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6.二人が結ばれしまった夜

私のパートナーとして

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 この動揺から、一足早く抜けた人間がいた。
 正確に言えば、抜けるように努力した人間が、いた。

「リーゼ」

 彼がリーゼの名前を呼んだ瞬間、リーゼの嘆きがぴたりと止んだ。
 それから、ゆっくりリーゼが顔を上げると同時に、彼はリーゼに近づき、跪き、そしてリーゼの手を取った。

「ど、どうしてあなたが……」
「招待していただいたんです。あなたと、この舞踏会に参加できるようにと」

 彼は、誰が招待したかは言わなかった。

「そ、そうなのですね……」

 リーゼは、さっきまでの暴走っぷりが嘘のように、お淑やかな令嬢に変化した。
 彼は、リーゼの手の甲に口付けながら言う。

「今日は、私のパートナーとして舞踏会に出てくれませんか?」
「で、でも、私は……」

 そう言いながら、リーゼはチラリと真横にいる頼れるメイドに顔を向ける。
 ニーナは、その意図をど正確に汲み取ってしまった。

「わかりました。アレクサンドラ様達の様子は逐一ご報告して差し上げます」
「ほ、本当に!?」
「ええ」
「じゃ、じゃあこれに……」
「私に舞踏会中に人様の逢瀬をストーカーさせるだけじゃなくて、逐一書き取ると言う仕事をさせる気ですか」
「…………だめ?」

 本音を言えば、ニーナはそんなことを引き受けるのは嫌だった。
 だが、ここまできてそれを言うことは許されない。
 リーゼに、差し出された手を取らせること。
 それこそが最重要ミッションだから。

「私は、リーゼ様のように文章は書けませんので、期待しないでくださいね」

 ニーナが、リーゼが差し出したペンと紙を受け取ってすぐ、リーゼはぱあっと華やいだ表情になり、そのまま彼の手を取った。

「本当は、今日も会えたら良いなと思ってたの……」
「では、いきましょうか」

 彼は、そのままリーゼに自分の腕を組ませ、その場に残す3人にウインクをしてからご機嫌よくダンスホールへと消えていった。
 そんな二人を見送ってから、残された3人は一斉に

「はああああああ……」

 と、大きなため息をついた。
 ちなみに、彼と言うのは実はエドヴィン王子であり、エドヴィン王子の格好をした男はアレクサンドラが用意した替え玉だったりするのは、ニーナはすぐに察したのだった。
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