幼馴染でマジカルなアレが固くなる

余るガム

文字の大きさ
71 / 117
第二部 高校生編

原点回帰と書いて、オーバードライブと読ませたい

しおりを挟む
「今日は私がするね」

 ベッドに運ばれたなじみは、その上で俺に抱き着きながらそういった。

「珍しいな」
「ケーくんなんだか疲れてるみたいだし」

 確かに微と雄大に挟まれて生まれる心労はなかなかのものだった。
 それについては渡辺とゲームして多少紛れたと思っていたし、そもそもなじみには隠しているつもりだったのだが、そんなちゃちな嘘が通じる様な間柄ではなかった。今更か。

「それじゃ、お願いしようかな」
「うん」

 グッと押し付けられたなじみの体重に逆らわず、ベッドに倒れこむ。

 そこからなじみは、どうしてか動かない。

「なじみ?」
「・・・うん、やっぱり、私ってケーくんの事大好き」
「いきなりだな」
「ケーくんは違う?」
「俺もなじみの事は大好きだが」
「でしょ? こうやって抱き着いてるだけで、こんなに幸せになれるんだもん」
「ああ、そうだな」

 重量感のあるなじみの胸ごと抱き締め、額にキスをする。
 ほにゃりと零れる笑顔が何より愛おしい。

「ケーくん、ケーくん」

 何度も何度も繰り返し呼び続けるのは、不安の表れだろうか。

「なじみ、そんなに呼ばなくてもずっとここにいるぞ。ずっとお前の傍にいる」
「うん・・・居るよね。大丈夫、だよね?」
「大丈夫。俺は執念深い事には一家言あってな。なじみが嫌と言っても傍にいるぞ」
「仁科さんに、呼ばれても?」

 その問いかけをしてきたときのなじみの表情は不安げで、瞳が澱んでいるのが強く印象に残っている。
 幼子が駄々をこねた後、親に愛想を尽かされていないかと不安がるような。

 盲目的なまでの信仰。
 他者、というか俺に依存しきった縋りつく眼差し。

 それを見て俺は・・・下品なんだが・・・その・・・。

 『勃起』・・・しちゃいましてね。

「あっ・・・おっきく・・・」
「ああ・・・いいぞなじみ・・・その目、その表情かお、その心意気」

 依存している。
 なじみが、俺に。

 見よ、彼女を。

 なじみ以外の全ての女をチープな贋作の様に思わせてしまう美貌。
 劣情を催されるために配置された無駄のない贅肉。
 抱きしめて感ぜられる肉の感触たるや、もうこれ以外では満足できない。

 そんな世界一美しい女性が、俺と言う個人に依存しきってる。
 こんなに興奮することが他にあるだろうか。

 起き上がる俺の男根の感触で、こんな喜悦を見せるなんて。

「やっぱりお前は最高だ」
「ああ・・・やったぁ・・・」

 依存が薄れ、恍惚とした表情だけが残る。
 闇の底から一挙に光の海へ変遷した瞳は、元の闇が深い程に鮮烈な光を感じる。

 落として上げる。

 恋愛の基本テクらしいが・・・多分こういう意味ではない。

 しかしまるで、自分が神か何かにでもなったような気分だ。
 なじみと言う信者を思うが儘に出来るのだから。

 徹底的に落としてからドロドロに甘やかしたら、本当に可愛いんだろうなぁ。

「ケーくんが、私を・・・まるで玩具みたいに見てる・・・」

 その邪念が伝わったか、なじみはそういった。
 だが、そのセリフの中に否定の感情は一切含まれていなかった。

「私の全部がケーくんの玩具になるの? そんなの、私・・・」

 もはや狂気にまで至った感情で答える。

「嬉しすぎて死んじゃう・・・」

 圧倒的な、狂的な、病的な。
 愉悦をもって。

「可愛いなぁ、なじみ。お前は本当に可愛いよ」
「えへへ、ケーくんにかわいいって言われちゃった」
「好きな子には意地悪したくなるというらしいが、結構本当かもしれん」
「・・・ケーくん、意地悪したいの? どんなの?」

 いざそう聞かれて、ハッとした。

 イカンイカン。
 本気でそんなことしたらいよいよもってやべーぞ。

 なじみには常に笑顔でいてもらいたい。

 いくら後で可愛がるからとて、意図的に『沈める』なんて考えるとは。
 俺も随分焼きが回ったらしい。

「どうしたの?」

 俺の沈黙を見て取り、なじみは追って問うてきた。
 もうそこに不安な色はなく、ただ疑問を浮かべた顔は健全そのもの。

 全く・・・いよいよ度し難い。
 そうだ、この顔だ。この幸せ中にいる表情。
 これを守るのが俺の男としての使命。自ら壊すなど、自己存在の否定に近い。

「いや、ちょっとアイデンティティの崩壊を迎えてな」
「なんで今のやり取りで哲学を・・・?」
「さあ、俺にもよく分からん」

 実際に口に出したとして、なじみはどう感じるだろうか。
 いつもの様に受け入れる? 恐怖して愛想を尽かす?

 可能であれば前者であってほしい。しかし後者を選んだ方がなじみにとっての幸せになるのなら、俺は喜んで愛想を尽かされよう。

 いや、見栄を張った。

 本当は三日三晩泣くだろう。思いつめた末に首すら括るかもしれない。
 表面上は喜んで幸福を追い求めるなじみを見送り、裏でその幸せを供給できぬ己が無力に腹を切るだろう。

 ああそうだ、それでいい。

 なじみにとっての幸福ジェネレーター。
 それが俺の目指すべき本質。

 そうあれかし。

「なじみはどうだ」
「何が?」
「なじみのアイデンティティーだよ。これがある限り自分である、これこそが自分であると誇れる何か。そういうのはあるか」
「うーん」

 自分でも卑怯な質問だと思う。
 言うまでもなく、問うまでもない。わかり切った答え。
 それでも確認せずにはいられない。

「私のアイデンティティーは」

 次に歪む唇の形で。
 音になる前の音で。

 その返答のおおよそがわかる。

「ケーくんへの、愛」

 ほら、予想の通りだ。
 なじみならそういうだろうと分かったうえで聞いたのだから。
 嘘がない事も手に取るようにわかる。

「ケーくんの全てを受け入れて、私の全てを捧げる。それが私のアイデンティティー、かな」
「他人に依存した自己、か。なんとも不安だな」
「不安なんてないよ、なにも」

 なじみが浮かべた笑みに男を惑わす芳香はなく、ただすべてを受け入れる聖母の様な慈愛が、俺だけに注がれていた。

「だって、ケーくんだもん。私の全部をあげても釣り合いなんて取れない様な人。ケーくんの行いの全てが、そのまま私の幸せになる様な人。捧げて、理解して、受け入れて、依存して。そうしたら私は幸せになれるって確信してる。だから不安なんてない」
「・・・そうか」

 ドロドロの闇など一切ない、純粋無垢な瞳。
 さしずめ『子供はどうやって作るの?』と問う子供の様。

 ちゅ、と額にキスをする。

「わ、どうしたの」

 愛しさが溢れてキスをしてしまったが、なじみに溢れさせた自覚はないらしい。

「どうもこうも、やっぱり俺もなじみが大好きだと思っただけさ」
「あは、両想いだね、私達」
「嬉しい?」
「最高に」

 更に俺の体をよじ登って顔に近づくなじみ。

 キスの着地点は額から唇に移り変わり、ぷにぷにの唇が触れる。

 体ではなく首を抱きしめ、時折角度も変えてキスを繰り返す。
 最初の頃は城壁を連想させた唇も、今や三ツ星ホテルの様に俺を歓迎する。

 しかし三ツ星が三ツ星たる所以は入り口での歓迎ではない。
 そこから入った全てが最上級の供応を行うからこその三ツ星。

 ゆっくりと開くなじみの唇にこちらは焦れてしまうが、なじみは瞳だけで『まだ駄目』と焦らしてくる。

 そうして開いた唇の先で俺となじみの舌が邂逅し、互いに纏わりつく唾液を相手にも纏わりつかせる。
 グニグニ動き、ヌルヌルと擦れる舌に二人の体はゆっくりと高ぶり・・・。

 なじみが数度痙攣したのを機に、キスが終わる。

 唾液が空中でアーチを作り、重力のままにほどけて俺の鎖骨に落ちる。

 ほわほわの幸せオーラに包まれたなじみと体の場所を入れ替え、ベッドに組み敷く。

 水曜日は、まだ終わらない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

女子ばっかりの中で孤軍奮闘のユウトくん

菊宮える
恋愛
高校生ユウトが始めたバイト、そこは女子ばかりの一見ハーレム?な店だったが、その中身は男子の思い描くモノとはぜ~んぜん違っていた?? その違いは読んで頂ければ、だんだん判ってきちゃうかもですよ~(*^-^*)

幼馴染みのメッセージに打ち間違い返信したらとんでもないことに

家紋武範
恋愛
 となりに住む、幼馴染みの夕夏のことが好きだが、その思いを伝えられずにいた。  ある日、夕夏のメッセージに返信しようとしたら、間違ってとんでもない言葉を送ってしまったのだった。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

まずはお嫁さんからお願いします。

桜庭かなめ
恋愛
 高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。  4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。  総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。  いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。  デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!  ※特別編7が完結しました!(2026.1.29)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、感想をお待ちしております。

俺が宝くじで10億円当選してから、幼馴染の様子がおかしい

沢尻夏芽
恋愛
 自他共に認める陰キャ・真城健康(まき・けんこう)は、高校入学前に宝くじで10億円を当てた。  それを知る、陽キャ幼馴染の白駒綾菜(しらこま・あやな)はどうも最近……。 『様子がおかしい』 ※誤字脱字、設定上のミス等があれば、ぜひ教えてください。  現時点で1話に繋がる話は全て書き切っています。  他サイトでも掲載中。

処理中です...