今日も君の心はハカれない

本田ゆき

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第80話 君と海 5

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「アキくんやっさしぃ~」
「まあ友達のよしみとしてこのくらいのフォローは当然よ」

 明宏は美菜に褒められ上機嫌になりながら静夜を呼ぶ。

「おーい静夜ー!」
「何だ?」

 明宏に呼ばれて静夜は徹人とのラリーを一時中断し明宏の側へとやって来た。

「葵さん泳げなくて暇らしいから、話し相手が欲しいってよ」

 ニヤニヤしながらそう提案する明宏に静夜は面倒そうに答えた。

「それ別に俺じゃなくても良くね?」
「お前が良いって本人からのご指名だぞ?」
「……はぁ」

 明宏の言葉に静夜はため息を吐いた後冷静に返事をする。

「あのさぁ、俺が葵さんに対して話し相手になる義理とかないと思うんだけど」
「でも東くん、早く行ってあげないともうあーちゃん知らん人に話しかけられてるよ? 危なくない? あれ」

 静夜が断る返事をしていた手前、遥はいかにもやんちゃそうな男性2人組に話しかけられていた。

「……マジか、そんな漫画みたいな事ある?」
「葵さんは漫画みたいな人だからな。てか早く行ってやんねーとマジでやばいくないか?」
「あー! ったく!」
 
 静夜は急いで遥の元へと泳いでいった。

「ねえ、私たちも行ったほうがいいかな?」
「いや、美菜は河合さん達と一緒にいて。
 俺は様子見てくるから」
「わかった」

 一方男性2人に絡まれている遥はと言うと。

「1人で暇してるなら俺達と遊ばない?」
「私友達と来てるので」
「えー? 友達と一緒に泳がないの?」
「泳げないので」

 淡々と携帯をいじりながら塩対応で答えていた。

「泳ぐの苦手なら俺教えてあげよっか?
 俺人に教えるの上手いからさ」
「俺も手伝うよー」

 そう言って男性のうちの1人が遥の腕に手を伸ばしたが、それを遥は弾きながらスマホのカメラを男性2人に向けた。

「私あなた達が声掛けてきた時からずっと撮ってますよ?
 女子高生相手にナンパなんて世間にバレたらまずくないですか?」

「え?」

 遥の言葉を聞いて男性は2人とも焦り出しこそこそ話を始めた。

「女子高生ってやばくね? 大学にバレたら……」
「携帯奪って動画消してもらうか?」
「いやそっちの方がもっとまずいだろ。すぐ後ろに警備員も居るしここは普通に逃げようぜ。今ならまだ手は出してないし大丈夫だよな?」
「そうだな」

 それから男性2人は再び遥の元に苦笑いを浮かべながら振り返る。

「女子高生なの? てっきり大人かと思っちゃってさ……」
「大人びてるから勘違いしちゃったわー。
 なんかごめんね、じゃあ俺達はもう行くから!」

 それから男性2人はすぐさまその場から離れていった。

「葵さーん! ってあれ?」

 遥の元へ静夜が駆けつけた時には男性2人が逃げていった後だった。

「静夜くん! 話し相手で来てくれたんだね! 嬉しい! 海より私をとってくれたんだね!」

 先ほどまで男性に絡まれていた事が嘘の様に遥は普段通り静夜に話しかけた。

「葵さん、さっき男の人達となんか話してなかった?」

 静夜に訊かれて遥は嬉しそうに答える。

「静夜くん……もしかして心配で助けに来てくれたの!?」
「そりゃ友達がトラブルに巻き込まれそうなら心配するだろ普通……まあ何もなかったんなら良かったけど」

「まああの程度のナンパなら女子高生と名乗れば逃げていくからね! 今のご時世未成年と知って白昼堂々と声をかける奴なんてそんな居ないし!」

 遥の言葉に静夜はため息をつく。

「やっぱナンパだったのかよ。というかなんですぐ警備員呼ばなかったの?」

「最悪危なくなったら呼んでたよ?
 でも今までも何回かナンパされた事あるけど大丈夫だったしさ」

「いや危ないだろ普通に。今まではたまたま大丈夫だったかもだけど本当にやばい奴だっているかもしんないだろ」

 ヘラヘラと笑う遥に静夜はやや怒りを滲ませながら説教する。

「あ、ごめん……その……静夜くん、もしかして怒ってる?」

 恐る恐る質問する遥に静夜は呆れた様に答えた。

「別に。ただ今後は本当に危なかったらもっと他の人に頼った方が良いと思っただけ」
「じゃあ……その時は静夜くんに頼っても良いの?」

 遥に上目遣いに問いかけられ静夜は嫌そうに口を開く。

「俺より警察とか大人の人の方が頼りになるだろ」
「ううん! 静夜くんだって頼りになるよ! 今日だって駆けつけてくれたんだし!」

「別に俺何もしてないけど」
「ううん! 心配して来てくれた事が嬉しいの!」

 純粋に気持ちを伝える遥に静夜はため息をつく。

「はぁ……本当調子狂う」
「静夜くん、具合でも悪いの?」

「いや……ただ」

 静夜は遥を一目見てまたそっぽを向きながら呟く。

「馬子にも衣装だな、と思って」
「それって褒めてる? 貶してる?」

 静夜の言葉に遥は勢いよく問いかけた。

「まあ、好きな様に解釈して」
「褒めてるって事で良いんだね!?」

 静夜の言葉に被せ気味で目を輝かせて聞いてくる遥に静夜は安堵に近いため息をこぼす。

「普段と見た目が変わっても葵さんはやっぱ葵さんだな。ちょっと安心した」
「静夜くんもしかして最初私の水着姿見て照れてたの??」
「照れてない。普段と違いすぎて戸惑っただけ」
「それを人は照れてると言うのでは?」

 遥の質問に静夜はすまし顔で答える。

「照れてない」
「でもちょっとは意識したりとかあったりなかったりしない?……おぅ!?」

 ニヤニヤと問いかけてくる遥に静夜は自身の着ていたアウターを脱いで遥に思いっきり投げつけた。

「泳がないのに肌見せすぎだから変な奴に絡まれるんだろ? それ貸すから着とけば? それじゃあ俺また泳いでくるから今度こそ何かあったら警備員のとこ行けよ、それじゃ」

 静夜は早口にそれだけ言ってさっさと海へと戻っていった。

「せ、静夜くんの脱ぎたてアウター……汗とぬくもりと海の結晶……神様、私今日まで生き延びた事に心より感謝申し上げます!!」

 遥はアウターを握りしめながら全ての万物に感謝をするのであった。
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