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人形姫と言われるのなら人形で良いでしょう?
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目を覚ますと赤ちゃんになっていた。
おぼつかない視界。日本語ではない言語をしゃべる人たち。
そして、冷たい雰囲気。
あぁ、望まれない命。今生でもそうなのかと私は落ち込んだ。
西田祥子。
それが、前世の私の名前だった。
父も母もいいところの出だったけれど、真実の愛とやらを貫き、私を生んだが、同時に家を勘当された。
プライドだけは一流の父は平社員になんてなれず、贅沢我儘しかしていなかった母は、出来る仕事自体無かった。
直ぐに生活は破綻したし、借金まみれになるし、足手まといの私をいつも疎んじていた。
気まぐれに殴られ、食事を抜かれる日々。ある日、殴られ吹っ飛んだところが壁の薄いアパートの壁だった為、隣の人が文句を言いに来て、それが発覚。
私は一時保護施設に収容された。
それからはとても幸せだった。
笑うこと泣くことが普通にできることがこれほど楽で許されることなのだと初めて知った。
初めてお腹いっぱい美味しいと思えるものを食べられた。
とても幸せだった。
同時に母は大丈夫だろうか?
と思った。
彼女は弱い人だから、私が居ないと代わりに殴られてしまうのではないかとか、父の浮気相手に邪険にされていたいだろうか?とか。
ここの人たちはとても親切だった。
私に笑っていいと教えてくれた。
私に泣いていいと教えてくれた。
私に怒っていいよ教えてくれた。
多分、それが最後の幸せだったんだと思う。
3年後、両親は改心したと法的に証明されたらしい。
そして、私は両親に引き取られた。
その後、散々だった。
帰ってきた先に居たのは見知らぬ男たち。
両親は私を彼らに売ったらしい。
ヘコヘコと何度も礼をして、借用書と薄っぺらい封筒を受け取って、去って行った。
まだ、歩くことさえおぼつかない私を置いて。
そして、男たちは自分の欲の発散を私にした。
しかし、良かったこともある。
小学校に通えたのだ。
男たちは私に対して、殴るし蹴るし、嬲ってくるけど、ご飯はちゃんと食べさしてくれたし、怪我の処置もしてくれた。勉強もさせてくれたし、お仕事も教えてくれた。よくわからない名称の帳簿をひたすら計算させてもらえたし、生きているのか微妙な人間をサンプルに体の仕組みを教えてくれたり、医療方法も教えてくれた。
何度か流産をしつつ、高校生になり、闇医者と呼ばれる仕事をしつつ、学校に通わせてもらえた。
私が死んだのは、警察が踏み込んできたから。
警察は養い親のところに行っているときに無断で入って来て、私を取り押さえようとした。
私はなんの抵抗もしなかったのだけど、何度も殴られて、首を折られて死んでしまった。
遠くに私の死体にアワアワと慌てて近寄っている警察官達を見ながら、私は死の国に足を踏み入れた筈だったのに。
記憶を持ったまま、私はまた、生きている。
望まれない今を。
***
今生は、両親に望まれないで生まれてたと思っていたけど、暴力は振るわれなかった。
乳母も付けてもらえたので、ご飯も貰えた。
殴られることも無く、嬲られることも無く、思ったよりだいぶ幸せだった。
両親とはあれ以来会っていないけど。
乳母は手癖が悪い人だった。
でも、彼女は私に暴力は振るわない。
彼女は私を罵らない。
哀れな視線をくれるだけ。
以前より、だいぶんマシだった。
でも、屋敷のメイド長が気付いて、彼女をクビにしてしまった。
メイド長は私を散々罵倒した後、彼女を何度も叩いていた。その後、彼女と会うことは無かった。
次の乳母は、淫乱な人だった。
でも、ご飯はちゃんとくれた。
彼女も暴力を振るわないし、罵倒もしない。
哀れな視線をくれるだけ。
彼女と恐らく、私の父と思われる人はここで情事を重ねていた。
彼女は私が乳離れをするまで、ずっと私の乳母で居てくれた。
化粧臭かったけど、意外に優しい人だった。
だって、たまに撫でてくれたから。
でも、恐らく私の母らしき人が、彼女と父の情事を発見してしまい、彼女は追い出された。
母は散々父と私を罵倒した。
父は苛立ちを私にぶつける為に何度か殴って、気が済んだのか、去って行った。
その後、執事に骨折と打撲の治療をして貰ったが、その目は何も映していなかった。
***
次に付けられたメイドは50過ぎのおばさんだった。
おばさんは化粧とは違うけど、不思議なにおいがするおばさんだった。
毎日ご飯を食べさせてくれた。
歩く練習をさせてもらえた。
彼女は私を殴らないし、罵らない。
怒りはするけど、謝ってくる。そう、八つ当たりの悪口は言うけど、その後落ち込んで、ごめんなさいって言ってくる。
不思議な人だ。
私のことは不気味なものを見るような目で見る。
でも、危害は加えないし、ご飯もちゃんと食べられるだけ、幸せだった。
彼女は私が何も感情を出さないことがおかしいことだと何度も言っていた。
・・・前世、感情を表に出したら殴られたから、いつの間にか戻っていたらしい。
前世と同じ行動をしていたことにその時初めて気づいた。
自覚したけど、多分、それは間違った行動ではない。
だって、感情を表に出したら、多分、あの時もっと殴られていた。今生でも。
その後、彼女はこの部屋の物を盗んでいたとメイド長に密告されて、屋敷を追い出された。。
私が見ているときは彼女が盗みを行っていた気はしなかったのだけど。
その時には、私は3歳になっており、既に読み書き計算も出来るようになっていたので、今後は目立たない様に生き延びようと思った。
以前、保護施設のみんなが言っていたことを思い出す。
結婚して、幸せになる。
冒険家になる。
お医者さんになる。
飛行機のパイロットになる。
建築士になる。
色んな将来の夢を語っていた少年少女たち。
その目はとても光り輝いていた。
私はそんな彼らがとても眩しく感じていた。
私も夢を持っていいのだろうか?
もしも、夢を持っていいのなら、私は、外に出て、自分の意志で歩いて、自分の意志で色々決めて歩みたい。
保護施設の先生が言っていた。
「逃げてもいいのだよ?」
と。嫌なことは嫌だと言って良いし、宿題なんかほっぽり出して、逃げてもいいんだって。
先生なのに、宿題から逃げて良いって言う変な先生だった。でも、優しい先生だった。
私は私の意志で、笑ったり、怒ったり、泣いたり、楽しんだりしたい。
私は目立たない様にこっそり、屋敷の図書室から本を借り、屋敷の隠れやすいところで隠れて本を読みまくった。
前世売られたオジサンたちの家では、隠れていなければ本は取りあげられたし、殴られたり嬲られたりしたからだ。その時、大抵の場合、本は破損して、どうしようもなくなった。だから、本を読むときは誰にもバレない様に隠れた。
でも、隠れ続けるのは困難だから、隠れられない日は部屋で刺繍や編み物の勉強をした。。
この世界には魔法があるらしいが、その雰囲気はどこにもない。
トイレに壺だし、蛇口も無い。井戸は未だに釣瓶を手繰った木桶でやっているし、中世ヨーロッパの生活そのものだと思った。
新しいメイドは、私が作った刺繍や編み物を勝手に持って行って、売っている。そして、そのまま代金は自分の懐に入れている。ご飯も部屋での世話も何もしないメイド。
本館の別のメイドがたまにご飯をくれるので、生き長らえた。
4歳の時、私に弟妹が出来たらしい。
妹は父の愛人の子。弟は私の母の子。
父は妹を大変溺愛しており、母は弟を大事にしているらしい。
だから、私はもう使われていない使用人小屋と別棟に移された。
***
誰にも構われないのは意外にも快適だった。
相変わらず、私付きのメイドは私の刺繍や編み物を盗んでは売りに行っている。
最低限の食料素材は、意外にもいつも厨房に届いている。
前世の知識のおかげで最低限の食事は作れる。
だから、自分で料理をした。
洗濯もした。
薪の準備はされていなかったから、お風呂は入れなかったけど、井戸の水を自分で汲んで、水浴びはできた。
体がどんどん大きくなっていくのだけど、新しい服が無かったから何度も何度もリメイクした服を着ていたけど、対処できなくなってきていた。いつも私の刺繍と編み物を盗んで売っているメイドが大量に端切れと糸を持ってきたので、それも解決した。
継ぎ接ぎのドレスを作り、それを隠すように白のレース編みをして、ドレスを作った。
これを重ねて着れば、然程、ボロが目立たない。
何度もレースのドレスをメイドに盗まれて、その度に作った。
本は本館にこっそり行って、相変わらず隠れて読んでいる。
その時、本館とは別の本当の意味での別館を発見した。
そこには大量の本が埃をかぶったまま放置されており、本棚に入りきらなかった本たちと白骨死体があった。
恐らく、後ろから殴られたのであろう白骨死体の頭部は陥没していた。
私はそれをスルーして、本を読み漁った。
その本のジャンルは主に魔術についてだった。
魔法の本もあるけど、主に魔術。
魔力があまり自分自身になくても使える方法の知識だった。
私はこれまで魔法自体に触れることは無かった。
だから、積極的に読むことにした。
寝食忘れてつい、読んだところ、帰ったら、専属メイドも居なくなっていた。
3日程、別館の戻らなかったところ、専属メイドは責任を問われると思って逃げたと言う旨の手紙が律儀にも置いてあった。
盗みのことやご飯や洗濯の世話をしていなかった罪の告白までされている。
・・・本当に律儀な人だったなぁ。
今生で初めて貰った手紙でもあるので、大切に取っておくことにした。
それにこの手紙には私の名前が書いている。
リセーナ・エリイク公爵令嬢って。
私の名前って、そんな名前だったんだ。初めて知った。
***
私が申告しないので、新しいメイドは勿論入ってこなかった。
私は自分で繕い物や刺繍、編み物をして、専属メイドが残していったメイド服を子供サイズにリメイクしたものを着て、街に出る。
そして、メイドが手紙で書いていた店でそれらを売る。
意外にも親切で優しい店主。
適正価格で買ってくれた。
違う店で今度は端切れと糸を大量に購入。
これも手紙に書いていた店。
小さな女の子が売り子をしていた。
途中材木屋さんが古いのこぎりと斧を捨てるのと鍛冶屋で直すのとを話し合っていたので、聞いたら、タダで貰えた。
途中、植木屋さんで素焼きの植木鉢が割れて売り物にならないって言っていたものがあったので、貰えた。
流石に持てないなぁと難儀していたら、少年少女たちがお駄賃くれるなら持ってくれると言ってくれたので、やってもらった。
おかげで売ったお金は全部使い切ってしまった。
帰って、一通り荷物を整理し、厨房でご飯を作り、食べ、洗う。
そして、一度、深呼吸。
さぁ、今からやろうと思う。
私の代わりの人形作り。
おぼつかない視界。日本語ではない言語をしゃべる人たち。
そして、冷たい雰囲気。
あぁ、望まれない命。今生でもそうなのかと私は落ち込んだ。
西田祥子。
それが、前世の私の名前だった。
父も母もいいところの出だったけれど、真実の愛とやらを貫き、私を生んだが、同時に家を勘当された。
プライドだけは一流の父は平社員になんてなれず、贅沢我儘しかしていなかった母は、出来る仕事自体無かった。
直ぐに生活は破綻したし、借金まみれになるし、足手まといの私をいつも疎んじていた。
気まぐれに殴られ、食事を抜かれる日々。ある日、殴られ吹っ飛んだところが壁の薄いアパートの壁だった為、隣の人が文句を言いに来て、それが発覚。
私は一時保護施設に収容された。
それからはとても幸せだった。
笑うこと泣くことが普通にできることがこれほど楽で許されることなのだと初めて知った。
初めてお腹いっぱい美味しいと思えるものを食べられた。
とても幸せだった。
同時に母は大丈夫だろうか?
と思った。
彼女は弱い人だから、私が居ないと代わりに殴られてしまうのではないかとか、父の浮気相手に邪険にされていたいだろうか?とか。
ここの人たちはとても親切だった。
私に笑っていいと教えてくれた。
私に泣いていいと教えてくれた。
私に怒っていいよ教えてくれた。
多分、それが最後の幸せだったんだと思う。
3年後、両親は改心したと法的に証明されたらしい。
そして、私は両親に引き取られた。
その後、散々だった。
帰ってきた先に居たのは見知らぬ男たち。
両親は私を彼らに売ったらしい。
ヘコヘコと何度も礼をして、借用書と薄っぺらい封筒を受け取って、去って行った。
まだ、歩くことさえおぼつかない私を置いて。
そして、男たちは自分の欲の発散を私にした。
しかし、良かったこともある。
小学校に通えたのだ。
男たちは私に対して、殴るし蹴るし、嬲ってくるけど、ご飯はちゃんと食べさしてくれたし、怪我の処置もしてくれた。勉強もさせてくれたし、お仕事も教えてくれた。よくわからない名称の帳簿をひたすら計算させてもらえたし、生きているのか微妙な人間をサンプルに体の仕組みを教えてくれたり、医療方法も教えてくれた。
何度か流産をしつつ、高校生になり、闇医者と呼ばれる仕事をしつつ、学校に通わせてもらえた。
私が死んだのは、警察が踏み込んできたから。
警察は養い親のところに行っているときに無断で入って来て、私を取り押さえようとした。
私はなんの抵抗もしなかったのだけど、何度も殴られて、首を折られて死んでしまった。
遠くに私の死体にアワアワと慌てて近寄っている警察官達を見ながら、私は死の国に足を踏み入れた筈だったのに。
記憶を持ったまま、私はまた、生きている。
望まれない今を。
***
今生は、両親に望まれないで生まれてたと思っていたけど、暴力は振るわれなかった。
乳母も付けてもらえたので、ご飯も貰えた。
殴られることも無く、嬲られることも無く、思ったよりだいぶ幸せだった。
両親とはあれ以来会っていないけど。
乳母は手癖が悪い人だった。
でも、彼女は私に暴力は振るわない。
彼女は私を罵らない。
哀れな視線をくれるだけ。
以前より、だいぶんマシだった。
でも、屋敷のメイド長が気付いて、彼女をクビにしてしまった。
メイド長は私を散々罵倒した後、彼女を何度も叩いていた。その後、彼女と会うことは無かった。
次の乳母は、淫乱な人だった。
でも、ご飯はちゃんとくれた。
彼女も暴力を振るわないし、罵倒もしない。
哀れな視線をくれるだけ。
彼女と恐らく、私の父と思われる人はここで情事を重ねていた。
彼女は私が乳離れをするまで、ずっと私の乳母で居てくれた。
化粧臭かったけど、意外に優しい人だった。
だって、たまに撫でてくれたから。
でも、恐らく私の母らしき人が、彼女と父の情事を発見してしまい、彼女は追い出された。
母は散々父と私を罵倒した。
父は苛立ちを私にぶつける為に何度か殴って、気が済んだのか、去って行った。
その後、執事に骨折と打撲の治療をして貰ったが、その目は何も映していなかった。
***
次に付けられたメイドは50過ぎのおばさんだった。
おばさんは化粧とは違うけど、不思議なにおいがするおばさんだった。
毎日ご飯を食べさせてくれた。
歩く練習をさせてもらえた。
彼女は私を殴らないし、罵らない。
怒りはするけど、謝ってくる。そう、八つ当たりの悪口は言うけど、その後落ち込んで、ごめんなさいって言ってくる。
不思議な人だ。
私のことは不気味なものを見るような目で見る。
でも、危害は加えないし、ご飯もちゃんと食べられるだけ、幸せだった。
彼女は私が何も感情を出さないことがおかしいことだと何度も言っていた。
・・・前世、感情を表に出したら殴られたから、いつの間にか戻っていたらしい。
前世と同じ行動をしていたことにその時初めて気づいた。
自覚したけど、多分、それは間違った行動ではない。
だって、感情を表に出したら、多分、あの時もっと殴られていた。今生でも。
その後、彼女はこの部屋の物を盗んでいたとメイド長に密告されて、屋敷を追い出された。。
私が見ているときは彼女が盗みを行っていた気はしなかったのだけど。
その時には、私は3歳になっており、既に読み書き計算も出来るようになっていたので、今後は目立たない様に生き延びようと思った。
以前、保護施設のみんなが言っていたことを思い出す。
結婚して、幸せになる。
冒険家になる。
お医者さんになる。
飛行機のパイロットになる。
建築士になる。
色んな将来の夢を語っていた少年少女たち。
その目はとても光り輝いていた。
私はそんな彼らがとても眩しく感じていた。
私も夢を持っていいのだろうか?
もしも、夢を持っていいのなら、私は、外に出て、自分の意志で歩いて、自分の意志で色々決めて歩みたい。
保護施設の先生が言っていた。
「逃げてもいいのだよ?」
と。嫌なことは嫌だと言って良いし、宿題なんかほっぽり出して、逃げてもいいんだって。
先生なのに、宿題から逃げて良いって言う変な先生だった。でも、優しい先生だった。
私は私の意志で、笑ったり、怒ったり、泣いたり、楽しんだりしたい。
私は目立たない様にこっそり、屋敷の図書室から本を借り、屋敷の隠れやすいところで隠れて本を読みまくった。
前世売られたオジサンたちの家では、隠れていなければ本は取りあげられたし、殴られたり嬲られたりしたからだ。その時、大抵の場合、本は破損して、どうしようもなくなった。だから、本を読むときは誰にもバレない様に隠れた。
でも、隠れ続けるのは困難だから、隠れられない日は部屋で刺繍や編み物の勉強をした。。
この世界には魔法があるらしいが、その雰囲気はどこにもない。
トイレに壺だし、蛇口も無い。井戸は未だに釣瓶を手繰った木桶でやっているし、中世ヨーロッパの生活そのものだと思った。
新しいメイドは、私が作った刺繍や編み物を勝手に持って行って、売っている。そして、そのまま代金は自分の懐に入れている。ご飯も部屋での世話も何もしないメイド。
本館の別のメイドがたまにご飯をくれるので、生き長らえた。
4歳の時、私に弟妹が出来たらしい。
妹は父の愛人の子。弟は私の母の子。
父は妹を大変溺愛しており、母は弟を大事にしているらしい。
だから、私はもう使われていない使用人小屋と別棟に移された。
***
誰にも構われないのは意外にも快適だった。
相変わらず、私付きのメイドは私の刺繍や編み物を盗んでは売りに行っている。
最低限の食料素材は、意外にもいつも厨房に届いている。
前世の知識のおかげで最低限の食事は作れる。
だから、自分で料理をした。
洗濯もした。
薪の準備はされていなかったから、お風呂は入れなかったけど、井戸の水を自分で汲んで、水浴びはできた。
体がどんどん大きくなっていくのだけど、新しい服が無かったから何度も何度もリメイクした服を着ていたけど、対処できなくなってきていた。いつも私の刺繍と編み物を盗んで売っているメイドが大量に端切れと糸を持ってきたので、それも解決した。
継ぎ接ぎのドレスを作り、それを隠すように白のレース編みをして、ドレスを作った。
これを重ねて着れば、然程、ボロが目立たない。
何度もレースのドレスをメイドに盗まれて、その度に作った。
本は本館にこっそり行って、相変わらず隠れて読んでいる。
その時、本館とは別の本当の意味での別館を発見した。
そこには大量の本が埃をかぶったまま放置されており、本棚に入りきらなかった本たちと白骨死体があった。
恐らく、後ろから殴られたのであろう白骨死体の頭部は陥没していた。
私はそれをスルーして、本を読み漁った。
その本のジャンルは主に魔術についてだった。
魔法の本もあるけど、主に魔術。
魔力があまり自分自身になくても使える方法の知識だった。
私はこれまで魔法自体に触れることは無かった。
だから、積極的に読むことにした。
寝食忘れてつい、読んだところ、帰ったら、専属メイドも居なくなっていた。
3日程、別館の戻らなかったところ、専属メイドは責任を問われると思って逃げたと言う旨の手紙が律儀にも置いてあった。
盗みのことやご飯や洗濯の世話をしていなかった罪の告白までされている。
・・・本当に律儀な人だったなぁ。
今生で初めて貰った手紙でもあるので、大切に取っておくことにした。
それにこの手紙には私の名前が書いている。
リセーナ・エリイク公爵令嬢って。
私の名前って、そんな名前だったんだ。初めて知った。
***
私が申告しないので、新しいメイドは勿論入ってこなかった。
私は自分で繕い物や刺繍、編み物をして、専属メイドが残していったメイド服を子供サイズにリメイクしたものを着て、街に出る。
そして、メイドが手紙で書いていた店でそれらを売る。
意外にも親切で優しい店主。
適正価格で買ってくれた。
違う店で今度は端切れと糸を大量に購入。
これも手紙に書いていた店。
小さな女の子が売り子をしていた。
途中材木屋さんが古いのこぎりと斧を捨てるのと鍛冶屋で直すのとを話し合っていたので、聞いたら、タダで貰えた。
途中、植木屋さんで素焼きの植木鉢が割れて売り物にならないって言っていたものがあったので、貰えた。
流石に持てないなぁと難儀していたら、少年少女たちがお駄賃くれるなら持ってくれると言ってくれたので、やってもらった。
おかげで売ったお金は全部使い切ってしまった。
帰って、一通り荷物を整理し、厨房でご飯を作り、食べ、洗う。
そして、一度、深呼吸。
さぁ、今からやろうと思う。
私の代わりの人形作り。
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