前世の記憶を思い出したのはいいけれど、ここは異世界でもなければゲームの世界でもないでもないのに何かがおかしい

弓木しをり

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プロローグ

フィオリーナ4歳 2

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 突然、滔々と喋るってことはさすがにないよ?

 そもそも三歳だから、舌ったらずだし。

 ただ、語彙力とかね、ほら。

 いきなり「ありがとう! この本もう呼んじゃったから、違うのが欲しいな」とか「お母様がここに会いにこなくても、別に気にしてないし、平気なんだよね」とか言い出したら、かなりやばいと思うのですよ。

 三歳児(いまは四歳だけど)が言うべき言葉じゃないし、無駄すぎるほど大人びてしまう。いくらわたしの前世が享年十六歳でも、やっちゃいけないと思ってしまうぐらいまずい。

 医者くるよ。

 違う意味で。

 ということで、基本無口。

 かといって喋らないと、それはそれで医者が来ちゃうから、必要最低限で。

 聞き分けの良い子ってことにしているんだ。

 でもまあ、今はちょっときつい。

 熱でてるしね。

 水痘って水ぼうそうのことでしょ?

 前世の私は生涯病院暮らしだったからなったことないけど、普通の子供なら幼稚園とかでかかるやつだよね。

 初、水ぼうそう。

 いずれ、おたふくにもなってみたいな。

 かかったって、今の両親が見に来てくれるとは思えないけどね。

 どうするんだろうね。

 弟とか生まれたらさ。

 わたしはともかく、すぐ下の妹って体弱いでしょ。

 まだ赤ちゃんだからいいけど、このまま弱いまま成長して弟とかできちゃったら、我慢できるのかな。

 むしろわたしの放置が、さらに加速するんじゃないかって思ったりもしてるけど。

 いまさらだよね。

 うん、いまさらだよ。

 濡らした布をニナが取っ替え引っ替えしているうちに、わたしは寝ちゃっていたらしい。

 寝室の扉をノックする音と、それに応える乳母の声で目が覚めた。

「アマン夫人、姫様のご容体はいかがですか?」

「あら、レミー。姫様のお熱はまだ下がる様子はありませんの」

 声だけで不安げなレミーの顔が思い浮かぶ。

 レミーは伯爵家の嫡男で若いしイケメンだし将来も有望なのに、こんな離宮に押し込められたわたし専属の近衛をすすんでしてくれている。わたしの乳母をアマン夫人と呼ぶのはレミーだけなんだけど、レミーのお母さんとわたしの乳母が親友だからっていうのは教えてもらった。

「そうですか……教育係のレオリオ師から、姫様の大好きな林檎を預かって来たのですが……」

 レミー、明らかにがっかりしている。

「あら、美味しそうな林檎ですわ。籠でたくさんくださるなんて、さすがレオリオ様ですね乳母様」

「お目覚めになったら、早速すりおろして姫様に差し上げましょうね」

 ニナが嬉しそうに言うと、乳母が同意してくれている。

「それにしても、レミー。両陛下は今でも二の姫様のところに?」

「はい。姫様のご病気のことはお伝えしたのですが、二の姫様が咳をするのがかわいそうで、側から片時も離れたくないと」

「なんてこと」

 それでも親かと吐き捨てるように言ったのはニナ。

 ごめんね、ニナ。

 わたしのかわりに怒ってくれるのね。

 ひどすぎると、わたしの枕元ですすり泣いてくれているのがグレースなのかな。

 林檎食べたいけど、気まずくて目を開けられないよ。

 みんながいるから大丈夫だよって言いたい。

 でも、四歳児がこれを言っても大丈夫なの?
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