幼馴染でマジカルなアレが固くなる

余るガム

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第二部 高校生編

選択肢は5^5

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 イカサマをしている。お前と同じ番号をあたりにした。

 超能力というファクターを除いて考えるとして。
 あり得るだろうか、可能だろうか。

 今回の勝負は偶発的なものであったはずだ。この前提を崩さず考えるなら、イカサマ仕込みの割り箸が出てきたという可能性は低い。仮にあったとしても、その仕込みを無効化するためのルールも制定している。つまり割り箸に何か仕込みがあり、かつそれが有効に働いているとは考えづらいだろう。

 島崎さんも違う。
 彼の位置から俺の手を見ることは出来ないし、割り箸は全部まとめて握っているのでそもそも覗けない。印をつけているときにだって覗かれない様注意したし、すべての割り箸に複数回書き込むふりをした。瞬間移動で一瞬だけ、というのもない。あの能力は発動時に音が鳴る。

 有力なのは、この部屋全体に何かしらの仕込み・・・例えばカメラがあちこちに仕掛けられている、とかだ。この部屋自体は渡辺の自由空間らしいので、それくらいの仕込み出来るはずだ。
 しかし『ではそのカメラの映像をどうやって取得しているのか?』という疑問も残る。仮面は外しているし、渡辺の眼鏡や眼球にそれらしい挙動は無い。

 ただの揺さぶりと考えるのが一番合理的だが・・・俺が想定していないイカサマを使われている可能性もある。その場合、俺には感知できない。

 ならば。

「『4番』だ」

 それは、俺があたりに指定した番号。
 分からないなら相手に教えてもらえばいいだけだ。

 これでハズレなら渡辺の言葉は完全なブラフ。あたりなら一考に値する。
 全部で5回戦なんだ。一回二回は捨てて情報を集める。

「『4番』か。そりゃ凄いな。あたりだ」

 渡辺が自分の手元から取り出した4番の割り箸には赤い印・・・あたりが書いてあった。
 俺はちょっと複雑な形にしたが、こいつのは随分と簡素だった。

「じゃあ俺も『4番』だ」

 ノータイムで返された渡辺の答え。渋々取り出した俺の割り箸は当然あたり。

 先にゴミ箱に割り箸と付箋を捨てた渡辺に倣ってから、次の割り箸を相手に5本渡す。
 手探りでざっと調べてみたが、妙な点は特にない。

 俺は割り箸にあたりを付けるふりをしつつ、考えを巡らせる。

 さて。
 こうなると渡辺の言葉はブラフではない可能性が出てきた。
 勿論五分の一は五分の一だ。単なる偶然である可能性も充分あるが・・・しかし20%をこのタイミングでたまたま偶然引くなどと言う事があるだろうか。いや無いわけじゃないが。

 情報戦という見地からでも、状況は動いていないどころか、あちらは俺の傾向を掴んでいる。
 少なくとも『ブラフに突っ込む』という動きは覚えられたはず。
 その動き自体は恐らく俺生来のもの。ならばここから手を変えても更に露見するだけ。

 相手への情報を絞りつつ、相手から情報を抜くためには。

「もう一度『4番』だ」

 俺のあたりは4番。
 更にブラフへ突っ込む。あえて動きを変えない姿勢。

「はいあたり。俺も『4番』」

 またお互いの選択があたる。

 これで25分の1。
 おおよそ決定的とみて良いだろう。奴は確実にイカサマをしている。

 問題はそれがなんであるか不明な所。
 カメラなら視界を遮ればいい。塗料なら拭えばいいし、熱なら冷ますかそもそも熱しなければいい。
 だが手法がわからないなら対策の打ちようがない。

 どうする、もう一度正解を言うか?

 しかし次で三回戦。折り返しだ。このまま何も得られないでは流石に時間が無い。二回やって何も得られなかった以上、三回目も同様と考えて良いだろう。もう一回やれば見抜ける、なんて希望的観測も良いところだ。とっかかりすらつかめてないだろうが。

 だが・・・じゃあそれ以外に何か手があるか? と聞かれれば何も無いのも事実。
 正解を言わなかったとして、それで何の情報を得られるのか、という話だ。

 俺が自分のハズレ番号を渡辺に求めたとして、それがあたりなら確かに先の二戦は偶然だったというだけで済む。
 しかし肝心の俺がその偶然を夢想できない。今この瞬間にその偶然が発生するという部分に共感できない。そんな偶然あるものかと思ってしまう。

 俺のハズレ番号が渡辺のハズレならそれはそれで不味い。俺がハズレで渡辺があたりというリードされる展開になりかねない。イカサマの存在が否定されない以上、先攻でありながら先行される可能性が大きすぎる。

 リスクを抑えるなら、ここは正解を言うしかない場面。
 勿論どこかしらでリスクテイクはしないといけない。リスクを負わないことが一番のリスクというパターンも往々にしてある。

 しかしそれは今じゃない。

「『1番』だ」

 これも俺の当たり番号。

「はい正解。つまり俺も『1番』」

 そして同じ番号を宣告され、第四ゲーム。
 ここまで双方、一回もミスをしていない。くじ引きという形状からは考えられないほどのバカヅキだが、イカサマをしているのだからそれは当然。

 だがゲーム的にはミスしていなくとも、プレイング的にはミステイク塗れかもしれない。
 その不安感だけがドンドンと募る中、俺はある疑問を得る。

 そもそもなぜ渡辺はイカサマを俺にばらしたのか?

 本当に俺の手が何もかも分かっているならわざわざそんなことをする必要はない。全部見たままに正解を引いて終わりだ。
 超能力も介在していないのだから、奴のポリシーにも反しない。

 何か理由があるのだ。俺にイカサマをばらす理由が。

 つまり渡辺はイカサマをしているが、それ自体は必勝のものではなく、俺にイカサマをバラすことで完成する。そんなところだろうか。
 では俺にイカサマをバラして得る物・・・決まっている、表情や仕草だ。それらでイカサマを補強しているというのはどうだろうか。

 ただ、この説では更に迷宮入りする謎が一つある。

 手段だ。

 イカサマとは本来確実に勝つためのもの。それらはすべて百発百中にして一撃必殺であることが基本だ。わざわざ存在をバラして、相手の表情や仕草で補強しなくてはならないなど欠陥品もいいとこ。

 そんな曖昧さを残したイカサマを俺では想像できない。
 故にイカサマへの対策は事実上不可能になった。

 待てよ?

「渡辺。一つ確認がある」
「何?」
「このゲームの勝利条件は『先に五回あたりを引く事だけ』だったな?」
「そうだけど・・・それが?」
「いや、それだけだ。財前はその辺りを見落として負けたらしいからな」

 思えばゲーム終了後にペナルティとして水銀を被るという話なのに、ゲーム終了以前に死ぬことを想定している時点で、あのルールはおかしかったのだ。

 しかしこれでどうだ?
 このゲームにおいて先攻は俺だ。ならこのままお互いにあたりを引き続ければ、自動的にあたり五回が積もるのは俺が先という事になる。

 ならこのまま乗り続けるというのも・・・。

「ふう」

 一つ溜息を吐いて気分のリセットを試みる。

 話にならん。何を阿呆の様なことを考えているんだ俺は。
 イカサマをしている奴が自分が負けるようにそれを使うとでも?

 性善説もいい加減にしろ。

 俺の負っているリスクは財前ほどではない。
 はっきり言って負けた所で死ぬのはさして興味があるわけでもない圭希だけで、俺は連中と付き合う理由がもう一件出来るだけ。

 だが知人をなにもせずに見捨てたとなれば、俺は自分で自分を誇れない。
 危険すぎるのならまあ別に捨ててもいいってレベルの誇りだが、それでもだ。

 俺が賭けている物など実質的にその程度だが、その程度のわずかなチップでも貪ろうとするのが人間だろうが。信じて救われるのは足元だけと決まっている。

 痴呆症を疑うレベルで酷い妄想を繰り広げてしまったが着眼点は悪くない。

 そう、俺が先攻で渡辺が後攻。そして勝利条件は五回あたりを引く事のみ。
 ならば渡辺が勝つには俺にハズレを引かせ、その上で自分はあたりを引くという『追い抜き』をどこかで披露しなければならない。

 同時にその追い抜きは俺に対して致命傷であるほどに良い。
 レースで相手を好きなタイミングで追い抜けるなら、どこで追い抜くのが一番か。

 決まっている。ゴール直前、今回なら第五ゲームでの逆転勝利こそ渡辺の狙い。

 つまり俺と奴のあたりが同じであるのは第四ゲームまで。そしてここで外せばより早く脱落するだけで、それは致命傷にはなっても有利にはならない。

「『3番』」
「はいあたり。『3番』」
「・・・あたりだ」

 第四ゲームも同様に終わり、第五ゲーム。
 実質的なラストゲームだ。
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