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第十四話 戻ってきたけどなんか違う

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 はっとして、首を振って意識を取り戻す。流されてはいけない。俺はやつの腹部を肘で突き、野生スライムを抜き取って投げた。スライムはうねうねと動きながら、草むらへ逃げていった。

「やめろっていってんだろ!」
「え……」
「俺はおまえとやりたくねぇっつってんだろ! なんでおまえとしなきゃならねぇんだよ!」
「それは粘液が血かどうかということを調べるためだろう?」
「尻に突っ込む必要ねぇだろうが。つうか、そのちんこもしまえ!」

 振り返って怒鳴る。
 怒鳴っても、ぽかんとした表情で、青筋立ったものを目の前に突き出している。

「まだ達してないよ?」
「よ? じゃねぇよ。そこらへんで出してこいよ。俺はしらん!」

 俺は洋袴を上げて、襟を正して乱れた衣服を直した。
 どうして実習中にアオカンなんてしなきゃならないんだ。それこそ退学させられる。俺はこの騎士学園のために血反吐を吐くような座学をしてきたんだ。アオカンでやめたくない。

「ひどいな。僕がやると時間がかかるけどそれでもいい?」
「時間がかかるってなんだ?」
「自分の指で扱いても、遅くなってしまってダメなんだ。君の中ではすぐに果ててしまいそうだったから、僕はびっくりしたよ。君は名器中の名器だと思う」

 にっこりと笑みを見せるが、ぞわっと肌が粟立つ。
 イケメンだからってなんでも許されるわけではない。こいつには騎士道というものがないのだろうか。だせればいいという精神がまず気に入らない。つうか愛はどこいったんだ。

「うるさい。さっさとそれをしまえ。勃起しながらでもいいから、早く行くぞ!」
「厳しいね。ほかの子ならここで差し出してくれるのに」
「なら、そのほかの子とやれ!」
「そういうところ、いいね」

 やれやれという感じで、奴も衣類を正した。なにを言っても無駄だ。

「ほら、はやくちんこを隠せ!」
「うん、でも大きすぎて収まらないんだけど……」
「なら飛び出したままでもいいから、馬に乗れ! これじゃビリ確実だ」

 言い訳がましくこちらを見るランスロットを無視して、俺は繋いでいた馬へ歩き出した。馬はのんきに草むらに顔を埋めて、パクパクと食べている。撫でてやると顔を上げて、鼻面を押しつけてきた。

「僕はビリのほうが都合いいんだけどね」

 残念……と呟いて、奴は肩をすくめた。



 そんなこんなで到着すると、すでに皆がいた。ビリだった。
 やっと着いたというのに、めちゃくちゃ怒られたし、週末の実習まで突き付けられた。
 あれからケツをゴリゴリとこすられ、常時勃起状態でいる変態野郎を背後にして俺は手綱を引いて進んだというのに……。

「ジョンどうした。怪我でもしたか?」

 到着してすぐに、ガウェインが駆け寄ってきてくれた。やさしい。
 ランスロットは馬舎へ馬を戻しに行ってくれた。

「いや、道に迷った」
「だから俺にしろと言ったのに」
 
 ガウェインがあきれたようにため息をついている。はいはい。チートペア、アーサー王とガウェインは一番だった。カースト上位はちがう。

「それよりアーサーさまは?」
「ああ、昼寝の時間らしく寄宿舎に戻った。これから夕食だし、戻るぞ」
「まさか、ずっと待ってくれたのか?」

 すでに生徒陣の姿が消えている。数名固まっているのが見え、視線を送るとものすごい眼差しで睨まれた。

「そうだ。いつまで経ってもこないから、探しに行こうと思っていたんだ」
「あ、ありがとう」
「心配した」

 手を握られる。
 すると、さっきの数名の集団がこちらの横を通り過ぎる。


「見て。あのクソチビのせいで、ランスロット様が最下位だって……」
「え……。あの田舎クソ野郎が足を引っ張ったんだろ」
「多分そうだよ。なんか精子食べていた野生スライムがいたって聞いたよ……」
「あのクソ、色仕掛けでもしようとしたんじゃない?」
「うっわー引く」

 こちらに視線を流しながら、わざとらしく声を張り上げている気がした。
 俺がひくわ。
 色仕掛けじゃねぇし、スライムなんて無理矢理突っ込まれた。
 ずっと勃起したモザイク棒を尻たぶに挟んで馬に乗ってきたんだ。

「……おまえたち」

 ガウェインが苛立って、やつらの肩をつかもうとした。俺は慌ててガウェインの大きな手のひらをぎゅっと握り、引き止めた。

「ガウェイン、いいんだ。余計なことをするとアーサーさまに迷惑がかかる」
「でも……」
「いいんだ。週末の実習をこなせば、大丈夫だ。ここで問題を起こせば退学になるだろうし、騎士道から外れる。それにガウェインに迷惑をかけたくない」
「ジョン……」
「俺たちトモダチだろっ」

 へへっ……と俺は明るく笑って見せた。
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