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6.二人が結ばれしまった夜

どこぞの誰かにハジメテを奪われてしまうなんて……

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 アレクサンドラは、すぐに左側の男性の元に向かった。
 その瞬間、リーゼの顔がぱあっと明るくなった、かと思えばじーっと目を細めながらアレクサンドラと男性を観察しようと、亀のように首を伸ばしている。

「ニーナ、アレクサンドラ様の横にいらっしゃるのは、殿下よね」
「…………なぜそんなことを?」
「ん~……よく見えないのだけれど……殿下の香りもするし、お召し物もアレクサンドラ様と揃いの色よね」

 舞踏会に参加するパートナー同士、衣装の色や雰囲気を揃えるのは慣習になっている。が、これまで何故か(リーゼにとっては)エドヴィン王子とアレクサンドラの衣装は揃いじゃなかった。
 だからリーゼは考えていたのだ。
 自分が、最初の揃いの衣装を仕上げて見せる……と。
 それが暴走した結果が、アレクサンドラもエドヴィン王子もドン引きした、王子をスッポンポンにして行われた寝巻き作成だったわけだが。
 そして今、リーゼはヒシヒシと嫉妬の炎に心が焼かれ始めている。

「どうして!?」
「リ、リーゼ様!?」

 妖精のような可憐で華奢な見た目からは、想像できない大声でリーゼは叫んだ。

「どうして私はこんな大事な日に限って、お二人の衣装を手掛けられないの……!?」

 そのリーゼの叫びを聞いたニーナ、アレクサンドラ、そして男2人は「あー……」とリーゼが言いたい事の本質に気づいて、納得した。

「ねえニーナ!」
「……なんでしょう」
「お二人の、その衣装に直すべきところはない!?」
「は!?どうしてそうなるんです!?」
「だって……だって……」

 リーゼは、メガネが汚れるのも構わず、うるうるとダイヤのように光る涙をボロボロ流しながらこう言った。

「私がお揃い衣装を1番に手掛けて!!最高なパートナーであると証明して差し上げたかったのに!!!どうしてあの衣装を作ったのが私じゃないの!?」

 もはや目の前で推しが聞いているのも構わず、リーゼはわんわん泣いた。

「せめて、せめて何か穴があるのであれば、私がこの手で直して……」
「安心してください。完璧な揃いの衣装です」
「そ、そんな……」

 リーゼは、ふんわりした自分のドレスが汚れるのも構わず、地面に座り込んでしまった。

「この世界で1番お二人を推していると自負しているこの私が……どこぞの誰かにハジメテを奪われてしまうなんて……」

 リーゼの口からハジメテを奪う、と言う言葉が出てしまったもので「別のハジメテを奪う作戦」を計画していた人間たちは、それぞれの性格が出る形で動揺した。
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