3 / 117
第一章 幼年編
君にとってそこは天国か?ならそこは誰かにとっての地獄だ
しおりを挟む
素晴らしいことに、この小学一年生という身分は自由時間が多い。
もちろんそれ相応の不自由も多々あるわけだが、それでも十分だ。
家に帰ってなじみの家に移動し、そのまま刻限までとなれば5時間は堅い。
さらに我が家は放任主義な所があるのか、連絡すれば場所にもよるが外泊も可能だ。
そしてこの蝶ヶ崎家はまさにそんな外泊可能な場所の一つである。
「ケーくん来た! 今日はお泊りするんだよね!?」
「うん、明日は休みだからね。目いっぱい遊ぼうと思って」
「わーい!」
今日も今日とて最高の笑顔である。
その笑顔のまま、飛びつくような形で抱き着いてきた。
先日のキスの一件以来、なじみはパーソナルスペースというやつを完全に無視した行動をとることが多くなっている。
それ以前からも腕に抱き着いたりはしていたのだが、最近は特に顕著だ。
ところで、幼少期の男女の成長性の差異について語ろう。
最終的には男子の方が頑強に育つのだが、実は幼少期に限って言えば女子の方がはるかに早く成長する。女性は男性と比べて早熟だが、上限値が低いといったところか。
そのため実に情けないことに、なじみに全力で抱き着かれた俺はそのままなじみのベッドに押し倒されるような形で倒れこむのだ。
「えへへ~、ケーくんのにおいがする~」
「一体どんな匂いなんだか」
「ホッとするいいにおいだよ!」
弾ける様な笑顔を今度はうっとりと蕩けさせ、緩み切った笑顔を見せる。
この油断と安心感に満ち満ちた笑顔を見て、己が獣欲をぶつけられるならそいつはまさしくケダモノだ。人間性を捧げよ。
むふー、と聞こえてきそうな満足気な表情を愛しく思い、また独占したく感じて下から抱きしめる。
「えー、なにー? ケーくんも私のこと好きなのー?」
「うん、大好き」
「うにゃっ!?」
また猫になった。
ニヤニヤと聞いてきたあたり、反応を見てからかおうとでも考えていたのだろうが、既に覚悟ガンギマリ状態。恥ずかしがることなどあるものか。
なじみは顔を伏せ、息を荒くしながらぐりぐりと胸板に顔を押し付ける。抱きしめる力も強くなった。
「なじみ? どうした?」
「ダメ! こっちみちゃだめぇ!」
いきなりの強い拒絶に傷つくが、抱きしめる力は依然強まるばかり。
困惑しながらも、『抱きしめてくれるなら嫌われてはいまい』と考え直して自分からも強く抱きしめる。
だんだん苦しくなってきたあたりで、なじみはいとも容易く抱擁を解いた。それに合わせて俺の方も腕を離す。
少し息が荒いのは、顔を押し付けすぎて上手く呼吸ができなかったのだろう。
「大丈夫か?」
「うん・・・」
なにやら沈んでいるが、はてなぜであろうか。
ともかく、今のままでは色々とまずい。主に空気が。
「何してあそぼっか?」
「・・・」
なるべく普段通りを意識したのだが、それでもなじみは何も言わない。
原因がわからない以上改善も謝罪もできない。なにがなんだかわからないけどとりあえず謝るというのはマジの下策だ。
「・・・お話、聞かせて」
ふっと呟いた言葉を俺は聞き逃さなかった。
「どんなお話がいい?」
「・・・聞いたことないやつ」
そのうえでオーダーは聞いたことない奴、と来た。
となるとこの家にある本はほぼ全て無理だろう。なじみはインドア派の女の子だ。絵本はもとより、多少分厚い小説も読んでいるかもしれない。それで同じとなれば、怒られてしまう。
まったく、わがままなお姫様だ。
しかしそのわがまますら微笑ましく思ってしまうのは、父性なのか愛なのか惚れた弱みか。
ま、何でもいいや。
「じゃあ今からずっと昔の話をしよう。今から6000年以上も昔、沢山の神様とその手下達が長い戦争を繰り返していました・・・」
*
「・・・我に自らの知性を証明せよ! そうして絶対神の力で、争いのない平和な世界が作られましたとさ、おしまい」
一通り語りつくした俺は、達成感に浸っていた。
言うまでもないが、この話は俺の創作ではない。前世の素晴らしき一冊をかいつまんで語ったのだ。
元々俺自身が大好きな作品というだけあって、演技にも熱が入って最終的には一人劇団みたいになっていたが、後悔はない。
「・・・どうだった?」
「・・・すごかった」
泣いてはいなかった。
個人的には泣いて欲しいところだが、小学一年生の感受性など早熟な女子でもこんなものだろう。
特に聖杯に手を伸ばすシーンは涙なしには語れないのだが。
正直著作権を完全に侵害した行動だが、世界が違うためか前世の様な作品はない。同姓同名の作者が別の、これまた素晴らしい作品を発表しているようだ。
ただ、ジ〇ジョだけは全く同じだった。
やっぱ荒〇先生スタンド使いじゃねーの?
とここで扉の外から呼び声がかかった。
そう、晩御飯の時間である。その後風呂に入り、就寝し、明日の昼ぐらいに帰る予定だ。
ちなみに朝に帰ろうとしてなじみに惜しまれて昼まで居座る、という所までが予定である。
*
テーブルに俺を含めた4人が着席し、いよいよ晩御飯のスタートである。
俺の対面にはなじみ、隣にはなじみの妹まどかちゃん、斜め向かいになじみの母親である。
メニューはピーマンの肉詰めとシーザーサラダ、みそ汁であった。
特別扱いなどされなくなって久しいが、食事のクオリティーだけはいつも高い。
典型的なほど親の愛に満ちた食卓だ。
いただきますと一言呟き、箸を取って食べ始める。
食事するときは基本的にしゃべらない。勿論完全に無言では複数人で食卓を囲っている意味がないので、アクセント程度にはしゃべるが、それだけだ。
モノ食べるときは、自由で(ry
ちなみにアームロックは習得した。それ以上いけないと言われるまで継続できる持久力が直近の課題である。
さて、ここでさらにもう一つ重要な気遣いがある。
それは食べる速度を合わせることだ。
速いと他の人が気負い、遅いと他の人がいら立つ。同程度のタイミングで食事を終えれば、食後の雑談も花咲きやすくなるものだ。
「あら、まどか。ちゃんとピーマンまで食べなさい」
全員がおおよそ食べ終わり宴もたけなわといったところで、なじみの母親から声が上がる。
まどかちゃんがピーマンの肉詰めを分離して食べ、ピーマンだけ残しているようだった。
「だって苦いもん」
「ダメよ、好き嫌いしちゃ」
「う~~・・・」
少し笑ってしまった。
なにせその唸り声が、あんまりにもなじみそっくりだったから。
「お姉ちゃんは食べてるわよ」
「と、とーぜんだよ! おねーちゃんだからね!」
少し誇らしげに言うがそれが虚勢であることは恐らくなじみの母親にもわかっているだろう。ちょっとどもったし。
「なじみ」
「な、なにかな?」
「俺からは見えてるぞ?」
サラダの入っていた皿なのだが、結構深い。皿というより小型のボウルといってもいいかもしれない程に。
なぜこんな話をするかといえば、その皿の死角の部分にピーマンを潜ませているからだ。
ちょうど母親から見て死角なるような位置に置くことで、一見しただけでは完食した様に見せかけたのである。
が、当然視点が変われば死角も変わる。
そのため俺からは丸見えなのだった。
「ちゃんと食べような?」
「う~~・・・」
やっぱりそっくりだ。この唸り声。
そして唸りながらもなんだかんだで素直に自分から食べてくれるのだから、本当に可愛い。
「ほら、食べさしてやるから。あーん」
「・・・あーん」
俺が箸で摘み、なじみの口元へもっていけば、なじみは渋々と口を開ける。
決して喉奥をどついたりしないように気を付けて。
「ほら、食べれた」
「んむんむ・・・」
咀嚼こそしているが、非常に遅い。
ゆっくり噛む方が苦みを味わうことになるというのに。
勿論それを指摘する気はない。
多少思い切った方が傷は浅くなるというのは重要な話だが別のことで覚えればいいし、ピーマン自体の苦味に慣れるのも重要だ。それに指摘するより自分で気づいた方が身に付く。
「あら、お姉ちゃんはすこしずるかったけど食べれたわね」
誉めつつも隠したこと自体はきちんと咎めている。しかしなじみはその言葉に『おねえちゃんだからね!』なんて言うことはしない。今は口いっぱいに広がる苦味でそれどころではないのだ。
それに涙目と無言で答えるまどかちゃん。ピーマンは手つかずだ。
「なじみ、後ろに虫がいるぞ」
「うえッ!?どこどこ!?」
俺の言葉をうのみにして自分の後ろを探るなじみ。
余りにもあわただしいので、母親の方もなじみの後頭部付近に視線を向けている。
そのすきに俺はまどかちゃんの皿からピーマンを片方奪い取って自分の口の中に放り込む。
驚きながらも物静かなまどかに向かって「しー」と内緒にするように頼んだ。
*
あの後虫は見つかった。嘘から出たまこととはまさにこのことである。
まどかちゃんは半分になったピーマンをなんとか胃の中に押し込んだようで、階段を上がる音が聞こえてきた。
俺となじみは食事が終わってから先に二階のなじみの部屋へ撤退していた。残さず食べ終えるまで食卓から絶対に立たせないというのが蝶ヶ崎家のハウスルールである。
なじみの部屋では腹ごなしにストレッチする俺と勉強するなじみが居た。
食後に勉強するのは効率が悪いと聞くが、なじみの習慣らしく、やらないよりは良いだろうということで放置している。わからないところがあれば素直に聞いてくるので、一応俺の勉強にもなる。
やべえ、股関節が180度開きやがった。子供の柔軟性やべえ。
「なじみ~、お風呂わいたわよ~!」
なじみの母親の声が聞こえる。
極めて和やかな声だが、俺としてはそういう気分にもなれない。
「わかった! じゃあケーくん、一緒に入ろっか!」
ここからが本当の地獄だぜぃ(白目)
もちろんそれ相応の不自由も多々あるわけだが、それでも十分だ。
家に帰ってなじみの家に移動し、そのまま刻限までとなれば5時間は堅い。
さらに我が家は放任主義な所があるのか、連絡すれば場所にもよるが外泊も可能だ。
そしてこの蝶ヶ崎家はまさにそんな外泊可能な場所の一つである。
「ケーくん来た! 今日はお泊りするんだよね!?」
「うん、明日は休みだからね。目いっぱい遊ぼうと思って」
「わーい!」
今日も今日とて最高の笑顔である。
その笑顔のまま、飛びつくような形で抱き着いてきた。
先日のキスの一件以来、なじみはパーソナルスペースというやつを完全に無視した行動をとることが多くなっている。
それ以前からも腕に抱き着いたりはしていたのだが、最近は特に顕著だ。
ところで、幼少期の男女の成長性の差異について語ろう。
最終的には男子の方が頑強に育つのだが、実は幼少期に限って言えば女子の方がはるかに早く成長する。女性は男性と比べて早熟だが、上限値が低いといったところか。
そのため実に情けないことに、なじみに全力で抱き着かれた俺はそのままなじみのベッドに押し倒されるような形で倒れこむのだ。
「えへへ~、ケーくんのにおいがする~」
「一体どんな匂いなんだか」
「ホッとするいいにおいだよ!」
弾ける様な笑顔を今度はうっとりと蕩けさせ、緩み切った笑顔を見せる。
この油断と安心感に満ち満ちた笑顔を見て、己が獣欲をぶつけられるならそいつはまさしくケダモノだ。人間性を捧げよ。
むふー、と聞こえてきそうな満足気な表情を愛しく思い、また独占したく感じて下から抱きしめる。
「えー、なにー? ケーくんも私のこと好きなのー?」
「うん、大好き」
「うにゃっ!?」
また猫になった。
ニヤニヤと聞いてきたあたり、反応を見てからかおうとでも考えていたのだろうが、既に覚悟ガンギマリ状態。恥ずかしがることなどあるものか。
なじみは顔を伏せ、息を荒くしながらぐりぐりと胸板に顔を押し付ける。抱きしめる力も強くなった。
「なじみ? どうした?」
「ダメ! こっちみちゃだめぇ!」
いきなりの強い拒絶に傷つくが、抱きしめる力は依然強まるばかり。
困惑しながらも、『抱きしめてくれるなら嫌われてはいまい』と考え直して自分からも強く抱きしめる。
だんだん苦しくなってきたあたりで、なじみはいとも容易く抱擁を解いた。それに合わせて俺の方も腕を離す。
少し息が荒いのは、顔を押し付けすぎて上手く呼吸ができなかったのだろう。
「大丈夫か?」
「うん・・・」
なにやら沈んでいるが、はてなぜであろうか。
ともかく、今のままでは色々とまずい。主に空気が。
「何してあそぼっか?」
「・・・」
なるべく普段通りを意識したのだが、それでもなじみは何も言わない。
原因がわからない以上改善も謝罪もできない。なにがなんだかわからないけどとりあえず謝るというのはマジの下策だ。
「・・・お話、聞かせて」
ふっと呟いた言葉を俺は聞き逃さなかった。
「どんなお話がいい?」
「・・・聞いたことないやつ」
そのうえでオーダーは聞いたことない奴、と来た。
となるとこの家にある本はほぼ全て無理だろう。なじみはインドア派の女の子だ。絵本はもとより、多少分厚い小説も読んでいるかもしれない。それで同じとなれば、怒られてしまう。
まったく、わがままなお姫様だ。
しかしそのわがまますら微笑ましく思ってしまうのは、父性なのか愛なのか惚れた弱みか。
ま、何でもいいや。
「じゃあ今からずっと昔の話をしよう。今から6000年以上も昔、沢山の神様とその手下達が長い戦争を繰り返していました・・・」
*
「・・・我に自らの知性を証明せよ! そうして絶対神の力で、争いのない平和な世界が作られましたとさ、おしまい」
一通り語りつくした俺は、達成感に浸っていた。
言うまでもないが、この話は俺の創作ではない。前世の素晴らしき一冊をかいつまんで語ったのだ。
元々俺自身が大好きな作品というだけあって、演技にも熱が入って最終的には一人劇団みたいになっていたが、後悔はない。
「・・・どうだった?」
「・・・すごかった」
泣いてはいなかった。
個人的には泣いて欲しいところだが、小学一年生の感受性など早熟な女子でもこんなものだろう。
特に聖杯に手を伸ばすシーンは涙なしには語れないのだが。
正直著作権を完全に侵害した行動だが、世界が違うためか前世の様な作品はない。同姓同名の作者が別の、これまた素晴らしい作品を発表しているようだ。
ただ、ジ〇ジョだけは全く同じだった。
やっぱ荒〇先生スタンド使いじゃねーの?
とここで扉の外から呼び声がかかった。
そう、晩御飯の時間である。その後風呂に入り、就寝し、明日の昼ぐらいに帰る予定だ。
ちなみに朝に帰ろうとしてなじみに惜しまれて昼まで居座る、という所までが予定である。
*
テーブルに俺を含めた4人が着席し、いよいよ晩御飯のスタートである。
俺の対面にはなじみ、隣にはなじみの妹まどかちゃん、斜め向かいになじみの母親である。
メニューはピーマンの肉詰めとシーザーサラダ、みそ汁であった。
特別扱いなどされなくなって久しいが、食事のクオリティーだけはいつも高い。
典型的なほど親の愛に満ちた食卓だ。
いただきますと一言呟き、箸を取って食べ始める。
食事するときは基本的にしゃべらない。勿論完全に無言では複数人で食卓を囲っている意味がないので、アクセント程度にはしゃべるが、それだけだ。
モノ食べるときは、自由で(ry
ちなみにアームロックは習得した。それ以上いけないと言われるまで継続できる持久力が直近の課題である。
さて、ここでさらにもう一つ重要な気遣いがある。
それは食べる速度を合わせることだ。
速いと他の人が気負い、遅いと他の人がいら立つ。同程度のタイミングで食事を終えれば、食後の雑談も花咲きやすくなるものだ。
「あら、まどか。ちゃんとピーマンまで食べなさい」
全員がおおよそ食べ終わり宴もたけなわといったところで、なじみの母親から声が上がる。
まどかちゃんがピーマンの肉詰めを分離して食べ、ピーマンだけ残しているようだった。
「だって苦いもん」
「ダメよ、好き嫌いしちゃ」
「う~~・・・」
少し笑ってしまった。
なにせその唸り声が、あんまりにもなじみそっくりだったから。
「お姉ちゃんは食べてるわよ」
「と、とーぜんだよ! おねーちゃんだからね!」
少し誇らしげに言うがそれが虚勢であることは恐らくなじみの母親にもわかっているだろう。ちょっとどもったし。
「なじみ」
「な、なにかな?」
「俺からは見えてるぞ?」
サラダの入っていた皿なのだが、結構深い。皿というより小型のボウルといってもいいかもしれない程に。
なぜこんな話をするかといえば、その皿の死角の部分にピーマンを潜ませているからだ。
ちょうど母親から見て死角なるような位置に置くことで、一見しただけでは完食した様に見せかけたのである。
が、当然視点が変われば死角も変わる。
そのため俺からは丸見えなのだった。
「ちゃんと食べような?」
「う~~・・・」
やっぱりそっくりだ。この唸り声。
そして唸りながらもなんだかんだで素直に自分から食べてくれるのだから、本当に可愛い。
「ほら、食べさしてやるから。あーん」
「・・・あーん」
俺が箸で摘み、なじみの口元へもっていけば、なじみは渋々と口を開ける。
決して喉奥をどついたりしないように気を付けて。
「ほら、食べれた」
「んむんむ・・・」
咀嚼こそしているが、非常に遅い。
ゆっくり噛む方が苦みを味わうことになるというのに。
勿論それを指摘する気はない。
多少思い切った方が傷は浅くなるというのは重要な話だが別のことで覚えればいいし、ピーマン自体の苦味に慣れるのも重要だ。それに指摘するより自分で気づいた方が身に付く。
「あら、お姉ちゃんはすこしずるかったけど食べれたわね」
誉めつつも隠したこと自体はきちんと咎めている。しかしなじみはその言葉に『おねえちゃんだからね!』なんて言うことはしない。今は口いっぱいに広がる苦味でそれどころではないのだ。
それに涙目と無言で答えるまどかちゃん。ピーマンは手つかずだ。
「なじみ、後ろに虫がいるぞ」
「うえッ!?どこどこ!?」
俺の言葉をうのみにして自分の後ろを探るなじみ。
余りにもあわただしいので、母親の方もなじみの後頭部付近に視線を向けている。
そのすきに俺はまどかちゃんの皿からピーマンを片方奪い取って自分の口の中に放り込む。
驚きながらも物静かなまどかに向かって「しー」と内緒にするように頼んだ。
*
あの後虫は見つかった。嘘から出たまこととはまさにこのことである。
まどかちゃんは半分になったピーマンをなんとか胃の中に押し込んだようで、階段を上がる音が聞こえてきた。
俺となじみは食事が終わってから先に二階のなじみの部屋へ撤退していた。残さず食べ終えるまで食卓から絶対に立たせないというのが蝶ヶ崎家のハウスルールである。
なじみの部屋では腹ごなしにストレッチする俺と勉強するなじみが居た。
食後に勉強するのは効率が悪いと聞くが、なじみの習慣らしく、やらないよりは良いだろうということで放置している。わからないところがあれば素直に聞いてくるので、一応俺の勉強にもなる。
やべえ、股関節が180度開きやがった。子供の柔軟性やべえ。
「なじみ~、お風呂わいたわよ~!」
なじみの母親の声が聞こえる。
極めて和やかな声だが、俺としてはそういう気分にもなれない。
「わかった! じゃあケーくん、一緒に入ろっか!」
ここからが本当の地獄だぜぃ(白目)
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語
ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。
だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。
それで終わるはずだった――なのに。
ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。
さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。
そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。
由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。
一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。
そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。
罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。
ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。
そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。
これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
田舎に帰ったら従妹が驚くほど積極的になってた話
神谷 愛
恋愛
久しぶりに帰った田舎には暫くあっていない従妹がいるはずだった。数年ぶりに帰るとそこにいたのは驚くほど可愛く、そして積極的に成長した従妹の姿だった。昔の従妹では考えられないほどの色気で迫ってくる従妹との数日の話。
二話毎六話完結。だいたい10時か22時更新、たぶん。
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない
みずがめ
恋愛
宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。
葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。
なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。
その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。
そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。
幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。
……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる