幼馴染でマジカルなアレが固くなる

余るガム

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第一章 幼年編

君にとってそこは天国か?ならそこは誰かにとっての地獄だ

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 素晴らしいことに、この小学一年生という身分は自由時間が多い。
 もちろんそれ相応の不自由も多々あるわけだが、それでも十分だ。

 家に帰ってなじみの家に移動し、そのまま刻限までとなれば5時間は堅い。
 さらに我が家は放任主義な所があるのか、連絡すれば場所にもよるが外泊も可能だ。

 そしてこの蝶ヶ崎家はまさにそんな外泊可能な場所の一つである。

「ケーくん来た! 今日はお泊りするんだよね!?」
「うん、明日は休みだからね。目いっぱい遊ぼうと思って」
「わーい!」

 今日も今日とて最高の笑顔である。
 その笑顔のまま、飛びつくような形で抱き着いてきた。

 先日のキスの一件以来、なじみはパーソナルスペースというやつを完全に無視した行動をとることが多くなっている。
 それ以前からも腕に抱き着いたりはしていたのだが、最近は特に顕著だ。

 ところで、幼少期の男女の成長性の差異について語ろう。
 最終的には男子の方が頑強に育つのだが、実は幼少期に限って言えば女子の方がはるかに早く成長する。女性は男性と比べて早熟だが、上限値が低いといったところか。

 そのため実に情けないことに、なじみに全力で抱き着かれた俺はそのままなじみのベッドに押し倒されるような形で倒れこむのだ。

「えへへ~、ケーくんのにおいがする~」
「一体どんな匂いなんだか」
「ホッとするいいにおいだよ!」

 弾ける様な笑顔を今度はうっとりと蕩けさせ、緩み切った笑顔を見せる。
 この油断と安心感に満ち満ちた笑顔を見て、己が獣欲をぶつけられるならそいつはまさしくケダモノだ。人間性を捧げよ。

 むふー、と聞こえてきそうな満足気な表情を愛しく思い、また独占したく感じて下から抱きしめる。

「えー、なにー? ケーくんも私のこと好きなのー?」
「うん、大好き」
「うにゃっ!?」

 また猫になった。
 ニヤニヤと聞いてきたあたり、反応を見てからかおうとでも考えていたのだろうが、既に覚悟ガンギマリ状態。恥ずかしがることなどあるものか。

 なじみは顔を伏せ、息を荒くしながらぐりぐりと胸板に顔を押し付ける。抱きしめる力も強くなった。

「なじみ? どうした?」
「ダメ! こっちみちゃだめぇ!」

 いきなりの強い拒絶に傷つくが、抱きしめる力は依然強まるばかり。
 困惑しながらも、『抱きしめてくれるなら嫌われてはいまい』と考え直して自分からも強く抱きしめる。

 だんだん苦しくなってきたあたりで、なじみはいとも容易く抱擁を解いた。それに合わせて俺の方も腕を離す。
 少し息が荒いのは、顔を押し付けすぎて上手く呼吸ができなかったのだろう。

「大丈夫か?」
「うん・・・」

 なにやら沈んでいるが、はてなぜであろうか。
 ともかく、今のままでは色々とまずい。主に空気が。

「何してあそぼっか?」
「・・・」

 なるべく普段通りを意識したのだが、それでもなじみは何も言わない。
 原因がわからない以上改善も謝罪もできない。なにがなんだかわからないけどとりあえず謝るというのはマジの下策だ。

「・・・お話、聞かせて」

 ふっと呟いた言葉を俺は聞き逃さなかった。

「どんなお話がいい?」
「・・・聞いたことないやつ」

 そのうえでオーダーは聞いたことない奴、と来た。
 となるとこの家にある本はほぼ全て無理だろう。なじみはインドア派の女の子だ。絵本はもとより、多少分厚い小説も読んでいるかもしれない。それで同じとなれば、怒られてしまう。

 まったく、わがままなお姫様だ。

 しかしそのわがまますら微笑ましく思ってしまうのは、父性なのか愛なのか惚れた弱みか。
 ま、何でもいいや。

「じゃあ今からずっと昔の話をしよう。今から6000年以上も昔、沢山の神様とその手下達が長い戦争を繰り返していました・・・」




「・・・我に自らの知性を証明せよ! そうして絶対神の力で、争いのない平和な世界が作られましたとさ、おしまい」

 一通り語りつくした俺は、達成感に浸っていた。
 言うまでもないが、この話は俺の創作ではない。前世の素晴らしき一冊をかいつまんで語ったのだ。

 元々俺自身が大好きな作品というだけあって、演技にも熱が入って最終的には一人劇団みたいになっていたが、後悔はない。

「・・・どうだった?」
「・・・すごかった」

 泣いてはいなかった。
 個人的には泣いて欲しいところだが、小学一年生の感受性など早熟な女子でもこんなものだろう。
 特に聖杯に手を伸ばすシーンは涙なしには語れないのだが。

 正直著作権を完全に侵害した行動だが、世界が違うためか前世の様な作品はない。同姓同名の作者が別の、これまた素晴らしい作品を発表しているようだ。

 ただ、ジ〇ジョだけは全く同じだった。
 やっぱ荒〇先生スタンド使いじゃねーの?

 とここで扉の外から呼び声がかかった。
 そう、晩御飯の時間である。その後風呂に入り、就寝し、明日の昼ぐらいに帰る予定だ。
 ちなみに朝に帰ろうとしてなじみに惜しまれて昼まで居座る、という所までが予定である。



 テーブルに俺を含めた4人が着席し、いよいよ晩御飯のスタートである。
 俺の対面にはなじみ、隣にはなじみの妹まどかちゃん、斜め向かいになじみの母親である。

 メニューはピーマンの肉詰めとシーザーサラダ、みそ汁であった。

 特別扱いなどされなくなって久しいが、食事のクオリティーだけはいつも高い。
 典型的なほど親の愛に満ちた食卓だ。

 いただきますと一言呟き、箸を取って食べ始める。
 食事するときは基本的にしゃべらない。勿論完全に無言では複数人で食卓を囲っている意味がないので、アクセント程度にはしゃべるが、それだけだ。

 モノ食べるときは、自由で(ry
 ちなみにアームロックは習得した。それ以上いけないと言われるまで継続できる持久力が直近の課題である。

 さて、ここでさらにもう一つ重要な気遣いがある。
 それは食べる速度を合わせることだ。
 速いと他の人が気負い、遅いと他の人がいら立つ。同程度のタイミングで食事を終えれば、食後の雑談も花咲きやすくなるものだ。

「あら、まどか。ちゃんとピーマンまで食べなさい」

 全員がおおよそ食べ終わり宴もたけなわといったところで、なじみの母親から声が上がる。
 まどかちゃんがピーマンの肉詰めを分離して食べ、ピーマンだけ残しているようだった。

「だって苦いもん」
「ダメよ、好き嫌いしちゃ」
「う~~・・・」

 少し笑ってしまった。
 なにせその唸り声が、あんまりにもなじみそっくりだったから。

「お姉ちゃんは食べてるわよ」
「と、とーぜんだよ! おねーちゃんだからね!」

 少し誇らしげに言うがそれが虚勢であることは恐らくなじみの母親にもわかっているだろう。ちょっとどもったし。

「なじみ」
「な、なにかな?」
「俺からは見えてるぞ?」

 サラダの入っていた皿なのだが、結構深い。皿というより小型のボウルといってもいいかもしれない程に。
 なぜこんな話をするかといえば、その皿の死角の部分にピーマンを潜ませているからだ。
 ちょうど母親から見て死角なるような位置に置くことで、一見しただけでは完食した様に見せかけたのである。

 が、当然視点が変われば死角も変わる。
 そのため俺からは丸見えなのだった。

「ちゃんと食べような?」
「う~~・・・」

 やっぱりそっくりだ。この唸り声。
 そして唸りながらもなんだかんだで素直に自分から食べてくれるのだから、本当に可愛い。

「ほら、食べさしてやるから。あーん」
「・・・あーん」

 俺が箸で摘み、なじみの口元へもっていけば、なじみは渋々と口を開ける。
 決して喉奥をどついたりしないように気を付けて。

「ほら、食べれた」
「んむんむ・・・」

 咀嚼こそしているが、非常に遅い。
 ゆっくり噛む方が苦みを味わうことになるというのに。

 勿論それを指摘する気はない。
 多少思い切った方が傷は浅くなるというのは重要な話だが別のことで覚えればいいし、ピーマン自体の苦味に慣れるのも重要だ。それに指摘するより自分で気づいた方が身に付く。

「あら、お姉ちゃんはすこしずるかったけど食べれたわね」

 誉めつつも隠したこと自体はきちんと咎めている。しかしなじみはその言葉に『おねえちゃんだからね!』なんて言うことはしない。今は口いっぱいに広がる苦味でそれどころではないのだ。

 それに涙目と無言で答えるまどかちゃん。ピーマンは手つかずだ。

「なじみ、後ろに虫がいるぞ」
「うえッ!?どこどこ!?」

 俺の言葉をうのみにして自分の後ろを探るなじみ。
 余りにもあわただしいので、母親の方もなじみの後頭部付近に視線を向けている。

 そのすきに俺はまどかちゃんの皿からピーマンを片方奪い取って自分の口の中に放り込む。
 驚きながらも物静かなまどかに向かって「しー」と内緒にするように頼んだ。



 あの後虫は見つかった。嘘から出たまこととはまさにこのことである。
 まどかちゃんは半分になったピーマンをなんとか胃の中に押し込んだようで、階段を上がる音が聞こえてきた。

 俺となじみは食事が終わってから先に二階のなじみの部屋へ撤退していた。残さず食べ終えるまで食卓から絶対に立たせないというのが蝶ヶ崎家のハウスルールである。

 なじみの部屋では腹ごなしにストレッチする俺と勉強するなじみが居た。
 食後に勉強するのは効率が悪いと聞くが、なじみの習慣らしく、やらないよりは良いだろうということで放置している。わからないところがあれば素直に聞いてくるので、一応俺の勉強にもなる。

 やべえ、股関節が180度開きやがった。子供の柔軟性やべえ。

「なじみ~、お風呂わいたわよ~!」

 なじみの母親の声が聞こえる。
 極めて和やかな声だが、俺としてはそういう気分にもなれない。

「わかった! じゃあケーくん、一緒に入ろっか!」

 ここからが本当の地獄だぜぃ(白目)
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