幼馴染でマジカルなアレが固くなる

余るガム

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第二部 高校生編

まあ大体全部この時のためだよね

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 隣人の微にしこたま怒られた後。
 なぜかなじみが微を口説こうするなどのイベントがあった以外は特に何の問題もなく諸々の片づけを終えてた。いやなにやっとんねん、アイツ。微もちょっと揺れてるんじゃないよ。

 揺れるのは胸だけにするんだな!

 さて、柄にもない下ネタをぶちかましたところで、いよいよ本格的に期末試験である。
 流石に進学校という事もあって試験範囲は広いし問題は質も量もハイレベル。少ないながらも論述問題まで見受けられた。
 試験自体は午前で終わるものの、直前対策の為に行動する時間なので、たとえなじみと一緒に居ても甘い空気など一切なく、同じ空間で勉学に切磋琢磨していた。

 とはいえ問題が進学校なら、こちらも進学校に入学した進学生。
 予習復習にはある程度余裕を持っていたこともあり、それなりの手応えで全ての試験の終了する。

 敢えて不安を語るなら、若干落ち目な理系科目であるが・・・まあ、許容範囲であろう。手応え自体は決して悪くなかったしな。

 そして期末が終わった後の授業は消化試合感が強い。
 まずテスト全体の講評、次に答案用紙の返却、そして出題の答え合わせと解説。この辺りをざっとやって、質疑応答も兼ねた自習。
 最後に『夏休みも油断せずに行こう!』みたいな激励で終わりだ。

 そんな消化試合が一回り終われば、テスト全体の結果が配布される。

 結局懸念事項だった理系科目もそこそこの成績を修め、俺の期末試験は割と平和に終わった。

 ちなみに総合点ではなじみの方が高かった。
 ここでは理系科目が露骨に足を引っ張った形となる。

 かくして俺の一学期における学生の義務は終わった。
 次は学生の権利、夏休みを満喫するわけであるが、その前に一つ。

 終業式の日。

 渡辺に言われた闇バイトの当日である。
 一応これを達成すれば二十万という高校生には過分な金が手に入る。金があればそれだけ青春は楽しいものになる・・・とまではいわないが、まあ色々余裕を持てるのは間違いない。

 信照に誘われたダブルデートの資金にもなるし、なじみが欲しがっていた人間用の首輪も買えるだろう。それらを抜きにしても生活費になる。

 家になじみを残して出ていくのは少々心苦しいが、なじみは『待つのも務め』と嬉しそうに笑っていた。おまけに弁当も持たせてくれた。いきなり言ったことだったので、手早く作れるおにぎりを数個。
 本当に良い嫁である。
 でもちょっと寂しそうでもあったのでさっさと帰ることにしよう。定時ダッシュもいとわない。

「では行きましょうか」

 いつもの島崎運輸に身を任せ、またどことも知れぬ場所へ飛んでいく。

 着いたそこには渡辺が妙な仮面を持って座っていた。

「来たか、安心院。じゃあこれ」

 気軽に俺へ放り込まれたのは同じ様に、しかし意匠の異なる仮面。

「今からお前の名前は『ユガミ』君だ。というかその仮面を付けてる間は『ユガミ・ダキニ』を名乗れ。本名と顔が割れても困るだろ?」
「ああ・・・そりゃそうだ。所で夜狐は?」

 とりあえず素直に装着する。
 何の変哲もない、ただの仮面だ。視界は狭まるし、少し息苦しくもなる。至って普通の仮面だ。

 視界の端で島崎さんも被っていた。こっちも更に違うデザインだ。

「夜狐さんなら島崎さんに交代だ。最近仕事が過密スケジュールなんでってことで、島崎さんが自分から交代に名乗り出てな」
「ふーん」
「それと俺と島崎さんの名前は別に変えなくていいから。というか『渡辺』も『島崎』も元々偽名だし」
「あ、そうなんだ」

 まあ、扱いを変えなくて良いってのは便利でいいか。

「偽名の字は後で考えとけ」

 そう言って渡辺も仮面を被る。

「あ、それとこっからは飲食禁止なんだけど、なんか持ってる?」
「弁当としておにぎりを」
「じゃあ今食べて。口の所開くようになってるからさ」

 仮面を被ったからだろうか、渡辺のキャラが変わったような。
 まあいいか。手探りで口元の絡繰りを探して、簡素ながらも手の込んだおにぎりを頬張る。
 連中としては廃棄でもいいのだろうが、俺としてはなじみの手料理を廃棄などありえない。

「よし、じゃあ行こうか」

 俺が食べ終わったのを見て、渡辺が言う。

 そして移動した先には、一人の老人が十人程の護衛を伴って座っていた。
 テーブルの対面となる位置に渡辺が座る。

「やあ、初めまして。確か財前和雄ざいぜん かずおさんだったかな?」
「その通り。君は確か渡辺公大だったな?」
「その通り。いや、ボケて無くて安心したよ。痴呆老人からむしり取っても面白くないからね」
「フン、貴様の様な若人では、ボケたわしにすら勝てんさ」

 お互いこんにちわの挨拶を済ませた所で、話は本題に入る。

「じゃあ本題に入ろうか。確かご希望は・・・」
「超人一人、忘れたわけじゃあるまい」
「ただの確認さ。さて、君は確かにこれまで多くの勝負に勝利してきた。成金と蔑まれながらも、その財力と駆け引き、そして幸運で経済界でメキメキと頭角を現した。とはいえ成金は所詮成金。本物のVIP達には歯が立たず、しかし連中に一矢報いたい。故にこうして不相応な商品を求めたわけだけど・・・不相応なら当然多く血を流さないといけない。リスクリターンは等価交換だからね」

 渡辺はそこまで長々と語り、財前に問う。

「さて財前さん。君はどれくらい血を流す?」

 にちゃり、という音が後ろに侍っている俺にも聞こえてきそうなほど、粘っこい笑み。仮面越しとはいえ、正面から相対する財前一同の心境や如何に。
 余波で若干威圧されている俺の耳へ、声が聞こえてくる。

「りんちゃん、見ときなよ。アレが日本、いや世界に巣食う人間の優等種族。超能力者だ」
「は、はい・・・」

 えーと。
 これはあれだろうか。
 ギャンブルの世界に巻き込まれた一般人と、その世界に精通したメンター役のダブル主人公の初接触とか、そういうアレだろうか。

 嘘〇いで見たな、あんな光景。
 護衛に紛れ込んでるみたいだけど、どういう人脈してるんだろうか。

 というかあいつらサイドからしたら俺って今完全に敵じゃん。仮面付けててよかったわ。
 これ漫画だとしたらどんな演出入ってるんだろうか。全身影になってニヤついた笑みだけ白く描かれてるとか、そういう感じ?

 いっちゃあなんだけど、この世界って結構主人公みたいなやつ居るんだなぁ。
 渡辺だって台本によっては『暴力渦巻く超常の世界で駆け引きだけで成り上がる』見たいな作品の主人公張れそうだし、夜狐さんもメンター役としては十分だろう。

 美少女幼馴染と恋人になってる時点で俺も大概だが、もしかして他にも結構いたりするんだろうか。
 例えば初期値は物凄く弱いけど成長したら際限なく強くなっていく、みたいな。

 周回遅れの少年漫画って感じだな。

「ああ・・・そうだな、わしの覚悟、流血・・・お見せしよう。おい」

 財前は護衛の一人に指示を送った。
 護衛も心得た、とばかりに四名退出し、荷台を押して戻ってきた。

「まずは、わしのグループの株券。時価にして五十億ほど。次に現金、こちらも五十億。更にわしの個人的な資産から動産、不動産、合わせて百億」

 ・・・ファッ!?

 おかしい、なんか次元の違う金が出てきた。日当二十万でここにいる自分がなんだかひどくちっぽけな人間に見えてくる。
 いや、金に釣られてる時点でそこそこちっぽけなんだけども。

「そしてメインディッシュ・・・の前に、そっちの超人も出してほしいの」
「OK、島崎さん」
「どうぞ」

 渡辺が島崎さんに合図を送ると、一瞬体がブレてまた戻ってきた。
 多分どこかから回収したのを持ってきたのだろう。本当に汎用性の高い超能力だ。

 そして連れてきたのは、人間一人だが、明らかに全身を安定した念力で覆っており、超能力者であることは間違いない・・・のだが、瞳孔開いてるし、虚空見てるし、口半開きだし、瞬きしてないし、全く毛が無いし、とにかく異様だった。

 こいつが件の超人なのだろう。

「おい」

 ドンドン進行していく事態に感情が追い付かない俺を置き去りに、状況は進行していく。
 財前の指示で護衛の一人が銃を超人に向けて発砲し、案の定全て弾いて終わった。

「よし、本物だな。ではこちらのメインディッシュだ」

 更に数人の護衛が部屋から出て、また荷台を押してくる。

「わしの親族から男女合わせて十六名。招集させてもらった」

 拘束具で縛り上げられ、目も口もふさがれた男女が十六人入ってくる。
 しかし反対に耳だけは自由なようで、不安の中、必死に外部の情報を収集しようとしているのだろう。

 落ち着け、状況を整理しよう。
 要するにこれは・・・こっちの超人一人とあっちの男女十六人(副賞二百億)を掛け金にして、ギャンブルをするってことだ。

 財前が出し過ぎなんじゃないかと思うが、少なくとも財前本人は見合うだけの価値を見出しているらしい。銃撃を弾いたところを確認したことから、護衛などの荒事を担当させたいのだろう。

 正直な所、この辺りはどうでもいい。興味本位の考察だからな。
 問題は、そう・・・ステータスで三回は確認したから、間違いないんだけど・・・。

 花開院圭希さんや、どうしてそこで拘束台に括りつけられているのかね?
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