幼馴染でマジカルなアレが固くなる

余るガム

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第二部 高校生編

合宿だろうと見所さんがないならカットするんだよあくしろよ

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 さて、水曜日。
 いつもより早く登校した生徒らは食堂横の駐車場に集められ、点呼をしていた。

 点呼はつつがなく終わり、出席順でクラスごとにバスへ乗り込む。

 俺の隣は男子生徒の伊藤解意次いとう かいいじ
 妙に薄く高い鼻と目つきの悪さが特徴の男子生徒である。あだ名はカイジ。

「前々から思ってたんだけどさ」
「あ? なんだよ」
「お前の頭・・・頭蓋骨どうなってるんだ?」
「はあ?」

 そんな間の抜けた会話をしながら、バスの移動時間を潰す。

 やがてバスは目的地に到着し俺たちは、フェリーに乗り換える。

「海越えるのか・・・」
「俺たちどこに連れていかれるんだ・・・監獄島かなにかか?」

 事前情報にあった『スマホを使う暇もない』というのが恐ろしい。
 どういう意味なのか不明瞭な所が特に。

「というか事前情報が少なすぎるんだよ」
「ここまで大仰だと、何かの意図を感じるな・・・」



 そして到着した、暫定監獄島。
 正式名称、鷹匠の箱庭。

 肉食獣が極端に少ない元無人島であり、遥か昔から鷹狩りの場として時の天皇陛下がご来島なさったこともある由緒正しき島である。
 その際に作られた諸々の流用、転用、元手にした結果生まれたのが、私立鷹弓高校御用達の孤島。

 いやこの高校金持ち過ぎない?

「ロスチャイルド家が日本征服のための足掛かりにしたのがうちの高校らしい」
「いや、創立者の中に何人か財閥の長がいたらしいぞ」
「いや、ナチスの所為だな」
「いや、フリーメイソンの隠れ家に決まってる」
「いや、CIAの日本前線基地だったんだ」
「零落した貴族学校のなれの果て、か・・・」

 非常に気になる我が校のバックボーンであるが、とりあえずそれは良いだろう。
 後でいくらでも調べられる。ナチスはフリー素材。

 さらに点呼を終え、各部屋に分かれてしばし休憩。
 昼食の後グループディスカッションを行う。

 議題はこちら。

 『スワンプマンは別人か否か』。

「・・・それだけ?」
「何の説明もないのか」
「全員知ってるだろうって前提なんだろうな。進学校だし」
「進学校だからこそ知ってるやつ少なそうじゃないか? 教養の問題だろ」
「頭の良さにも種類ってあるからな」
「IQがいくらあっても全知の存在ってわけじゃないしな」
「確か・・・『沼を汚す奴は許さない、泥沼戦隊スワンプマン!』みたいなやつだっけ?」
「全然違う」

 メンツの紹介は長いのでしない。

「沼の傍で男が雷に打たれて死んだ。同時に雷が男と全く同じ存在を生み出した。男は確実に一度死んでいる。しかし完全なコピー・・・議題に倣うなら、スワンプマンが存在する。さてこの時、男とスワンプマンは同一人物か否か・・・って感じだっけか」
「その理屈で行くとへプシの傍で死んだら・・・」
「やめないか!」
「同一人物か否か、だって? 男が一度死んでいる以上、別人に決まってるだろ」
「ではなぜ別人だ?」
「何?」
「男とスワンプマンの間に『事実に立脚した客観的な差異』は存在しない。別人という以上、男とスワンプマンの間には何かしらの差異が存在しなくてはならないだろう」
「だから男が一度死んでいる以上・・・」
「それは『男が一人しか存在しない』という前提に基づいている。問われているのは『完全なコピーを偽物と断言する根拠』だ」
「ふーむ、難しいな。DNA鑑定、質疑応答、素行調査、指紋仕草筆跡口癖・・・調べれば調べる程、男とスワンプマンの同一性が浮き彫りになるわけだ」
「しかし感情では同一人物とは認めがたい・・・か」

 多分これは『考える』訓練なのだろう。
 特に明確な答えのない問題を考える訓練。

 何をどうこじつけてもスッキリしない、という感覚。

 文理合同な理由がよくわかる。
 理論も感情も介在しきれない問題を考えるのは、それらをよく見直すことに繋がるのだろう。



 その後も、とにかく大量の思考実験を繰り返した。
 シミュレーション仮説、世界五分前仮説等々・・・。

 延々と続く明確な答えのない問い。

 脳みそが拡張されるような気分だった。
 思考回路のさび落としとしては極上だろう。

 夕食の後はルームメイトと会話する気も起きず。
 動かし過ぎた脳みそを癒すべく、泥の様に眠った。

 思考とは、有料なのだ。

 その事実を噛みしめて。



 二日目。

 今日から文系と理系で別れての勉強である。

 文系コースを選んだ俺は他の連中と共に講堂に集められ、朝食もそこそこに厚みを感じられるほどの原稿用紙の山と向き合っていた。

「これからテーマを発表する。それについて文章を書け。今日中に60枚以上だ。ただし全部で一つの作品にしろ」

 60枚ってーと・・・二万四千文字か。

 趣味の小説が一話大体3000文字だから、約8話分。
 多少慣れてるとはいえ・・・なかなかキツイものがありそうだ。

「ワープロもあるから、使いたいなら言え。スマホは認めん。ああ、あと文章であれば何でもいいから。論文でもエッセイでも物語でもOKだ」

 これは、多分文章力を付けさせようとしてるんだろう。
 いや、文章力と言うよりは『自分の思考を文章として出力する』ことに慣れさせるためのものだ。
 文章力を付ける前段階、絵なら模写に相当する練習法だろうか。

「では、テーマを発表する。テーマは『人間賛歌』だ」

 ホワイトボードがひっくり返され、でかでかと書かれたその四文字。

 人間賛歌。
 人間の美しさ、気高さをテーマとしているってことで良いんだよな?

「まあ意味は、神でも機械でもなく人間が一番、みたいな話だ。大雑把にはな。じゃあ作業開始」

 そうして無造作に始まった学習合宿二日目。
 この分だと理系コースが何をしているのか気になるが、生憎他人を心配できるほど余裕があるわけでもない。

 自分の書きたいテーマであれば、自分の思うがままに書けるのであれば、原稿用紙六十枚、二万四千文字は多少余裕のあるレベルだ。

 しかし他人にテーマを決められ、なおかつ学校に提出する以上ある程度フォーマルなものを書く必要があると考えれば話は別だ。
 勿論社会に出ればそういうことの連続だろうから、慣れておくのは悪い事ではないと思うのだが・・・まあ、多分文章を捻りだすことが目的なのだろうし雑でもいいか。



 『数秒の沈黙、そして。『よう、お嬢ちゃん』』

「・・・終わったー」

 タイミングとしては、真ん中より少し早いぐらい。
 夕食まではいくらか時間がある程度のところだ。

 先生に提出して、講堂を出る。

 途中相当滅茶苦茶な事を書いていた気もするが、まあ良いだろう。

 夕食を済ませた後、部屋でルームメイトと駄弁る。

「そういや、アレやんのかな」
「アレ?」
「告白合宿だよ」
「ああ、今二日目か」
「一本杉・・・見たか?」
「一応見た。ただ中庭自体はクッソ狭かった」
「ロマンもへったくれもあったもんじゃねえな」
「中庭の意味あんのかそれ・・・?」
「で、お前らどっちか告白するの?」
「俺はしない」
「俺も。安心院は?」
「俺もしない」
「だよなー」
「そもそもこの日程で女子に渡りを付けるのが困難すぎらあな」
「呼び出した時点で告白みたいなもんだから、前もって言っておくってわけにもいかねえし」
「それする度胸あるならその場で告白するよな」
「中庭ってこっから見えるんだっけ?」
「うんにゃ、この部屋から見えるのは外。廊下の反対側だな、見えるのは」
「・・・じゃあ事実上公開告白じゃねーか」
「んなことする度胸あるなら最初から告白するっつーの」
「場所指定ってのが現実味の無さを煽っている」
「日程だけならまだなんとかなるんだけどな」
「まあ渡りをつけることと、告白が受け入れられることはまた違うがな」
「それを言うなよ」
「じゃあさじゃあさ、仮によ? 仮に告白するとして・・・誰にする?」
「え・・・お前・・・」
「話題選びにセンスが無さすぎる」
「うっそマジで!? なんで!?」
「そういうのはさ、色々可愛い女子いるけど誰が良いっていうのはさ、ある程度戦力が拮抗してないとダメなわけよ」
「な、蝶ヶ崎さんが図抜け過ぎてて、それ以外を言う余地がないんだよな」
「あんなジョーカーがあれば、それ言っときゃ追及を避けられるんだ、みんな同じこと言って盛り上がらねーよ」
「マジか・・・『修学旅行で陰の者にならない10の話題』にこんな落とし穴が」
「それ買ってる時点で陰の者であること認めてるようなもんだぞ」
「というかむしろちょっと読んでみたいわ。今持ってる?」
「いや、暗記して家に置いてきた」
「うーん努力の方向音痴」

 そしてその時、俺の電話に着信が入った。
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