幼馴染でマジカルなアレが固くなる

余るガム

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第二部 高校生編

人でなしであることは知ってる。木偶人形かどうかは知らない

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 この混沌とした世界をひとまず打ち切るべく、柏手を二発。

「はいはい、それじゃあ仲直りはうまくいったという事で」
「おう! そうだな!」
「そうですねー・・・」

 圭希が少々すすけている様な気もするが問題あるまい、話を続けよう。

「せっかく今からランニングしようという事になっているのだし、ここは一つ三人で走ってみないか?」
「おっそうだな」
「えー・・・まあ、はい」
「よし、まずは準備運動をしなければおおっとなんということDAここには三人しかいないじゃないかこれじゃあ一人余って柔軟ができないではないか致し方ない俺はそこいらの人に手伝ってもらうとしよう君たちは二人で入念なストレッチを重ねるのだ入念になそこのおねーさんちょっと柔軟手伝ってもらえませんかーー!?」

 ここまで一息。
 サムズアップして走り去って声を掛けた人の所へ行く。

「えッ? 私?」
「そうですそうです」

 ステータス起動。
 内海静香うつみしずか。32歳独身処女OL。仕事が出来過ぎて男が寄り付かない。
 顔面偏差値は66といった所で綺麗系。目つきが悪くて男が寄り付かない。
 現在自分の恋愛は諦め気味であり、ペクシブで男女の純愛モノを漁る日々を過ごすも、読み終えた後自分の現実を直視してSAN値が削れるので、ある程度削れたところで様々な運動に手を出しリフレッシュとしている。

「私ナンパはお断りなので」
「いえ別に口説いてるわけじゃないです」
「じゃあなんで他にもたくさんいる男を無視して私なんですか」
「手近だったんで」
「そんなスナック感覚で声かけてこないでくださいよ!」

 ぐうの音も出ない正論だが、本当に口説いてるわけじゃないのだよなぁ。
 こちらの事情を詳しく話して協力してもらおうか。
 あっちに聞こえてはいけないので小声で。

「いや実は俺の後ろに男女ペアがいるじゃないですか」
「はあ・・・」
「そいつらをくっつけるために俺は離れときたいんですよ。女性であるあなたに声を掛けたのはそうすることで男の方が安心院が女の方を奪うんじゃないか・・・あ、俺安心院って言うんですけど、そういう疑いを掛けられてるんでそれを払拭するために」
「ちょっと待ってください」
「はい?」

 物凄く真剣な表情だ。

「つまりあの二人は両片思い状態である、と?」
「そういう訳じゃないんですよね。一言で言い表すには難しいところでして・・・これが何とも複雑な関係という事もございまして」
「詳しくお聞かせ願えますか?」
「・・・長くなりそうですね。場所、変えましょうか」
「ええ、ぜひ」

 こうして俺はまんまと二人の下を離れることに成功したのだった。



「な、なんですかその少女漫画みたいな状態は・・・」
「デブってた主人公が何かしらの要因で痩せたら、それを機に様々なイケメンが主人公に群がる・・・あるあるですね」

 現在辛うじて二人の動向が伺える程度の距離を取って俺と内海さんは柔軟をしている。
 ぶっちゃけ二人でやる柔軟なんてあんまりないので、当然お互いが触れあっているわけではない。

「他人事みたいに言ってますけど、安心院さんも完璧に登場人物の一人ですよ?」
「うそでしょ? 俺どういう立場になるんです?」
「んー・・・まあライバルキャラですよね。メインヒーローの」
「メインよりスペック高くて危機感感じさせる奴ですね。それで焦ったメインが強めのアプローチして胸キュン展開ですね」
「そういう事です。王道ですね」
「王道でも噛ませ犬役にはなりたくないなぁ」

 そもそも登場人物の一員扱いされているのがピンとこない。
 だって圭希は完全に恋愛対象外だし。
 いや、勿論世間一般では美人の範疇に入るんだろうとは思うんだが、初対面でのインパクトが強すぎて・・・。

 そこからの変化も劇的ではあったが、傍で見続けた俺としては誤差の積み重なりでしかない。
 その誤差が重大というのも分かるが、どうも『クソデブ』という印象が拭い難く。
 あと『クソデブ』の印象を差し引いても当時のあいつはウザかった。

「安心院さんはあの女性のことは?」
「別にどうとも。なんとなく一緒に走る関係が続いているだけの相手って感じですね」
「あの女性が他の男性と手をつないでいるところ想像してみて?」
「それで俺は『ムカムカします』とでも言えばいいんですか? 生憎『物好きもいたもんだ』としか思いませんよ」
「物好きって・・・結構かわいい子じゃないですか」
「『元』を知ってるとどうしてもね。大体外見が変わって心変わりするならその程度でしょう」

 程よく終わったので切り上げて、別れを告げる。

「んじゃまあ、ありがとうございました。これにて」
「ああちょっとちょっと! 私もあの二人の動向が気になるんで、連絡先交換しませんか?」
「そう言いましてもプライバシーですし・・・」
「良いじゃないですか、こうして協力した以上私も無関係じゃないですよ。何ならこれからもドンドン協力しますし」
「んー・・・まあ袖触れ合うも多生の縁ってことで」

 内海さんと連絡先を交換して、別れた。
 彼女はランニングコースを外れた道を選んでいった。帰ったのだろうか。

 さて、二人の終わりを見計らって近づき、話しかける。

「いやあ、快く協力してくれて良い人だった。そっちは終わったか?」
「今しがた・・・」

 圭希がいよいよ煤けて見えるが、次に進もう。

「じゃあ本格的に走っていきますか。あっそうだ。俺今日は新しい走法を試す予定だから一緒に走れねえわ二人でよろしくやっといてくれ」
「えっ!? 安心院さん一緒に走らないんですか?」
「すまんな、モノにするまではペースが遅くなるから」
「こっちが合わせれば・・・」
「限度いっぱいを目指し続けないと力の現状維持すら難しい。それをするのは馴れ合いであり、ただの害だ」
「そんな・・・」
「HAHAHA、非常に残念だが、そう言う事なら致し方あるまい」
「信照も済まないな」
「なに、追いつけなさそうだったからありがたいぐらいさ」

 そうだな、お前俺が帰ってきたとき結構な睨みを効かせてきたもんな。ばれないように。
 このテンションの信照を全面的に押し付けることに罪悪感がないでもないが、生憎圭希の心情は俺にとって自分を犠牲にするほどではないので黙認である。



 さて、口から出まかせのように言った『新しい走法』であるが、実は存外嘘という訳でもない。
 以前渡辺から聞いた『超能力による肉体強化』を試してみようという訳だ。

 体の出力が変わるだけで、走り方自体はいつも通りなので新しい走法と言えるかは微妙な所だが。

「えー、超能力の根幹の部分から全身に塗り広げる、だったか」

 ・・・俺の超能力って、どこから出てくるんだ?
 主要な所で言えば多分股間なのだろうが、かといってステータスの方は目か脳か判然としない。

 まあいい。とりあえず股間からで行ってみよう。
 無理っぽいなら別のところだ。

「塗り広げる・・・纏みたいな感じか? 出力的には練? 全身に恒常的に、だから堅かもしれん」

 H〇NTER×H〇NTERをもとにイメージを練り上げていく。
 重さのない服、ぬるま湯の中。
 目を瞑ってそれらを連想し、自分の体にフィードバックする。

 普段からやってきた肉体操作の延長戦、そう考えれば割と・・・。

「おっ? おー・・・」

 目を開いて手を見れば、新アニメのヒソカさながらにどぎついピンク色のオーラが俺の体を覆っていた。

「ふっ!」

 力めば、多少強くなったようにも思える。
 だが誤差の範囲だろう。

「どれどれ。せっかくだし使ったままで行ってみようか」

 遠くに目を凝らすと、豆粒の様な信照と圭希が見える。
 道のりは概算で300mといったところか?

「GO!」

 瞬間、世界が変わった。
 これまでのランニングが馬鹿馬鹿しくなるレベルの速度が一歩目から。
 二歩目で短距離選手のトップスピード。
 三歩目で思わず足を止めてしまった。

 ズザァアッ!という音は先に信照が出した以上の轟音。

「・・・こりゃやべーわ」

 急な坂があるとして、そこを駆け降りる時、人は無意識にブレーキをかけて降りる。
 それは足の回転数以上の速度が出れば転ぶからだ。
 故に人は急な加速、制御できない速度をブロックするように出来ているのだ。

 今思わず足を止めたのはそれに似る。

 それにあまりの速度に動揺したとき、一瞬で強化状態が解けた。
 使いこなすには無意識レベルで維持できるようにならなくてはならないだろう。それこそ睡眠時も維持できるくらいに。

 かなり難易度の高い話だ。

 しかしその一方で割とテンションが上がっている俺がいるのも事実。

 人生のなかで、自分にそんなことが出来るだなんて考えたこともなかった。やり方も知らなかった、思いつきもしなかった・・・いや、夢見たことはある。少年の頃には、とくべつな能力を持って戦う青年たちの生き様に憧れ、自分なりにそういった能力を夢想したこともある。でも俺は、それを本当に出来るだなんて思ったことはなかった!
 想像の世界にあると思ったものが、まさしく自分であると知ったのだ。

 これまでのやつは、少しこう・・・実感に乏しかったからな。
 いきなり張り付けられた超能力。実感など湧こうはずもない。

 しかしこれは大なり小なり自分の力で獲得した力。
 別に極端な苦楽があったわけでもないが。

 本来なら自分の異常性を発見したことに絶望し、『自分を破壊してくれるところへ』なんて願うのかもしれない。

 しかし俺は生憎と前向きなんだ。
 前向きなのが僕の唯一の取り柄なんだ! なんていうつもりはないが。

 ピアノ筋トレイチャラブに並ぶ新しい趣味を見つけたかもしれない。
 そう思うと、新しい玩具を見つけた子供の様で、自分が酷く滑稽に思えた。
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