前世の記憶を思い出したのはいいけれど、ここは異世界でもなければゲームの世界でもないでもないのに何かがおかしい

弓木しをり

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フィオリーナ6歳

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 わたし、フィオリーナ六歳。

 あっという間に二年経っちゃったね!

 前世の享年はともかく、聞き分けの良い比較的無口な第一王女として生きてきましたよ。自分で言うのもなんだけど、前世ならネグレクト街道まっしぐらな両親を持つ身で、とっても良い子に育ちました。

 それにね、ここまで育ったら多少饒舌になっても良いと思うのですよ。

 ほら、女の子って言葉が早いって言うじゃないですか。

 いくらわたしに同年代の友達が一人もいないからっていっても、周囲にいる数少ない人達は全員大人なのだから。言葉が早くなる要素はてんこ盛りです。

 うん。

 実は。

 変わってません。

 メンバーフィオリーナは、水ぼうそうになった時と同じです!

 ……悲しくなんてないやい。

 乳母のアマン夫人。

 侍女のニナとグレース。(グレースは見習いから昇格したよ!)

 近衛騎士のレミー。

 教育係のおじさんレオリオ先生。

 レオリオ先生はすごい人らしくて、マナー以外の座学を全部受け持ってくれている。学究の徒って呼ばれる学者でもある。

 あ。ちなみに妹はね、まだ体が弱いの。

 月の半分は熱出してるから、相変わらずわたしの今世の両親は妹ばっかり。

 でも、もうすぐわたしに弟か妹が生まれるっていうのは、レオリオ先生に教えてもらったんだ。

 弟だったら王位継承権が一位になるらしいんだけど、妹だったらそのままわたしが一位のまま。レオリオ先生がわたしの教育係なのも、そういうこと。弟が生まれても、わたしの教育レベルはキープされるのは確定している。

 長女わたしのことは相変わらずほったらかしな両親のくせに、ここだけは一流の教育者をつけたんだ。だってほら、王子が出来がいいとは限らないもんね。

 あ……親がレオリオ先生をわたしに付けてくれたとは、限らないかもしれない。親戚とか政府高官が手配したって可能性もあるんだった。

 なんか、その可能性の方が高くなってきたぞ。

 優秀なお姫様像は崩さないように頑張ろう!

「ねえねえ、レミー」

 いつも、レミーにお願いしたい時は、くいくいってレミーの騎士服の上着を引っ張ることにしている。だって、六歳のわたしと十九歳のレミーだと身長差がね……裾が精一杯なんだ。

「はい、姫様。なんでしょう」

「図書館に行って、ご本を借りてきたいの」

 レミーが片膝をついてわたしのことを見てくれても、わたしのほうがちょっと目線が低い気がする。

 今世のわたし、確実にちび。

「いいですよ。今すぐ行きますか?」

「うん」

 返す本を籠に入れて、レミーと手を繋いで出発。

 わたしの離宮から王立図書館までは、わたしの足で歩いても十分ぐらい。昔はレミーに抱っこされて図書館まで行ってたけど、今はもう恥ずかしいから自分で歩いてる。

 離宮の北にある庭園をこえたら図書館ってところで、わたしがいかに王宮のはずれで暮らしているかがわかるというもの。

 だからといって離宮がボロいってことはないんだけど。こじんまりしているけれど、白い壁に瑠璃色の屋根は綺麗だし、内装だってかわいいもの。

 親には相変わらずだけど、それ以外の人にはちゃんと「第一王女フィオリーナ」として認識されてるし、大事にされてる感はそれなりに感じる。

 妹が生まれてからずっと親に放置されてきた分、出来のいいお姫様になって見返してみたいとは思ってるけどね。

 前世でできなかったこととか、やりたかったことは全部やってみたいもん。

 頑張りたい。

 やりたいのにやれないって、辛いもん。

 病気が治ったら色々やりたいなとか、かなり淡い気持ちを持ったまま短い生涯を終えたの前世のわたし。

 真っ白い天井と、脂肪どころか筋肉すらない細すぎる腕に何本も繋がった管。管の先には多くの機械があって、頻繁に不快な高音を鳴らして。見守るのは家族よりも医療関係者の方が多い中での最期。

 そういえば遺影ってどうしたんだろう。

 物心ついた時には、毛という毛が無かったから、写真撮るの嫌だったんだ。

 病院で知り合った人しか知り合いがいなかったんだし、直葬だったかもしれないし。

 前世のことは、いまさら何言ってもしょうがない。

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