幼馴染でマジカルなアレが固くなる

余るガム

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第二部 高校生編

吉本新喜劇以外だとそこまで言って委員会も見るべきだと思う関西ローカル番組

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 図書委員会については後日集まりがあるらしく、現時点で特にすることはない。
 先生からの説明やらなんやらをサラッと聞き流し、部活動見学のある放課後になった。

「安心院、行こうぜ軽音部」
「ああ」

 相も変わらず求愛を一身に受けているなじみとアイコンタクトを送りあって、そのまま教室を出る。

「部室ってどこかわかるのか?」
「確か第一校舎の4階に第2音楽室があって、そこらしい。というか冊子配られたろうが、ちゃんと見とけ」
「悪い悪い」

 おざなりな謝罪なんかをしながら歩けば、直ぐに到着した。

「ここか」
「たのもー!」

 自由かこの男。

「新入部員候補が来た!」

 そういって目を輝かせるのは。

「どこにいるんですか?」
「奥の方じゃねーの?」
「ちょッ!?」

 おかしいな、声は聞こえるんだが、姿が一向に見えない。

「でも声は近くから聞こえるよな」
「んー、どういうことなんだろ」
「君、ガタイの良い方、皆既日食になってるから」
「皆既日食?」

 少なくともそんな話は聞いていないが。ネットニュースとかで出てくるだろ。

「あっ、声は聞こえるかな?」
「声? 声なら聞こえますけど・・・」
「でも問題は姿が見えないところだろ」
「声、声の方に近寄ってー」

 得体の知れない存在に従うのも怖いが、他の選択肢もあるまい。

「声よー声はこっちよー」
「こっちの方・・・だよな?」
「でも姿が見えないなら同じじゃ・・・」

 呼び込んでくる声ににじり寄る。

「みーさーげて、ごらん」
「「うわっ!!」」

 いた。
 見下げた先に。
 パッと見の身長は・・・130あるか、ってぐらいのちんまい女生徒だった。ネクタイの色から先輩であることがわかるが年上の威厳は感じられず、むしろ年下の様にしか見えない。
 ショートボブの茶髪が綺麗に揺れているが、そこ以外で揺れているところはない。悲しいなぁ。

「ガタイの良い方、君一回目が合っただろ」
「ちょっと何言ってるかわからないですね」



 聞いてみれば、彼女は『利根川 梅雨とねがわ つゆ』という名前であり、軽音楽部の部長をしているのだそうだ。
 これでも3年生らしい。

「これでもとはなんだ! 発育の悪いことは認めるが、僕は立派な年上だぞ!」

 それで僕っ娘と来た。
 僕っ娘合法ロリとか属性が多いな。

「で、君たちは入部希望者という事でいいのかな?」
「見学に来たんですけど・・・」
「俺は別にここでもいいかな、と思ってるけど」
「安心院、お前ロリコンだったのか・・・?」
「だから僕はロリじゃない!」

 雄大、お前はなじみのスタイルを見たうえで俺のことをロリコンだというのか?

「見てみろ、この部活部員が少ないだろ」

 部室内を見回してみれば、この利根川部長以外に部員と思しき人が見えないのだ。
 そういうと、利根川部長は涙目になった。

「・・・そうだよ、部屋そのものが特殊だから部室や部活自体がなくなるってことはないんだけど、部員が居ないから部費は少ないし、人手がないからパフォーマンスもできなくて、そのまま一人二人が精いっぱいなんだ・・・」

 去年の文化祭は部長が弾き語りしたらしい。軽音部とは。

「というわけでこの部活がガチ勢じゃないことは分かる。なら俺も都合が通しやすい」
「ああ、陸上部の手伝いの代わりにマシン使うんだっけ・・・」
「お前も一回陸上部見てきたらどうだ? ここがピンとこないなら他をめぐってみるのもありだと思うぞ」
「んー・・・とりあえずここ見学してからだな」

 というわけで、部長に色々話を聞こうとするも、大した話は出てこなかった。
 なにせ部長一人しかいないのだから、活動が活発であるわけがない。
 もっと活気があれば、近所の公民館やらでコンサートでも開けたのかもしれないが、一人の弾き語のためだけに借りるというのも気が引けるそうだ。

 なので話題は必然、こっちに回ってきた。

安心院傾あじむ けい、一年です。ピアノやってたんで音楽知識は多少あります。あと鍛えてるんで肺活量もあります」
「原島雄大、一年。テニスやってたんで体力には自信あります」
「OK、じゃあ一回安心院君にピアノ弾いてもらおうかな」

 音楽室らしく置いてあったピアノを指さして部長が言った。

「原島君は・・・何かやりたい楽器とかある?」
「あ、じゃあドラムでお願いします」
「ごめんね、僕ドラムはできないんだ」
「えぇ・・・」

 なんだこの部活。

 ひとまずピアノについて、一曲引くことにする。
 せっかくなので歌も合わせて肺活量のアピールもだ。



「あの日ーは、もうこないー♪」

 弾き語りをしてみると、結構評価は良かったようだ。

「凄い良い曲だね。それにうまい」
「俺も知らねーけど、なんて曲?」
「『桜岩』」
「聞いたことないな」

 そりゃそうだ。前世の一曲である。
 転生したけどまだ二期諦めてねえからな! 聞いてるか天野!

「じゃあ安心院君、ここにサインしといてね」

 まるで当然であるかのように入部届にサインをさせようとする利根川部長。

「もう少し捻るとか・・・なさらないんですか?」
「何言ってるんだい! 君を逃したら我が部は本当に消えてしまうよ! 君さえいれば弾き語りの人員がさらに増えるんだ! 二人で弾き語りの二大巨頭を作ろう!」

 軽音部とは。

「まあ別に良いですけど・・・」
「ありがとう! さあそこの原島君も!」
「えっ」

 雄大にも入部届を突きつけ、入部を促す利根川部長。

「いやー・・・俺は、もうちょい考えてからにします・・・」
「そうかい? ならいいけど・・・」

 これは別の部に行くな。
 まあ俺的には別にいい。説得するような材料も権利もないと思うし。



 じゃあこれ、私の連絡先ね!
 そういって押し付けられたのは「軽音魂」というライングループだった。なんでも代々受け継いできたグループだそうだ。今は二人しかないのだが。

 明日も来ることを約束させられ、部室を出た。

「良かったのか?」
「ああ、他のモテそうなところ探すさ」

 もっと派手な所に行くらしい。
 あの人数では致し方ないだろうな。

「じゃあ、俺陸上部見てくるから」
「そうか、じゃあな」

 俺は雄大と別れて家路についた。



 家に着いたので、とりあえず仕切り板の取り外しをした。
 螺子を外せば割と損傷も労力もなくできたので、ひとまずそれ自体はベランダに寝かせている。

 その後諸々の家事を済ませ、やることもなくなったので自重トレをしていた。
 正直なじみが居なくてやることが無いと一事が万事この調子である。
 もういっそバイトでもした方がいいだろうか。

「ふむ、バイトか・・・」

 何のことはないただの思い付きに傾倒して思考にふける。トレーニングは体幹を鍛える物に移行する。。

 軽音楽部の活動は月火水の週3回で、木金はない。
 行事ごとの前なら土曜日にも入るかもしれないが、これらの予定は割と臨機応変とのこと。

 現状のまま行けば二人しかいないのだ、そりゃあ柔軟になれるだろうさ。

 なじみとも多少話し合わなければならないだろうが、バイトをするのは悪くないように思える。
 どうせ一人暮らしと言えば金欠とのチキンレースだ。そして戦いとは兵站・・・つまり補給の質によって決まる。ナポレオンもそう言っていた。
 現在の生活形態を『一人暮らし』と言い張るのも少々無理があるような気がしないでもないが、まあ生命体なんて飢餓感とのチキンレースが主目的なのだし本質的には同じものだ。別に良いだろう。

 ではどんなバイトをするのか。
 これもなじみと話し合った方がいいだろうか。なじみのボーダーがどこにあるのかちょっとわからないし、俺の都合で家になじみだけというのも気が引ける。

 まあ、何をするにしても、まずはなじみが帰ってきてからだな。

 トレーニングを終えて、なじみが帰ってこないしと昼食の準備に移った。
 とりあえず・・・レバニラでも作るか。この塊レバーはどこで仕入れてきたんだろう。
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