部屋で火が出たら危ない。
ならば、やっぱ、風とか水だろうか?土は・・・出来るのか?この部屋土無いけど。

兎にも角にもやってみよう!

・・・・・・・・・・。

結論を言おう。
何も出てこない。

火も水も風も土も光も闇も出てこない。

なので、俺は考えた。

転生ものの小説ではいつも魔素なるものを感じて云々と言うくだりがあった気がする。

よし、それでいこう!!

と言っても、魔素って何ぞや?
体に流れるのは血液。その血液以外の何かを感じるってことから始めるんだよね?

…ていうか、血液を感じたことさえ無いぞ?あるの?いや、あるよね?

取り合えず、脈拍を測ってみた。

トクントクン。

良かった。あった。

人体構造は恐らく前世と変わりないように見える。
と言うことは魂魄に当たるものが魔法に関係するのではないだろうか?

となると使い過ぎれば、マジで寿命待ったなし?

…気をつけよう。

まぁ、これは予想だし、確定したものではない。
うん。大丈夫。

なんか、庶民より貴族の方が早く死んじゃうとか聞いたけど、きっとそれは別の要因に違いない。
うん。

脈をもう一度測ってみる。

トクントクン。



うん。生きてる。

***
1年後。
俺は、2歳になった。

機会は突然だった。
雷が落ちたのだ。

いや、アイディアが浮かんだとかじゃなくて、リアルでね、領地にある小高い丘の上にある教会に雷がドカンと落ちた。
そこには孤児院も併設されていたので、両親も含めて、大人たちはみんなでそこに行った。
皆で手分けして、事故処理をしていたらしい。

俺たちは勿論お留守番。

司祭が真っ黒こげになって発見され、天罰とか何やら聞こえた。
でも、子供たちもとばっちりを受けたので、ちょっとそれは違うだろうと言いたくなる。

この国には国教がある。
レヴィルアス教。

唯一神レヴィアス様を崇めたたまつる教会。
創造主らしい。

でも、神様は真面でもそれを信仰し、まとめる教会はと言うと、例のごとく腐っていた。
前回の戦争は、それが切っ掛けと言っても過言ではない。

…この国、レヴィアス教国は、それの権化。

国王よりも教主の方が権威がある国である。
前回の戦争は教会から依頼されて王が承認した戦争だったと言う事実を知った。

あぁ、最悪だ。

本当、最悪だ。


私は別に神を否定はしない。
でも、宗教戦争は否定する。

酷く嫌な気分になるから。

組織として敵対するのは仕方ないけど、それを神のせいにするのは非常に不愉快極まりない。
神を語るなと言う気分になる。

本当、この国からマッハで逃げたい。
とか考えていたら、ゾロゾロと入ってきた子供たち。

プンスン拗ねてる父親。
困った顔の母親。

どうやら、孤児院の子供たちを連れて帰ってきたらしい。

健康な子供は、使用人小屋の方の空き部屋に移動。
怪我をしている方を俺の部屋に移動。

なんで、俺の部屋???

理由はナンシーだった。
乳母であるナンシーが世話をすると言い張ったらしい。

メアリーも立候補したらしいけど、侯爵に却下されたらしい。正直、家に孤児たちを連れてくる事態も結構、無理矢理説得した形らしいし。
かなり不満顔の父親は、子供たちを無視して、お姫様抱っこで母親を寝室へ連れて行きましたとさ。

あーもう、はいはい。わかりましたよ。

そのうち、妹とか弟が出来そうだ。

ナンシーは、沢山の水とお酒で消毒しつつ、火傷の手当をした。
普通なら軟膏とか塗るんじゃないのかと思って聞いたのだが、そう言った薬は物凄く高価で、侯爵の許可は多分おりないってことだった。

なので、俺は、2歳児ではあるものの、図鑑を見比べつつ、火傷に聞く薬を探した。
しかし、図鑑に載っている薬草はどれも高級なものばかり、そこら辺に生えている草では該当するものは無かった。

困って庭師がいる小屋に行く。

小屋と言っても2階建てアパートくらいの大きさで普通にデカいんだけどね。
そこに、こんもりと捨てるようであろう草が積もっていた。

その中に見覚えのあるものがあった。
ドクダミ。

図鑑には載っていない。
でも、前世の記憶の物と同じものならば、炎症が抑えられるはず。

葉っぱをかじる。

渋みとエグ味と苦み。そして、土臭さ。
うん。これ、この味。
大嫌いなこの味。

本当、これをお茶にしたいと考えた先人は絶対被虐趣味だと思う。
もしくは、嗜虐趣味。

舌にしびれは無い。
味も全く同じ。

庭師に聞いたら、いくらでも持って行っていいと言った。

「でも、何に使うですか?こんな雑草。」
と聞いてきたけど、
「実験。」
としか答えられない。

庭師にお願いして、大鍋にドクダミをこんもり入れる。
鍋があるだけ全部に入れる。

溢れない程度に水を入れる。

無理矢理ふたを閉める。

ぐつぐつ煮ること2時間。

汁と葉に分けて、葉は茣蓙の上に放り出し、汁を部屋に持ち帰る。
重たいので、庭師のおじさんに持ってきてもらった。

それに布を浸してから、子供たちの火傷個所に当てて、包帯を巻く。

ナンシーは凄く嫌がったけど、説得した。
初めは物凄くあり得ない的な目で見たけど、2時間ほど経ったとき、ナンシーは驚愕の面持ちになった。

効能が出始めたから。

自分でもこんなに早く効能が出るとは思わなかった。
見た目にはほとんど変わりはない。
若干、腫れがひいたくらいしか分からない。

とても分かりやすく変化したのは子供たちの痛がり様だ。
このドクダミ汁を作るまでは変わらず痛がっていた子達が痛みが緩和されてきたと言い始めたのだ。

良かった。
俺の立場はこれで守られた。

と言っても、本当ならもっと火傷専門に聞く薬がある筈なのだ。効能はかなり薄いと思う。

あと、子供たちには雷が落ちたことで建物が崩れ落ちて、怪我した子達も居た。
それらは打撲だったり、切り傷だったりだ。
打撲なら冷やしたい。

ならば、氷が欲しい。
そう、氷が欲しい。

そう、俺は強く強く願った。

そしたら、コロンと何か冷たいものが頭に降ってきた。
拾ったら次々にコロンコロンと大量の1cm四方の氷の塊がどっさりと。
俺はそれらを器に入れて、ナンシーに渡した。

ナンシーは一瞬固まったけど、火傷や打撲の対処にそれを使ってくれた。

切り傷は酷いものは深さが1㎝を超えていた。
俺の髪をバッサリ切った。
そして、それを酒で洗って、糸代わりにする。
人の肌を縫うのにかなり抵抗を覚えるが、毛先だけを氷で固めて針の様にした。
それで彼らのパックリ開いた傷口を縫った。
かなり暴れられたけど、庭師のおじさんに押さえてもらって、無理矢理縫った。
俺の髪は銀だから、あまり目立たない。

自分の髪の色が銀で良かったと思う日が来ようとは…。
縫った後は酒で消毒して、包帯を巻いた。

「きゃあああああ!!!!」
ナンシーが大きな声で叫んだので何事かと振り向けば、なんだ、単純に髪の毛を切ったことにショックを受けていただけだった。
「そんなことより、子供たちの世話!粥無いの?」
と聞いたら、かなりがくがくと肩を掴まれた後振られた。

髪は貴族としての嗜みだとか何とか。

でも、父は髪短いし、少なくとも屋敷内の男で髪の毛が長いのは俺と兄位だった。兄の家庭教師の男も短かったし。
それに、ナンシーが小声で言うのは
「天使の・・・天使の髪がぁ・・・。」
だったから、うん、聞かないことにしよう。


24人。
それが怪我が酷い子供たち。

使用人小屋に行った子たち31人にも火傷にドクダミ汁を渡した。

まぁ、痛み止め程度の意味にしかならないかもしれないけど、無いよりマシ。

それからは怪我が酷い子たちはほとんどが熱を出した。
重湯みたいなお粥を俺とナンシーと時間が空いたメイドたちで食べさせる。
トイレとかも動けないせいで垂れ流しになっちゃうので、キルトの絨毯が大活躍。
キルトの絨毯は端切れを組合わせで作ったらしく、10枚近くある。それを一日3度は交換して、洗濯、干す、敷くを繰り返した。
正直、オムツを用意したくはなったけど、今はちょっと駄目だ。
オムツに使う布より包帯に使う布の方が今は優先度が高い。

子供たちがだいぶの体調が回復した頃には、すでに2週間も経っていた。

その間、一度も両親はこの部屋に訪れなかった。

「連れてくるだけ連れてきて、世話しないとか何なのさ?」
とは思ったけど、まぁ、そうすることが彼らにとって普通なのだから諦めた。

むしろ、連れてきただけマシな方なのだ。

幸運なことに欠損無し、死者無しで子供たちは回復した。
流石に跡は残ったが、破傷風の気配も無く、一安心。

悲しいのは、街の医療院に運ばれた方の大人。
そっちは火傷の状態が酷く痛みと高熱で亡くなった人が出たらしい。
亡くなった一人は司祭だけどそっちは一瞬で焦げになったので痛みを感じる暇さえ無かっただろう。
酷かったのは、その司祭を補助する人たち。
彼らはのたうち回って亡くなったらしい。

でも…何でか、メイドさんたちも含めてそっちは自業自得だと言ってたんだよね。

…なんだろう、もやもやする。

まぁ、俺がやれる範囲はした。
と思ったら、急激に眠気が来た。

このところ、忙しくって2歳児なのに…。

パタンキューと倒れ、遠くにナンシーの叫び声が聞こえた気がする。

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