最弱魔術師が初恋相手を探すために城の採用試験を受けたら、致死率90%の殺戮ゲームに巻き込まれました

和泉杏咲

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第4章

王族と国民

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「風は、気圧の変化で本来起こるべきものだ」
「はあ……」
「気圧は……空気の温度で変化する」
「そうなんですか……?」
「ここは……そんな気温の変化など、全く起こらない密室だ……。そんな中で風を起こそうとすると……歪みが•…」
 その人が咳き込みます。とても苦しそうに。
「大丈夫ですか!」
ターバンが汗で湿っているようでした。
私はターバンを取ろうとしましたが、その人は私の手首を力強く掴んで拒みました。
「触るな」
「でも、気持ち悪く無いですか……?」
「……いいから、これには触らないでくれ……」
「……わかりました……」
「話を続けても、良いか」
「……はい」
「風が起こらないはずのところで風を起こす。それは、本来あるべき自然の理を断ち切ることと等しいことだ」
「自然の理を断ち切る……?」
「あるべき論理、古くからの必然を根底から変えてしまうということは、どこかに大きな歪みが起こる」
「歪み、ですか……?」
「本来、有りのままであるべきバランスによって、世界がうまく息づくように、物質が調和されていたのが、魔術が
生まれる前の世界だった。健全な世界だった。海には魚が泳ぎ、炎は熱により生み出され、土からは種が芽生える。
人は、それらの力を借りるだけで生きていけたはずだった。そう、進化していたはずだった。それを、汚い欲望によって、理を壊したのが、この国の王族だ」

「どういう、事ですか?」
「奴らは、決して国民の事を考えちゃいない。奴らにとって国民は、気分を高揚させる薬か、使い勝手の良いおもちゃぐらいにしか思っちゃいない」
「そんな……」
「国民の心を操るため、出すべき情報と出すべきでは無い情報をコントロールし続けた王族と、都合の良い情報しか届かなくなった国民……。その裏で、自分達にとって都合が悪い事は、どんな事ををしようとも、決して外に漏らすことはしなかった。その結果、王族達は自然すらもコントロールすることを望むようになった」
「自然の、コントロール……」
「奴らが欲しい時に風を、雨を、炎を出し入れする事で、食糧もコントロールできる。勿論、逆もできる」
「逆って……まさか……」
「自分達に逆らう民族が現れると、雨をわざと降らせないことで、あえて不毛の地を作り、戦争をさせて、自滅させたこともあった」
「酷い……」
「そういう事も厭わない、卑劣な連中が、この国の王族なんだ」

今の話を、もし彼が聞いていたら、どう思ったのだろう、と、私はかつての彼の真剣な眼差しを思い出し、胸が苦しくなった。

「で、では専属魔術師って、その王達の望みを叶える為の人達だというのですか?」
「半分当たりで、半分外れだ」
「半分?」
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