幼馴染でマジカルなアレが固くなる

余るガム

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第二部 高校生編

そこまでダブルではない

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「ぴったりだった!」

 微の実家から持って帰った水着をなじみに合わせてもらった所、どうやらサイズ、デザイン共に完璧だったらしい。

「・・・」
「そんな目で見るんじゃないよ」

 ぴったりだったのは喜ばしいのだが、ここまで微に変態を見る目で見られるなら別に外しても良かったかもしれない。
 俺にはそういう趣味は無いのだから。

 ちなみに俺の目の前ではまだ着ていない。
 当日のお楽しみに、と言っていたが、正直なところ不安だ。

 なじみの貞操観は堅い。
 夏でも基本的に上下ともに長いものを着ているくらいだ。学校の夏制服は彼女にとって異常ともいえる着こなしである。

 しかしなんというか、『隠せば問題ない』と考えている節があるので『隠すことで強調されるエロス』については無頓着なのだ。
 今回のケースで言うと、選んだ水着の形状が既にそうだし、その上に大きめのパーカーを着るというのもそう。

 しかも隠すことで掻き立てられた妄想を中身は常に凌駕してくるのだから、低露出の醍醐味を完璧に含有しているのだ。
 ちなみにこれは微にも言える。というか微はサイズ感を面倒くさがってちょっと小さめのブラを付けていたりするので、微の方が重症かもしれない。

 そのため結局どういう装いであろうと碌な事にはなるまいというのが俺の見解である。

 まあ、そうしないための抑止力が俺の仕事であるのだが。



 ダブルデート当日。
 の前に、少し確かめたいことがあった。

「渡辺、あの十五人、要らないの何人いた?」



 今度こそ当日。

 俺となじみはデート用の外着を着こんで、待ち合わせ場所へと向かう。
 普段は汎用性の高く野暮でない服を買い込んで、それらを適当に着回しているのだが、本日はそうではないワンオフな勝負服である。
 お互いに見慣れたこれらを着ることに意味はあんまりないのだが、それでも気が引き締まる思いがする。

 時間の10分前に到着した俺たちであるが、俺たちより信照が一足先に着いていたらしい。

「よ」
「おお、早いな」
「そっちもな。そんなに楽しみだったか?」
「どちらかというと緊張していたのさ」

 よく見れば信照の顔は少しやつれている様にも見える。
 遠足を楽しみにして夜眠れなくなる子供か。

 それから少しして、圭希が来た。

 やはり夏。なじみの被服量がおかしいだけで、圭希のショートパンツとへそ出しオフショルダーぐらいは普通・・・ではないな、うん。肌出し過ぎだろアイツ。

 肉が多いせいか無様に見えてしまうのは俺だけだろうか。信照には魅力的に見えているらしいが。
 なじみがやったら映えるのだろうが・・・まあ、やらないか。柄でもないしな。

「よし、では行こうか!」



 まあ、ダブルデートとはいっても所詮カップル二組が同じところをデートするだけだ。
 俺は全員知っているが、それぞれ知らない相手がいるのでカップル間での話題は少ない。

 必然、俺となじみ、信照と圭希に別れて行動する。

 そういえば。
 圭希はこの間盛大に人権を失っていたが、あの時人権を取り扱った連中の中に俺が居るという事は知っているんだろうか。
 目隠しはされていたが耳は聞こえていたようだし、途中から俺は仮面も外した。島崎さんと渡辺は多分俺の名前を言ってなかったので、声以外にバレる要素は無いと思う。その声もしばらく聞いていなかっただろうが、今日聞いているので同定は不可能じゃない。

 あんな連中との付き合いがあるなんて事知られたくないので、出来れば気付いていないと嬉しいのだが。
 処分っていうのも自分で助けただけにしたくない。いよいよあのギャンブルが無意味になる。

 あ、ちなみに割と行けた。
 素手で直接首を締め上げたが、想像以上に想像以下だった。苦悶も怨嗟も絶命も、何一つ心動かなかった。
 思ったより自分は『イカレ』だったらしい。その認識の方が痛かったぐらいだ。

 というわけで晴れて俺は微と同じく選択肢の中に殺しを入れてしまうタイプの人種と相成ったわけである。

「どうしたの?」
「いや、良く晴れた良い日だと思ってな」

 少々ショックだが、まあ訓練と考えれば筋トレと同じだ。
 自分は人を殺せる。その事実だけで良い。

「ちょっと焼けちゃうかな?」
「結構着こむし日焼け止め塗るし、大丈夫じゃないか? 出すのなんて足ぐらいだろ?」
「足だけが焼けると不格好かなって」
「ふむ・・・その点はそうかもしれんな。じゃあ泳がないでパラソルの下にいるとか?」
「でもケーくんは泳ぎたいでしょ?」
「なじみと一緒に居たいからどっちでもいいぞ。今は泳がない優勢だな」
「じゃあ日差しが強いうちはパラソルで避けて、弱まったぐらいに泳ごう!」
「決まりだ」

 大雑把な予定を決めながら電車に揺られる。
 うん、興味ない奴を殺したことより、なじみの日焼けの方が重要だな。



 実際に海水浴場について、男女に別れて着替え、設定した待ち合わせ場所で待機。

「でさあ。どんな水着で来ると思う?」
「そっちは知らんが、こっちは知ってる。というか一緒に水着選んだしな」
「え、そういうもんなの? なんも言われてねえわ」
「さあ・・・でも俺たちは結構『アレ』な自覚あるし、そっちの方が普通じゃないのか」
「『アレ』ってなんだよ」
「来たら分かるさ」
「ふーん・・・じゃあ話題を戻して、圭希はどんな格好で来ると思う? 俺は断然ビキニだな!」
「若い女性はビキニが多いだろうな。論点としてはそこにパレオを巻いているかどうかぐらいじゃないか?」
「どっちだと思う?」
「知らん。知らんが・・・まあ、無いよりはあった方が良いんじゃないか?」

 そんな事を言いながら、俺は大切なパラソルの設営を始める。
 レジャーシートと一緒に借りておいたのだ。

 これ(パラソル)をこう(逆手に持つ)して・・・こう(牙突)じゃ。

「ええ・・・何その掘削力」
「この筋肉は伊達じゃないという事だ」
「三分の一ぐらい埋まってるじゃん。これ人殺せるだろ」
「まあ、このパラソルなら適当に振るだけで凶器になるしな」
「おお、怖い怖い」

 後は適当にレジャーシートを敷き、その上に鞄なりなんなりを放り込めば海水浴の簡易前線拠点の完成である。

「これで腰を落ち着けて座れるという訳よ」

 日差しが切れたおかげで上のパーカーもはだけられるというものだ。脱ぐと日光の所為でかえって暑かったからな。後単純に蒸れる。

 日本の気候はじっとりと暑くカラッと寒いという不快指数の累乗攻撃だ。
 鬱陶しくてしょうがない。

「お待たせ~」

 圭希の元気な声が聞こえたのでそっちを見ると、圭希となじみが連れ立って歩いてきた。
 なじみの大きめパーカーは知っていたが、圭希の方は予想通りビキニだった。布地面積が小さく見えるのは、例のトレンドに踊らされたのか、あるいは肉の過積載でそう見えているだけか。

 まあどっちでもいい。
 そして俺となじみのペアルック状態を見て『まじかこいつ』みたいな目を向けられているのはどうでもいい。

 重要なのは俺の所へ迅速に移動して、目にも止まらぬ速さで俺のパーカーのジッパーを一番上まで引き上げたなじみである。

「うおお、どうしたどうした」

 早すぎて少し仰け反ってしまう。

「そう言う事にならないようにパーカー買ったんでしょ!? なんでより一層耽美な着こなししてるの!」
「暑かったんだからいいだろ」
「それで女の子が寄ってきたら本末転倒でしょ!」

 あれ? 俺もしかして貞操観念逆転世界とかに転移した?
 男がパーカーの前空けてた程度で注目されるかよ。周りの男見てみろ、上半身裸ばっかりだろうが。

「わかったわかった。閉じとくよ」
「ヨシ!」

 何が?

「そういうなじみは・・・」
「勿論ここまで上げっぱなしです! 褒めてくれてもいいのだよ?」
「偉い偉い」
「えへへ」

 頭を撫でて、髪のトリートメントを掌に感じる。
 この髪が痛むのなら別に無理に海水浴に興じる必要はないのでは? ボブは訝しんだ。
 いやまあ、元々あんまり乗り気でもなかったみたいだけど。

「じゃあ信照。俺となじみはここで荷物番してるから」
「お、おお・・・なんか、アレだな。自覚あるだけの事はあるな」
「ほっとけ」

 幸せならOKです。
 でも小室K、お前は二度と日本の土を踏むなよ。

 無駄に過激なジョークも飛ばしたところで、なじみから小瓶を渡される。

「じゃあケーくん。日焼け止め塗って?」
「・・・足に、だよな?」
「他にどこ塗るの。手と顔ぐらいしか外に出てないよ?」
「俺が塗る必要は?」
「私が気持ちいい」
「OK、任せな」

 ここまで素直に自分の欲望を言われてはしょうがない。それを満たすのも恋人の務めだ。そして務めで満たされるのは恋人の権利だ。

 しかし暑い。
 全身に纏ってる念力増やしたら防げねえかな・・・防げたわ。クッソ快適になったんだけど。何これどういう理屈?

「ケーくん、一気にエッチな雰囲気出して・・・まだ昼前だよ?」

 あっこれそういう感じか。
 雑にやると周りの女性を無作為に発情させる副次的能力が出てきてしまうので、気を付けろというのが夜狐の教えであった。まあ発情するというのは俺だけの話だったが。

 えー・・・念力の量はそのままに、しかし副次効果は押し込んで・・・。

「またケーくんの気配変わってるんだけど、どうなってるの? これ」
「どんな感じ?」
「存在感? みたいなのが増えたっていうか・・・」

 マジでどうなってんだ超能力者。生態が謎過ぎるぞ。
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