ゆめも

toyjoy11

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失格父が溺愛父になるまで

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次の日。

俺は兄の部屋に居た。
兄の部屋にベッドが追加され、そこに寝かされていた。
兄のベッドと連なる様に並べられているので、隣には兄が寝転がったまま俺を見つめていた。
思わず、見つめ返した。

なんとなく手を出す。
兄がギュッと握る。

「うん。」
と言った。
「うん。」
と兄が返してきた。

外を見る。
既に夜になっている。

眠いと言えば、眠いけど、それよりもお腹が減った。
「お腹が減ったなぁ。」
と俺が言うと兄はつないだ手を軽く引っ張り、起き上がる。

俺も一緒に起き上がる。

机の上にはサンドイッチ。
それを食べる。

そしたら、今度は臭いが気になり始めた。

「お風呂入りたい。」
と俺が言うと
「うん。」
と兄は言って、メアリーを呼んでお風呂の準備をしてくれた。

俺と兄は一緒に風呂に入った。

最後に歯を磨いて、寝ようと思ったのだけど、
「髪。」
と兄が言って、メアリーがハサミを持ってきた。
そして、軽く髪の毛を整えられて、ついでに髪も体も洗いなおされて、最後に香油を塗られた。

何の匂いかは分からないけど、落ち着いたいい匂いだった。

歯を磨かれて、寝巻に着替えさせてもらって、自室に戻ろうとしたら、兄の手がギュッと俺の手を離さない。
メアリーは困った顔をしたけど、俺と兄を一緒に抱かえて、同じベッドに寝かせてくれた。
一応隣にベッドはあるけど、同じベッドに寝た。

メアリーの顔がこの上なく残念なことになっていたけど、突っ込むまい。

眠りにおちながら思った。

そう言えば、この2週間兄と遊んでいなかったや・・・と。

***
次の日。
「おい。」
と肩を揺さぶられて起きた。

目の前に父親の顔。
思わず、両手両足で押し上げた。
「ないないして。」
と言って、もう一度寝る体勢に。

「おい!」
今度はさっきより強い口調と怒気を孕んだ声。
「怖い顔無い無いして。じゃないと起きてあげない。」

父が沈黙した気配。
微妙に冷気が漂っている気がする。

そう言えば、俺は氷属性だった。
なら、父も氷属性なのかな?

とか考えてたら、首筋に冷たいものを押し当てられた。
氷の剣と直ぐに気付いた。

でも怖くは無かった。
「子供に剣を向ける親なんかいない。だから、これは夢。もしも、剣を向けていたのなら、それは親じゃない。」
と言って、もう一度寝た。

***

朝、目を覚ますと説教を食らっている父が居た。
説教しているのは久しぶりに見る母。
説教内容は案の定、俺を殺そうとした父を見つけた母が激怒した為である。

自業自得なので、知らん。

兄と一緒に絵本を読む。
お腹が減ったので、両親を無視して、メアリーと一緒に食堂に向かう。

卵焼きとパンとベーコン。野菜スープ。
かなり質素な気がするけど、ベーコンがあるだけ贅沢なのだ。
残さずに食べる。

部屋に戻ろうとしたら、メアリーに止められた。
あー、仲直りしたのね。

あーあーあー、子供部屋でしないで欲しい。

庭で植物の名前当てをする。
答え合わせするのは庭師の助手。

しばらくして、邸内のメイドさんが一人メアリーさんに伝言をした。そのメイドさんは掃除道具を持って、邸内に戻っていった。
メアリーさんに行って、ローズマリーを持たせるように言った。
「へ?」
と変な顔で固まるメイドさんとメアリーさんに
「それ細かく刻んで、水に入れてよく混ぜて、それを部屋に置いておいて。」
と言うと頭に疑問符を覚えている様子ではあったけど、持って行ってくれた。

兄が俺の袖を軽く引っ張り
「どうして?」
と聞いてきた。
「いい匂いだったから。」
と答えたら、にっこり兄は笑って
「うん。そうだね。」
と言って、ローズマリーに顔を寄せた。

我が兄ながら、とても絵になる。

自分の姿はどんな姿なのだろうか?
兄と見劣りするよう市では無いことをせつに祈る。

***

侯爵邸の庭は広い。
広すぎて1時間歩いても全部見回ることは出来ない。
庭師小屋は本邸から20分ほどのところにある。
まぁ、子供の足でだけれども。

そこにはお客が滅多に来ないこともあり、野菜や薬草を育てる畑スペースがある。
そこにいちごなんかもあったので、もぐもぐ食べた。
美味しかった。

兄と競って食べたら、俺も兄も手先が真っ赤になっていた。
兄の口がところどころいちごの種で覆われている。

ここのいちごは種がごつい。
前世のいちごよりなんか食べにくい。
甘さと酸っぱさが6:4位。
要するに甘さ控えめ…正直に言おう甘さが少ない。

でも、甘味が少ないここなら、とてもおいしく感じる。

まぁ、戦後すぐなので仕方が無い。
むしろ贅沢な部類とも思える。

なにせ、孤児院に居た子達は55人も居たのだ。
原因が戦争だけではきっとないだろう。

この畑のいちごは食べ切れないほど多く、庭師のトムおじさんの言うには
「腐れる前に食べにゃなぁ」
と言っていたので、子供たち55人に分けていいか聞いた。

「分けるぶんにゃー別に良いけど、この畑に来て踏み荒らされるのは嫌だなー。」
と言っていたので、一番重傷だったのに一番に完治した同い年の少年の顔が浮かんだ。そして、その少年とずっと手をつないでいた少女も。

「兄上、今度数人の子供たちを連れてもう一度取りに来ませんか?荒らさない子だけにしますけど。」
と兄上に聞いてみた。
「うん。いいね。僕は連れてこれる子がいないから、エディスが選んで。」
と言った。なので、既に決めていた俺はトムおじさんに
「多分、俺たち4人でもう一度来ます。良いですか?」
と聞いた。

トムおじさんは満面の笑みで
「おう、来なせぇ。」
と言った。


ゆっくりと本邸に戻り、兄の部屋では無く自分の部屋に行く。
ナンシーはてんてこ舞いで子供たちの世話をしている。
でも、なんか幸せそうだ。

ナンシーを呼んで、目的の男の子と女の子を呼び出してもらうことにした。
「あぁ、ミルフィスとミルファですね。」
と言って、赤髪短髪の少年と赤茶髪三つ編みでそばかす少女がかなりオドオドしながら、来た。
彼らと一緒に部屋から出て、兄の部屋に向かう。
その間、凄くオドオド二人はしていたけど、敢えて何も言わなかった。

部屋に付くと微かにローズマリーの匂いとアルコール消毒の臭いがした。
絨毯は取り換えられていて、本当にキルト絨毯にしてよかったなぁとつくづく思った。

おずおずとでも、勇気を振り絞ったミルフィス君が
「おま、お坊ちゃま、おれ・・私たちになんの御用でしょうか?」
と聞いてきた。

「内緒だよ。」
と口に1本指を立てて言ったら、二人は生唾を飲んだ。

その様子に兄上はうつむいて肩を震わせている。

俺は溜めに溜めてから
「明日の朝食後にいちご狩りに行こう。」
と言うとミルフィス君とミルファちゃんは何を言われたか分からないみたいな顔になった。

「ぷはははは。」
兄が笑い始めた。

「もう、アンドレイ様、笑い過ぎですよ。」
そう言いながらもメアリーも笑っていた。

「この屋敷の奥の庭にね、イチゴがなっているんだ。」
と言うとミルフィス君とミルファちゃんの目が輝く。
「でも、畑を荒らされるのは困るって言うから、人数を絞ってイチゴを採る子供を選ぼうと思ってね。他の人が聞いたら、自分こそがって来ちゃうでしょ?」
と俺が言うと
「「うん。」」
と二人は大きく頷いた。
「だから、内緒。一杯イチゴ取ったら、それをみんなに分けるけど、それでも取り切れない程あるから、つまみ食いも内緒。」
「「うん!!!」」
「あと、勿論畑を踏み荒らさないこと。決められたところ以外は踏まないこと。いい?それが守れるなら明日の朝食後に迎えに来るよ。」
と言ったら
「「「はーい。」」」
と兄上込みで返事された。

その後、ニヤニヤを必死に抑えながらミルフィス君とミルファちゃんは部屋に帰っていった。

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