2 / 14
②不届きモノには説教を、弱者には救いの手を
しおりを挟む
青みが掛かった腰まである銀色の髪に、王家の血をうっすらと引いていると知れる紫色の瞳。
怜悧さと静謐さを感じさせる表情は、妙齢の御婦人方の羨望と情欲の的である。
コツコツと靴音を響かせながら回廊を歩く美しい青年の手には、しっかりと聖典が持たれ、彼を率いているのは、顎から白い髭を生やしている、何処をどう見ても天からのお迎えが今にくるのでは?と思えるほどのヨボヨボと歩く老神官。
バカにしてはいけない。
この方こそロットミル王国のハーシュラ教の神官を束ねる神官長であり、名はヨウルと言う。
甘いものとお花が大好きな温厚で慈悲深い、権力もお金も大好きな普通の人間に過ぎない。
神官のクセして生臭すぎると、影で言われいてはいるが、神官といえど血肉からなる生きている人である。
その生きて行く上で大切なのは、程々のお金と権力、そしてお肉とお酒。
質素倹約を貶めているわけではない。ただ事実を述べているだけだと、肉や魚、酒を嗜まない信徒に問われれば、いつもそのようにして返している姿が、日頃からよく見受けられているという。
その老神官に率いられながら青年神官が向かっている場所は、王都にある王立学園の前期修了式が開かれている大講堂である。
一切の曇りがない、長い長い廊下の先、あと少しで扉の前に着くだろうと言うところで、ズズズ、と思い音を響かせ、扉が内側から押し開かれたかと思いきや、一人の貴族令嬢が近衛騎士の一人によって、まるで迷い込んだ野良ネコの様に追い出される場面に遭遇した。
令嬢はドレスの裏襟部分を掴まれ、大変苦しそうで、よく見れば爪先が浮いているではないか。
下手をしたら死んでしまうのでは?と生まれた頃より神殿預かりな、表情が壊死している青年神官ことグレイル・フォン・ダウザー、もうすぐ28歳の男盛りは、優雅に見えるが実はかなりの急ぎ足で摘み上げられている哀れな子羊のもとへと急行した。
そのせいか辿り着いた頃には白石の頬にうっすらと朱が映え、禁欲的な雰囲気にそぐ合わない色気が足され、大男の近衛騎士の喉が上下した。
明らかに発情のそれと知れる発露に、老神官によるお仕置きが炸裂した。
白い木製の杖で、上には金剛石がキラキラと光輝き、存在を激しく主張している。因みにお値段は、下級貴族一家族が働かなくても一年は余裕で楽に生きていける程と噂されている。
つまり驚くほど値が張る代物と言うことになる。
勿論自腹購入ではなく、寄付と言う形での王家からの強制的な献上品であると言う。
シャンシャンと金剛を守るように付随した、布で吊り下げられた鈴が鳴り、合間に騎士の濁声が零れ聞こえる様な気がするが、老神官はそれを無視した。
神聖なる神に仕える神官に欲情するとは何事か。
別に男が男を好きになることは止めはしないが、生産的ではないし、教義上では意に反するのでやはり認められない。
よって。
「グレール、はやくそのお嬢さんを助けてあげなさい」
ポコポコと白杖で不埒な騎士を殴り─否、ありがたい説教をしながら秘蔵っ子に、見るからに泣いている少女に手を貸してやれと促す老神官は、何も知らない人から見れば、慈愛に満ちていた。
一方、生まれてすぐに神殿の前に捨てられ、世の理や政治の在り方まで全て教えてくれた彼の敬愛すべき師匠であり、養い親でもある老神官に、騎士に虐げられていた少女を助けるように言われた青年は、ヨウル神官のありがたい説教により(と言うより落としたに近い)解放された、金髪縦ロールの如何にも高飛車そうな少女に手を貸し、立たせようとしたが。
ギンっと睨まれ。
バチンと手を叩き振り払われた。
「いらないわよ!!どうせアナタも私の胸が小さいとか言って笑うんでしょ!!なによ、たいしたテクニックもないくせに」
うわああん、とついにはその場で泣き伏されてしまった。
グレイルは彼女がなぜ泣いたのか、理解できなければ幸せだったろう。がしかし、神殿育ちという特殊な環境ゆえに、彼は彼女の発言内容をすべて理解してしまった。
これが運命のいたずらで出会ってしまった二人の話だと、後世語り継がれることになるなど、誰が予想できようか。
少なくとも、敬虔な神の下僕であった青年神官には予兆すらつかめなかったのは確かである。
怜悧さと静謐さを感じさせる表情は、妙齢の御婦人方の羨望と情欲の的である。
コツコツと靴音を響かせながら回廊を歩く美しい青年の手には、しっかりと聖典が持たれ、彼を率いているのは、顎から白い髭を生やしている、何処をどう見ても天からのお迎えが今にくるのでは?と思えるほどのヨボヨボと歩く老神官。
バカにしてはいけない。
この方こそロットミル王国のハーシュラ教の神官を束ねる神官長であり、名はヨウルと言う。
甘いものとお花が大好きな温厚で慈悲深い、権力もお金も大好きな普通の人間に過ぎない。
神官のクセして生臭すぎると、影で言われいてはいるが、神官といえど血肉からなる生きている人である。
その生きて行く上で大切なのは、程々のお金と権力、そしてお肉とお酒。
質素倹約を貶めているわけではない。ただ事実を述べているだけだと、肉や魚、酒を嗜まない信徒に問われれば、いつもそのようにして返している姿が、日頃からよく見受けられているという。
その老神官に率いられながら青年神官が向かっている場所は、王都にある王立学園の前期修了式が開かれている大講堂である。
一切の曇りがない、長い長い廊下の先、あと少しで扉の前に着くだろうと言うところで、ズズズ、と思い音を響かせ、扉が内側から押し開かれたかと思いきや、一人の貴族令嬢が近衛騎士の一人によって、まるで迷い込んだ野良ネコの様に追い出される場面に遭遇した。
令嬢はドレスの裏襟部分を掴まれ、大変苦しそうで、よく見れば爪先が浮いているではないか。
下手をしたら死んでしまうのでは?と生まれた頃より神殿預かりな、表情が壊死している青年神官ことグレイル・フォン・ダウザー、もうすぐ28歳の男盛りは、優雅に見えるが実はかなりの急ぎ足で摘み上げられている哀れな子羊のもとへと急行した。
そのせいか辿り着いた頃には白石の頬にうっすらと朱が映え、禁欲的な雰囲気にそぐ合わない色気が足され、大男の近衛騎士の喉が上下した。
明らかに発情のそれと知れる発露に、老神官によるお仕置きが炸裂した。
白い木製の杖で、上には金剛石がキラキラと光輝き、存在を激しく主張している。因みにお値段は、下級貴族一家族が働かなくても一年は余裕で楽に生きていける程と噂されている。
つまり驚くほど値が張る代物と言うことになる。
勿論自腹購入ではなく、寄付と言う形での王家からの強制的な献上品であると言う。
シャンシャンと金剛を守るように付随した、布で吊り下げられた鈴が鳴り、合間に騎士の濁声が零れ聞こえる様な気がするが、老神官はそれを無視した。
神聖なる神に仕える神官に欲情するとは何事か。
別に男が男を好きになることは止めはしないが、生産的ではないし、教義上では意に反するのでやはり認められない。
よって。
「グレール、はやくそのお嬢さんを助けてあげなさい」
ポコポコと白杖で不埒な騎士を殴り─否、ありがたい説教をしながら秘蔵っ子に、見るからに泣いている少女に手を貸してやれと促す老神官は、何も知らない人から見れば、慈愛に満ちていた。
一方、生まれてすぐに神殿の前に捨てられ、世の理や政治の在り方まで全て教えてくれた彼の敬愛すべき師匠であり、養い親でもある老神官に、騎士に虐げられていた少女を助けるように言われた青年は、ヨウル神官のありがたい説教により(と言うより落としたに近い)解放された、金髪縦ロールの如何にも高飛車そうな少女に手を貸し、立たせようとしたが。
ギンっと睨まれ。
バチンと手を叩き振り払われた。
「いらないわよ!!どうせアナタも私の胸が小さいとか言って笑うんでしょ!!なによ、たいしたテクニックもないくせに」
うわああん、とついにはその場で泣き伏されてしまった。
グレイルは彼女がなぜ泣いたのか、理解できなければ幸せだったろう。がしかし、神殿育ちという特殊な環境ゆえに、彼は彼女の発言内容をすべて理解してしまった。
これが運命のいたずらで出会ってしまった二人の話だと、後世語り継がれることになるなど、誰が予想できようか。
少なくとも、敬虔な神の下僕であった青年神官には予兆すらつかめなかったのは確かである。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
公爵令嬢のひとりごと
鬼ヶ咲あちたん
ファンタジー
城下町へ視察にいった王太子シメオンは、食堂の看板娘コレットがひたむきに働く姿に目を奪われる。それ以来、事あるごとに婚約者である公爵令嬢ロザリーを貶すようになった。「君はもっとコレットを見習ったほうがいい」そんな日々にうんざりしたロザリーのひとりごと。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる