今日も君の心はハカれない

本田ゆき

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第19話 君とカラオケ

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 授業が終わり、放課後。

「東くん! 今日もこれから図書室行く?
 行くなら私も一緒に……」

 意気揚々と声をかける遥に、静夜は申し訳なさそうに答えた。

「あ、ごめん、これから鈴木達とカラオケ行くんだけど、何かあった?」

 そう断られた遥は意気消沈した様にシュンっと大人しくなった。

「あー……そうなんだー……。
 えっと、この前のハンカチ返そうと思って……後これお詫びのお菓子です……」

「え? お菓子まで別にいいのに……ありがとう」

 そう言ってお菓子とハンカチの入った紙袋を受け取り静夜が礼を言うと、遠くから静夜を呼ぶ声が聞こえた。

「東ー! 準備出来たら行こうぜー」
「おー、今行く!
 あ、それじゃあ葵さん、また明日」

「うん、また、明日……」

 落ち込んでいる遥を不思議に思いつつ静夜は男子達の元へと行ってしまった。

「う、うぅ……」

「どんまい遥」
「どんまいルカちゃん」

 そして落ち込んでいる遥の元へユウとハルがやって来た。

「今日の放課後は本の感想を言い合おうと思っていたのに……。
 くそっ! 鈴木と山本と渡辺めっ!
 私ですらまだ東くんとカラオケなんて行けてないのにっ!
 東くんが一体どんな曲が好きで歌唱力がどの位なのか知りたいのにっ!
 歌声聞いてみたいーっ!」

「はいはい、いつか一緒に行く機会があるといいな」

 ユウになだめられる中、ハルが手を上げて意見を述べた。

「はいはーい!
 どうせならこれから私達もカラオケ行かない?」
「えー、それは……」
「賛成っ!!」

 ハルの意見にユウが苦言を呈そうとすると、横からすかさず遥が賛成してきた。

「おっ! ルカちゃんノリノリだね~」
「だってそれならこれから東くんを自然に追いかけられるし、運が良ければ隣の部屋に入って歌声を聞く事が出来るかもしれない!!」
「うわぁ、下心100%だったか~」

 遥の発言に引いているハルを他所に、遥はもう既に身支度を済ませて男子達の後を追いかけ始めていた。

「よっしゃ! 善は急げださっさと行くぜっ!」
「待ってよルカちゃ~ん」

 そんな遥をハルも追いかけていく。

「はあ……嫌な予感しかしない」
 
 そんな2人を見てユウはため息をついた。

 そして遥達はバレない様に静夜達を追いかけつつカラオケへとやって来たのだが……。

「ちっ、隣の部屋じゃなかったか……」

 遥は案内された部屋に入り悪態ついていた。

「そりゃあ都合良く隣同士の部屋が空いてる訳ないだろうからな。
 この時間なら普通に学生も多いだろうし」

 ユウが冷静にそう判断している中、ハルは次々と零の曲を入れて熱唱し始めていた。

「まあいいやー折角カラオケ来たからには歌うかー……ってハル!?
 何1人で当たり前の様に連続で曲入れてんのっ!?」
「ルカちゃんうるさいっ!
 歌ってる時に話しかけないで!」
「え、ごめん……じゃないよ!
 これじゃあ私とユウちゃんの番来ないじゃん!」
「私カラオケ来たら零様の曲全部歌うって決めてるの!」
「零様の曲って一体何曲あるのっ!?」

 遥とハルが喧嘩しているのを横目にユウはやっぱりな……とため息をつく。

「だからハルとカラオケ来たくなかったんだよ……こいつ塾メンの打ち上げ行った時もマイク手放さなかったからな」
「ええー……」

 ユウの発言に流石の遥もハルの行動にドン引いていた。

「という訳で遥、部屋出るぞ」
「えぇ!? まだ歌えてないのにもう帰るの!?」
「違う。
 私達は別で歌えばいいだろ?
 まあ部屋代はそれぞれかかるけど、ハルは1人で払ってもらう」

 そう淡々と告げ荷物を持って出るユウに遥も後から着いていき、受付に頼んで別の部屋を案内された。

「……っ!?
 こ、ここは!?」

 そこはなんと、静夜達が案内された部屋の隣の部屋だった。

「よっしゃあ! これで東くんの生歌聞き放題じゃねーか! ぐえっへっへっ!
 さーて東くんはどんな歌を歌ってるのかな~!?」

 そう気持ち悪い笑みを浮かべながら壁に耳を擦り付ける遥の姿をユウは冷やかな視線で見ていた。

「表情も発言も行為も全てJKがやってるとは思えない程に酷い」

 しかしそんなユウのツッコミを遥が聞いているはずもなく遥は耳を擦り続ける。

「ん~? 今丁度曲と曲の間かな……?
 よく聞こえな……」

「ゔぉーーーー!!(デスボイス)」

 急に隣の部屋から突然の叫び声の様な声が聞こえて遥は耳と心臓が一気にやられた。

「ぐはっ!!」
「うぉっ、びっくりした……遥、あんた耳大丈夫?」

「だ、大丈夫……東くんって大分個性的な歌い方スルンダネ……?」
「これ東が歌ってんの?
 いや知らないけどさ」

 隣の部屋のデスボイスに混乱する遥に冷静にユウが問いかける。

「え? あ……そう言えば東くん以外が歌ってる可能性もあるのか!?」
「むしろ4分の3の確率で東以外が歌ってるだろ」

 遥は急に来るデスボイスの恐怖に怯えつつも壁に耳を当てながら誰の声なのか判別しようとした。

「確かに……よくよく聞いたら東くんの声ではなさそう……」
「私先に曲入れるよ」
「ア、ハイ、どうぞ」

 そんな遥を他所にユウは曲を入れ出した。



 一方隣の男子達の部屋では。

「すげー鈴木、よくカラオケで◯ルモンの曲歌えるよな……」
「あれ歌詞なんてあったんだ……」

 徹人がマキシマムザ◯ルモンの曲を熱唱しているのを他の3人は感心しながら聞いていた。
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