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10~雅彦視点~。
しおりを挟む「おい!何時間待たせんだよ!二時間だぞ!一回会社に戻れば良かったよ!」
「それは悪かった。」
俺はニヤリと笑う。
「あ~あ~。そんなにも血色良くして可哀想に。あの子今頃使い物にならないだろう。」
「・・・おい。想像するな。皆守が減る。」
冗談を言うと、木村が真顔でため息を吐く。
「全くあの子に本気ならともかく、遊びならシャレにならないな。」
「おい!こんな事して遊びな訳無いだろう!」
木村はびっくりしている。
「本気かよ。」
「俺は欲しい物は必ず手に入れるんだよ!知ってるだろう。」
木村はうんざりした顔をした。
「ハイハイ。その本気が長く続くといいな。」
「おい!俺は本命は大事にするんだぞ!」
「ハイハイ。」
木村はため息を吐き、車を発車させる。
「そう言えば、お前の彼氏の資料を読ませてもらったが、俺達の会社に有利だぞ。会社はまだ決めていなかったみたいだが、会長が良いと言っていたから大丈夫だろう。それにしても25歳でここまで優秀な奴は余りいないな。」
木村は俺に資料を渡して来た。
「・・・ふむ。お飾りの副社長かと思ったが、違うらしいな。」
資料は簡潔に、しかも老人にも分かりやすい様に工夫されていた。
今までこんなにも心惹かれる人間はいなかった。
しかも、身体の相性も良い。
これはもう離せないな・・・。
「木村、会社に戻ったら、この資料を元に今あるソフトを改良させろ。」
「ああ、もう指示してある。二時間あればそれ位できてるさ。」
嫌味を言う木村に返す言葉がない。
「・・・資料だけならどれ位でできる?急がせろ。」
「分かってる。もうできてる頃だろう。誰かさんが遊んでいる間、仕事をしている人間もいたさ。」
「分かった、分かった。嫌味ならそれ位で勘弁してくれ。」
我が社には、若くても優秀な人間が多い。
出る杭は打たれる。
若くて優秀な人間は何処でも弾かれる。
それを知っている俺達は、学歴、前職関係無くその人間を見て雇い入れた。
そうしてここまでのし上がってきた。
絶対に失敗などしない。
会社に着くと、既にほとんどの作業は終わっていた。
若い社員が頭を下げ、報告してくる。
「あ、社長!お帰りなさい!もう、資料もソフトも完成してますよ!この資料、本当に分かりやすくて、遣り甲斐がありました!」
「ああ、それなら副社長にメールしろ。」
「はい、社長。」
木村がいつもの慇懃無礼な秘書の顔をして仕事に取り掛かる。
~皆守視点~。
どうしよう・・・。
会社であんな事してしまって・・・。
恥ずかしい・・・。
この副社長室のあちこちで、石橋さんは私を抱いてくれて・・・。
考えるだけで身体が熱くなる。
秘書の川端さんにばれていないといいのだけれど・・・。
石橋さんが帰ってからそればかり考えて、仕事に集中できない・・・。
どれ位そうしていたのか、いつの間にか石橋さんの会社からメールが来ていた。
あ・・・!
これ・・・!
私がお爺様に渡した資料に沿っていて、尚且つもっと良い感じの資料で、ソフトが既に完成しているとあった。
凄い・・・!
こんなにも早くできるなんて・・・!
これならお爺様も良いと仰って下さるわ・・・!
資料をプリントアウトして、イスから立ち上がろうとしたができなかった!
足がガクガクしていた。
どうしよう・・・。
早くお爺様に見せたい!
そうだ、川端さんに持って行ってもらおう!
「川端さん、来て下さい。」
「はい。」
電話で呼ぶとすぐに川端さんは来てくれた。
「川端さん。この資料を会長に手渡して下さい。決して会長の他に誰にも見せない様に。」
「はい。」
川端さんは、資料の入った封筒を大事そうに抱えて出て行った。
叔父に見せたく無いけれど、川端さんが会長室に行けば誰かから連絡が行って叔父がこの副社長室に来るだろう・・・。
ふう・・・。
本当に叔父が社長から降りてくれればいいけれど、ダメならばもっと私に辛く当たるだろう。
お爺様は、株主総会で叔父を社長から降ろすと仰っていたけれど、簡単では無いのも分かっている。
コンコン。
副社長室のドアがノックされる。
「どうぞ。」
すぐに川端さんが入って来て頭を下げる。
「会長に手渡して参りました。会長は、全てを副社長にお任せすると仰っておられました。」
「ありがとうございます。後、社長が来たら体調が悪くなってもう帰ったと言ってもらえますか?」
「え・・・!」
川端さんも社長が苦手なのを知っていたが、このまま叔父の嫌味を聞くのは嫌だった。
こんな日は早く帰ろう。
まだ4時だったが帰る事にする。
足がガクガクしていたけど先ほどよりも良い。
「川端さん、車を用意して下さい。」
「はい。」
何とか立ち上がり、急いでエレベーターに乗る。
玄関ドアには既に車があり、運転手が助手席を開けてくれる。
私は事故のトラウマで後部座席に一人では乗れないので、いつも助手席に乗っているのだ。
車に乗ると胸がドキドキする。
このまま死ぬのではないかと・・・。
でも、今日はドキドキしなかった。
だって、まるで石橋さんに抱き締められている様に感じたから。
石橋さんの事を考えると違う風にドキドキする。
ああ、私は石橋さんが好き・・・!
こんな私を抱いてくれたんだもの。
彼女がいてもいい・・・!
二番目でも良いから、このまま私の事を抱いてくれないかしら・・・!
そんな事を考えていると家に着いていた。
運転手に礼を言い、車から降りる。
運転手が敷地から出て行くのを確認して、玄関には入らず由美子の部屋までゆっくりと歩いて行く。
歩いて5分で部屋に着き、すぐに着替える。
今日はフェミニンなワンピースにした。
ウィッグもして、お化粧もする。
うん。
良い感じ。
やっと自分に戻れた感じがする。
これからどうしよう・・・。
まだ5時前だし、由美子は仕事があるから帰って来ないだろうし、腰が痛いから買い物に行く気分では無いし・・・。
こんな時、石橋さんが居てくれたら・・・。
さっき抱き合っていて、私が性同一性障害だって話さなかったから、由美子の事を誤解してたのよね・・・。
その時、部屋のチャイムが鳴った。
誰だろう・・・。
こんな時間に誰も来るはず無いのに・・・。
誰が来たのか見ると、石橋さんが立っていた!
え・・・!
本物・・・?
「皆守!いるんだろ!開けろ!」
私は石橋さんが言う通りに、オートロックのドアを開けると3分後玄関ドアを石橋さんが叩く。
私は何も考えずに玄関ドアを開けていた。
私に会いに来てくれたと素直に喜んでいたけど、自分が女装しているのを忘れていた。
「皆守!」
玄関ドアが激しい勢いで開けられる。
石橋さんが怒っている・・・?
どうしたのだろう・・・。
「あ・・・。」
「え・・・!」
私は石橋さんの困惑している顔を見て、気が付いた。
私、今ワンピースを着ていたんだった・・・!
「失礼しました。この部屋に若潮皆守がいませんか?」
え・・・?
もしかして、石橋さん私に気が付いていない・・・?
「あ、あの・・・。」
どうしよう・・・。
「・・・?その声・・・!もしかして、皆守か・・・?」
私はこくりと頷く。
「・・・!」
石橋さんは、びっくりを通り越して唖然としている。
「・・・あの、入って下さい・・・。」
私がそう言うと、躊躇いながらも石橋さんが部屋に入って来てくれた。
ソファーに案内すると、石橋さんは難しい顔をしている。
もしかして、私の事を気持ち悪いと思っているのかしら・・・?
考えたら、男が女装するなんておかしいわよね・・・。
もし石橋さんに嫌われたら・・・。
そう思うと、勝手に涙が溢れてきた・・・。
「・・・皆守!」
私はどうしたら良いのかしら・・・?
「皆守、泣くな。」
石橋さんは、私を抱き締めてくれた。
私は石橋さんの背広の裾を握る事しかできない・・・。
「分かった。皆守が隠しているのはこの事だったんだな・・・。だから、あの爺さんあんな事言ってたんだな。」
「・・・?」
何・・・?
何の事を言っているの・・・?
「済まなかった、皆守。実はお前を疑っていた。この部屋に入ったと聞いて、またあの女の元に行きたいのかと勘違いしていた。」
「・・・由美子は友達です・・・。」
石橋さんは私を強く抱き締めてくれる。
「ああ、分かった。信じる。俺はお前を信じる。」
「気持ち悪いって言わないの・・・?」
泣いている私の目を見つめて、石橋さんは涙を唇で吸い取る。
「ああ、とても綺麗だ。一目惚れだったんだ。気持ち悪いなんて思わなかった。」
まさか、痴漢にあった時の事を覚えているの・・・?
「あの時、声を掛ける事ができなくて悔やんだんだ。怖がるお前を抱き締めたかった。そして、俺の物になって欲しいと言いたかった。」
「・・・!ほ、本当に・・・?」
ポロポロ流れる涙に、石橋さんは困った顔をする。
「ああ、嘘じゃない。」
強く抱き締められると、涙が止まらない。
「とても綺麗だ。早く全て脱がせて、お前を貪りたい。ほら、分かるだろう?」
石橋さんのズボンの前が、私のお腹を強く押し付けている。
「・・・!」
昨日からずっと石橋さんとセックスしている・・・。
恥ずかしい・・・。
石橋さんは私の涙が止まったのを見て安心したのか、ワンピースの背中にあるチャックを下げ始める。
「ま、待って!お話があるんです・・・。」
私が石橋さんの胸を押すと、拒まないと思っていたのかびっくりしている。
「・・・あの、わ、私、石橋さんにお話しなければいけない事があるんです。」
「・・・分かった。聞こう。」
そう言うと、石橋さんは私をお姫様抱っこをして、そのままソファーに座ってしまった。
顔が近い・・・!
「どうした?話しがあるのだろう?」
「・・・わ、私、性同一性障害なんです・・・。今のこの姿が本当の私なんです・・・。だ、だから・・・!」
そこまで言うと、石橋さんは私にキスをしてきた・・・。
「もう良い。分かった。何も言わなくても良い。」
本当に・・・?
分かってくれたの・・・?
「俺はお前が男でも女でも愛してる。気持ち悪いのは俺の方だ。お前を俺の物にしたくて、早く皆守を裸にしたいんだからな。」
私は顔が赤くなる。
だって、太腿に石橋さんの熱い物が主張しているんだもの・・・!
「皆守、他に言う事があるか?お前が何を考えているか知りたい。」
私は目をしばたかせる。
言ってもいいのかしら・・・?
「あ・・・。」
何か言いたそうなのが分かったのか、石橋さんは頷いてくれる。
「あ、あの、か、彼女と、別れて下さい・・・。」
「ああ。あの時の女は、ただのセフレだ。手を切る。だから、他の女に入らない代わりに皆守、お前を抱くぞ。良いだろう?」
私は嬉しくて、石橋さんの首に抱きつく。
「・・・ありがとうございます・・・。」
石橋さんの気持ちが伝わってくる。
もう、私以外の人を抱かないのだと・・・。
嬉しい・・・!
だって、私を離さないでいてくれる人がいる・・・。
それだけで私は満たされた・・・。
石橋さんは私にキスをしてくれる。
甘いキス。
深いキス。
涙味のキス。
全て石橋さんがくれた。
私には縁の無い物だと思っていた・・・。
でも今余さずくれる石橋さんを愛している。
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