今日も君の心はハカれない

本田ゆき

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第49話 君と告られ待ち

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「春が終わりそう……」

「ユウちゃん昨日のネプリング見た?」
「また零が出てたのか?」

 朝の登校時、唐突に意味深な事を遥が言い出した為ユウとハルは共にスルーを決め込んだ。

「ちょっと2人とも!
 どうして何も触れないの!?」

 ぷりぷりと怒る遥を面倒そうに見ながらユウとハルは口を開く。

「どうせ変な事言うんだろ?
 春も終わるんだからいい加減大人しくなって欲しいがな」
「春は変な人が増えるって言うしね~」

 ハルの言葉に遥は突っかかる。

「ちょっと!? 私がおかしいのは春のせいみたいに言わないでよ!」
「そうだな。お前は年中おかしい」

 ユウの言葉に遥は一瞬納得しかけて否定した。

「そうだよ! いや違う!!
 出会いの春が終わるという事は~?」

 もったいぶって続きを言わせようとする遥をハルは不思議に思いながらとある言葉をひらめいて答えた。

「別れの夏が来る!」

 ハルの言葉に遥は盛大に突っ込んだ。

「いやそれは悲しくない!?
 違うよ!
 そろそろカップルに!
 今風に言うならリア充に!
 昭和風に言うならアベックに!
 ジョブチェンジの季節かなと!」

「そんで零様が昨日答えたクイズがね!」
「ああ、あの珍回答したやつか」

 そう白熱して伝える遥をハルとユウは再びスルーした。

「何故!? 何で2人ともスルーするの!?」
「いや、要するにそろそろ東と付き合いたいって事だろ?
 勝手に告白すればいいじゃんか」

 冷たく答えるユウに遥はちっちっちっ、とドヤ顔しながら首を横に振る。

「違うよユウちゃん!
 そろそろ静夜くんの方から告白されないかなって思ってるの!」

「いやないだろ」
「すっご~い! ルカちゃんどこからその根拠のない自信が沸くの?」

 ユウの鋭い否定とハルの純粋な質問に遥は戸惑いながら口を開いた。

「ええ!? だって昨日本の話でめちゃくちゃ盛り上がったよ!?
 もうこれ以上仲良くなったら付き合ってるくらいにはピークだったよ!?
 あそこまでいけばもう付き合ったも同然じゃないの!?」

 遥の言葉にユウとハルは頷きつつも答える。

「まあ確かに昨日は仲良さそうだったけど、それにしても前科が酷すぎるからな……」
「昨日でマイナスからようやく0に戻ったって感じだよね」
「私そんなにマイナスだった!?」

 驚く遥にユウとハルは当たり前の様に答えた。

「そりゃまあ」
「ぶっちゃけ東くんはかなり耐えてる方だと思うよ?」
「そ、そんな……!?
 私もう告白されるものだと思ってOKの返事を出す練習までしたのに……」

「相変わらずすっごいポジティブだよなお前」

 遥のポジティブぶりにユウは呆れながらも突っ込む。



 こうして3人がいつも通り愉快に登校して普通科の教室へ入ると、明宏と静夜の席の周りにすでに徹人と太一が集まっていた。

「あ、そうそう。俺彼女出来たから」

 涼しい顔してそう宣言する明宏に太一がいの1番に反応する。

「はぁ!? 嘘だろヒロお前マジかよ!?
 どこの誰だよ!?」

 太一がキレながら質問する中、徹人と静夜も驚きながら質問した。

「マジで!? 誰誰~?」
「いつの間に!? マジで誰?」

 明宏は携帯に写っている女の子の写真をみんなに見える様に前に突き出して見せた。

「じゃーん! この子、国際科の美菜みなちゃん」
「普通に可愛いじゃねーか! しかもまた巨乳だしよ!!」

 写真を見て怒る太一をよそに静夜が疑問を投げかける。

「国際科の子とか何処で知り合ったんだよ?
 そんなに接点ないだろ?」

 静夜の問いに明宏は自慢気に答える。

「美化委員会でたまたま席隣になって、美菜ちゃんもゲームが好きだって話で盛り上がってさ~。
 そっから連絡先交換してフレンド申請とかしてこの1ヶ月ちょいたまに一緒にオンラインでゲームしたりして仲良くなったって感じ」

 そう説明する明宏に太一は絶望する。

「嘘だろこんな可愛い子でゲーム趣味とかリアルでいんの……?
 そんなん2次元だけの存在じゃねーのかよ!」
「最近ゲーム趣味の女子多いしちょいちょい可愛い子もいるぞ?」
「俺の周りには少なくとも居なかったぞ!!」

 男子達が盛り上がってる中、遥も恐る恐るその男子の輪の中に声をかけた。

「おはよー静夜くんとその他諸々……」
「あ、おはよう葵さん」
「おーす葵さん!」
「その他諸々は酷くね?」

 太一が遥に突っ込むが、遥は無視してそのまま話題の中心である明宏へと声をかけた。

「山本くん彼女出来たんだね、おめでとう」

 急な遥の声かけに驚きつつ明宏は祝われた礼を言う。

「え? ありがとう」

「いいなー羨ましいなー私も彼氏欲しいなー」

 そしてあからさまにそう発言する遥を無視して静夜は次の移動教室の準備を始めた。

「おい静夜ー。葵さんが何か言ってるぞ?」
「静夜どうすんの?」
「おい逃げる気かお前」

 明宏と徹人と太一にそれぞれ言われる中、静夜は意を決した様な表情で遥に声をかけた。

「葵さん」

「(つ、ついに告白!?)
 な、何でしょうか静夜くん!?」

 それから静夜は遥に教室の鍵を渡す。

「今日日直の日誌は俺が書くから葵さんは鍵閉めよろしく」

 静夜にそう言われて遥はようやく自分と静夜が今日の日直である事を思い出した。

「!?
 わ、分かった!」
「それじゃ俺先に理科室行って秋山先生に今日のプリントないか聞いてくるから」
「う、うん……」

 そうして静夜は何事もなかったかの様に理科室へと向かった。

 そんな静夜の後ろ姿を眺めながら太一と徹人と明宏はそれぞれ感想を述べる。

「静夜の奴スルースキル高すぎるだろ……」
「静夜ぱねぇ!」
「葵さんどんまい!」

「うう、静夜くんの防御が固ぇよ……」

 遥はみんなから慰められつつも静夜から渡された教室の鍵を握り締めながら涙目で呟いた。




 その日の放課後。

「葵さん、残り俺1人で出来るから別に先帰っていいよ?」

 静夜の前の席に座って静夜が日誌を書くところを見ている遥に静夜はそう提案したのだが、遥は聞く耳をもっておらず別の話をしだした。

「静夜くん、私考えたの」
「……」

 ここで何かしらアクションを取るのはまずいと察した静夜はスルーに徹したが、しかし遥はそのまま話を続けた。

「さっきは周りに人が沢山いたけど、今この教室には私と静夜くんの2人きり。
 つまり、静夜くん。
 私に何か言いたい事はなあい♡?」

 にこにこと笑顔で訪ねてくる遥に静夜は淡々と答える。

「うん。あと俺1人で出来るから先帰ってくれない?」

 ばっさりと言い切る静夜に遥は笑顔を崩さず更に問いかけてきた。

「私の帰りが遅くなるのを心配してそう優しく言ってくれるのはすっごくありがたいんだけど今私が聞きたいのはそれじゃないかな~?」
「うわめっちゃポジティブに解釈してくるじゃん……」

 あまりの遥のポジティブさにやや引きつつ静夜は呆れながら遥に質問した。

「葵さんはさ、無理矢理相手に告らせてそれで満足なの?」

「え?」

 唐突な静夜の問いに面食らう遥に、静夜は更に畳み掛ける様に言葉を続ける。

「俺が葵さんに軽い気持ちで付き合おうって言ったら付き合うの?」

「そんな! 静夜くんは軽い気持ちでそんな事言う人じゃない!」

 静夜の言葉に反論する遥の頭を静夜はポンと日誌の面で軽く叩いた。

「何だ。俺の事よく分かってんじゃん」

 静夜から日誌を受け取りながら遥は顔を赤く染めて話す。

「そりゃあこの1ヶ月ずっと静夜くんの事見てたから……!」
「それじゃあ俺が今何考えてるか当ててみて?」

 そう言われて遥はハッとする。

「日誌を先生に届けて早く部屋に帰りたい……とか?」

「正解。それじゃあ葵さん、後は分かるよね?」

「!?」

 にこりと笑う静夜に遥はいつも通り心を奪われ固まってしまった。

 そんな遥に静夜は淡々と告げる。

「ほらぼさっとしてないで、自分の鞄持って」

 静夜に命令されて遥は慌てて鞄を肩にかけた。

「あ、はい!」
「それから戸締り確認して」

 そして遥は言われた通り窓の鍵を確認して静夜にウインクしながら敬礼をする。

「確認オッケーであります!」

「じゃあ教室の鍵閉めて職員室向かうよ」
「イエッサー!」

 それから教室の鍵を静夜と共に閉めた後2人は日誌と教室の鍵を担任に渡しに職員室へと向かった。

 そして用事が終わり職員室から帰る途中遥は頭を抱えた。

(あっれー!? おっかしーなー!?
 私告白されたかったのにいつの間にか誘導されちゃってるー!?)

 そんな遥を横目で見ながら静夜はホッと安堵する。

(葵さんが単純で良かった)

 こうして遥の告られ待ちは失敗に終わったのだった。



「でもさっきは意外だったな。
 葵さんはてっきり自分から告白するタイプだと思ってたから」

 遥の隣で先ほどの遥とのやり取りを思い出した静夜がぽつりとそう話すと、遥は目を見開いて驚いた。

「静夜くん……ごめん私ってば静夜くんは告られるより告白したい側だと思ってたんだけど、告白されたかったんだね!?」

「いや別に告白したいとかされたいとかそんなのあんま考えた事ないけど」

 静夜がそう訂正するのも聞かず遥は顔を赤くしながら叫んだ。

「私! まだちょっと自分から告白するの怖くて! だから、好きって言う覚悟が出来たら告るから!
 だから静夜くん!
 その時まで待っててね!」

「え?」

「それじゃあまた明日ねー!」

 ぽかんと呆気に取られている静夜を残して遥は恥ずかしさのあまり全力ダッシュしながら帰って行った。

「……それもう告白では?」

 静夜はそう呟いたが、しかしその声は静かな廊下に溶けて消えていく。

(……まあ本人がいつか告白するって言ってるし、その時返事を出せばいいだけで特に今は何も考えなくていいか)

 そうして静夜は未来の自分に面倒事を託して告白の返事を考える事を放棄するのであった。
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