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第二部 高校生編
仕事に私情を挟むのはどうかと思うが、私情がないと人間ではない
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なじみお手製の昼食を食べて、夜まで家事やら勉強やらこなしながら過ごす。
訂正、家事はなじみが全部やった。大丈夫かお前。
手際良すぎて手伝う間隙もないんだけど、なんでそんなに勝手を知ってるの?
ていうかこれ、俺がヒモみたいになってない?
なじみに聞いても『ケーくんなら私は一生養ってもいいよ?』とか言われそうなので心のうちに秘めて置く。
*
そして夜。
まるで当然であるかのように俺のベッドの中にスタンバイするなじみ。
「どしたのケーくん。一緒に寝よ?」
ちなみに、というか当然のことなのだが、俺の部屋にあるベッドは一人用である。
『そういう』用途を想定はしているので多少大きいが、二人で寝るには窮屈だろう。
「まあいいか」
最終的にはそうなって、同衾が始まるのだが。
さて、比較的狭いベッドの宿命というか、当然俺となじみはかなり密着する。
ベッドの大小にかかわらず、なじみの方から絡みついてくるのだが。
「えへへぇ・・・」
満面の笑みで破顔するなじみに俺も笑みがこぼれるが、それはそれとして割と喫緊の課題がある。
俺となじみももう高校生、第二次成長期も折り返して男女の差異が激しくなってきた。
とりわけなじみは小1の頃から続けたキスの影響で女性ホルモンが大量分泌されているのか、その傾向が強い。
とどのつまりは、結構な成長をした胸が俺の体に押し付けられるという事だ。
むにゅりむにゅりと形を変えているのが寝間着越しからでも克明にわかる。
おまけになじみは幼児体形であったときと同じように絡みつこうとするので、その感触は強い。
なじみが寝るときも下着をつけるタイプなおかげで致命的な所は覆い隠されているが、それを抜きにしても素晴らしい感触。
勿論そこ以外だって相当なものだ。腕も太腿も成長し、顔は更に目鼻立ちがはっきりしている。
で、何か喫緊かといえば、この状況で性欲がわかない男が居るのか、という所である。
勃起自体は操作できる。その辺からバレることはないだろう。
しかし俺の中ではあまりあるムラムラが滞留と増幅を続けている。
この状況から脱出し、いくらか時を待てばおさまりはするだろうしそのまま就寝できるだろうが、そもそも脱出できないししようとも思わない。
なじみはいよいよ足まで絡めてきて、その密着をより強めていく。
しかし安心して欲しい、二度同じ愚を犯すような真似を俺はしない。
ここでなじみを襲ってはかつての焼き直しだ。
勿論なじみは受け入れてくれるのだろうが、問題はそこではない。
こういうのはだな、認識を変えるんだ。
なじみを極めて健康的な女体であると捉えるのではなく、そういう形の抱き枕として捉えるとどうだろう。温度も人肌でちょうどよく、いまだ夜は若干の寒気が残る最近の気候の中では非常に心地よい。
陶板に突き刺さる柔らかな感触もなんかこう・・・そういうアレだ。うん。
なじみ、じゃなくてなじみの形をした抱き枕を抱きしめる。
オイオイオイ、死ぬわ俺。
ほう・・・幼馴染イチャラブものですか・・・大したものですね。
幼馴染イチャラブものは気の置けなさから安心感が強く、運動(意味深)の前に愛読する読者もいるとか。
なんでもいいけどよぉ、相手はこのなじみだぜ?
それに特大バストの感触とシチュ。これも即効性(意味深)の代物です。お尻も出ていてスタイルもいい。
しかしこれほどの密着感で暑苦しさがないとは、超人的な親しさという他ない。
スヤァ・・・と。
*
なんだ昨晩の。
自己暗示が行き過ぎて分けわからんこと考えてたな。安眠はできたけど。
隣を見ると眠っているなじみ。
気持ちよさげに眠っているので起こさないようにしてベッドから起きる。
顔を洗い歯を磨き服を準備して、熱い茶を淹れて飲み、体を内側から起こす。
とりあえずスポーツウェアに着替えて待つか、と思って違和感。
ズボンの一部分が妙にゴワゴワしている。
ゴワゴワというよりカピカピという感じか? 左腿の前側なので夢精したわけでもなさそうだが。
よくわからないので揉み洗いしておく。
時計を確認すれば6時2分。
普段より一時間早い時刻になったので、なじみを起こしに行く。
「なじみ、なじみ」
「んゆぅ・・・」
可愛らしく口をもにょらせているが、この調子ではいつ起きることやら。
しばらく体を揺すっていると、ゆっくりと体を起こした。
「おはよー・・・」
「おはよう。とりあえずこれ飲んで目覚ましな」
もう一杯の熱い茶をなじみに差し出す。
ベッドの上でちびちびと飲んでいるのを横目に、なじみが昨日干した洗濯物の具合を見に行く。
全部乾いていたので取り込み、適当な所に積んでおいた。帰ってきたらアイロンかけて畳まねば。
そういやなじみの衣類を見ないが、なじみの部屋の方に干されているのだろうか。
ゴミ箱の中身をゴミ袋に移していると、なじみがベランダから慌てたように自分の部屋へ戻っていった。
数分後、なじみは学校指定のジャージを着て戻ってきた。
「よし、さっそく始めようか」
「はーい」
敷地内で開けた場所を見つけ、そこでウォームアップを入念にして走り出す。
なじみは運動慣れしていないので、たかが1キロでもゆっくりと。しかしフォームが崩れれば容赦なく指摘する。
変な癖をつけてはなじみの為にならないだろう。
終わったら今度はクールダウン。これも当然入念に。
疲れ自体は残るだろうが、それ以外の不調は残らないように。
本来ならこの後自重トレなんかを挟みつつ、マシンでの筋トレが始まるのだが、今は関係ない。
「お疲れ様。よくできたじゃないか」
「ハア、ハア、ありがとう。・・・ふう。まあ中学でも体育の時間なら持久走はやってたしね」
時計を見てみれば7時22分。
予定を少し超過している。
「さて、お疲れの所悪いがこれから学校だ」
「はーい・・・ねえ、ケーくん」
「どうした?」
「疲れたから、おんぶしてくれる?」
なじみは今現在、足腰立たなくなるほど疲弊しているわけではない。
普通に立ってるし、息もそこそこ整っている。
そのため歩けないという事はないだろうが、まあ。
「だめ」
「うー、わかった」
「ただし」
なじみの側面に回り込んで襟を引っ張り後ろに倒すと、脚を持ち上げると同時になじみの背中を支え、その全身を持ち上げる。
「抱っこなら可、だ」
「~~~~~ッ!」
今は俗にいうお姫様抱っこ状態。
こういう所で普段やってきた筋トレが生きてくるわけだ。
相手がなじみでなければただただ寒いだけの行動だが、相手がなじみなので問題ない。
現になじみは顔を紅潮させながら俺の首に抱き着いてきている。
まあ羞恥でもこうなるかもしれないが、歓喜であることは口元の緩みっぷりを見れば容易にわかる。なじみは表情にでるからな。
「でも部屋の前までだぞ? 流石にこれじゃあドアが開けられんからな」
こくり、と頷くだけのなじみ。
その反応に満足しながら、俺はマンションの階段を上っていくのだった。
*
ドアの前にたどり着くと、なじみはしばらく粘った後でひょいと降りてくれた。
なじみはそのまま自分の部屋に戻る。少しふらふらしているが、大丈夫だろうか。
朝食を自分で作り、制服に着替えて諸々鞄に突っ込んで家を出た。
あと20分は余裕があるタイミングだが、これの10分後になじみが出発する。
結局お互いが付き合っていることは学校では秘密にすることにしたのだ。なじみの希望で。
あんなに密集されてなおその姿勢を貫くあたり、なじみの思いは一級品なのだろう。俺としてはいささか複雑な気分でもあるわけだが。
特に何事かのイベントがあるわけでもなく、教室に到着。
俺以外にはちらほら、といった感じでまだ喧騒には程遠い。
教室の静かな空気に倣って自分の席で呆けておく。明日からは本でも持ってきた方がいいかもしれない。
「よっ、安心院」
「雄大、お前この学校来てたのか」
呆けること数分、そんな俺に話しかける一人の男。
彼は原島雄大という男で、実は小学校から同じクラスであることの多かった相手だ。
定義的には『幼馴染』に入るのかもしれないが、俺としてはいまいち納得できない。
厳密にこいつとの関係性を表す単語も思いつかないから。
友達というには親しいし、親友というには距離がある。知り合いというほど疎遠でもないし、腐れ縁では含みがありすぎる。幼馴染は俺の中でなじみだけだし。
「で、部活なに入るか決めたか?」
「特に何も。ただ陸上部の手伝いで筋トレのマシンが借りられるように交渉してあるから、そこらへんとの兼ね合いも考えないとな」
「相変わらず手がはえーな」
「無理言って借りてるんだ。それくらいしないとな。雄大はどうだ? なにか決めたか?」
「お? 俺か? 俺はな・・・軽音楽部だ」
「お前、中学の時テニス部だったよな?」
「ああ、ありゃダメだ。汗臭くて泥臭くてモテやしねー」
この男、生粋のモテ(を求める)男である。
『男は告白されてこそだろ』なんて宣って、色々な手法で女子の目を引き付けようとするも、徹底的に求める性を前面に押し出しているのでいまいち上手くいかない。
嫌われている、というわけではないようなのは分かるのだ。俺に何回か相談に来た女子もいたから。
しかしその全員が『男の方から告白して欲しい』というスタンスばかりだった。
需要と供給の縮図みたいな男である。
ちなみに、付き合いが長いからかなじみと俺の関係性について薄々察しているっぽい。
こいつが猥談を振ってくるときなじみが話題に出ないのが根拠だ。
「安心院、お前ピアノやってたよな?」
「・・・まあ、さっきの件をある程度優先してくれるなら別にかまわないけど」
「ありがとナス!」
「それなに? というかピアノとキーボードは同じなのか?」
「根本に必要な技術とかは同じだろ」
せやろか? まあ、ノープランよりは良いか。
正直な所微の居る文芸部も興味はあったが、知人をきっかけに始めるならその知人がより長くいる方が得策だろう。
「じゃあ放課後頼むぜ」
「ああ」
そういって雄大が自分の席に戻ったとき、不知火先生が入室してきた。
「はーい席についてー」
今日も今日とてエロ全開の衣装だが、もう少しないのだろうか。恥じらいとか。
「えー、今日は委員会を決めます。前期後期に分かれてて、全員どっかに入れ。概要はプリントに書いてある。最初に学級委員二人決めるから、やりたいやつ手あげろ。男女一人ずつな」
すん・・・と誰も微動だにしなかった。
当然である。誰が好き好んで面倒を背負い込もうか。それもクラスメートと人格やクラス全体の雰囲気を掴めていない現状、リスクの見積もりすらできないのだ。
「まあ誰もいねえわな。だろうと思ってあみだくじを作ってきた。自分の名前と線を二本まで追加して後ろの奴に回せ。特に反対意見がないならこの手法でいくが、どうする?」
すん・・・と誰も(ry
「よーし、じゃあこれでいくぞ。ぶっちゃけここで反対意見出せるやつが居たらそいつにしようと思ってたんだがな」
強引過ぎる。
まあ度胸という意味で見れば確かに正解なのかもしれないが・・・。
「じゃあ、安心院。お前からだ」
横長の紙を先生から渡される。
最下部には特に何もないが、おそらく制作後に切り取ったのだろう。先生が持っているその切れ端を合わせるとどこが『当たり』かわかるという寸法だ。線を2本まで追加する、というのもランダム性に寄与している。
実は切れ端なんかなくて先生が適当に決めるだけ、みたいな捻くれた絡繰りがない限り平等だろう。
とりあえず一番右端に『安心院』と書いて全く関係ないところに一本だけ線を入れて後ろに回した。
後ろは伊藤だ。なんか頭蓋骨の骨格が異常に縦長で鼻が細く高いことを除けば普通の奴だ。
今電流が走った、みたいな顔してるが、普通の奴だ。
*
そのままくじは全員を回り、先生が回収した。
「結果は・・・えー・・・」
相当ごちゃごちゃだったのか当たりが誰なのか判別するのに手間取っている。
数回確認もしているし。
「はい、出ました。男子は渡辺、女子は蝶ヶ崎だ。二人とも、前に出てあいさつを」
「はーい」
「え・・・はい」
なじみと、その隣に住んでたやつか。
「女子学級委員になった蝶ヶ崎なじみです。皆さん、よろしくお願いします」
なじみがハキハキと挨拶をして、その後に渡辺が続く。
「渡辺、公大です・・・よろしく」
なじみはともかくとして、渡辺は人の前に出るのが苦手なタイプか?
自己紹介も無難だったし、主張も強くなさそうだ。
目つきが悪いのは視力が低いのか元々か。
「じゃあ他の人たちの所属決めてくれ。後期委員もな」
不知火先生はそういって教壇脇の椅子に座った。
「よろしくね、渡辺君」
「よ、よろしく」
やめてあげて欲しい。
*
俺は図書委員になった。
誰もいなかったし、微と交流が持てるかも、という目論見である。
ただ、うちのクラスは人数が少ないために仕事の少ない委員は前期後期通しだそうで、図書委員はその一つである。
まあ、むしろありがたいが。
訂正、家事はなじみが全部やった。大丈夫かお前。
手際良すぎて手伝う間隙もないんだけど、なんでそんなに勝手を知ってるの?
ていうかこれ、俺がヒモみたいになってない?
なじみに聞いても『ケーくんなら私は一生養ってもいいよ?』とか言われそうなので心のうちに秘めて置く。
*
そして夜。
まるで当然であるかのように俺のベッドの中にスタンバイするなじみ。
「どしたのケーくん。一緒に寝よ?」
ちなみに、というか当然のことなのだが、俺の部屋にあるベッドは一人用である。
『そういう』用途を想定はしているので多少大きいが、二人で寝るには窮屈だろう。
「まあいいか」
最終的にはそうなって、同衾が始まるのだが。
さて、比較的狭いベッドの宿命というか、当然俺となじみはかなり密着する。
ベッドの大小にかかわらず、なじみの方から絡みついてくるのだが。
「えへへぇ・・・」
満面の笑みで破顔するなじみに俺も笑みがこぼれるが、それはそれとして割と喫緊の課題がある。
俺となじみももう高校生、第二次成長期も折り返して男女の差異が激しくなってきた。
とりわけなじみは小1の頃から続けたキスの影響で女性ホルモンが大量分泌されているのか、その傾向が強い。
とどのつまりは、結構な成長をした胸が俺の体に押し付けられるという事だ。
むにゅりむにゅりと形を変えているのが寝間着越しからでも克明にわかる。
おまけになじみは幼児体形であったときと同じように絡みつこうとするので、その感触は強い。
なじみが寝るときも下着をつけるタイプなおかげで致命的な所は覆い隠されているが、それを抜きにしても素晴らしい感触。
勿論そこ以外だって相当なものだ。腕も太腿も成長し、顔は更に目鼻立ちがはっきりしている。
で、何か喫緊かといえば、この状況で性欲がわかない男が居るのか、という所である。
勃起自体は操作できる。その辺からバレることはないだろう。
しかし俺の中ではあまりあるムラムラが滞留と増幅を続けている。
この状況から脱出し、いくらか時を待てばおさまりはするだろうしそのまま就寝できるだろうが、そもそも脱出できないししようとも思わない。
なじみはいよいよ足まで絡めてきて、その密着をより強めていく。
しかし安心して欲しい、二度同じ愚を犯すような真似を俺はしない。
ここでなじみを襲ってはかつての焼き直しだ。
勿論なじみは受け入れてくれるのだろうが、問題はそこではない。
こういうのはだな、認識を変えるんだ。
なじみを極めて健康的な女体であると捉えるのではなく、そういう形の抱き枕として捉えるとどうだろう。温度も人肌でちょうどよく、いまだ夜は若干の寒気が残る最近の気候の中では非常に心地よい。
陶板に突き刺さる柔らかな感触もなんかこう・・・そういうアレだ。うん。
なじみ、じゃなくてなじみの形をした抱き枕を抱きしめる。
オイオイオイ、死ぬわ俺。
ほう・・・幼馴染イチャラブものですか・・・大したものですね。
幼馴染イチャラブものは気の置けなさから安心感が強く、運動(意味深)の前に愛読する読者もいるとか。
なんでもいいけどよぉ、相手はこのなじみだぜ?
それに特大バストの感触とシチュ。これも即効性(意味深)の代物です。お尻も出ていてスタイルもいい。
しかしこれほどの密着感で暑苦しさがないとは、超人的な親しさという他ない。
スヤァ・・・と。
*
なんだ昨晩の。
自己暗示が行き過ぎて分けわからんこと考えてたな。安眠はできたけど。
隣を見ると眠っているなじみ。
気持ちよさげに眠っているので起こさないようにしてベッドから起きる。
顔を洗い歯を磨き服を準備して、熱い茶を淹れて飲み、体を内側から起こす。
とりあえずスポーツウェアに着替えて待つか、と思って違和感。
ズボンの一部分が妙にゴワゴワしている。
ゴワゴワというよりカピカピという感じか? 左腿の前側なので夢精したわけでもなさそうだが。
よくわからないので揉み洗いしておく。
時計を確認すれば6時2分。
普段より一時間早い時刻になったので、なじみを起こしに行く。
「なじみ、なじみ」
「んゆぅ・・・」
可愛らしく口をもにょらせているが、この調子ではいつ起きることやら。
しばらく体を揺すっていると、ゆっくりと体を起こした。
「おはよー・・・」
「おはよう。とりあえずこれ飲んで目覚ましな」
もう一杯の熱い茶をなじみに差し出す。
ベッドの上でちびちびと飲んでいるのを横目に、なじみが昨日干した洗濯物の具合を見に行く。
全部乾いていたので取り込み、適当な所に積んでおいた。帰ってきたらアイロンかけて畳まねば。
そういやなじみの衣類を見ないが、なじみの部屋の方に干されているのだろうか。
ゴミ箱の中身をゴミ袋に移していると、なじみがベランダから慌てたように自分の部屋へ戻っていった。
数分後、なじみは学校指定のジャージを着て戻ってきた。
「よし、さっそく始めようか」
「はーい」
敷地内で開けた場所を見つけ、そこでウォームアップを入念にして走り出す。
なじみは運動慣れしていないので、たかが1キロでもゆっくりと。しかしフォームが崩れれば容赦なく指摘する。
変な癖をつけてはなじみの為にならないだろう。
終わったら今度はクールダウン。これも当然入念に。
疲れ自体は残るだろうが、それ以外の不調は残らないように。
本来ならこの後自重トレなんかを挟みつつ、マシンでの筋トレが始まるのだが、今は関係ない。
「お疲れ様。よくできたじゃないか」
「ハア、ハア、ありがとう。・・・ふう。まあ中学でも体育の時間なら持久走はやってたしね」
時計を見てみれば7時22分。
予定を少し超過している。
「さて、お疲れの所悪いがこれから学校だ」
「はーい・・・ねえ、ケーくん」
「どうした?」
「疲れたから、おんぶしてくれる?」
なじみは今現在、足腰立たなくなるほど疲弊しているわけではない。
普通に立ってるし、息もそこそこ整っている。
そのため歩けないという事はないだろうが、まあ。
「だめ」
「うー、わかった」
「ただし」
なじみの側面に回り込んで襟を引っ張り後ろに倒すと、脚を持ち上げると同時になじみの背中を支え、その全身を持ち上げる。
「抱っこなら可、だ」
「~~~~~ッ!」
今は俗にいうお姫様抱っこ状態。
こういう所で普段やってきた筋トレが生きてくるわけだ。
相手がなじみでなければただただ寒いだけの行動だが、相手がなじみなので問題ない。
現になじみは顔を紅潮させながら俺の首に抱き着いてきている。
まあ羞恥でもこうなるかもしれないが、歓喜であることは口元の緩みっぷりを見れば容易にわかる。なじみは表情にでるからな。
「でも部屋の前までだぞ? 流石にこれじゃあドアが開けられんからな」
こくり、と頷くだけのなじみ。
その反応に満足しながら、俺はマンションの階段を上っていくのだった。
*
ドアの前にたどり着くと、なじみはしばらく粘った後でひょいと降りてくれた。
なじみはそのまま自分の部屋に戻る。少しふらふらしているが、大丈夫だろうか。
朝食を自分で作り、制服に着替えて諸々鞄に突っ込んで家を出た。
あと20分は余裕があるタイミングだが、これの10分後になじみが出発する。
結局お互いが付き合っていることは学校では秘密にすることにしたのだ。なじみの希望で。
あんなに密集されてなおその姿勢を貫くあたり、なじみの思いは一級品なのだろう。俺としてはいささか複雑な気分でもあるわけだが。
特に何事かのイベントがあるわけでもなく、教室に到着。
俺以外にはちらほら、といった感じでまだ喧騒には程遠い。
教室の静かな空気に倣って自分の席で呆けておく。明日からは本でも持ってきた方がいいかもしれない。
「よっ、安心院」
「雄大、お前この学校来てたのか」
呆けること数分、そんな俺に話しかける一人の男。
彼は原島雄大という男で、実は小学校から同じクラスであることの多かった相手だ。
定義的には『幼馴染』に入るのかもしれないが、俺としてはいまいち納得できない。
厳密にこいつとの関係性を表す単語も思いつかないから。
友達というには親しいし、親友というには距離がある。知り合いというほど疎遠でもないし、腐れ縁では含みがありすぎる。幼馴染は俺の中でなじみだけだし。
「で、部活なに入るか決めたか?」
「特に何も。ただ陸上部の手伝いで筋トレのマシンが借りられるように交渉してあるから、そこらへんとの兼ね合いも考えないとな」
「相変わらず手がはえーな」
「無理言って借りてるんだ。それくらいしないとな。雄大はどうだ? なにか決めたか?」
「お? 俺か? 俺はな・・・軽音楽部だ」
「お前、中学の時テニス部だったよな?」
「ああ、ありゃダメだ。汗臭くて泥臭くてモテやしねー」
この男、生粋のモテ(を求める)男である。
『男は告白されてこそだろ』なんて宣って、色々な手法で女子の目を引き付けようとするも、徹底的に求める性を前面に押し出しているのでいまいち上手くいかない。
嫌われている、というわけではないようなのは分かるのだ。俺に何回か相談に来た女子もいたから。
しかしその全員が『男の方から告白して欲しい』というスタンスばかりだった。
需要と供給の縮図みたいな男である。
ちなみに、付き合いが長いからかなじみと俺の関係性について薄々察しているっぽい。
こいつが猥談を振ってくるときなじみが話題に出ないのが根拠だ。
「安心院、お前ピアノやってたよな?」
「・・・まあ、さっきの件をある程度優先してくれるなら別にかまわないけど」
「ありがとナス!」
「それなに? というかピアノとキーボードは同じなのか?」
「根本に必要な技術とかは同じだろ」
せやろか? まあ、ノープランよりは良いか。
正直な所微の居る文芸部も興味はあったが、知人をきっかけに始めるならその知人がより長くいる方が得策だろう。
「じゃあ放課後頼むぜ」
「ああ」
そういって雄大が自分の席に戻ったとき、不知火先生が入室してきた。
「はーい席についてー」
今日も今日とてエロ全開の衣装だが、もう少しないのだろうか。恥じらいとか。
「えー、今日は委員会を決めます。前期後期に分かれてて、全員どっかに入れ。概要はプリントに書いてある。最初に学級委員二人決めるから、やりたいやつ手あげろ。男女一人ずつな」
すん・・・と誰も微動だにしなかった。
当然である。誰が好き好んで面倒を背負い込もうか。それもクラスメートと人格やクラス全体の雰囲気を掴めていない現状、リスクの見積もりすらできないのだ。
「まあ誰もいねえわな。だろうと思ってあみだくじを作ってきた。自分の名前と線を二本まで追加して後ろの奴に回せ。特に反対意見がないならこの手法でいくが、どうする?」
すん・・・と誰も(ry
「よーし、じゃあこれでいくぞ。ぶっちゃけここで反対意見出せるやつが居たらそいつにしようと思ってたんだがな」
強引過ぎる。
まあ度胸という意味で見れば確かに正解なのかもしれないが・・・。
「じゃあ、安心院。お前からだ」
横長の紙を先生から渡される。
最下部には特に何もないが、おそらく制作後に切り取ったのだろう。先生が持っているその切れ端を合わせるとどこが『当たり』かわかるという寸法だ。線を2本まで追加する、というのもランダム性に寄与している。
実は切れ端なんかなくて先生が適当に決めるだけ、みたいな捻くれた絡繰りがない限り平等だろう。
とりあえず一番右端に『安心院』と書いて全く関係ないところに一本だけ線を入れて後ろに回した。
後ろは伊藤だ。なんか頭蓋骨の骨格が異常に縦長で鼻が細く高いことを除けば普通の奴だ。
今電流が走った、みたいな顔してるが、普通の奴だ。
*
そのままくじは全員を回り、先生が回収した。
「結果は・・・えー・・・」
相当ごちゃごちゃだったのか当たりが誰なのか判別するのに手間取っている。
数回確認もしているし。
「はい、出ました。男子は渡辺、女子は蝶ヶ崎だ。二人とも、前に出てあいさつを」
「はーい」
「え・・・はい」
なじみと、その隣に住んでたやつか。
「女子学級委員になった蝶ヶ崎なじみです。皆さん、よろしくお願いします」
なじみがハキハキと挨拶をして、その後に渡辺が続く。
「渡辺、公大です・・・よろしく」
なじみはともかくとして、渡辺は人の前に出るのが苦手なタイプか?
自己紹介も無難だったし、主張も強くなさそうだ。
目つきが悪いのは視力が低いのか元々か。
「じゃあ他の人たちの所属決めてくれ。後期委員もな」
不知火先生はそういって教壇脇の椅子に座った。
「よろしくね、渡辺君」
「よ、よろしく」
やめてあげて欲しい。
*
俺は図書委員になった。
誰もいなかったし、微と交流が持てるかも、という目論見である。
ただ、うちのクラスは人数が少ないために仕事の少ない委員は前期後期通しだそうで、図書委員はその一つである。
まあ、むしろありがたいが。
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