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第二部 高校生編
まあ、日常モノってこういう事じゃん?
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ひとまず部長の返事待ちという事で、俺はしばらくの間また暇になった。
学校の宿題課題を片付け、予習復習もやってしまい、家事の類はなじみが終わらせており、筋トレは意味がなく、自宅にピアノは無い。
一時期ほんの少しだけ書いていた小説は飽きてもう手を付けていないし、当初考えたであろうプロットは思考の片隅に転がっているだけで、もはや風化しきっていた。
では本でも読むかとも思ったが、こちらは余りにも選択肢が多く、どこから手を付ければいいのかもわからぬ有様。微にお勧めを聞くのもありだが、彼女は熟読派な上に自分でも書く一極集中型だ。幅広い知見は得られそうにない。その分本当に面白いものを勧めてはくれるのだが、今はサクッと読めるライトなものが欲しい。
なじみは今部活でいない・・・わけではない。
なじみは何と漫画研究部の部長と交渉する事で液タブを外部に持ち出す許可をもぎ取り、家に持ち帰って作業している。その為なじみは家事の合間にテーブルで漫画を描くのに精を出すようになったのだ。
考えてみると出不精が加速している気がするが、それはさておき。
床の上でハリと柔らかさを共存させたまま少し潰れるなじみの重厚な尻を眺めているのも、大きな胸を上手いこと避けて作業する手さばきも、いつもは見ない真剣で鬼気迫る様な表情も。
全て眺めていて飽きを来させない。
美人は三日で飽きると過去の人は言ったが、そいつはさぞかし美人に恵まれぬ人生であったのだろう。お悔み申し上げる。
さておき、ではここで俺はどうするか。
後ろから抱き着いて・・・というのは無い。
今のなじみは極めて真剣に作業をしているからだ。俺がそこに抱き着きなんぞしたらそれだけでなじみの集中は途切れてしまうし、そんなことをして楽しいのは俺だけだ。そして俺だけが楽しいのでは俺も楽しくないというパラドックス染みた状況が生まれて負債と共に振出しに戻ってしまう。
まあ、やることが無いなら勉強か?
やっといて損はあるまいし、実の所理系分野が少々下降気味なのだ。主な原因はモチベーション不足。だって俺超能力者だし・・・渡辺と同じ感じであるな。
しかし損はないからと積極的に出来る程人間というのは高尚な生き物ではない。
どうしても勉強へのやる気が起きないのが現状である。
じゃあやる気がないから何もしなくていいのかと聞かれれば、それはそれで落ち着かない。
流れる時間を無為に過ごす経験が圧倒的に不足している。
あ、そうだ。
超能力の自主練してみるか。といってもただ念力で遠くにある重量物に働きかけるだけだが。
窓に歩み寄って良さげなものを見繕う。ふむ、あのトラックでいいか。
べごしゃあ。
「・・・」
「ん? なんか音しなかった?」
「いやぁ、気の所為じゃないか?」
「そう? なら良いんだけど」
なじみは作業に戻った。
まあ、認めようじゃないか。
確かに色々雑な使い方だったよ。力加減とか具体的なビジョンとか、そういうのは一切考えることなく雑に使ったとも。
だから視界の先にあるスクラップについては全面的に俺が悪いとも。こうなるという想像が出来なかったなんて言い訳はしないさ。
しかしどうしたものか。
今の俺ではあのスクラップをトラックに整形しなおすなんて精密なことは出来ないし、出来た所でトラックの具体的な構造が分からない以上、車両として運用できるようにはならないだろう。
なので破壊した事実を抹消することは出来ない。
そして『このトラックを壊したのは私です』とトラックの持ち主に名乗り出るのも不可能だ。
賠償なんてできない、という切実な問題を差し引いたとしても、人力であんな破壊をもたらすことはほぼ不可能であり、どうやって壊したのかと聞かれれば沈黙するしかないからだ。
修復もダメ、賠償もダメ。
つまり俺の解答はこうだ。
ぼぎゅん。
「何の音?」
「音?」
「なんかこう・・・スクラップを更にスクラップにした、みたいな音」
「はて、そんな音を聞いた覚えは俺にはないが」
「そう? なら良いんだけど」
なじみは作業に戻った。
死体があると警察は本気を出す。しかし行方不明であればそこまで本腰を入れない。
この希望的観測原理を利用するべく破壊した痕跡まで破壊するという寸法である。
まあこれで車両盗難に遭ったぐらいに終わるだろう。
超常現象でぐちゃぐちゃになった、よりはしっくりくる顛末だ。
本当の話が一番嘘くさいのも、珍しい話である。
*
無為に破壊されたトラックには哀悼を意を示すのみで留めるとして。
これ以上何かしらの練習をすればさらなる破壊をもたらすやもしれぬとくれば、打ち止めとしておくのが一番だろう。
キンコーン。
インターホンが鳴ったのでドアスコープを覗き込むと、凄い顔をした渡辺が立っていた。
ちょうどこう・・・顔文字を彷彿とさせるような顔をしていた。
ので、無視した。
「あれ、ケーくん、誰だったの?」
「不審者だ。ドアスコープに向かって変顔をする、新手のピンポンダッシュじゃないか?」
「何それ怖い」
「暑くなってくると頭のおかしい奴が増えて困る」
「そっか、もう七月だもんね」
「ああ、直に一学期も終わるという訳だ。期末試験を乗り越えれば夏休みだな」
「なんかケーくんの友達カップルとダブルデートするんだっけ? どこ行くか決まってるの?」
「そういやまだ聞いてないな・・・さっさと決めて期末対策に勤しんでくれないと、補修でそいつが来れないから中止、なんてことになっても困る」
「まあ、そうなったら私とケーくんだけで行こ?」
「そりゃ最高の展開かもな」
キンコーン。
「あ、そだ。ねえケーくん、私のこれ読んでみて?」
なじみが液タブを渡してくる。
どうやら一段落したようで、他人の意見を取り入れてみたいのだろう。
ジャンルは・・・SFか?
あちこちの星に移住した人間がそれぞれ独自の生態進化を遂げ、肌の色以上に分化した人類が人種ごとに分かれて戦争する話だ。
主人公は現行人類と同じような風体だが、敵はドゥーガル・ディクソンの『マンアフターマン』を彷彿とさせる気色の悪いサイケデリックなデザインであり、FPSゲームでシャッガンで吹き飛ばしたらさぞかし爽快だろう。事実そのようなシーンもある。
現行人類の完全上位互換ともいえる種族が出てきたりもするが、端正な容姿の彼らは味方であり、キャラデザで大体の善悪が判断できる分かりやすいものだ。
だが。
「うん、厳しい言い方をすると、駄作だな」
「んぐ・・・なんで?」
「俺の個人的趣向は加味しないとして・・・設定がおかしいだろ。SFは結構、宇宙進出も結構、異常進化人類も大いに結構。だが宇宙進出の文明レベルなのに、なんでこの異常進化人類は種族特性で戦ってるんだよ。仮にも人類なんだから、文明の利器を使わないと。まして未来文明なのに」
「あー・・・そこは野生化した、とか」
「じゃあもう『人類』って名称付けるの止めた方が良いだろ。知性のない人類、しかも特異な能力があるとか、もうそういう獣じゃねーか。わざわざ銃で殺す必要ないしな、そもそもの話」
「んむー、力作だったんだけどなぁ」
「いや、設定に粗があるだけで、普通に画力とかコマ割りは凄く良いと思うぞ。粗って言っても設定自体は結構良い感じだと思うし。異常進化の原因を宇宙進出じゃなくて大陸分裂に、文明レベルも銃火器登場から少し後ぐらいに設定すれば違和感はないし」
「なるほど、時代背景・・・」
なじみはどこかからネタ帳みたいなのを取り出して、俺の言葉をメモしていく。
「ちなみにケーくんの個人的趣向ってどんなの?」
「これって少年漫画?」
「今のところはそのつもり」
「なら使いづらいと思うが」
「視野を広げとくのは大切でしょ?」
「そりゃそうだ。まあ、俺としては『寄生して宿主を操る』とか『他種族に変身できる』とか、欺瞞工作が捗る人種が欲しい。分かりやすいのは良いが、分かりやすすぎてもつまらん」
「寄生種・・・変貌種・・・」
またネタ帳にメモるなじみ。
「うーん、使いにくそう」
「だから言ったろ?」
キンコーン。
「なじみ、ちょっと待っとけ」
「え? うん」
ドアまで歩いて行って、ドアを開けて渡辺を視認して一言。
「トレンディドラマにしたって食い気味が過ぎるぞ。帰れお邪魔虫」
「えー・・・俺、割と善意で来たんだけど・・・」
「良かれと思って行われる行動は大抵碌な結果を生まんのだ。帰れ」
「えー・・・」
「帰れ」
帰った。
「しかし随分といきなり力を入れ始めたな。俺のピアノ同様、やってること自体を楽しんでるだけで、そこまでガチなわけじゃないと思ってたんだが。持ち出し許可まで取ってるしさ」
「んー・・・ケーくんがさ、芸能活動するかもーって言ったから。私ももっとこう・・・ケーくんの隣に居て恥ずかしくない人になりたいなって」
「それで漫画家にってこと?」
「別に漫画である必要ないんだけど・・・今の私に出来て、ケーくんに近づけそうなのってこれくらいだから」
なじみは恥ずかしそうに笑ったが、俺はその隣に座り込んで、なじみの頭を撫でる。
「そんなことしなくたって、もう充分だろう」
「うん、ケーくんならそういうって知ってた。でもね、私が嫌なの。私が誰にも恥じない人になって初めて、ケーくんと一緒に居て良いんだって思えるの」
「そうか・・・まあ、お前の考えだ。自由にすればいいさ」
「ありがとう」
「だが、それでどれだけ辛くなっても、俺から離れることは許さんぞ」
「えへへ、そう言ってくれるって知ってた」
ぐいぐい押し付けられるなじみの体を受け止めていると、その方向がベッドに向かっていることに気付いた。
だからとりあえず、あんまり抵抗しないで、ベッドに押し倒される。
「ところで一緒に居るなら、こういうのもしないとね?」
「ははあ、今日のなじみは積極的だな」
「ふふん、その部長さんとやらに靡かない様、繋ぎ止めないとだから」
目を瞑って唇を合わせ、昼日中から夜は更ける。
学校の宿題課題を片付け、予習復習もやってしまい、家事の類はなじみが終わらせており、筋トレは意味がなく、自宅にピアノは無い。
一時期ほんの少しだけ書いていた小説は飽きてもう手を付けていないし、当初考えたであろうプロットは思考の片隅に転がっているだけで、もはや風化しきっていた。
では本でも読むかとも思ったが、こちらは余りにも選択肢が多く、どこから手を付ければいいのかもわからぬ有様。微にお勧めを聞くのもありだが、彼女は熟読派な上に自分でも書く一極集中型だ。幅広い知見は得られそうにない。その分本当に面白いものを勧めてはくれるのだが、今はサクッと読めるライトなものが欲しい。
なじみは今部活でいない・・・わけではない。
なじみは何と漫画研究部の部長と交渉する事で液タブを外部に持ち出す許可をもぎ取り、家に持ち帰って作業している。その為なじみは家事の合間にテーブルで漫画を描くのに精を出すようになったのだ。
考えてみると出不精が加速している気がするが、それはさておき。
床の上でハリと柔らかさを共存させたまま少し潰れるなじみの重厚な尻を眺めているのも、大きな胸を上手いこと避けて作業する手さばきも、いつもは見ない真剣で鬼気迫る様な表情も。
全て眺めていて飽きを来させない。
美人は三日で飽きると過去の人は言ったが、そいつはさぞかし美人に恵まれぬ人生であったのだろう。お悔み申し上げる。
さておき、ではここで俺はどうするか。
後ろから抱き着いて・・・というのは無い。
今のなじみは極めて真剣に作業をしているからだ。俺がそこに抱き着きなんぞしたらそれだけでなじみの集中は途切れてしまうし、そんなことをして楽しいのは俺だけだ。そして俺だけが楽しいのでは俺も楽しくないというパラドックス染みた状況が生まれて負債と共に振出しに戻ってしまう。
まあ、やることが無いなら勉強か?
やっといて損はあるまいし、実の所理系分野が少々下降気味なのだ。主な原因はモチベーション不足。だって俺超能力者だし・・・渡辺と同じ感じであるな。
しかし損はないからと積極的に出来る程人間というのは高尚な生き物ではない。
どうしても勉強へのやる気が起きないのが現状である。
じゃあやる気がないから何もしなくていいのかと聞かれれば、それはそれで落ち着かない。
流れる時間を無為に過ごす経験が圧倒的に不足している。
あ、そうだ。
超能力の自主練してみるか。といってもただ念力で遠くにある重量物に働きかけるだけだが。
窓に歩み寄って良さげなものを見繕う。ふむ、あのトラックでいいか。
べごしゃあ。
「・・・」
「ん? なんか音しなかった?」
「いやぁ、気の所為じゃないか?」
「そう? なら良いんだけど」
なじみは作業に戻った。
まあ、認めようじゃないか。
確かに色々雑な使い方だったよ。力加減とか具体的なビジョンとか、そういうのは一切考えることなく雑に使ったとも。
だから視界の先にあるスクラップについては全面的に俺が悪いとも。こうなるという想像が出来なかったなんて言い訳はしないさ。
しかしどうしたものか。
今の俺ではあのスクラップをトラックに整形しなおすなんて精密なことは出来ないし、出来た所でトラックの具体的な構造が分からない以上、車両として運用できるようにはならないだろう。
なので破壊した事実を抹消することは出来ない。
そして『このトラックを壊したのは私です』とトラックの持ち主に名乗り出るのも不可能だ。
賠償なんてできない、という切実な問題を差し引いたとしても、人力であんな破壊をもたらすことはほぼ不可能であり、どうやって壊したのかと聞かれれば沈黙するしかないからだ。
修復もダメ、賠償もダメ。
つまり俺の解答はこうだ。
ぼぎゅん。
「何の音?」
「音?」
「なんかこう・・・スクラップを更にスクラップにした、みたいな音」
「はて、そんな音を聞いた覚えは俺にはないが」
「そう? なら良いんだけど」
なじみは作業に戻った。
死体があると警察は本気を出す。しかし行方不明であればそこまで本腰を入れない。
この希望的観測原理を利用するべく破壊した痕跡まで破壊するという寸法である。
まあこれで車両盗難に遭ったぐらいに終わるだろう。
超常現象でぐちゃぐちゃになった、よりはしっくりくる顛末だ。
本当の話が一番嘘くさいのも、珍しい話である。
*
無為に破壊されたトラックには哀悼を意を示すのみで留めるとして。
これ以上何かしらの練習をすればさらなる破壊をもたらすやもしれぬとくれば、打ち止めとしておくのが一番だろう。
キンコーン。
インターホンが鳴ったのでドアスコープを覗き込むと、凄い顔をした渡辺が立っていた。
ちょうどこう・・・顔文字を彷彿とさせるような顔をしていた。
ので、無視した。
「あれ、ケーくん、誰だったの?」
「不審者だ。ドアスコープに向かって変顔をする、新手のピンポンダッシュじゃないか?」
「何それ怖い」
「暑くなってくると頭のおかしい奴が増えて困る」
「そっか、もう七月だもんね」
「ああ、直に一学期も終わるという訳だ。期末試験を乗り越えれば夏休みだな」
「なんかケーくんの友達カップルとダブルデートするんだっけ? どこ行くか決まってるの?」
「そういやまだ聞いてないな・・・さっさと決めて期末対策に勤しんでくれないと、補修でそいつが来れないから中止、なんてことになっても困る」
「まあ、そうなったら私とケーくんだけで行こ?」
「そりゃ最高の展開かもな」
キンコーン。
「あ、そだ。ねえケーくん、私のこれ読んでみて?」
なじみが液タブを渡してくる。
どうやら一段落したようで、他人の意見を取り入れてみたいのだろう。
ジャンルは・・・SFか?
あちこちの星に移住した人間がそれぞれ独自の生態進化を遂げ、肌の色以上に分化した人類が人種ごとに分かれて戦争する話だ。
主人公は現行人類と同じような風体だが、敵はドゥーガル・ディクソンの『マンアフターマン』を彷彿とさせる気色の悪いサイケデリックなデザインであり、FPSゲームでシャッガンで吹き飛ばしたらさぞかし爽快だろう。事実そのようなシーンもある。
現行人類の完全上位互換ともいえる種族が出てきたりもするが、端正な容姿の彼らは味方であり、キャラデザで大体の善悪が判断できる分かりやすいものだ。
だが。
「うん、厳しい言い方をすると、駄作だな」
「んぐ・・・なんで?」
「俺の個人的趣向は加味しないとして・・・設定がおかしいだろ。SFは結構、宇宙進出も結構、異常進化人類も大いに結構。だが宇宙進出の文明レベルなのに、なんでこの異常進化人類は種族特性で戦ってるんだよ。仮にも人類なんだから、文明の利器を使わないと。まして未来文明なのに」
「あー・・・そこは野生化した、とか」
「じゃあもう『人類』って名称付けるの止めた方が良いだろ。知性のない人類、しかも特異な能力があるとか、もうそういう獣じゃねーか。わざわざ銃で殺す必要ないしな、そもそもの話」
「んむー、力作だったんだけどなぁ」
「いや、設定に粗があるだけで、普通に画力とかコマ割りは凄く良いと思うぞ。粗って言っても設定自体は結構良い感じだと思うし。異常進化の原因を宇宙進出じゃなくて大陸分裂に、文明レベルも銃火器登場から少し後ぐらいに設定すれば違和感はないし」
「なるほど、時代背景・・・」
なじみはどこかからネタ帳みたいなのを取り出して、俺の言葉をメモしていく。
「ちなみにケーくんの個人的趣向ってどんなの?」
「これって少年漫画?」
「今のところはそのつもり」
「なら使いづらいと思うが」
「視野を広げとくのは大切でしょ?」
「そりゃそうだ。まあ、俺としては『寄生して宿主を操る』とか『他種族に変身できる』とか、欺瞞工作が捗る人種が欲しい。分かりやすいのは良いが、分かりやすすぎてもつまらん」
「寄生種・・・変貌種・・・」
またネタ帳にメモるなじみ。
「うーん、使いにくそう」
「だから言ったろ?」
キンコーン。
「なじみ、ちょっと待っとけ」
「え? うん」
ドアまで歩いて行って、ドアを開けて渡辺を視認して一言。
「トレンディドラマにしたって食い気味が過ぎるぞ。帰れお邪魔虫」
「えー・・・俺、割と善意で来たんだけど・・・」
「良かれと思って行われる行動は大抵碌な結果を生まんのだ。帰れ」
「えー・・・」
「帰れ」
帰った。
「しかし随分といきなり力を入れ始めたな。俺のピアノ同様、やってること自体を楽しんでるだけで、そこまでガチなわけじゃないと思ってたんだが。持ち出し許可まで取ってるしさ」
「んー・・・ケーくんがさ、芸能活動するかもーって言ったから。私ももっとこう・・・ケーくんの隣に居て恥ずかしくない人になりたいなって」
「それで漫画家にってこと?」
「別に漫画である必要ないんだけど・・・今の私に出来て、ケーくんに近づけそうなのってこれくらいだから」
なじみは恥ずかしそうに笑ったが、俺はその隣に座り込んで、なじみの頭を撫でる。
「そんなことしなくたって、もう充分だろう」
「うん、ケーくんならそういうって知ってた。でもね、私が嫌なの。私が誰にも恥じない人になって初めて、ケーくんと一緒に居て良いんだって思えるの」
「そうか・・・まあ、お前の考えだ。自由にすればいいさ」
「ありがとう」
「だが、それでどれだけ辛くなっても、俺から離れることは許さんぞ」
「えへへ、そう言ってくれるって知ってた」
ぐいぐい押し付けられるなじみの体を受け止めていると、その方向がベッドに向かっていることに気付いた。
だからとりあえず、あんまり抵抗しないで、ベッドに押し倒される。
「ところで一緒に居るなら、こういうのもしないとね?」
「ははあ、今日のなじみは積極的だな」
「ふふん、その部長さんとやらに靡かない様、繋ぎ止めないとだから」
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