【SS】ファンタジー編

秋霧ゆう

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⑥バカ王子

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※主人公はメイド。私語り。


「今、この時をもってエリー、貴様と婚約破棄をする!」

 あ~あ~あ~。最悪。
 今日はクッソ忙しいってのに。
 王太子殿下が問題を起こした。
 婚約者のエリー様は泣きそうだし、王様達も知らなかったのか狼狽えてるし、王様の横にいるエリー様のお父上の宰相閣下は怒りで爆発寸前だし。
 
 てか、エリー様と婚約破棄して誰と結婚すんの?

 …ん?、何でこっち来てんの!?

「俺は、貴様がメイドを虐めてる所を何度も見た。そのような女とこの先、国を治めることは出来ん!!」

 は?虐められてる?
 虐められたことなんて…。
 …
 …
 …
 全く分からん。

 はっ、エリー様も宰相閣下も違うんです!虐めらたことなんてありません!
 待って、他のメイド達も睨まないで!

「しょ、証拠はございますの?」
「俺が見た!それが証拠だ」

 いやいやいや、それだけじゃ証拠にならねぇから。
 あ~。エリー様泣かないでください。

「初めて見た時は驚いたもんだ。このメイドが庭でひざまずいて泣いていた!」

 …私、庭で泣いたことなんて。
 あっ、まさかあれのこと言ってるの?私が水を運んでいる時に躓いて全身に水を被った時の!?
 私、泣いてないし、それどころかそれに気づいたエリー様はすぐにタオルを持ってきて下さったんですよ?
 てか、待って!!王太子殿下は見て見ぬふりをしたってこと!?
 
「次に、俺が貴様の部屋を通りがかった際にメイドを怒鳴りつけていたな!」

 それも違いますー。
 あれは、M気質な執事見習いがエリー様に駄々をこねて、叱ってください。とお願いしたんです。
 しかも、確かあれは、

「めっ。ダメでしょ」

 っていう、可愛らしいものだった。

「そして、最後にこれだ!母上の前でメイドは使えないなどと話していたな」

 それも違いますよ殿下。
 それはエリー様に声が似てると有名なリア様が言ったんです。
 あの日は、リア様と他のご令嬢が取っ組み合いの喧嘩となり、王妃様とエリー様が止めに入られ大変だったんですよ。

 ていうか、自分の婚約者の声が分からないって…。どういうこと?

「ごほん。その話は誠か?そのメイドよ」
「そんな事実は一切御座いません」
「そうか。では、王太子は当分の間、謹慎処分とする」
「は?おい、メイド何故そんな嘘をつく」
「滅相も御座いません。私は、エリー様に虐められたことなど御座いません」
「おい!だから嘘つく必要など」
「嘘ではありません」

「うわっ」

 王太子殿下は騎士に連れられて行った。

 私は王太子殿下などどうだっていい!
 エリー様!!

 遠くでエリー様は微笑み、“ありがとう”と言ってくれたような気がした。


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これね、ファンタジーに入れるか恋愛編に入れるか迷ったんですよね。
どっちに入れるべきだっただろうか。
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