39 / 71
第3章 別れるためのピンキーリング その11
しおりを挟む
私の小指が心なしか細くなったところで、理玖はまた、スケッチブックを開いた。
鉛筆を持つ手を動かすと、スケッチブックに私の左手が現れた。黒子や爪の形までしっかり再現されていた。
「デザインをするために、いくつか聞きたいことがあるけど……いいか?」
「うん。……何?」
「素材の希望はあるか?」
それは、指輪の印象を大きく左右する体。
月のように黄金に輝くイエローゴールドか。
桜の花のようにしっとり輝くピンクゴールドか。
それとも、昼間の太陽のように眩しいプラチナか。
どれを選んでも、きっと理玖なら軽々と扱ってしまうのだろう。
中野さんとの結婚指輪は、プラチナを選んだ。
シンプルで、誰がつけても大丈夫なデザイン。
私らしさの欠片はないけれど、決して失敗がない、無難なものを選んだ。
今、私はオーダーメイドしようとしているピンキーリングは、その左横にある小指につけるもの。
ピンキーリングを見れば、結婚指輪も視界に入る。
チグハグなデザインは不協和音を呼ぶ。
だから本来であれば、先に決まった結婚指輪に合わせた素材……つまり、プラチナにするべきだろう。
結婚指輪と同じように、ずっとつけ続けたいと思ったのだから。
けれど……。
「理玖は、私に合う素材はどれだろ思う?」
「プラチナ」
即答された。
「お前には、プラチナがいい」
「その根拠は?」
「雑に扱っても、大丈夫な素材だから」
その言葉の中に、一体どれだけの意味が込められているのだろう。
理玖も、思ってくれているのだろうか。
どんな時でもずっと指輪をつけていて欲しいと。
聞きたかった。
けど、聞くべきじゃないと思った。
鉛筆を持つ手を動かすと、スケッチブックに私の左手が現れた。黒子や爪の形までしっかり再現されていた。
「デザインをするために、いくつか聞きたいことがあるけど……いいか?」
「うん。……何?」
「素材の希望はあるか?」
それは、指輪の印象を大きく左右する体。
月のように黄金に輝くイエローゴールドか。
桜の花のようにしっとり輝くピンクゴールドか。
それとも、昼間の太陽のように眩しいプラチナか。
どれを選んでも、きっと理玖なら軽々と扱ってしまうのだろう。
中野さんとの結婚指輪は、プラチナを選んだ。
シンプルで、誰がつけても大丈夫なデザイン。
私らしさの欠片はないけれど、決して失敗がない、無難なものを選んだ。
今、私はオーダーメイドしようとしているピンキーリングは、その左横にある小指につけるもの。
ピンキーリングを見れば、結婚指輪も視界に入る。
チグハグなデザインは不協和音を呼ぶ。
だから本来であれば、先に決まった結婚指輪に合わせた素材……つまり、プラチナにするべきだろう。
結婚指輪と同じように、ずっとつけ続けたいと思ったのだから。
けれど……。
「理玖は、私に合う素材はどれだろ思う?」
「プラチナ」
即答された。
「お前には、プラチナがいい」
「その根拠は?」
「雑に扱っても、大丈夫な素材だから」
その言葉の中に、一体どれだけの意味が込められているのだろう。
理玖も、思ってくれているのだろうか。
どんな時でもずっと指輪をつけていて欲しいと。
聞きたかった。
けど、聞くべきじゃないと思った。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】育てた後輩を送り出したらハイスペになって戻ってきました
藤浪保
恋愛
大手IT会社に勤める早苗は会社の歓迎会でかつての後輩の桜木と再会した。酔っ払った桜木を家に送った早苗は押し倒され、キスに翻弄されてそのまま関係を持ってしまう。
次の朝目覚めた早苗は前夜の記憶をなくし、関係を持った事しか覚えていなかった。
溺婚
明日葉
恋愛
香月絢佳、37歳、独身。晩婚化が進んでいるとはいえ、さすがにもう、無理かなぁ、と残念には思うが焦る気にもならず。まあ、恋愛体質じゃないし、と。
以前階段落ちから助けてくれたイケメンに、馴染みの店で再会するものの、この状況では向こうの印象がよろしいはずもないしと期待もしなかったのだが。
イケメン、天羽疾矢はどうやら絢佳に惹かれてしまったようで。
「歳も歳だし、とりあえず試してみたら?こわいの?」と、挑発されればつい、売り言葉に買い言葉。
何がどうしてこうなった?
平凡に生きたい、でもま、老後に1人は嫌だなぁ、くらいに構えた恋愛偏差値最底辺の絢佳と、こう見えて仕事人間のイケメン疾矢。振り回しているのは果たしてどっちで、振り回されてるのは、果たしてどっち?
思い出のチョコレートエッグ
ライヒェル
恋愛
失恋傷心旅行に出た花音は、思い出の地、オランダでの出会いをきっかけに、ワーキングホリデー制度を利用し、ドイツの首都、ベルリンに1年限定で住むことを決意する。
慣れない海外生活に戸惑い、異国ならではの苦労もするが、やがて、日々の生活がリズムに乗り始めたころ、とてつもなく魅力的な男性と出会う。
秘密の多い彼との恋愛、彼を取り巻く複雑な人間関係、初めて経験するセレブの世界。
主人公、花音の人生パズルが、紆余曲折を経て、ついに最後のピースがぴったりはまり完成するまでを追う、胸キュン&溺愛系ラブストーリーです。
* ドイツ在住の作者がお届けする、ヨーロッパを舞台にした、喜怒哀楽満載のラブストーリー。
* 外国での生活や、外国人との恋愛の様子をリアルに感じて、主人公の日々を間近に見ているような気分になれる内容となっています。
* 実在する場所と人物を一部モデルにした、リアリティ感の溢れる長編小説です。
私の婚活事情〜副社長の策に嵌まるまで〜
みかん桜
恋愛
身長172センチ。
高身長であること以外ごく普通のアラサーOL、佐伯花音。
婚活アプリに登録し、積極的に動いているのに中々上手く行かない。
「名前からしてもっと可愛らしい人かと……」ってどういうこと?
そんな男、こっちから願い下げ!
——でもだからって、イケメンで仕事もできる副社長……こんなハイスペ男子も求めてないっ!
って思ってたんだけどな。気が付いた時には既に副社長の手の内にいた。
それは、ホントに不可抗力で。
樹沙都
恋愛
これ以上他人に振り回されるのはまっぴらごめんと一大決意。人生における全ての無駄を排除し、おひとりさまを謳歌する歩夢の前に、ひとりの男が立ちはだかった。
「まさか、夫の顔……を、忘れたとは言わないだろうな? 奥さん」
その婚姻は、天の啓示か、はたまた……ついうっかり、か。
恋に仕事に人間関係にと翻弄されるお人好しオンナ関口歩夢と腹黒大魔王小林尊の攻防戦。
まさにいま、開始のゴングが鳴った。
まあね、所詮、人生は不可抗力でできている。わけよ。とほほっ。
借りてきたカレ
しじましろ
恋愛
都合の良い存在であるはずのレンタル彼氏に振り回されて……
あらすじ
システムエンジニアの萩野みさをは、仕事中毒でゾンビのような見た目になるほど働いている。
人の良さにつけ込まれ、面倒な仕事を押しつけられたり、必要のない物を買わされたり、損ばかりしているが、本人は好きでやっていることとあまり気にしていない。
人並みに結婚願望はあるものの、三十歳過ぎても男性経験はゼロ。
しかし、レンタル彼氏・キキとの出会いが、そんな色の無いみさをの日常を大きく変えていく。
基本的にはカラッと明るいラブコメですが、生き馬の目を抜くIT企業のお仕事ものでもあるので、癖のあるサブキャラや意外な展開もお楽しみください!
愛想笑いの課長は甘い俺様
吉生伊織
恋愛
社畜と罵られる
坂井 菜緒
×
愛想笑いが得意の俺様課長
堤 将暉
**********
「社畜の坂井さんはこんな仕事もできないのかなぁ~?」
「へぇ、社畜でも反抗心あるんだ」
あることがきっかけで社畜と罵られる日々。
私以外には愛想笑いをするのに、私には厳しい。
そんな課長を避けたいのに甘やかしてくるのはどうして?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる