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しおりを挟むアーサンが慌てて部屋に入って来た。
いつもは冷静なアーサンなのにどうしたのだろう・・・?
「カロン様!女王陛下が御出になられます!良かったです!ああ!こうしてはおられません!お茶のご用意をしたければ!」
アーサン達が慌てふためいている。
そうだ!
マルガリーテ様が来られるのは一月ぶりだもの!
ああ!
マルガリーテ様は僕を忘れたんじゃあなかったんだ!
「どうしよう・・・!心臓がドキドキする!マルガリーテ様・・・!ああ!」
それからマルガリーテ様が来られるまでの時間がとても長く感じた。
僕はマルガリーテ様が来るまで、棒の様に立っていた。
「カロン、少し痩せた様だのう。私が来なくて淋しかったか?」
マルガリーテ様が僕に声を掛けて下さると、僕は涙が勝手に出て来て止まらなくなった。
「カロン、なくでない。」
マルガリーテ様は僕を抱き締めてくれる。
それが久しぶりの温もりで、余計に涙が止まらない。
僕はマルガリーテ様を抱き返し、腕の中に収まるマルガリーテ様を離さなかった。
「ふふふ。カロンは相変わらずの泣き虫じゃのう。」
そう言って、僕の背中をポンポンと叩いてくれる。
「ああ!マルガリーテ様!お会いしたかった!僕のことを忘れてしまったのではないかと心配していました!ああ!マルガリーテ様!愛しています!」
鼻水も出てきたがどうすることもできず、流れるままになっていたが、マルガリーテ様は起こりもせず僕を甘やかしてくれる。
どれ程そうして立ち尽くしていたか、アーサンが声を掛けてくれる。
「女王陛下、カロン様、こちらでお茶を召し上がりませんか?」
は!
そうだ!
こんな失礼したら、呆れられちゃう!
「ぐす!マルガリーテ様、失礼しました。こちらへどうぞ!ぐす!」
「ふふふ。全く変わらんのう。」
テーブルまでのエスコートしていき、マルガリーテ様の椅子を引く。
「カロン、来月宴を催す。腹の中の我が子が主役じゃ。宴には必ず来なさい。・・・それから、詫びよう。この一月、カロンに会わなかったのには訳があったのじゃ。許してくれるかえ?」
マルガリーテ様が僕の目を見て言ってくれる。
「はい!もちろんです!マルガリーテ様が僕を忘れていないだけで、全て何でもいいです!」
僕はそう言っただけでまた泣いてしまった。
「全く、困った子だのう。また泣き出すとは。カロン、いい子だから泣き止め。そうだ、カロンはまだ私の子供達に会った事が無いであろう?宴の席で引き合わせようぞ。・・・落ち着いたらな。」
「はい!ありがとうございます!」
僕はマルガリーテ様が憂い顔なのが気になっていた。
「マルガリーテ様、どうかなさったのですか・・・?ご気分でもお悪いのですか?」
「・・・。ふむ。カロン、何故そう思う?」
マルガリーテ様は、何を考えているのか分からない笑顔で聞いて来る。
「・・・。あの・・・。なんだかお顔が堅いように思ったので・・・。す、すみません!無礼な事を言ってしまいました!」
マルガリーテ様はふっと笑う。
いつものように慈愛に満ちたお顔で!
ああ!
怒らせてしまったんじゃあなかったんだ!
「よいよい。カロンには敵わん。その様な顔をするでない。カロン、こちらへおいで。」
マルガリーテ様は手を僕の方に伸ばして来られたので、恭しく手を取る。
僕はその手にキスをする。
ああ!
マルガリーテ様!
うっとりする。
この御手がマルガリーテ様のものだと思うと、身体が熱くなる。
「・・・カロン、今か言う事を良く聞きなさい。宴の席で第一王女のオリンタールが謀反を起こす。そなたは、何があっても宴を抜け出してはいけない。宮殿の中は安全だが、万が一もある。私が宴を抜け出したのを見計らい、皆に酌をして回れ。その時酒瓶に薬を混ぜておくから、確実に全員に飲ますのじゃ。タナソーリアは私と共に行動するから、飲ませるのは私の子供達と夫達じゃ。第二王女から下は甘い飲み物を用意するのでそれを飲ませるように。アーサン、薬は後で持って来させるからしくじるな。」
僕は震え上がる。
「マルガリーテ様、く、薬とは皆さんをどうするおつもりですか・・・?」
マルガリーテ様は僕の手を優しく握ってくれる。
「怖がる事は無い。ただ、深酒した様になるだけぞ。子供はすぐに寝息を立てる。だが、私がずっと宴を脱け出していては不審に思う者が出るだろうから、前後不覚にするつもりじゃ。カロン、そなたにしか頼めぬ。怖いのは分かるが!私の為に頼まれてくれんか?」
僕は覚悟を決める。
「はい・・・!マルガリーテ様のためになるのなら、何でもやります・・・!」
涙目になっていたけど、マルガリーテ様が僕の顔を撫でてくれるのに安心する。
「・・・いい子じゃ。」
マルガリーテ様は僕にキスをくれた。
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