幼馴染でマジカルなアレが固くなる

余るガム

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第二部 高校生編

絞る(意味深)

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「あ~・・・頭いてえ」
「お、どうした安心院。寝不足か?」

 朝の教室。
 未だホームルームが始まる前の喧騒が目立つ中、頭を抱えて机に突っ伏す俺に雄大が話しかけてきた。

「ああ。昨日は・・・つーか徹夜したから今日もだけど、ちょっとやることがあってな」
「この新学期始まってすぐに?」
「切羽詰まってたんだよ」

 主に性欲が。

「おいおい、健康優良児なお前が徹夜って、どんな要件だよ」
「ヤることヤってただけさ」
「ふーん」

 嘘ではない。

「まあ、一日二日程度なら何とかなる。まだ若い体だしな」
「高校生のセリフじゃねーぞ。なんだ、お前もしかして最近流行りの異世界転生してきた奴か?」
「実はそうだと言ったら?」
「異世界の知識を聞きまくる」
「わお建設的」

 実はそうなのだが。

「ところで昨日の懇親会なんだが、お前なんで二次会来なかったんだよ。お前目当ての連中にすっげー睨まれたんだぞ」
「なんでお前が睨まれるんだよ」
「そりゃ現状まともに会話してるの俺だけだしな。コミュ障さん」
「うっせ。一次会だけで18人分の連絡先手に入れたわ」
「マジかよ俺の18倍じゃん」
「1人?」
「うん」
「コミュ障さん」
「うっせ」

 まあ実際の所、連絡先を手に入れてもそれが意味を持つかはまた別の話だ。
 俺はなるべく連絡を入れ続けるようにしているので、まだ意味はある方だろう。

「じゃあ、お前もしかして、カラオケの時に蝶ヶ崎さんの連絡先も手に入れてたのか?」
「いや、それはできて無い。女子の壁が厚すぎる」
「だよなー・・・あー俺もあんな人と付き合ってみてーなー」

 嘘ではない。
 俺がなじみの連絡先を手に入れたのはもっと昔の話であり、カラオケの時に手に入れてはいないのだから。

 雄大は俺がなじみと行くところまで行ってるどころか付き合ってるとすら思ってないはずだ。

「諦メロン、高嶺の花は遠目に見るから美しいのさ。近づいたら気後れという棘で血まみれになる」
「その『手の届かないブドウは酸っぱい理論』惨めにならないか?」
「そう思うのが心を健康的に保つコツってわけよ」
「違いない」
「ホームルームの時間だオラァ!! 座れ座れぇい!!」

 やたら荒ぶっている不知火先生が教室に入ってきた。
 何があったのだろう。狙っていた男でも逃したんだろうか。あのルックスと服装なら大体の男は捕まえられるだろうに。遊びの関係であれば、の話だが。

 今日も不知火先生はエロ全開のスーツであり、あまりに動きが荒々しいためにブラウスのボタンが一つ弾け飛んでいる。
 ・・・なんかパイズリ専用穴みたいになってるぞ。そういやなじみの奉仕は受けたことがなかったな。後で頼んでみよう。

 関係ないことを考えていると、話も終盤に差し掛かる。
 この先生は話が短くていい。

「えー、最後に風紀委員の人は風紀委員の担当教員、つまり私に先日分の資料を提出しなさい。今日も一日頑張りましょう。では解散」

 お前風紀委員かよぉ!?
 この学校で確実に一番風紀乱してるのアンタですぜ!?
 いや、反面教師という見方をすれば、存外はまり役なのか?

 さっさと教室を出る不知火先生を見ながら、眠気も吹っ飛ぶ情報を得た俺だった。



 ホームルームで衝撃を情報を受けようが、その衝撃は段々鎮火するものである。

 事実、俺の意識は授業中に何度も暗黒空間を訪れ、ガンガンと鳴り響く頭痛は集中を許さない。
 授業終了までに何度か見咎められたものの、課題が出ていたわけでもないのは幸運な方だった。

 そして放課後。

「俺、この状態で図書委員の仕事するのか・・・」

 まあ、俺の推測では図書委員はさして忙しくない。
 いや、文芸部の連中がいるから昼よりはうるさい方なのか?

 その辺はよくわからないが、これが部活であったとしてもしんどいのは変わらないのだ。諦メロン。
 普段規則正しい生活をしているだけに、一回崩すと大きいのだろうか。若い体なのだからもう少し頑張ってくれ。

 若干ふらついた足取りで図書館に着いた。
 図書委員用のカウンターにつき、来館者用のカウンターを用意する・・・ややこしいな。

「今の所、0人、と」

 日誌に自分の名前と日付を書いたら、後は規定時間まで座っているだけの楽な仕事だ。
 最も、今はその楽で暇な仕事がどうしようもなく苦痛なのだが。

 この眠気を払うには体を動かすか、もういっそ寝るかの二択だとは思うのだが、いかんせん図書館で体を動かすわけにもいかず、業務は業務なので寝るわけにもいかず。

 完全なデッドロック状態だ。

「すうーーーーーーーはあーーーーーーーーーーーー」
「あら安心院君。あなたはロングブレスダイエットなんてする必要ないと思うのだけれど」

 全力の深呼吸で脳に酸素を送り込んでいると、図書館に微が入ってきた。
 まあ予想通りではあるのだが、もう少しタイミングがあるんじゃなかろうか。

「ああ、仁科先輩。人間、絞り始めると際限がなくなるものですよ」
「そっそうね。うん。私にも覚えがあるわ」

 なんと。
 微の『胸以外ほっそり』な体形は彼女自身の努力によって成り立っていたのか。
 じゃあなんで全体的なバランスで見た所の異物である胸をより育成するような牛乳塗れの生活を送っているのかは疑問だが、あいにく眠気で考えられるような状態じゃない。

「まあそもそもロングブレスダイエットじゃないんですけどね」
「あらそう。それは・・・まあそうね、うん」

 一体に何に納得したのだろう。

「じゃあ安心院君は結局何をしていたのよ。もしかしてとても眠そうなのと関係ある?」
「大正解、です。深呼吸で脳に酸素を送り込んでいたところでしてね・・・まあ効果は薄いのですが」

 よく眠そうなの察したな。
 微は俺の隣に座りながら言い募る。

「ふーん、じゃあ寝たらどうかしら」
「へ? でも図書委員としての業務もありますし・・・」
「私は普段から入り浸ってるから知ってるけど、放課後なんてほとんど誰も来ないわ。文芸部だって、私以外の人は『今日休む』って連絡が来たし」
「しかしですね・・・」
「安心院君大丈夫よ。あなたが心配することは何もないの。ほんのちょびっと眠るだけよ。だってあなたにはそれが必要なんですもの。安心なさいな、図書委員としての業務くらい、私がやっておくわ」

 微の甘やかすような言葉に段々安心感が勝り、それとともに遠ざけていた睡魔が押し寄せてくる。
 肉体が睡眠を求める中、精神で睡眠を防いでいたのだ。その精神が弛緩すれば、抗うことは出来ない。

「おやすみなさい、安心院君」

 人間をダメにする笑顔を浮かべた微に、俺は一言しか返せなかった。

「おやすみ、微」



「ん、ああ・・・」
「あ、起きた?」

 清々しい気分だ。歌でも一つ歌いたくなるようない~い気分だ。

 が、それはそれとして、視界の全てが白く染まっているのはなぜだろう。おまけに薄暗い。
 微の声が聞こえたので、邪神空間に引きずり込まれたわけでもなさそうだが。

 ひとまず体を起こす。

「んぁっ」

 微の声が聞こえ、同時に白い壁にぽよんと跳ね返された。
 頭の位置が戻ったが、そこにも柔らかい感触がある。

 ようやく意識が明瞭になってきたおかげで、自分の置かれている状況が認識できた。

 微に、膝枕されている。

 視界が覆われていたのは微の爆乳故で、後頭部への感触は微の太ももだ。
 一度認識すれば抜け出すのは簡単だった。

「・・・すいませんね、仁科先輩。手間かけさせちゃったみたいで」
「むっ、手間だと思うような相手に膝枕するほど私が軽い女に見えるかしら?」
「すいません、失言でした。謝ります」

 微は他人への猜疑心が異常に強い。
 それはいじめられた過去と、その原因が未だ存在している現在が理由なのだろう。
 事実、彼女が『素』を出せる相手は本当に少数だ。

 そういう意味では、微は重い女になるのだろうか。

「仁科先輩は重い女ですからね」
「なぜかしら。別の意味に聞こえるわ」
「逆の表現にしただけですよ。他意はありません」
「なら、別に良いのだけれど」

 微の許しを得た所で、ケータイを見て現在時刻を確認する。
 閉館間際だ。当然規定時間は余裕で超過している。

 が、それ以上に問題なのはなじみから連絡が来ていることだ。

 なんでも『眠すぎて集中できないから先に帰っている』とのことだ。
 その連絡があったのが数時間前。ちょうど俺が寝こけてしばらくしたぐらいだ。

 速攻で『居眠りしてて気づかなかった、ゴメン。俺もすぐに帰る』と返信してケータイを閉じる。

「では仁科先輩、俺はちょいと急ぎで帰る理由ができたので、先に失礼させていただきます。今日はありがとうございました」
「あ・・・そう、なの」

 残念そうにしている微を横目に、日誌を書く。
 が、その必要はなかった。既に日誌は書いてあったのだ。

 微の筆跡。日誌の記入者欄にも『仁科微』と書いてあった。

「ああそれ。私が代わりに書いといたわ」

 こともなげに言うが、結構な手間だったろうに。
 しかし今はありがたい。

「ありがとうございます。この恩は必ず」
「気にしなくていいわ」
「仇で返します」
「気にしないにしたって限度があるでしょ!?」
「冗談ですよ。この恩は必ず返します。恩で」

 眉間に力を込めて言うと、微は困ったような表情を浮かべて。

「じゃあ、今度またミルクの消費手伝ってくれる?」
「そんなことでしたら、勿論。むしろあの牛乳は美味しかったので、こちらからお願いしたいくらいです」

 いや、本当に。

「あらあら、じゃあ私も頑張らないとね」
「今度はどんなひと手間か、暴いて見せますよ」
「あ、そう・・・」

 一気に意気消沈したが、何か的外れな事でも言っただろうか。

「では今度こそ、また明日とか」
「あら、女性をこの夜道に一人で返すつもり?」

 窓を見れば、確かに外は薄暗い。逢魔ヶ時、というのだったか?
 夜道というには明るい方だろうが、ここで論破するのは紳士ではない。

「わかりましたよ、家までお送りします」
「ふふ、それでいいのよ」

 微は横にあったバッグを手に取るとこちらに歩み寄り、いきましょうと声をかけた。
 準備万端で、断らないことを見抜いていたのだ。

「はあ、かないませんなぁ」



 そうして微と一緒の帰り道。
 途中で一度断り、軽音魂への連絡を入れた以外に取り立てるようなこともなく部屋の前に着く。

「んじゃ微、また明日とか」
「ねえ」

 別れの挨拶をしたのに、微はそれに返答せずこちらに問いをよこす。

「・・・早く帰る用事って、彼女さん?」

 しばらく逡巡していたが、切り出してきた。
 きっとその問いは微にとって重い質問だっただろう。顔がその重みに耐えきれず、俯いている。

「いえ、違いますよ」

 だから俺はその問いに端的に答えた。
 俺の回答に微は顔をパッと明るくし、露骨に上機嫌になった。

「そう、ならいいわ。おやすみなさい」

 口調の上では落ち着いているが、露骨に上機嫌なまま、微がそう言って部屋に帰った。
 それを見て、俺も部屋に入る。

「ん? 今のって『パートナーの女性はいるか?』って質問か?」

 恋人がいるのか、という体で答えてしまった。

「なじみは嫁だもんなぁ・・・失敗した」

 しかし吐いた唾は呑めぬ。
 おまけにああまで嬉しそうにされては、訂正するのも後ろめたい。

「ま、いいか」

 考えてみれば、微に俺の女性関係など無関係であろう。
 まさか俺に惚れているわけでもあるまいし。

 一連の言動は親友へのものだろうと結論付け、俺はなじみに電話を掛けた。
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