思想学部

ケーキ

文字の大きさ
70 / 190
一年生

練習試合II②

しおりを挟む
考自高校の思想学部は驚いていた。

「あんなにメンタルが強いやつが居るなんて…」

けいしゃがそう呟くと、がいぶつが笑う。

「たとえそうでも、さっきみたいに15分以上続けば疲れる。

けいしゃとえそが居れば勝てるだろ。」

けいしゃが「ですよね!流石部長!」と褒めた。

がいぶつはそれに高笑いする。

次は二瀬形者とすすむ。
 
けいしゃは接触する。

「あとは君だけだ。どれだけ粘っても、後ろの2人に負ける。」

すると、すすむは言った。

「僕は勝つ。」

けいしゃはムッとした。


そして対戦がはじまる。

「君の考えを先に言っていい」

さっきのがせって人と同じような戦法でいくようだ。

しかし、すすむくんは「僕は君のことを肯定する。」とだけ言った。

「どういうことだ?」

彼は「これから分かるよ。」と話す。

そして、「君の夢は?」とたずねた。

「俺の夢は有名人とか、凄い人と仲良くなること。」

「いい夢じゃないか。」

すすむくんがそう言った時、けいしゃは言葉を失った。

そのまますすむくんの勝ちになる。

「何があった?」

がいぶつはけいしゃにたずねる。

「向こうの部長が言葉を発した後、否定が全く浮かばなくなって。」

「なるほど。あいつらの武器は肯定か。」

「おお!」部員達から、賞賛の声があがった。

4試合目は得曽という女の子と。

えそははじまった瞬間「私の夢はアイドルになること。」と言った。

「いい夢だと思う。」

すすむくんの言ったことは変わらなかった。

しかし、彼女はなんだか怒っている。

「嘘。あなたもみんなと同じように嘘をつくんだ。」


がいぶつは言った。

「えそさんは昔、周りの意見からなれると言われて実際に応募したことがある。だが、全然駄目だったらしい。」

「その彼女に肯定しても、逆撫でしてるに過ぎないのだ」

がいぶつは笑って勝利を確信した。

すすむは口を開く。

「夢を見ることはいいことだ」


がいぶつは「何を言っても無駄だ」とつぶやく。

思った通り、えそさんは、強烈に批判した。


これ以上話しても、彼女のことを傷付けるだけ。

がいぶつはすすむを見ると、その様子に笑みが消えた。

全く動じていないようだ。

「どんなことがあっても僕は君の夢を肯定する」

すすむはどんなに否定されても肯定でかえす。

どれだけ言われても折れない。そればかりか相手に対する肯定が強くなる。

がいぶつはその様子が不思議でならなかった。


その時、昔のことが浮かぶ。

中学生の時、会の名前を聞いた。

あの頃は、おかしな名前だと思っていたが、その後に無理という会のリーダーの話を聞いてどこか惹かれた。

俺は数度、そこに参加する。

それから、高校に入った。

創設者が同じ兄弟校だったため、リベシンとよく関わる。

そこには例のリーダーが居た。

なんでも、テレビに出たことがあり、注目している人もいるらしい。

俺は思想学部が作られる前の、彼らの話に入った。

自分は会に入ってる。あの人の傍にいた事があると。

すると彼らは、俺の事を褒めたたえた。

最高の気分だった。

思想学部ができてからは、俺は見てきた否定について教えて、この位を維持する。

ずっとこのまま…。

丁度その時、対戦が終わった。

すすむの強い肯定に負けを言った。

しかし、がいぶつの心に焦りはない。

ここで勝てば、俺は更なるヒーローだ。

2戦したことの疲労と、もうひとつの武器が俺の勝利を確信させる。

栄枯盛衰はさせない。永遠に栄え続けるのだ。

がいぶつがすすむの前に向かう途中、外野に目が入った。

練習試合見学に来た人。

しかし、どこかで…?

会のことが浮かんできた。

そうだ…あれは、リーダーの男のそばに居た。

がいぶつは笑いが込み上げてくる。

ここでいいところを見せれば、更に近づけ、みらいみとか言うやつに…。

俺はまだ満足はしない。鶏口牛後ではな。

すすむとがいぶつの目があう。

外から「がいぶつ部長なら大丈夫だ。」「絶対に勝てる!」と声があがる。

そして、最後の試合がはじまった────────

先に話したのはがいぶつ。

「ぜんほうの部長さん。始める前に言っておこう。

君を見てきて分かったことがあるんだ。」

すすむは首をかしげる。

「君は肯定が武器で理想主義者だということ。」

「そして…」

がいぶつはにやりと笑った

「俺は否定を使う現実主義者。全く正反対のものがあたるとき、決定的な武器を持ってる方が勝つ。」

「決定的な武器?」

「あぁ。俺は否定を武器に使えるが、君は肯定を武器として使えない。」

心の中で、だから俺の勝ちになるんだよと言った。

がいぶつは「はじめようか」と笑う。

「うん。僕から…」

すすむが言おうとした時「分かってるから言わなくていい。俺が言う」とさえぎる。

「分かった。」

「俺は肯定が使えない道具って思想を持っている。」

がいぶつはどうだ。と笑いながら、すすむを見る。

しかし、思ったより落ち着いていた。

「俺の思想を君はどう思う?」

肯定を封じた。この男は否定することしかできない。

しかし、それは思想に反する。

がいぶつは、すすむの様子に面をくらっていたが、自分の考えの絶対的自信から、勝利は揺るがないものだと思った。

だが…

「いいと思う」

その一言に焦りがうまれる。

「どうして?何故、肯定できる。

全く反対の思想なんだぞ。」

「その人が居ることで、もしかしたら新しいことを知れるかもしれない」

がいぶつの中で、何かが壊れる

「お前は何者なんだ」

すすむは笑みを浮かべた。

「君は僕を理想主義者って言ってたね。

理想主義は理想主義でも、僕は…それを超越した夢想主義者だ!」

がいぶつの心には負けがはっきりしたこと、そして、失ってしまう恐怖が浮かんだ。

そんなのいやだ。

そこから、がいぶつは理性を失って否定を繰り返した。

5分が経って、審判の人が、がいぶつの負けを告げる。

細かいルールの中にもうひとつあった。

5分が経っても、相手が一方的にはなし、こちらが話すことを阻害した場合、それは相手の負けになる。

負けを宣言されたがいぶつは周りをみた。

すると、前の尊敬の眼差しはなく、冷たいものだった。

権威失墜…。

見学に来ていた会の人の方を向くと、そこにはもう居なかった。

─────────

最後まで見たけど、結局、得られることはなかった。

でも、すすむって人…。

副部長はそっと空を見上げた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

慈愛と復讐の間

レクフル
ファンタジー
 とある国に二人の赤子が生まれた。  一人は慈愛の女神の生まれ変わりとされ、一人は復讐の女神の生まれ変わりとされた。  慈愛の女神の生まれ変わりがこの世に生を得た時、必ず復讐の女神の生まれ変わりは生を得る。この二人は対となっているが、決して相容れるものではない。  これは古より語り継がれている伝承であり、慈愛の女神の加護を得た者は絶大なる力を手にするのだと言う。  だが慈愛の女神の生まれ変わりとして生を亨けた娘が、別の赤子と取り換えられてしまった。 大切に育てられる筈の慈愛の女神の生まれ変わりの娘は、母親から虐げられながらも懸命に生きようとしていた。  そんな中、森で出会った迷い人の王子と娘は、互いにそれと知らずに想い合い、数奇な運命を歩んで行くこととなる。  そして、変わりに育てられた赤子は大切に育てられていたが、その暴虐ぶりは日をまして酷くなっていく。  慈愛に満ちた娘と復讐に駆られた娘に翻弄されながら、王子はあの日出会った想い人を探し続ける。  想い合う二人の運命は絡み合うことができるのか。その存在に気づくことができるのか……

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

スライム退治専門のさえないおっさんの冒険

守 秀斗
ファンタジー
俺と相棒二人だけの冴えない冒険者パーティー。普段はスライム退治が専門だ。その冴えない日常を語る。

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

処理中です...