幼馴染でマジカルなアレが固くなる

余るガム

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第二部 高校生編

人→怪物は楽なイメージなのに怪物→人は困難なイメージ

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 キスの時から『そういうこと』は特別な時にしか行わない、という条件付けがなされているので、なじみが四六時中求めてくるという事はないだろう。
 なんだか調教してる気分だが、現状ではどっちが調教師なのかわかったものではない。
 俺は俺で15年間童貞を貫いた理性があるので、俺から求めるという事もそう多くはないだろう。
 ・・・ちょっと自信は薄いが。

 そんな予想に違わず、俺となじみは極めて普段通りの生活をしていた。

 唯一違う所といえば、距離が近づいたことぐらいだろう。
 正直まだ縮まる余地があったことに驚いてもいるのだが。

 なじみは暇さえあれば俺の部屋に入り浸り、いつの間にかほぼすべての家事を済ませている。
 それ自体はありがたいし、特に文句を言うような理由もないのだが、これでは一人暮らしじゃなくて同棲である。

 なじみの部屋の家事はしなくていいのかと聞けば、『最低限しかあっちの部屋にはいないから家事も最低限でよく、片手間で終わる』とのこと。

 え? なんで枕持ち込んでんの?
 こっちで寝る?
 ・・・しないよ? あんまり。
 良いんならいいけど。

 こうなるとセックスの垣根ももう少し下げた方がいいかもしれない。
 というかもうあの仕切り板外さない?

 そんなことを提案する日曜の朝。

「んー、でも敷金飛ぶしなぁ・・・」
「俺としてはお前が何度もあそこ乗り越えてるうちに事故ったりしないか不安なの。安全に比べりゃ敷金なんて安い安い」
「んー、それもそうだね。3年契約じゃなかったらすぐ引き払うんだけどなー・・・」

 もういっそ完全に同棲してしまおうと。
 流石に私物置くスペースとか足りないだろうし、そうするならもっと大きな部屋に引っ越さないと難しいだろう。

 げに恐ろしきは同棲自体には全く忌避感がないところか。

 なじみの作ったサラダをもさもさ食べながら会話する。
 マナーも加減も学んでいるが、なじみ相手だし多少崩してもいいだろう。

「そういえばお隣さんへの挨拶って済んだか?」
「うん、片方はケーくんだから一人でいいのは楽だね。渡辺公大って人。知ってる?」
「ああ、うちのクラスの出席番号が最後の奴だろ。何の印象もない淡泊な自己紹介だったが、最後だったから覚えてたよ」
「とりあえずソーメンだけ渡して『これからお隣さんとしてよろしくね』って言っといた」
「お前・・・まあいいか」

 こいつ、何人落とすつもりなんだ?
 本人はそんな気微塵もないんだろうが・・・やはりなじみは自分のルックスって奴に鈍感すぎる。

「ケーくんの方は?」
「俺の方は女の人だったよ。仁科微って一つ上の先輩。知ってる?」
「ああ、昔ケーくんと時々一緒にいた人だよね?」
「確かにそうだけど、なんで知ってる?」
「二人とも目立つから」

 まあ、否定はしないし出来ないな。
 俺の方は特に運動部に入ってるわけでもないのにやたら鍛えてたし、あちこちの部に助っ人も行った。
 微の方は言わずもがなだろうさ。

「その人とするの?」
「しない。そういう目で見れないし」

 微に限らず、あの懺悔以降、なじみ以外の人間をそういう目で見れたためしがないのだが。
 まあ、せいぜい一人二人相手にしてお茶を濁して終わりだろう。いくら生殖しないとはいえ、無暗に種をばらまく気にもなれない。責任取れんし。

「するって所は譲歩したんだし、相手ぐらい選ばせてくれよ」
「それはいいけど・・・」
「当分はなじみしか見えないと思うしな」
「んふっ」

 こういうことを言えば喜んでくれる辺り、なじみが俺を愛していないというわけでもないと思うが・・・女は役者と聞く。まさかこんな形でなじみへの信用が下がるとは思わなんだ。

 あ、本心だわ。
 絶頂カウント増えたから。

 深度1・・・普通だな!
 一瞬で信用戻った。貰ってよかったエロステータス。

 恋愛とはその辺の不安を楽しむ物だと言わるかもしれないが、あいにくそんな冷めた思考をなじみに持っていない。
 なじみは俺にとって『楽しむ物』ではなく、『賭ける者』なのだから。

「じゃあ・・・今からする?」

 食事時に、と思わなくもないが、求められること自体は嬉しい。
 がそうはいかないのがこの世の無情。

「悪い、今日は先約があるんだ」
「先約? 誰?」
「トレーニング仲間」
「居たんだ」
「おい」
「だってケーくんのトレーニングって凄いじゃん。今ロードワーク何キロ走ってるの?」
「13キロや」
「なん・・・だと・・・」
「嘘。ホントは10キロ」
「にしたって多いよ・・・何目指してるの?」
「なじみの旦那」
「んんッ!」

 増えた。何がとは言わないが。

「ふう・・・所で、そんなケーくんにお願いがあるんだけど・・・」
「どうした?」
「私にもトレーニングの指導、してくれないかなーって」
「・・・・・・・・・まあ良いぞ」
「ありがとうッ!!」

 増えたんだろう。何がとは言わないが。

「じゃあ明日から普段より1時間ほど早く起きよう。それでとりあえず1キロ走る。ウォームアップとか色々入念にやるからな。それ以降は段々距離を伸ばしてく。あと運動着も探しといてくれ。動きやすけりゃ何でもいいから」
「はーい」
「それと、俺ができるのはトレーニングの指導だけだぞ? 食事制限とかは知らん」
「はい・・・」

 俺は栄養管理も食事制限もやっていない。
 食べた分だけ消費すれば問題ないのだ。精神的な負担も考えるとそっちの方がいい。
 無駄を楽しむのは長続きのコツだ。

 勿論なじみが『食事制限までやりたい』というなら是非もない。俺も付き合おう。
 昨日今日の調子を見る限り、多分このまま半同棲状態が続くのだろうし。

 朝食を食べ終えたので、外出の準備をする。

「ご馳走様。じゃあ俺はそろそろ出るから、なじみも自分の部屋に戻って自分の家事をしてくれ。流石に忍びない」
「お粗末様。好きでやってることだから別に良いのに」
「ある程度綺麗にしてないと俺を入れてくれないだろ?」
「それは・・・そうだね」

 『俺がなじみの部屋に行く事』の意味を察し、赤面しながらも頷くなじみ。

「じゃあ、頑張ってね」

 ベランダから自分の部屋へ戻るなじみ。
 それを見送ってベランダの窓の鍵を閉め、スポーツウェアに着替えて諸々確認。

 マンションの一階まで降りて、ストレッチの後ジョギングの体勢で走り出した。



 学校とは反対方向に走っていく。
 なにせ見慣れぬ土地柄。位置情報アプリを併用しつつ目的地まで。
 道中手持無沙汰な上半身に見様見真似のシャドーなど挟みながら。

 体温の上昇とともに段々と速度を上げていく。
 時折ポケリを飲んで体温が上がりすぎないように。

 同好の士ににこやかな挨拶も忘れてはいけない。

「やあ君! うちの野球部に入らないかい!?」
「結構でーす」

 恐ろしく速い脚払い、俺じゃなきゃ見逃しちゃうね。

 転がした謎のおっさんを横目に進む。
 なに、どうせホモだ。気にする必要はない。
 そういうのに理解はあるが、押し付けてくるのはやめろ。
 そういやソッチ系の人は鍛えてる人が多いらしいが、その所為で同好の士と思われたのだろうか。



 さて、目的地に着いた。
 『Made in heaven』という文房具メーカーの前だ。
 訳すと・・・天国製?

「なんとも攻めたネーミングというか・・・」

 少なくとも俺はこのメーカーを見たことがない。
 天国に召されそうなのはこのメーカーそのものではなかろうか。

 まあ俺自身、そこまで文房具にこだわりがあるわけでもないので、マニア連中からしたら垂涎ものなのかもしれないが。レアリティ的な意味で。

 ポーチから手拭いを取り出して汗を拭く。
 結構な距離を結構なスピードで走っていた。

 ぐいと流し込むポケリはもうぬるくて、体を冷やすような効果はない。水分補給にはなるので別に良いか。

 ひとまず適当にクールダウンしながらその人物を待つ。

「おまたせしましたぁ!」

 ハスキーボイス声かけを聞いて、目的の人物が来たことを知る。

 印象を一文字で表すなら『肉』である。
 全身のいたるところがムチムチで、ウェアが弾け飛びそうだ。
 顔も二の腕も腹も豊かに肉がついて、抱き締めれば『肉布団』の単語が頭から離れないだろう。
 無論、そこ以上に肉付きの良いのが胸と尻と太ももである。

 こちらに走り寄る様は『ばるんばるん』と効果音が聞こえてきそうだ。
 身長は180の俺から見て少し低いぐらいだが、その肉の圧力かそれ以上に感じられる。

 一応言っておくが女であり、そんな肉体を持っているというのに言動は割と無防備だ。
 抱くにはともかく、触るには極上だろうから、痴漢犯罪者予備軍を全員予備軍ではなくしてしまうような女。

 かつての『クソデブ』である。
 あだ名は『デブ』。本名は忘れたし、デブと呼ぶたびに本心から嬉しそうにするので、そう呼んでいる。

 ・・・これでも、性別がわかるレベルまで痩せたんだから、デブを褒めてほしい。
 たとえ平均より少し上程度のルックスだとしても。
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