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第1章
プロローグ
しおりを挟む現実世界との区別が一瞬分からなくなるようなこのステレオスピーカーの音質。
ウファーから出る重低音もクリアに重なり、きれいな音色が部屋中に響き渡る。
いくら音を大きくしてもこの安全地帯、住居エリアの個室というのは
破壊不可能オブジェクト、と同時に中の音は決して外には漏れない
大変便利な仕組みになっている。
俺、龍川勇人は今この国際交流を目的として作られた世界的プロジェクト、
The beautiful world 略してTBWでの総合レベルは1。現実世界では中学1年生、
13歳。特に部活動には入っていない、放課後すぐに帰ることができる
という特権が与えられているごく普通の男子。好きな子はいない。
と同様に好かれたこともない。
このオンラインの世界、TBWが西暦2050年に作られてから5年。
今ではこの地球の人口の約6割以上の人がダイブしている、
つまりこの仮想世界を使っている。そしてこの世界はいくつかのエリアに分けられる。
まずはこの仮想世界のあちこちにある住居エリア。
その中でも比較的面積が広い所にある商業エリア。そして開発エリア。
この仮想世界でしかできないような研究などをしたい人が集まるところだ。特に
プログラマー関係の開発者が多い。そして教育エリア。
仮想の学校などは主に現実世界で病院などに入院している人たちが通っている。
そう意味では教育エリアはしっかりと意味をなしていると思う。
そしてそして…その他の非安全地帯。そこにはさまざまなバイオームがあり、
さまざまなモンスターがいる。住居エリアを取り巻くステップ(steppe)
には比較的攻撃レベルが低いモンスターが生存している。
だから俺みたいなレベルが低いプレイヤーにとってはもってこいの場所。
このTBWではプレイヤーの総合的な強さを知る手段として
総合レベルといわれるものがある。
俺たちはいつもシンシテス・レベルを略してシスレベと言っている。
英語で言うと‥synthesis(統合)からきたとか。
俺のシスレベは1。攻撃レベルは6。
なぜ攻撃レベルが6に対してシスレベは1なのか‥。
それはレベルは攻撃だけではないということだ。その他、俺が知っているだけでも
ソードスキル、マジックスキル、専門スキルなどいろいろある。
4月からダイブし始めたのでまだよくわからないことはいろいろあるが、だいぶ
この世界には慣れてきた。暇な時間を見つけてはよく中学校の親友と
モンスター退治に行く。そして今もその友達からの連絡を仮想世界の自分の部屋で
待っている。スピーカーから流れる美しい音色はこの住民エリア、セイントポールを
特徴づけると言っても過言ではないようなリズム感があり、ついいつも聞いてしまう。
この曲を初めて聞いた時は今まで音楽なんて一切興味を持たなかった俺も、
ついこのCDに手を出したぐらいだ。特に何も考えずにセイントポールの
レンガで張り巡らされた整った景色を見ていると、ウィン、と小さな音がして
ウィンドウが出てくる。メインメニューを開くとメールのアイコンが点滅
している。今夜のモンスター狩りについてのことだろう。
アイコンをタップするとすぐに新着メールが出てくる。
「ユウトへ
今日は学校の理科の宿題少し残ってるから予定30分変更するけどいいか?
あしたまでに仕上げないといけないやつだから。じゃ、‥」
すぐさま「宿題なんてさっさと仕上げとけ!! 許さん!!」
とではなく俺はもっと寛大な心の持ち主だったはず。たった30分くらい大丈夫か‥
「OK、じゃあいつもより30分遅れで20時30分な。遅れるなよ。
場所はいつも通りクリス平原の入口で」
確かにあの理科の自分で宿題の範囲を決めなければいけないという
へんてこな宿題は今までの中で、ある一番意味難しいと思う。
もちろん0ページでもいい。
しかしその時はもし実力考査でいい点が取れなかった場合がどんだけ先生から
厳しい眼が向けられるかを考えるとやっぱりちょっと多めにやっといた
ほうがいいのか、なんて思ったりする。一応俺は出された範囲は全て終わらせておいた。
どうせ冬休みとかに課題としてまた出されることになるだろうし。
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