見えるあなたと見えない僕

愛優

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8章

見えるあなたと見えない僕

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「終わったよ~」
その声が耳から頭にくる時、だんだん現実へと変わって行く。
「体調など悪いところはないですか」
「はい…」
そう答えてからあの出来事が夢だったのではないのかと思ってしまうほどここは平和だった。
「何か見えましたか」
そう聞かれ違和感を覚える。
「みんな見えるんじゃないんですか」
その言葉に笑いながら柏井さんは手の疲れを取るようにふっている。
「波動が合わないと見えないんですよ。霊自身が何か伝えたい場合は除きますけど」
霊自身が何か伝えたいと思うことはないと付け足してから天野さんは立ち上がった。俺が触った霊が華さんだということを知らないのか…。俺はてっきりわかっている物だと思っていたが全てわかるというわけでもないのか…。
「天野さんたちは華さんのことってどれだけ知っているんですか」
そう尋ねると柏井さんからは即答で天野さんからは少し立ってから答えが返ってきた。
『一割かそれ以下ですね』
彼女が最後完成させたのは自分から好んで霊になる方法。どんな方法かは分からないが、簡単なわけはない。だからこそあれほどにもやつれ死んだのだろう。死ぬまではわからない実験をする勇気はすごい。いや…もしかしたらどちらでも良かったのではないのだろうか。
「仕事入ったけど見てく~」
そう聞かれもう一つの目的の方を思い出す。本来は仕事の参考にするための見学だったことを思い出す。けどあれだけの時間を過ごしたのに時刻は十分しか経ってないことに驚く。
「どうする~」
「お願いします」
そういうと笑いながら出ていってしまった。着いていこうとすると隣で天野さんが車を取りに行くだけと教えてくれた。柏井さんが行った方向とは反対の方向にある玄関に向かう。そのに行くと柏井さんは運転席ではなく助手席に座っていたため、天野さんが運転席に座る。
「なかなか経験できないことを経験したけどどうだった?まぁ怖かったでしょ」
助手席からこちらを覗きながらそう言ってくる。
「なんか怖いというよりかは、不思議な感じでした」
その言葉に天野さんはミラー越しにこちらを見ただけてそれ以上何も言わなかった。話はそれて小説の話へと変わっていった。
「すごい賞取っているんだ~」
「一度だけですけどね」
そんな話をしていると車はだんだん暗い森の中へと入っていった。道という道が無くなると車から降りて外に出る。
「いるね~」
「えぇ」
そんな二人の会話を聞いて周りを恐る恐る見るがいいのか悪いのかそれらしきものは何も見えなかった。
「見てみますか」
そう言って出された手を見る。今回相手にする霊は子供で大人しいしらしいがだからといって見られるほどの肝は座っていない。
「早くしなよ~。じゃないと始めちゃうよ」
半ば無理やりに繋がれて前を見ると少女の霊と目が合う。だが、今まで見てきたあのおぞましい姿とは違く人間だと言われたら納得してしまほどに普通の見た目をしていた。
「霊と触れ合えば触れ合うほどその身が霊に取り込まれていくんです。この子は霊と触れ合っていないからまだ魂が綺麗なんですよ」
そう言い終わると繋いでない反対の手で少女の近くを指さす。それにつられてそこを見ると男の子の霊がうろついている。その背には札が貼られていた。いつの間に貼ったのか…少女の背にはその札より少し小さいサイズのものが貼られていた。
「あれは霊力が強いほど強力な札を貼っているんです。じゃないと
そう説明されても現実味が無さすぎて理解できない。ただ苦しそうに消えていく霊を見ているのは少し気分が悪かった。
「終わった」
やがて少女が消え札が落ちると前、天野さんが俺の部屋でやっていたように柏井さんが札を燃やしていった。
「この後どうなるんですか」
そう聞くとあまりいい顔はせずに
「分かりません」
と答えてくる。天野さんの手は離れ車へと戻っていく。天野さんの運転によりマンションの近くまで送ってもらう。そして少し玄関で話している姿を見て柏井は
「そういうことか」
と呟く。その言葉は二人に聞こえることは無かった。
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